icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科10巻8号

1975年08月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

関節鏡診断 4

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.640 - P.643

 慢性関節リウマチ(RA)の関節鏡所見は,diagnosticなものではないが,RAによく見られる比較的特徴ある所見がある.RA関節の内景は,個々の症例により,また病期によってまちまちであり,経過の長いものでは種々の変化が混在するものがある.このような多彩な病変を観察し正確な生検を行い,また反復実施することによって経過を追及したり,治療の効果を判定したり,あるいは手術適応の有無を検討するなど,関節鏡の役割は大きい.
 RA関節病変の経過の模式図の一部を示すと第3図〜第8図のごとくで,滑膜は絨毛の増生・発赤・腫脹・混濁,滲出液ちょ留から,フィブリノイド変性,肉芽化,壊死が加わり,関節軟骨壊死は辺縁の虫喰いから,広範囲に及び,最終的には強直にすすむものと,変形脱臼を生じるものとに分れる.

視座

圧迫性脊髄麻痺に対する前方除圧の効果

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.645 - P.645

 脊椎の損傷,炎症,腫瘍などにはしばしば脊髄麻痺が合併するものである.麻痺が脊髄の挫創,軟化あるいは海綿化のような非恢復性変化に因るものではもちろん麻痺の恢復は望むべくもないが,麻痺が圧迫性因子によるものは上手に圧迫を除つてやることによつて,麻痺の恢復治癒が期待できる.
 かつて,わたくしは脊髄損傷,脊椎カリエスに対してさかんに椎弓切除術を試みたことがある.当時われわれが為しえた脊髄の除圧法は主として後方からの椎弓切除であつた.

論述

骨の悪性線維性組織球腫について—自験例2例と文献的考察

著者: 湯本東吉 ,   森芳紘 ,   稲田治 ,   前山巌 ,   古瀬清夫 ,   田仲俊雄 ,   武智秀夫

ページ範囲:P.646 - P.658

緒言
 軟部組織における組織球の増殖を主体とする種々の腫瘍状増殖に対しては,Stout and Lattes20)の報告以来,線維性組織球腫と総括され,一定の特徴ある形態像を示すものとして独立した概念が与えられるようになつてきた.軟部の悪性線維性組織球腫については既に著者の1人湯本が詳しく総説している23)
 1972年にFeldman and Normanが骨の悪性腫瘍の1つを骨内悪性組織球腫intraosseous malignant histiocytomaとして報告するまでは,悪性線維性組織球腫は軟部組織腫瘍に適用される名称として考えられてきた20,24).1974年にはMirra et al.13)が3例の本腫瘍を追加報告している.著者等7)は昭和49年度骨・軟部腫瘍研究会(大阪)において大腿骨に原発した線維黄色腫の再発例を報告したが,その後さらに同様の1症例を経験したので,これら2例の所見をまとめ,文献例を加えて,骨の悪性線維性組織球腫について述べてみたい.

先天股脱に対する関節嚢切開術

著者: 上野良三 ,   船内正恒 ,   原田稔 ,   松本直彦 ,   玉井昭 ,   長鶴義隆

ページ範囲:P.659 - P.666

いとぐち
 先天股脱の治療が新生児期あるいは乳児期に移行したことにより,治療成績の著しい向上がえられているが,観血的整復術を必要とする症例は,なお皆無とはいえない.従来の古典的治療法が行なわれていた時代に比して観血的整復術を必要とする症例は低年齢となり,1歳以下で手術を余儀なくされる場合が増加している.Salzerらは1967年乳児期の観血的整復術として,股関節内側侵入路を用いたLudloff法が適当であることを再確認し,Lange, M.(1968),Karpf, M.ら(1973)により主としてオーストリア,ドイツで普及しMau, H.(1971),Ferguson(1973)によつて北米にも紹介され追試が行なわれ,経験が積まれている.Leveuf, SommervilleさらにScagliettiらによつて推賞されてきた前方あるいは側方径路による観血的整復術は,対象が幼児(一般に2,3歳以降)であり軟部組織の整復障害の除去を目的として行なわれてきた.すなわち内反した関節唇,関節囊と骨頭あるいは腸骨との癒着,骨頭円靱帯の肥厚および延長,臼底脂肪組織の肥大,腸腰筋腱による関節囊の狭窄などを関節造影で予想し,これらの障害因子を除去することを目的としているが,Ludloff法では乳児期における主要な整復障害因子である股関節前面に緊張した関節囊を切開し関節腔の拡大を計ることを目的としており,原則として骨頭円靱帯や関節唇の切除は行なわない(ventrale Kapselspaltung).事実関節嚢の切開のみで骨頭の整復位保持が改善され,関節唇に対する操作は多くの場合不要である.
 われおれは,昭和39年以降,観血的整復術を必要とする症例の年齢が低下するに従い,前方径路による関節唇切除術に代つてLudloff法を採用してきた.本法の術式が容易であることは疑う余地がないが,術後成績に関する撮告が少なく関節唇切除術に対する得失も考慮されなけれぽならない,とりわけ1次的な観血的整復術が先天股脱の治療体系において妥当であるか否かは疑問であり,さらに関節囊切開術は観血的な先天股脱治療の第1歩を占めるにすぎないものであるかどうかという点についても明らかにする必要がある.

