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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科10巻5号

1975年05月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

関節鏡診断 1

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.370 - P.373

 関節鏡診断は,関節の外傷や疾病の診療に重要な補助診断法となつたが,この関節鏡は日本で開発された内視鏡である.欧米ではEugen Bircher(1921),Michael Burman(1931)らが関節鏡を研究発表したが,いずれも関節鏡診断学確立まで進展することができずに断念されてしまった.高木憲次先生(第3図)は1918年膀胱鏡を屍体の膝関節に用い,これを改造して1920年関節鏡を作った.これは直径7.3mmで実用には太すぎたので,1933年径3.5mmの実用第1号関節鐘(第4図)を完成し,さらに改良をかさねて第12号関節鏡までを完成した.これらはかなり精巧なものであった.一方関節鏡診断法に必要な基礎的研究が高木教授指導下に飯野,三木,小池,岡村,森崎,藤本の諸氏によってなされ,さらに結核,外傷,骨関節炎の臨床関節鏡が川島,佐藤,渡辺などによって研究された.
 今日最も普及している21号関節鏡(渡辺・武田1959-第5図)は,膝関節腔のほぼ全体を観察し,とくに半月板を観察し,カラー写真記録,鏡視下生検(第1,2図)および鏡視下手術を行うことができるもので,視野が広く(視野角100°),また1mmの近接視から無限大までの明視ができる.膝関節腔へのアプローチには多くの方法があるが,普通letcral infrapatellar approach(第6図)が用いられる.

視座

骨吸収と骨血行

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.375 - P.375

 骨の過剰吸収の原因は炎症,外傷,圧迫,腫瘍性,神経性,血行性など多様である.
 骨吸収の著しいものにmassive osteolysisがあるが,これは小血管,淋巴管のangiomatosisと考えられていて,Garhamはマウスの肢に類似の病変を造つて,active hypercmiaでは骨吸収が,passive hypercmiaでは骨形成がおこると述べている.骨が多発性に嚢腫状に吸収されるcystic angiomatosisは小児の疾患で,最後には脾も犯されて,死亡する性質の悪い病気であるが(W. T. Boylc),腫瘍性吸収とされている.腫瘍での骨吸収は圧の増加による骨細胞の壊死,血行障害による壊死もさることながら,それにも増して蛋白分解酵素やコラゲナーゼの働きが重要であろう.同じく悪性の骨吸収にcssential osteolysis with nephropathyがある.これは手根骨,足根骨,肘など関節が吸収され,これに関係する骨も次第に吸収され,やがては腎障害で死亡する.この疾患の骨言及収のレ線像はarthritis mutilansに似ていて,血行性吸収ではなく,骨代謝異常などが関係しているようである.

論述

私の先天股脱治療の方針—新生児期から幼児期の症例を中心に

著者: 香川弘太郎

ページ範囲:P.376 - P.388

はじめに
 昭和45年5月,兵庫こども病院開設以来,著者が用いてきた先天性股関節脱臼の治療体系は図示したようなものであるが,本院の特殊性として治療途中で他より移転して来るものが少なくなく,またこれらの医療継続には種々考慮すべき他の身体条件等があつて,定めた方針をすすめ得ない場合も多い(第1図,a,b).
 今回は当院整形外科において,現在までに著者が立てた治療指針のあらましを述べ,かつこの基礎とも考えられる本症集団検診の現状についても少しくふれたい.

10年以上経過したペルテス病の予後とその検討

著者: 小野勝雄 ,   伊藤惣一郎 ,   井村正明 ,   渡辺好博

ページ範囲:P.389 - P.396

はじめに
 ペルテス病は比較的子後良好な疾患とされているがその経過は長期にわたり,しかも遊びざかりの学童や学齢期に近い幼児に好発するため,その治療期間短縮と同時に骨頭変形防止を目的として多くの治療方法が試みられてきた.
 最近は治療しながら教育もできる施設で多く取扱われるようになつてきており,新潟地方でも昭和42年以降は大部分の患児が肢体不自由児施設,"はまぐみ学園"で教育と治療を同時にうけている.

合併症からみたHinged Knee Arthroplastyの適応と問題点

著者: 広畑和志

ページ範囲:P.397 - P.405

はじめに
 最近では,生理的な膝関節の動きを無視するhinged arthroplastyは既に過去の産物であると主張する人も決して少くない.そこで,geometrictype, polycentric typeのものからさらに小さいduo- & unicondylar knee prosthesisが開発され,市場には既に60種以上のprosthesisが現れたが,既にあるものは使用されなくなつている.
 確かに機構の上では,hinged prosthesisの欠点が論議され,これに対する批判も多い.しかし,慢性関節リウマチ(RAと略す)のように,軟骨面のみならず骨組織まで強く破壊されたり,膝のstabilizerである半月,靱帯まで損傷されると,関節端のみを置換しただけては,優れた支持性はなかなか得られない.そこで,hinged arthroplastyでは固定術後にみられるような歩行能力の改善と,適度の運動範囲が得られる利点のあることも強調されて来た.

P. T. B.型ギプスによる下腿骨骨幹部骨折の外来通院治療

著者: 青柳孝一 ,   三国義博 ,   石垣一之 ,   八木知徳

ページ範囲:P.406 - P.412

はじめに
 内固定金属のめざましい発達により骨折治療法は極めて多種多様となつている.とくに下腿骨骨幹部新鮮骨折の場合にはその感が強い.その反面治療法の適応に対する考え方が甘くなつて来ていることも否定できないようである.骨折の治療は患者に最も無害な方法により骨折片が解剖学的に正しい位置で癒合しできるだけ短い期間で正常の機能を獲得するのが原則であり,いいかえればできるだけ痛くなく,早く,そして変形機能障害を残さずに社会復帰することができ,さらにこの物価高の折,治療費の患者負担が軽くすむ治療法が理想と考えられる.このためには一つの治療法にこだわつたり,また逆に適応を充分考えない上,一つの手技に習熟しないうちに新しい方法に飛びつくのは問題である.われわれは従来の教科書,最近の文献,そして自験例を検討の上で一定の治療方針を作りこれに基づいて治療を行つている.当科における下腿骨骨幹部骨折の治療方針はまず可能な限り保存的治療を行うのを原則としている.しかし保存的治療を行う場合には患者に苦痛を与えるような徒手整復は一切行つていない.したがつて整復して下腿軸を正常にするために隣接関節特に足関節を不良肢位に固定するということはせずに観血的治療に切り変える方針である.

臨床経験

キール大学整形外科における内反減捻骨切術後の頸体前捻角の推移に関する予後調査—特にübervarisierungについて

著者: 黒木良克 ,  

ページ範囲:P.413 - P.422

 先天性股関節脱臼の治療中に見られる残遺性亜脱臼および骨頭核の極度な外方偏位,病的外反,前捻の増強に対し1949年Bernbeckが内反減捻骨切術を発表した.私達の恩師故Rohlederer教授も彼のM. iliopsoasのaktive Innendrehspannungの原理に基づきintertrochanter部での内反減捻骨切術に対し興味を持ち1950年以来,上記疾患に対し行なつて来た.
 その後この術式にっいてはM. Lange,Langhagel,LindemannおよびJentschura,Imhäuser,viernstein,Marquardt,Becker,WittおよびMittelmeier,AnselおよびBätznerおよびKessler,MeznikおよびSalzer,Chapchal,Weickert,Mau,TönnisおよびLetz,scheier,Janiおよびwarner,schneider,Kleine等の発表を見,一方我が国においても小谷,赤星,柏木,三崎,鈴木,井村,山田,坂口,香川,横山,川中等多くの人々により追試発表されている.

滑膜瘢痕による膝関節痛の1例

著者: 渡辺正毅 ,   榊原壌

ページ範囲:P.423 - P.425

まえおき
 膝関節の疼痛の機序はなかなかむずかしい問題で,その解明は将来の研究にまつべきものが多いが,今回われわれは外傷による滑膜の瘢痕が膝屈曲に際して同部関節包の激痛をおこすにいたつたと推察される症例を経験したので報告する.

Acrylic Bone Cementの麻酔中,呼吸器系におよぼす危険性について

著者: 白井希明 ,   播磨晃宏 ,   上田裕 ,   長井淳

ページ範囲:P.426 - P.429

緒言
 Monomeric methyl methacrylate Cement(Acrylic cement)が整形外科における手術,とくに股関節症に対する股関節全置換術において使用されるようになり,その症例数も増加しつつある.と同時に股関節全置換術術後合併症も報告されている.
 麻酔施行中に得られたdataを参考に多少の考察を加えて報告する.

上肢の血管性腫瘍—分類と発生上の問題点

著者: 高杉仁 ,   西原建二 ,   赤堀治 ,   菊山真行

ページ範囲:P.430 - P.435

はじめに
 軟部組織に初発する血管性腫瘍は,日常の診療においてしばしば見られるものであるが,患者の訴えもすくなく,予後も比較的いいためか,簡単に血管腫ということばで処理されているようである.その分類や発生についても,統一されたものがなく,われわれ臨床家にとつて何となく避けていたきらいがなくもない.
 今回過去10年間に岡大整形外科および関連病院において経験した,上肢特に前腕より手部に発生した血管性腫瘍22例について検討したので報告する.

脊髄症状と両手指振戦を伴つた頸椎巨大シュモール結節の一治験例

著者: 大木勲 ,   江頭泰平 ,   辻陽雄

ページ範囲:P.436 - P.440

はじめに
 シュモール結節は胸椎および腰椎では決して珍しい病変ではないが,頸椎における同病変は極めて稀なものと考えられる.最近著者らは,第6頸椎に巨大シュモール結節が存在し,脊髄症状とともに手指の振戦の出現をみた興味深い一治験例を経験したので報告する.

軟骨細胞に異常物質の蓄積を認めたPseudoachondroplastic Dysplasiaの1例

著者: 檜山建宇 ,   井沢淑郎 ,   三杉和章

ページ範囲:P.441 - P.446

 Pscudoachondroplastic dysplasia7)は1959年Maroteaux & Lamy6)によりachondroplasiaに類似する四肢の変形とMorquio病様の脊椎の変形を有する侏儒症で"Les Farmes Pseudoachondroplasiques des Dysplasies Spondylocpiphysaires"として発表されたきわめて稀な疾患である.1973年Cooper & Maynard1)は本症の3例に骨生検を行ない,軟骨細胞の電顕像で粗面小包体内に同心円状,層状を呈する異常物質の蓄積を認め,a roughsurfaccd endoplasmic reticulum storage disorderとしてMorquio病とは異なつた独立疾患とすることを提唱した.
 われわれも最近本症の1例を経験し,腓骨果よりepiphyseal plateを含めて骨生検を行ない,光顕的,電顕的に軟骨細胞内にCooperらのいう異常物質を証明し得たので,いささかの考察を加えて報告する.

巨大な,いわゆるHoffa病の1例

著者: 村松郁夫 ,   三浪明男 ,   平井和樹 ,   今井純郎 ,   奥泉雅弘

ページ範囲:P.447 - P.450

 1904年Hoffla A.の報告した,いわゆるHoffa病は膝関節脂肪組織の限局性樹枝状腫で,術前診断が難しく,その報告例は少い3,8,9,15)
 我々は巨大なHoffa病の1例を経験したので報告する.

整形外科における頑固な出血に対する対策—自験例を中心として

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   加藤之康 ,   蜂須賀彬夫

ページ範囲:P.451 - P.457

要約
 ①本文では臨床家にとつて必要と思われる止血磯構を簡明化して述べ,②術前の検査の意義について述べ,特に問診の重要性を強調し,③われわれの経験した6症例の簡単な経過とその出血の機序について考察し,④治療および診断の基本的な方針を述べた.

追悼

Dwyerさんの思い出

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.458 - P.458

 Allan F. Dwyerさんは1975年2月13日に宿痾の食道癌で亡くなられた.まだ60になるかならないかのお歳である.痛惜の極みである.謹んで哀悼の意を表する.
 思い出す.一昨々年1972年の9月シドニーにおける第12回世界リハビリテーション会議に参加の節数日をおつきあいしていただいた.

学会印象記

第8回先天股脱研究会

著者: 今野秀夫

ページ範囲:P.459 - P.462

 第8回先天股脱研究会は,昨年9月5日,午後3時より午後9時まで,まだ残暑厳しいさなか国立教育会館大会議室に,約300名の会員の出席のもとに盛会に行われた.平日であつたが遠路はるばる御多忙にもかかわらず多くの諸先生方の出席をみたことは,この研究会に対して会員各位が,いかに期待と関心を寄せられているかが伺われます.予想していたよりも多数の演題が寄せられ,予定よりも大幅に時間を延長しましたが,それでも討論時間が十分でなかつた点は運営上まことに申し訳ない次第でした.この会の印象記でありますが,私なりの印象というより,発表内容中心に報告させていただきます.
 今回のテーマは「先天股脱検診の問題点」と「青少年期の先天股脱」の二つで,前者に10題,後者に15題の演題の発表があつた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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