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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科10巻7号

1975年07月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

関節鏡診断 3

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.548 - P.551

 膝内障の関節鏡診断は,21号関節鏡およびその使用技術の開発により,確実容易となった.関節鏡診断は直接的観察であるから,所見の解釈は,間接的診断法である造影法に比し,はるかに簡単である.最も大切なことは,如何にして対象を視野内にとらえるかにあるといえる.
 関節鏡は,単に半月板損傷の有無を判定するだけでなく,治療方針をきめる資料となるような詳細な所見をつかみ,さらに半月板損傷と関連深い十字靱帯・関節軟骨面および滑膜の変化を同時に観察することができる.また臨床診断のむずかしいバケツ柄状断裂で転位の大きいもの,造影法で診断不確実な外側半月板後節の水平断裂などを明確に観察することができる.十字靱帯の断裂はstressレ線診で診断されるが,靱帯がどの部分で切れたかは関節鏡によらないとわからない.前十字靱帯の単独不全断裂も,関節鏡以外の方法では診断しがたい.病的滑膜皺襞にもとづく膝内障,軟骨性関節遊離体,小さなosteochondral fractureなどの診断は,関節鏡の独壇場である.

視座

組織血行への関心

著者: 田島達也

ページ範囲:P.553 - P.553

 整形外科は四肢のあらゆる組織を取扱うが血管系のみは従来例外と考えられてきたようである.一方四肢主要血管の損傷や閉塞例でも側副血行が保たれていれば遠位部の壊死は大抵回避できる.たとえば前腕で橈骨・尺骨両動脈が断裂しても前骨間動脈が温存されていれば手は救われることが多い.このような状態で一応満足していたばかりか,生体には充分な安全係数が備わつているので少々の血行障害では実際上の不都合を生じないものだ-という楽観論さえ聞かれていた.しかしこれは今からみると我々が組織血行を確実に改善する手段を持つていなかつたために生れた安易な自慰論にすぎなかつたといえる.むろんこれまでも組織血行に注目した研究はあつたが,その障害を証明したとしてもそれをやむを得ない事態と受止めるのみで切実感に乏しかつた.
 最近microvascular surgeryの発達普及により積極的血行改善法がある程度確立され,一方以前血行に乏しい組織と考えられていた腱が実はsegmentalに密な血行供給を受けておりその良否が機能状態や断裂時の縫合成績を左右することが明らかになるにつれ組織血行に対して新たな,切実な関心が向けられるようになつた.

シンポジウム 慢性関節リウマチの前足部変形に対する治療

外反母趾を伴うRA患者の前足部変形に対する母趾MTP関節固定術

著者: 工藤洋 ,   岩野邦男

ページ範囲:P.554 - P.560

はじめに
 慢性関節リウマチ(以後RAと略す)における基本的な前足部の変形は外反母趾,槌趾,開張足等であり,長期罹患の患者にはごく普通に見られるものである.その変形の程度は様々で軽度あるいは中等度の場合は保存的治療にて十分対処できるが,高度の変形に伴う歩行障害や疼痛に対しては時に手術的治療が必要となる.
 このようなRA患者の前足部の愁訴に対して,Hoffmann1)が1911年に中足骨頭を切除する手術術式を発表しているが,それ以来多くの著者による報告があり,少しずつ手術法に改変が加えられて今日に至つている.しかしそれ等はすべて基本的には,先に述べた前足部の変形を,中足趾節関節(以後MTP関節と略す)を中心とした骨切除によつて矯正しようとするいわゆるresection arthroplastyである点では共通している.

慢性関節リウマチの前足部変形に対する外科的治療について

著者: 山口錬 ,   寺島市郎 ,   松井宣夫 ,   藤塚光慶 ,   渡部恒夫 ,   勝呂徹 ,   中村勉

ページ範囲:P.561 - P.570

はじめに
 慢性関節リウマチにおける前足部の疼痛は,足趾の関節炎によるものばかりでなく,炎症がburned outした後に生じた高度変形が,疼痛のmechanicalな原因となつていることも多く認められる.この前足部の有痛性変形があるものは,殆ど他の荷重関節にも著明な関節痛および関節破壊があり,後足部で身体を支持しようとするために,この非生理的な歩行が他の荷重関節に益々悪影響を及ぼすようになる.また,折角膝関節や股関節の手術を行なつても,前足部の柊痛があるために,術後療法が円滑に運ばないことも頻々経験されるところである.
 さて,1911年にHoffmann8)が"An Operation for Severe Grade of Contracted or Clawed Toes"を発表して以来,前足部の高度変形に対する画期的な手術法と賞賛され,以来この手術法を基本として幾多の手術法が諸家により考案され今日に至つている.一方我国においては,RAの前足部に対する外科的治療の報告は少なく,七川15),鳥巣ら17)2,3の報告を認めるにすぎない.今回,我々はこの問題に関し検討を加える機会を得たので,我々の行なつているMcBride法11),Clayton法2)につき,その適応,成績,問題点などに関し述べてみたい.