検査法

加速度計を応用した歩行周期の検出法

著者: 大田仁史 ,   竹内孝仁 ,   山本晴康 ,   小林守

ページ範囲:P.667 - P.671

はじめに
 歩行は,主に下肢の各関節の統合された動きと,それによつて伝達される力とが,最終的に床との間に生ずる力学的関係の中で推進力を生みだす運動である.従つて分析のアプローチを大別すると,「動き」と「力」の二つの面があり,「動き」はさらに各関節の行う角度運動と,その運動を生みだしている筋活動およびそれらが歩行という連続した運動の中でどのような時間的関係のもとに行われているかということ,つまり歩行における周期的変化とに分けられる.
 日常の臨床場面で歩行が正常か異常かを見分ける方法としては,歩行リズムの異常の有無が重要な情報の1つであることがわかる.異常歩行は多かれ少なかれ正常なリズムを失つており,また幼児の歩行は,健康成人とは明らかに異つた歩行周期を示していることがわかる.従つて歩行を分析するにあたつて,この歩行周期における時間的な問題をとらえることは1つのアプローチとして価値をもつていると考えられる.

装具・器械

新しく開発した大腿骨頭鋼線方向指導器(Hole in one Guide)について

著者: 井上肇

ページ範囲:P.672 - P.676

はじめに
 骨内操作の多い整形外科的手術や手技は直視下に行えないことが多いため名人芸的な勘と経験に頼る度合が強く,科学的とはよびがたいものが多い.逆にこのような懸念をさけて通ろうとすれば,確認を得るため必要以上に筋肉をさき,関節を開かねばならず,手術侵襲,感染の上からも後療法の上からも好ましからざることである.閉鎖性髄内釘固定術はこのことを強く意識したもので,多軸式牽引整復手術台1)を用いての術式はほぼ完成の域に近いものであるが,ここにこれから述べる大腿骨大転子部や大転子下部から大腿骨頭方向に向つて行うpinning,screwing,nailingや大腿骨頭内病巣部のbiopsy,搔爬などは,その意味で未完成の術式の代表例といえよう.この場合長い経路をたどつて間違いなく一度で大転子下部から骨頭中心に達するにはどうしても立体的にコントロールできるガイドが必要となつて来る.筆者は大腿骨骨頭に対する三次元ガイドの開発を3年前より手がけ,瑞穂医科工業の協力を得て試作をくりかえし,このたびおよそ満足しうる製品を完成し「井上式ホール・イン・ワン・ガイド」と名付けた.
 本文の目的はこの新ガイドの原理,機構,使用法および応用範囲について述べることである.本ガイドの使用法は極めて簡単容易であり,しかも応用範囲は工夫によりきわめてひろい.

臨床経験

頸椎骨軟骨症の遠隔手術成績(5年以上経過観察例)の検討

著者: 手束昭胤 ,   山田憲吾 ,   野島元雄 ,   井形高明 ,   北上靖博 ,   米沢元実

ページ範囲:P.677 - P.683

 頸椎骨軟骨症は頸椎々間板,椎体の退行変性を基盤として,臨床的には神経根および脊髄圧迫症状を呈するものである.1925年Adsonによる頸椎々間板ヘルニアについての発表以来,数多くの報告がみられている.特に近年,この方面の診断および治療法の確立とともに整形外科方面では普遍的な疾患となつている.
 私共の教室においても,昭和35年4月より昭和49年9月までの約14年6カ月間の頸椎,頸髄疾患に対する手術症例は108例であつたが,その中,頸椎骨軟骨症は47例で最も多く,経年的にその手術症例も増加してきている(第1表).

