icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科10巻6号

1975年06月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

関節鏡診断 2

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.466 - P.469

 膝関節の関節鏡検査法の最も普通な方法は,膝蓋下・外側アプローチにより21号関節鏡の直視鏡を用いる方法である.この検査を安全確実に実施するためには,いくつかの手技のこつがある.それは,刺入点の決め方,套管針穿刺の手技,関節腔内での関節鏡先端の移動法,内・外半月板および前後十字靱帯の観察方法などで,第3〜8図はこれらを説明するスナップである.
 このようにして観察できる内腔の対象は,膝関節を逆U字形切開で開き,膝蓋骨を下方に反転した模式図で示すと第1図のごとくで,黒斜線部は死角にはいって見えない部分である.半月板では中・後節境界部の外縁と裏面(脛側面)が観察困難(第2図),十字靱帯では後十字靱帯の下半部が前十字靭帯にかくれて見えない.半月板の上記部位の観察には24号関節鏡を用いる.

視座

義肢装具に関する諸問題

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.471 - P.471

 義肢装具を給付する現行法には,主に身体障害者福祉法,児童福祉法,健康保険法,厚生年金法,労災保険法,などがあり,それぞれ異つた観点から別個に給付を行つている,これらの法は年月は古く,往時はすぐれた法であつたが,今では実状に即しない点が多く,抜本的改正が要請されている.
 身体障害者福祉法では切断術の後で身体障害者手帳を申請し,その交付後にはじめて義肢交付が可能となる.煩雑な手続きに何か月かの期間が空費され,それだけ患者の社会復帰は遅れる.周知のように現在は手術直後義肢装着法が普及し,当初の装着後訓練まで医療の一部とみられ,従つて健康保険法で扱うべきである.厚生年金法,労災保険法など大同小異である,健康保険法では装具に関しては一応問題はないが,義肢については法規の整備は極めて不十分で,不合理である.

論述

PTB braceによる下肢骨折の治療

著者: 矢野悟 ,   有田親史 ,   鈴木国夫 ,   飛田洋次 ,   小林郁雄 ,   三宅正夫 ,   細見壮太郎

ページ範囲:P.472 - P.478

はじめに
 1967年にSarmientoによりfunctional below-the-knee cast(私達は便宜上P. T. B. castと呼ぶ)が考案されて以来,下腿骨折の外固定概念は大きく変り,骨癒合完成を待たず,免荷歩行が可能となり,従来の関節拘縮,筋萎縮の問題は改善され,優れた治療成績を納めている.しかしながら,1.P. T. B. castは破損しやすい.2.治療経過中に数回にわたる巻き換えのため,手数と時間がかかる.3.荷重時のヒールコンタクトの程度は不明確である.4.足関節に拘縮が残る.5.骨折部のレ線像が不鮮明である.6.人浴できない.等の問題が残されている.私達は以上の点を改善するためにSarmientoの考案したfunctional below-the-knee braceのアイディアに基づき脱着可能なpatellar tendon bearing brace(私達は便宜上P. T. B. braceと呼ぶ)を作成し,現在までに40症例42下肢に適用し,満足すべき結果を得たので報告する.

人工膝関節置換術後の屈曲不充分症例の検討

著者: 鳥巣岳彦 ,   野村茂治 ,   北島俊裕 ,   中村謙介

ページ範囲:P.479 - P.485

 膝関節に金属を用いた関節形成術が行なわれるようになつたのは1940年の初めころからであり(Campbell,1940),これは股関節におけるSmith-Pctersenのカップ形成術の報告が刺激となつたことは疑いがないようである.膝関節においては,人工の関節を固定するためには長い軸が必要で,そのためには樹脂では脆く,また安定性を良くするためにはhingeが必要であり,したがつて金属対金属の組合せによる軸付き人工関節が次々に開発されていつたのである.
 その後骨セメントによる固定法が,人工膝関節が軸なし関節へと大きく転換する糸口を与えてくれた.同時に盛んに行なわれた高分子ポリエチレンの開発,医用工学の発達によつて,膝の人工関節に正常に似た動きを持たせようとする努力がなされ,金属対樹脂の組合せによる人工関節が広く用いられるようになつた.他方,脛骨板形成術やfemoral mould replacementの成功が,脛骨側と大腿骨側とが別々に分離したhingeのない人工関節の出現に大いに刺激になつたことは確かである.骨セメントの使用によつて最近の人工膝関節はますます小型化しつつあるが,これらの人工関節は関節破壊の程度,変形の状態によつて使い分けが必要であると思われる.