慢性関節リウマチ患者の足趾変形に対する手術的療法—Kates,Kessel,Kay法を中心として

著者: 有富寛 ,   山下勇紀夫 ,   山本真

ページ範囲:P.571 - P.580

緒言
 慢性関節リウマチ患老においては前足部の諸関節に手指関節と同一の関節炎症症状を呈し,これら関節が体重負荷を分担することから関節炎症過程とあいまつて足の静力学的バランスが崩れ足趾にも変形を来たすことはよく知られている。Fletcherらは40例の確かな慢性関節リウマチ患者で手と足が障害された症例のうち中足趾節関節(以下MTPと略す)の45%中手指節関節の30%にレ線上異常所見が認められ手より足趾の方がより高頻度に障害されることを報告した.また足趾のみのレ線所見では異常所見を32%(I趾)ないし59%(V趾)のMTPに認め第5趾のMTPではリウマチ病変の初期より変化が認められることを示した.またThouldらは105例のdefiniteおよびclassicalの慢性関節リウマチ患者の足部レ線に96例(91%)の異常所見を認めた.そのうちMTPのレ線所見に異常を認める症例数は第1図に示す通りである.なおこれら足に異常なレ線所見を認める症例のうち16例(15%)は疼痛などの症状を呈していない.これらの症例では慢性関節リウマチ炎症過程の再燃進行の継続により病歴が長くなり特に5年を超える例では足趾変形が非可逆的となりbunion(腱膜瘤)形成,外反母趾,槌趾cock up toes足底および趾背に胼胝cornなどを形成する.

論述

手指関節形成術について—Swanson型Silastic Implant Arthroplastyの検討と反省

著者: 南條文昭 ,   広瀬和彦

ページ範囲:P.581 - P.588

 リウマチ患者を主体に,手指の中手・指関節(MP関節),近位指関節(PIP関節)の著しい破壊・脱臼・変形拘縮などを示すものに対して,Swanson型silastic implantをもちいたいわゆるimplant replacement arthroplastyを試みて,約3年を経過する.未だに症例数も少なく,多くを語れる段階ではないが,本手術の適応・手術手技やimplantにまつわる多くの反省すべき問題点に当面したので,ここにその問題点を挙げて検討を加えてみたい.

橈骨神経深枝麻痺の治療経験

著者: 渡捷一 ,   松石頼明 ,   津下健哉 ,   石川文彦

ページ範囲:P.589 - P.594

 橈骨神経麻痺は末梢神経麻痺のうちでは頻度の高いもので,特に高位型は上腕骨骨折,上腕挫創,あるいは注射等の合併症として日常しばしば遭遇する機会があるが,低位型は比較的少い.橈骨神経低位麻痺(深枝麻痺)の場合もその多くは前腕の挫創等の直達外力により発生したものであるが,時に何らの誘因なく,あるいは軽微な外力を誘因に惹起される場合があり,non-traumatic paralysis,progressive paralysis等として報告されている.しかし,本症の発生機転についての解明が進んだのは近年で,ことにKopell Thompson(1963)らによりentrapment neuropathyの概念が提唱されて以来,本症の理解は容易となつたが,いまだ不明の点も少くない.
 私達は最近までに多くの橈骨神経深枝麻痺を経験したが,これら症例の大部分は直達外力による開放損傷,あるいは挫傷,あるいは骨折,脱臼に付随して惹起されたものであり,いわゆるentrapment neuropathyと診断され,治療したものはわずかに19例に過ぎない.

脊椎管腔の大きさと腰部椎間板ヘルニヤの手術成績との関係

著者: 佐藤光三 ,   今泉君義 ,   船渡恒男 ,   善積厚郎 ,   岡本敏男 ,   佐竹成夫 ,   若松英吉

ページ範囲:P.595 - P.604

 腰部椎間板ヘルニヤに対する診断方法やその治療法は,一応完成されたかに思われる.特に,水溶性脊髄腔造影剤の開発は本症の診断上画期的な役割を果たしつつあるといえよう20).しかし,手術的加療に際し,脊柱の安定性をできるだけ損うことがないように,一般には開窓術が行なわれているが,少数例において,症状の改善が意外にもえられないのを経験することがある.
 Verbiestらをはじめ,多くの人達が,脊椎管腔が狭い個体では小さな椎間板の膨隆でも神経根への影響が大であると報告している1,2,5〜10,13〜15).Davatchi3,4)は坐骨神経痛の症例では腰部脊椎管の前後径が対照群に比して狭いものが多いことを報告している.

