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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科10巻3号

1975年03月発行

雑誌目次

視座

医療不信のときに思う

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.209 - P.209

40年もむかし筆者が学生のころ,故東大名誉教授入沢達吉先生から聞いたのであるが,「わたくしの患者の中で一番幸福な人は,田舎のお婆さんで何でも先生にお任せしますと私を信頼しきつている人だ.反対に気の毒なのは,生半可な医学知識をもち,いつもくどくどと質問をくりかえす人だ.医師と患者が信頼感で結ぼれなかつたらお互いに不幸だよ」
 入沢先生のような日本一の内科の泰斗でさえも,不信の患者に悩まされることがあつたらしい.現在の私共は世相の移り変りにともなつて,いよいよ多くの医療不信の患者にとりまかれている.

論述

膝の特発性骨壊死と類似疾患—とくに離断性骨軟骨炎と比較して

著者: 腰野富久 ,   中村典彦 ,   木下典治

ページ範囲:P.210 - P.220

はじめに
 膝関節痛を主訴とした疾患の中で骨軟骨の病変を主とするものは種々あり,とくにレ線学的に骨病変のはつきりしない発症早期の段階ではしばしば鑑別診断に難渋することがある.大腿骨骨端の骨壊死は骨頭に発生することはすでに知られているが,下端にも発生することが最近報告されてきた1,5).この下端の骨壊死の病態を中心に,離断性骨軟骨炎など膝内障との鑑別について知見をのべたい.

脳性麻痺足変形の治療—尖足変形の治療を中心に

著者: 安藤忠 ,   高松鶴𠮷 ,   佐竹孝之 ,   松本信輔

ページ範囲:P.221 - P.229

はじめに
 足運動は,主として二つの後足部運動軸,すなわち矢状面の運動を規定するankle axisおよび水平面の運動を司どるsubtalar axisによつて定まり,従つてこの点から足関節および距骨下関節を支配する下腿三頭筋の様態は,後足部の運動,ひいては足部変形を決定する重要な因子となる.
 脳性麻痺(以下CPと略)足変形の基本には,この下腿三頭筋のDysfunctionがあり,それによつておこつた後足部の拘束状態を基本因子として,体重の負荷,内,外反筋の異常性,関節固定力の脆弱性などが加わり,中足部,前足部の偏位が強制され,種々の足変形が結果されるにいたる.

痛風治療におけるProblem Oriented Medical Record—診療記録からみた慢性疾患管理の方法論

著者: 西岡久寿樹 ,   御巫清允

ページ範囲:P.230 - P.239

はじめに
 近年の情報科学の発展は医療の分野へも種々の形で影響を与えてきている.臨床医学分野においては,多くの情報を効率よく整理し患者の治療行為ヘフィードバックさせるための手法の開発が現在もつとも必要とされている.一方,情報の発生機構からみた場合,日常われわれの診療行為に際して発生している情報群は機能的に二つに分けられる.第1群は,主訴,生活歴,病歴そして多くの臨床検査などの生体現象の観測値など治療行為に伴い発生する情報群である.第IIの点は,それらのデータベースを生体の状態を表現する変数としてとらえ論理的に組み合わせて,疾病構造(モデル)を組み立てるための機能を有したものである.第I群の方法論に比較して後者の方法論の開発はきわめて不活発である.そのことは第I群のステップで発生した情報群を効率的に患者のケアヘフィードバックすることを著しく妨げている.一方では,患者の主訴などを始めとする多くの叙述的(Narrative)な表現と変数相互間の有機的関連性が論理的に説明できないなど情報流の面からも有効性が問題になつてきている.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(28)

著者: 古屋光太郎 ,   骨・軟部腫瘍症例検討会

ページ範囲:P.240 - P.245

16歳男性の左肘運動痛
 A 症例は16歳の男性,高校生です.本年1月ごろから,誘因なく左肘の違和感に気付き,同年3月には時々同部の運動痛を感ずるようになりました.当時なお症状軽く放置致しました.しかし,その後もずつと運動時の軽い鈍痛がとれないため,本年6月5日某整形外科を訪れ,尺骨の骨腫瘍ではないかということで私共の外来に紹介され,6月18日に入院致しました.
 入院時の所見では,全身的にとくに異常なく,発熱やリンパ節の腫脹もございません.また,外傷を受けたという記憶もありませんでした.