新生児股関節検診におけるいわゆる見逃し例について

著者: 井村慎一 ,   森田聖一

ページ範囲:P.486 - P.492

はじめに
 Click testによる新生児股関節検診は先天股脱の治療に一つの大きな転機を与えた.外国ではvon Rosen,Barlowなど,本邦においては今田,森田,山室,山田,平川,田辺,その他多くの人達により先天股脱のスクリーニングがなされてきた.
 見逃し例については,山室,山田らによればごく稀であると報告し,その優秀性を強調しているが,一方森田(1964,1965)らは初診時臼蓋形成不全を認めた症例のうち生後1〜3ヵ月にその約1/4の症例に脱臼を発見したと報告,田辺(1973)は新生児・乳児検診にて股脱,股亜脱と診断された73例のうちclick陽性およびBarlow test陽性例は13例で,残りの60例はclick signまたはBarlow test陰性の症例であつたとのべ,click testによる先天股脱のスクリーニングに否定的な見解をのべている.

臨床経験

指伸展筋の先天性発育不全症について

著者: 津下健哉 ,   三好勝海 ,   松石頼明 ,   河村圭了

ページ範囲:P.493 - P.497

 先天性のclasped thumbとかarthrogryposis multiplex congenitaに合併して短母指伸筋また,時に長母指伸筋が欠損することはよく知られている.しかし特有な軟部紐織の屈曲拘縮を伴うことなく単に指伸筋群が完全欠損して指の伸展が障害される症例は極めて稀で,著者の調査した範囲では1969年著者の報告した2例と井口(1973)による1例報告以外,欧米の文献にもまとまった記載を見ないようである.
 さてわれわれの今日までの経験症例は第1表に示したごとくで最初の3症例は両手の総指伸筋,示指固有伸筋,それに長母指伸筋が完全欠損したものであり,あと2例は示指固有伸筋の完全欠損と示指のみの総指伸筋の部分欠損(hypoplasie)を認めたものである.

ペルテス病および脱臼性ペルテスにおける大転子高位について

著者: 三浪明男 ,   奥泉雅弘 ,   今井純郎 ,   村松郁夫 ,   平井和樹

ページ範囲:P.498 - P.502

はじめに
 ペルテス病および脱臼性ペルテスにおいて大腿骨頭骨端線の障害により骨頭の扁平化と頸部の短縮さらに温存されている大転子部骨端線の成長により大転子高位をきたした症例は,しばしば認められるところである.今回,著者らは,ペルテス病26例,脱臼性ペルテス24例について,大転子高位とトレンデレンブルグ現象の関係および大転子高位の時間的推移についての検討を加え,いささかの知見を得たので報告し,同時に若干の文献的考察を加えた.

骨原発性平滑筋肉腫

著者: 水島哲也 ,   加藤次男 ,   西岡淳一 ,   田中和彦

ページ範囲:P.503 - P.513

はじめに
 従来から筋原性の腫瘍が骨に原発するものであるか否かについては議論のあるところであるが,Lichtenstein(1972)は彼の著書のBone Tumorsの4版において,骨原発の平滑筋肉腫の存在を認め,信頼しうる報告としてEvans & Sanerkin(1965)の論文をあげている.
 骨原発性平滑筋肉腫は極めて稀なものであつて,世界で数例を数えるのみであり,本邦においてはまだ報告例が認められない.

慢性関節リウマチ(R. A.)の環軸関節亜脱臼に対する治療経験

著者: 浜田彰 ,   松島理郎 ,   中谷進 ,   西村秀樹

ページ範囲:P.514 - P.517

 われわれはatlanto-axial subluxationを有する慢性関節リウマチ患者に対し,骨移植を含むatlanto-axial arthrodesisを施行し,良好な経過を得たので報告する.