臨床経験

化膿性骨髄炎の病態と治療

著者: 川島真人 ,   岩渕亮 ,   赤津隆 ,   大江浩 ,   鳥巣岳彦 ,   佐藤護彦 ,   原晃 ,   楊国雄 ,   野村茂治 ,   平井啓 ,   加茂洋志 ,   北島俊裕

ページ範囲:P.605 - P.614

はじめに
 化膿性骨髄炎の病態と治療は各種抗生物質の発達により著しく変貌を来しているかにみえるが,難治性という本質は一向に変わりなく,整形外科領域における大きな課題の一つである.特に最近は交通事故,労働災害の増加に伴い,従来の血行性骨髄炎よりも,外傷性骨髄炎の問題が日常臨床上大きく浮び上ってきて治療に一層複雑な因子が加わつている.われわれは,昭和34年から48年までの15年間に及ぶ九州労災病院の症例を検討することにより,血行性骨髄炎と外傷性骨髄炎の病態と治療の相違,問題点をとりあげ,病床に苦悩する患者の一日でも早い社会復帰に連る治療法を模索してみようと思う.

Hunter症候群—血漿注入療法の経験を中心に

著者: 中川研二 ,   新名正由 ,   中川智之 ,   花岡英弥 ,   関恒夫 ,   田代征代

ページ範囲:P.615 - P.624

はじめに
 1917年Hunter15)は肝脾腫・骨格変形・難聴・短頸・四肢関節拘縮・心雑音を伴つた侏儒症の兄弟例を報告した.その後Brante2),McKusick17),Dorfman11),Neufeld21)等の臨床的・病理学的・生化学的研究により,現在では本症は酸性ムコ多糖代謝異常症の1つとして,性染色体劣性遺伝を示し,最新のMcKusick18)の分類では第II型に位置づけられている.その病態生理と酵素欠損については,ここ数年の研究の進歩は目ざましいものがあるが,その治療法に関しては,他の骨系統疾患と同様まだ根治的治療法はもちろん有効な療法さえもなかつた.しかし1971年Di Ferrante9)は血漿さらには白血球注入による治療を試み,臨床症状の著明な改善を報告した.
 われわれは数年来,酸性ムコ多糖代謝異常症の各型について生化学的検索を行つているが,今回2歳男児のHunter症候群の1例に新鮮血漿注入療法を行い,臨床症状の改善,尿中酸性ムコ多糖の変化等興味ある所見を得たので,若干の考察を加えて報告する.

Angiolipomaの2例について

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   広川浩一 ,   高橋万里子 ,   坂本幸子

ページ範囲:P.625 - P.628

はじめに
 Angiolipomaという用語は,それ自体,血管腫と脂肪腫の合併を示すが,実際には,異なる特徴を持つ2種類の腫瘍に用いられている.両者共整形外科領域に関係が深いが,それらの間には,臨床像および組織発生上に,著明な差があるので,混同は避けねばならない.われわれはその一つのものの2例を経験したので,その概要と両者の文献上の要約と考察を述べる.

小児における椎間板石灰化症の症例について

著者: 酒匂崇 ,   矢野良英 ,   前原東洋 ,   大迫敏史 ,   渋谷英二

ページ範囲:P.629 - P.633

はじめに
 小児における椎間板石灰化症は,1924年Baron2)の記載を最初とするが,その報告は少ない.最近著者らは斜頸を呈し,頸椎レ線にて椎間板の石灰化を認めた小児の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

学会印象記

第30回米国手の外科学会に出席して

著者: 山内裕雄

ページ範囲:P.634 - P.637

 第30回American Society for Surgery of the Handは,1975年2月27日より3日間San FranciscoのFairmont Hotelで開かれた.学会長は,昨年の日米手の外科合同会議に,米国側団長として来日された,Campbell ClinicのDr. Lee Milfordで,日本からは筆者のほかに,小谷・田島両教授,室田助教授,上羽講師,生田先生も会長招待者として参加した.
 学会前日には,恒例の会員のみによるClinical Day Sessionがあり,本年は,手の奇形の治療,ことに手術の時期についてが主題で,これには,われわれも指定発言者として,おのおの意見を述べる機会を持つたが,手術の時期については,症例によつても異なり,また,各人各様で,統一した見解を見ずに終つた感があつた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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