学会印象記

Congenital Hip Pathologyの国際シンポジウム

著者: 土屋弘吉

ページ範囲:P.246 - P.250

 1974年9月4日から7日までの4日間,Detroit郊外のTroy Hilton Hotelにおいて,Royal Oak, MichiganのWilliam Bcaumont Hospital整形外科chiefであるStanko Stanisavljevicの主催により,先天股脱に関する国際シンポジウムが開かれた.シンポジウムの参加者ははじめは550名を見込んでいたが,実際には300名となり,その出身国は27ヵ国に及んだ.その中には講師陣(faculty members)40名が含まれている.講師には各国から知名の整形外科医が参加しており,その主な方々を挙げてみても,Howorth,Jean Judet,Mau,Mitchell,Monticelli,Ortolani,Pemberton,Ponseti,Salter,Smith,Somerville,Stanisavljevicなどがある,日本からは河邨文一郎教授が講師の一人として目覚ましい活躍をした.Chiariはプログラムに載つていたが病気のため出席できなかつた.
 シンポジウムの運営はかなり特徴的なものであつた.Formal paperは1題30分で,4日間に45題.追加も質疑も討論も一切行われない.いわば講習会のようなものである.

臨床経験

骨ページェット病について

著者: 荻野幹夫 ,   蜂須賀彬夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   加藤之康 ,   井上肇 ,   土居通泰

ページ範囲:P.251 - P.259

 自験例2例のPaget病患者の報告と多くのPaget病に関する文献中適当と思われるものについて要約を述べた.本症は限局性のものの多いことを認識し,日常診療においても鑑別診断に考慮せねばならない.治療法についても最近の進歩により,近い将来根治的な治療も可能であろう.

脊髄くも膜憩室の4例

著者: 竹田誠 ,   池田彬 ,   暈雅太郎

ページ範囲:P.260 - P.267

 脊髄くも膜憩室で脊髄症状を呈するものはきわめて稀であり,その症状発現の機序,病因等は誠に興味深い.われわれは最近その4例を経験し,内2例を手術する機会を得たので,ここに報告する.

2個のNidusがみられたOsteoid Osteomaの1例

著者: 小林定夫 ,   佐藤雅人 ,   龍順之助 ,   浅井亨 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.268 - P.271

 われわれは,脛骨に発生し,2個のnidusがみられた,めずらしいosteoid osteomaの1例を経験したので報告する.

小児の再発性指趾線維性腫瘍—乳児指趾線維腫症

著者: 恒吉正澄 ,   岩崎宏 ,   遠城寺宗知 ,   竹嶋康弘

ページ範囲:P.272 - P.276

緒言
 小児の再発性指趾線維性腫瘍(recurring digital fibrous tumor of childhood)は1965年Reyeにより初めて6例が報告され,独立疾患として記載された特異な腫瘍状病変である.本病変は乳幼児の手指や足趾のみに発生し,腫瘍細胞の胞体内には特異的な封入体が見られることから,他の小児の線維腫症とは区別される.私どもが最近10年間に蒐集した軟部腫瘍約5000例中の指趾腫瘍210例の病歴および組織標本を再検討した結果,本病変に相当する5例が見いだされた.うち1例の電顕的観察を加えてこれらの例を報告し,本病変の臨床病理学的特徴と問題点について論じてみたい.

診断上興味のあつたOsteoid Osteomaの2例

著者: 鈴木堅二 ,   服部彰 ,   遠藤博之 ,   相沢健

ページ範囲:P.277 - P.280

 1年余りの経過を見得たOsteoid osteomaの2例を経験し,診断上興味があったので報告する.

悪性骨腫瘍を思わせた風棘(spina ventosa)の1症例について

著者: 村松郁夫 ,   小野沢敏弘 ,   依田有八郎 ,   今井純郎 ,   奥泉雅弘

ページ範囲:P.281 - P.284

 風棘(dactylitis tuberculosaいわゆるspina ventosa)の臨床像は化膿性骨髄炎,梅毒および骨腫瘍と類似しており,なかんずく,年長児や成人の症例は,稀有でかつ成書にみられるような定型的所見に乏しいため,それらの鑑別診断が困難である,従つて試験切除による組織学的診断が必要である.
 私共の風棘の一治験例について考察を加えて報告する.

カラーシリーズ 整形外科手術・8

腰椎侵襲法 1.上位腰椎

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.204 - P.207

 胸腰移行部に対しては高さに応じて適宜必要な下位肋骨切除術に腹壁斜切開法を合併して侵襲する(第1図).第12胸椎ないし第1腰椎に対しては第11肋骨,第2,第3腰椎に対しては第12肋骨に沿い仙棘筋外縁に始まる皮切をおく,肋骨先端にて切開を外斜腹筋線維方向へ向け,臍と恥骨結合とのほぼ中央に至る.下位腰椎の展開を必要とするときは切開下端を腸骨前上棘方向へ向ける.腹壁筋,腹横筋膜を切離し,腎周囲の脂肪塊を指標として腹膜を鈍的に剥離し,後腹膜腔へ達する.第11または第12肋骨切除し,その横隔膜付着部剥離後,胸膜とともに上方へ排し,開創する(第2図).

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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