四肢軟部に発生せる血管肉腫の3症例

著者: 鈴木弘 ,   松井宣大 ,   大塚嘉則 ,   高田典彦 ,   保高英二 ,   曾原道和

ページ範囲:P.518 - P.522

 最近われわれは四肢軟部組織より発生した血管肉腫の3症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

手指屈筋腱鞘部での開放性小外傷後の屈筋腱滑動障害

著者: 伊藤祥弘 ,   鈴木勝己 ,   高橋定雄 ,   長野昭 ,   岩谷力

ページ範囲:P.523 - P.526


 手の外傷のうち,日常遭遇する腱裂のなかで,no man's landでの屈筋腱裂が多数を占め,その治療等についても幾多の論議がなされているが,一方手指屈筋腱鞘部での屈筋腱裂を起こす程でないごくささいな開放性外傷が安易に処置され,後日になつて屈筋腱滑動障害を来たす場合がある.実際には,かなりの頻度で出現しているのではないかと思えるが未だまとまつた報告はない.私どもは,最近このような四症例(第1表)を経験したので,経過,手術所見,予後等について報告する.

浅指屈筋筋腹異常が関与していたと思われる手根管症候群の症例

著者: 前田敬三 ,   若山日名夫 ,   石川忠也 ,   樋口善憲 ,   山田正人

ページ範囲:P.527 - P.528

 手根管症候群は日常の診療において珍らしくない疾患である.その原因として数多くのものが列挙されているが,稀な原因の1つとして浅指屈筋の筋腹異常によるものの報告が散見される2,8,9,10).私たちも同様の症例を経験したのでいささかの文献的考察を加えて報告したい.

下部腰椎圧迫骨折の5例

著者: 木下和親 ,   斉藤勝 ,   馬場孝雄 ,   梅田嘉明 ,   茂手木三男

ページ範囲:P.529 - P.534

はじめに
 脊椎椎体圧迫骨折は,その発生機転の関係もあつて,胸腰椎移行部に頻発するが,腰椎下部の圧迫骨折は比較的稀である.このたびわれわれは,腰椎下部ことに第5腰椎における圧迫骨折を5例経験したので報告する.

黄色靱帯骨化が原因と思われる対麻痺の3例

著者: 古谷誠 ,   蜂須賀彬夫 ,   荻野幹夫 ,   浅井春雄 ,   加藤之康 ,   内田詔爾 ,   山崎典郎 ,   曾我恭一

ページ範囲:P.535 - P.542

 脊椎付属の諸靱帯には様々な形での骨化が起こり得る.これらの大部分は主に老化変性に関連して生ずるむしろ生理的な変化と考えられ,通常無症状であるが,稀には明らかに病的と見做し得る高度の骨化を来たして各種の障害を惹起することがある.
 我々は最近,黄色靱帯の骨化により脊髄圧迫症状を呈したと思われる症例を経験し,その特徴的な病像と,他の靱帯骨化症との関連とを検討し,いささかの知見を得たので報告する.

先天性腰,仙,尾椎欠損症の1例

著者: 中村昌弘 ,   川村次郎 ,   林宏

ページ範囲:P.543 - P.545

 脊椎欠損症には,下位尾椎の欠損症から第10胸椎以下腰,仙,尾椎全欠損症まで種々の程度の欠損症が報告されているが,これらは稀な奇形と考えられている.外国では1852年Hohlが初めて本症を報告している.わが国では1929年金井,小室による初めての報告以来私達が調べ得た限りでは28例が文献的に見られる.しかし下位仙椎以下全尾椎の欠損症や尾椎のみの欠損症は,ときに内反足やあるいは尿失禁のみを主訴としたりまた全く無症状で偶然の機会に見つかつたりもしている反面胸椎にまでも及ぶ欠損症は死産になる可能性も大きく死産児の中により広範囲の欠損症があると推測される.文献上知り得たところでは生産児では第10胸椎以下腰,仙,尾椎の全欠損症が最も広範囲であつた.私達は最近第1腰椎以下尾椎までの全欠損症の1例を経験したので報告し,若干の文献的考察を加えた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら