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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科10巻2号

1975年02月発行

雑誌目次

視座

協力

著者: 児玉俊夫

ページ範囲:P.113 - P.113

 1974年9月16日より3日間Londonで膝人工関節の国際シンポジウムがあり,日本からも20人近くが出席した.その席上でStanmoreの整形外科研究所のScale氏がSirに列せられたことを最初の司会者のMr.Fairbankより紹介され,満場の拍手の祝福を受けた.Scale氏は同研究所のBiomechanics Unitの所長で工学出身の方である.同じ頃ロンドンのImperial CollegeのDcpt. of Mechanical EngineeringのBiomechanics Unitの主任のSwanson氏がLondon大学の教授に任ぜられたことを聞いた.同氏も工学出身で,Mr. Freemanと協同して人工膝関節を開発された方である.Leeds大学のProf. Dowson,Glasgoの大学のProf. Pawlら工学出身の方々の名声は広く識られている.関節のlubricationではLeeds大学が国際的のリーダーでInstitute of Tribologyがある.Dowson氏はそこの教授で,30年来Iubricationの研究を続けておられるそうだ.

論述

手指PIP関節掌側脱臼について—特に徒手整復不能例を中心として

著者: 井上博 ,   田中繁徳 ,   福島賢人 ,   宮城恒夫

ページ範囲:P.114 - P.120

はじめに
 骨折・脱臼に関して偉大な業績を残したL.Böhler2)のKnochenbruchbchandlung(1937)中にMP関節の徒手整復不能例について既に原因は筋腱に由来するボタン穴機構によることを述べている.その著書の中で彼はPIP関節掌側脱臼に関しては一葉のレ線写真を添えて"Volare Verrenkung im Mittelgelenk(selten)"とのみ記していて詳細には触れていない.その後の数多くの成書中でこのPIP関節の掌側脱臼についての記載があるのは,内容の詳細さに関係なくみればHainzl7)(1957),Eaten4)(1971),津下19,20)(1972,1974)にしか過ぎない.津下はJohnsong9),豊島18)および能登13)の報告を引用して記載し,Eatonは写真および略図を附して非整復性の原因がlateral bandが顆部下にキャッチされることにあるとしている.
 成書の記載はこのように極めて少ないが,本脱臼特に非整復性のものに関しての内外での報告をみると,本邦では学会中の追加例8,10,17,21)や会報12)も含めて9報告者11例である.海外では2報告者5例であるがSpinner16)(1970)の例は後述するごとく本邦報告例とは若干病像が異なつている.

骨肉腫の肺転移の研究(第2報)—肺転移が予後にあたえる影響について

著者: 石井清一 ,   佐々木鉄人 ,   薄井正道 ,   姥山勇二 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   近沢良

ページ範囲:P.121 - P.130

緒言
 骨肉腫は早期に根治手術してもその大多数は肺転移のために死亡する.骨肉腫の治療は肺転移をいかに防止し,転移巣の発育を抑制するかにかかつている.そのためにはまず転移巣の病態の適確な把握が重要である.
 著者らは第一報において,肺転移巣のX線像と組織像を検討し,骨肉腫肺転移巣の示す特異性について報告した7).肺転移巣の現われ方と増殖速度それに発育様式には個々の症例で特徴があり,しかも原発腫瘍の性状との間にも何等かの関連性の存在を示唆する結果を得た.今回は肺転移巣の示す特徴が,予後をいかに左右するかを検討した.

関節疾患とTryptophan代謝

著者: 猪狩忠 ,   土沢正雄 ,   鳥羽義紀

ページ範囲:P.131 - P.137

 Tryptophan(Try)はHopkinSおよびCole(1901)により発見されたアミノ酸の一つで,その代謝はindole核を有するアミノ酸特有の複雑でかつ特異的なpatternを示すとともに,生体でこのアミノ酸が必須アミノ酸として栄養上切な物質であることの他に,tryの代謝産物には多くの生物学的重要物質が存在していることが知られている.たとえばビタミンの一つであるニコチン酸,植物ホルモンであるインドール酢酸,chemical mediatorとして血収縮その他の重要な生理作用のあるscrotonin,tryptamineといつた天然に存在する誘導体で,try代謝系の関与により形成されると考えられる物質が少なくない.またtry代謝には多くの酵素,補酵素の関与が必要とされる,つぎに関節内Serotoninについては,histamineなどとともにその生体内合成については,関節滑膜の組織マスト細胞との関連において考慮されるべきであり,更にアレルギー反応の立場からも論議の対象となる物質で,その点からも関節疾患を扱う者にとつてtry代謝は重要関心事である.
 このようにtry代謝については基礎医学,薬学はもちろん臨床医学の多くの分野において,数多くの研究がみられるようになつてきた.

骨・軟部悪性腫瘍—総合討議「悪性腫瘍」のIntroductory Speakerとして

著者: 前山巌

ページ範囲:P.138 - P.147

はじめに
 昭和49年4月,神戸市において柏木大治会長のもとに開催された第47回日本整形外科学会においては,総合討議の一課題として「悪性腫瘍」なかんずく骨肉腫の長期生存例を中心に下記の8演題が発表され,冒頭これらの内容の特色を紹介し,さらにそれぞれの討議演題の問題点を提起するためのintroductor Speakerとしての大任を会長から小生に命ぜられたが,到底そのような才能も勇気も小生にあるはずとてなく,ただただこれまでこの方面にばかり溺れてきたものの責任をいささかでもおぎなうため,あらかじめ各演者からその内容をお知らせ願つたうえで,小生なりの理解の下に小生なりの方法で,これらの討議演題の内容をご紹介させていただくこととした.
 ここで討議された演題は次のようなプログラムである.

手術手技

脊椎前方侵襲法—1.腰椎前方固定術(経腹膜法および腹膜外路法)

著者: 井上駿一

ページ範囲:P.149 - P.167

I.適応疾患
・腰椎椎間板症
 椎間板ヘルニア,脊椎辷り症,仮性り辷り症,分離症,椎体隅角解離,シユモル結節,不安定椎Severe degenerated disc

海外見聞記

米国・カナダMicrosurgeryの旅

著者: 玉井進

ページ範囲:P.168 - P.170

 Microsurgeryのpioneerの1人であるDr. Buncke(Caiifornia)から,彼が司会をつとめる第53回米国形成外科学会(於Seattle)のpanelに招待されて渡米の機会を得たので,3週間にわたつて米国,カナダのmicrosurgeonを訪ねて多くを見聞することができたので,一部を抜粋して紹介する.
 近年,本邦の整形外科領域でも,この分野への関心がたかまり,きたる9月16日には,形成外科と合同で第1回microsurgery研究会を開催する運びとなり,今後の発展が期待されるが,その意味からも,世界各地の情報をいち早く取り入れる必要性を痛感するものである.

臨床経験

小児の脱臼を伴う距骨頸部骨折の2症例

著者: 鳥巣岳彦 ,   加茂洋志 ,   大江浩 ,   野村茂治

ページ範囲:P.171 - P.179

はじめに
 距骨の脱臼骨折は稀な骨折であり,しかも予後の厳しい骨折である.新鮮な距骨の脱臼骨折に直面した時まず我々の脳裡にひらめくのは,骨体部の無腐性壊死の問題である.諸家の今までの報告では距骨頸部の高度な脱臼骨折では治療のいかんを問わず,およそ90%に骨体部の無腐性壊死を起しているからである,距骨の脱臼骨折の治療として,何が一番適切な初期的処置なのか.受傷時に骨体部の運命はすでに決つており,愛護的で解剖学的整復を行なうことも無駄であろうか.
 血行改善を期し,初期治療の時点で骨移植を行なうとか踵骨との固定をすべきなのであろうか.いずれ無腐性壊死を起こす運命にあるのならば,早目に距骨摘出術を行なうのが得策なのか.

関節滑膜に見られる血管腫について—膝関節血管腫の2症例を中心として

著者: 加藤之康 ,   荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   司馬正邦 ,   万納寺毅智

ページ範囲:P.180 - P.185

はじめに
 関節滑膜に見られる血管腫は全身どの関節にも見られるが,その報告のほとんどは膝関節である.本症は1856年Bouchutによつて最初に報告され,以後Bennet & Cobeyの5例1),Lewisらの11例7)およびDepalmaらの3例2)を見るが,多くは1例報告である.1973年,Moonは過去の文献を網羅し,自験例2例を含め137例を報告している8),本邦では1954年に松本が第1例を報告したが17),最近では1968年から1972年までの5年間に16例の報告をみる13〜15)18〜20)).また全身性血管腫症は種々の呼び名で(Klippel-Weber等)呼ばれているものもあるが,その部分症として関節滑膜に血管腫を示すものは,関節症状として本文に述べるごとき特徴を持つので,本文では関節症状に記述を限定した.
 本症はその存在を念頭におけば,その特徴的な症状および検査所見から正確な診断を得る事は容易である.本文の目的ば最近経験した2例の報告に,文献的考察を加えることである.

扁平椎体症—当科における長期追跡結果

著者: 宮岡英世 ,   鈴木勝己 ,   高橋定雄 ,   伊藤祥弘 ,   南條文昭

ページ範囲:P.186 - P.194

 当科における単発性扁平椎体症については,すでに昭和36年第281回整形外科集談会東京地方会,昭和41年第15回東日本整形外科学会の席上で報告し,その詳細は日整会誌に南條,高橋によつて述べられている.我々はその後7年から12年にわたる経過観察をし,多少の知見を得たので症例を中心に報告する.

短指伸筋(Extensor digitorum brevis manus)の1症例

著者: 喜多正鎮 ,   諸岡正明 ,   大宮建郎

ページ範囲:P.195 - P.197

 手指伸筋の異常は解剖学者により古くから報告されている.(Albinus 1734;Wood 1869;Quain 1892;Smith 1897;Cauldwell, Anson, Wright 1943;Glasgow 1967)しかし臨床例の報告はきわめて少なく現在まで第1表に示すごとく23症例のみである.我々は最近その1症例を経験したので報告する.

カラーシリーズ 整形外科手術・7

腰椎分離・辷り症に対する後側方固定術

著者: 三谷晋一 ,   永田覚三

ページ範囲:P.108 - P.111

 腰仙部に行なう前方および後方固定に代る方法として,関節突起,横突起間を固定する後側方固定術(第1図)が多くの人により推奨されている,その利点として,①骨癒合率が高い,②Motor segmemの中心を固定するため,力学的に有利である,③特別な内,外固定を要しない,④広範な椎弓切除の際,同時に固定が行なえる,⑤早期離床が可能である.などがあげられている.従って,確実かつ安全な固定法が要求される脊椎分離・辷り症の固定に好適であり,また,広範な椎弓切除後の固定,固定術後の成績不良例に対する再固定にも有用である.ここでは私達の常用している正中切開法による本術式を,第5腰椎,第1仙椎間の固定を例にとって述べる.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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