脊髄麻痺患者の自己導尿法

著者: 千野直一 ,   浅葉義一

ページ範囲:P.684 - P.688

 脊損患者に対する初期の治療においては,生命の保持と神経障害を最小にくいとめることに努力がはらわれる.その後,一般に約6カ月の間に,患者のリハビリテーション(以下リハビリと略)が行われるが,そのリハビリの成否は,泌尿器の管理いかんによるといつても過言ではない.
 泌尿器管理のリハビリ上の重要性は大別して2つに分けられる.まず第1には,生命をも脅かす慢性尿路感染,結石,水腎症などから腎不全になることを防ぐことであり,第2には,尿失禁,頻尿などの排尿障害による社会復帰への障害を少なくすることである.

von Recklinghausen病(neurofibromatosis)と骨変化—自験11例を中心として

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   山辺登 ,   三上隆三 ,   井上肇 ,   田中秀

ページ範囲:P.689 - P.702

はじめに
 von Recklinghausenの名を冠して呼ばれるneurofibromatosisは,1882年von Recklinghausen42)によつて,末梢神経との関係が報告されて以来,多くの付加的報告によつて,次第にその含む病変の範囲を拡大してきた.歴史的には,Smith34)が1849年に皮膚症状について報告している事は余り知られていない(Holt17)によつて引用されている).

Degenerative spondylolisthesisに対する手術症例の検討

著者: 久保健 ,   村上弓夫 ,   馬場逸志 ,   渡貞雄 ,   志摩隆一

ページ範囲:P.703 - P.710

 分離椎弓を伴わない腰椎辷り症のうちNewmanは辷り椎下位椎間関節のdegenerative changeに関連性が深いと考えられるものに対しdegenerative spondylolisthesisという名称を用いている13,16).われわれはdegenerative spondylolisthesisでいわゆる脊椎管狭窄症様症状を有し保存的療法で効果のみられなかつたものには除圧を目的とした椎弓切除術を行つているが12),その例数は昭和44年5月より同49年7月までの5年間で20例である(第1表).
 初期には一次的に椎弓切除のみ施行し二次的に前方固定術を行うよう計画したが,椎弓切除後多くの症例に症状の著明な改善が得られることから二次的に予定した固定術に関して患者の協力が得られず,そのままで経過観察の止むなきに至つた.しかし経過年数の増加とともに腰椎不安定性によると思われる不定愁訴を来たした14,17)数例を経験したことから2年前より椎弓切除術と同時に一次的に施行し得る後側方固定術を併用している.

Geomedic型改良人工膝関節について—構造ならびに手術手技を中心に

著者: 吉野愼一 ,   小坂弘道 ,   阿部光俊

ページ範囲:P.711 - P.718

はじめに
 慢性関節リウマチ(RA)における関節形成術の目的は,疼痛除去,可動域拡大ならびにADL(Activities of Daily Living)の改善であり,膝関節形成術は股関節形成術同様に,形成術の目的のなかで特に疼痛除去が強く要求される.疼痛除去とADLの改善は表裏一体をなしており,疼痛が除去されれば,ADLの改善も認められる.しかし可動域が拡大してもADLは必ずしも改善するとは,いえない.
 膝関節は,伸展,屈曲,これに捻り,辷り等の複雑な動きが加わるので,0°〜90°以上の可動域を求めるより,疼痛除去に焦点を合わせて人工関節を試作するか,または改良した方がよいと考えた.

陳旧性の環軸関節回旋完全脱臼の1例

著者: 小林慶二 ,   横井正博 ,   内西兼一郎

ページ範囲:P.719 - P.723

 環椎・軸椎によつてなす環軸関節は頭部の回旋運動を行うことを主たる機能とし,この運動域は全頸椎の30%から50%におよぶ.すなわちこの関節嚢は弛緩し,関節面は水平に近く形成されているが故に大なる回旋運動が可能となつている.また同時によく発達した筋層群と強靱な靱帯(翼状靱帯)が過度の回旋運動を制限している.そして外傷に対してこれらの強力なcheck mechanismが作動するため,この関節が単純な回旋脱臼を起こすことは極めて稀となつている.事実,文献上にも明らかなlocking rotary dislocationはGreeley15),Braakman & Penning1)の2例がみられるにすぎず,本邦ではいまだ報告されていない.
 最近,われわれが経験した環軸関節回旋完全脱臼は長期間脱臼位にあつたにもかかわらず,持続牽引によつて整復することができた興味ある症例と考え,その診断と治療を中心として考察を加えて報告する.

抗ブドウ状球菌αヘモリジン反応AStaLの臨床応用

著者: 宮崎通城 ,   酒井俊通 ,   橋本廉平 ,   東條猛

ページ範囲:P.724 - P.729

はじめに
 溶血性連鎖状球菌感染症の診断上抗ストレプトリジン0(ASLO)については広く用いられているが,ブドウ状球菌感染症の診断のための血清学的検査については,ほとんど知られていない.1901年にすでにNeisserとWechsbergは大多数の人血清はブドウ状球菌の溶血素に対する抗体を含むことを認めた.
 ブドウ状球菌により産生される毒素は単一ではなく,1935年GlennyとStevensはブドウ状球菌からαヘモリジンとβヘモリジンの2つの溶血素を同定することに成功した.人間に対する病原性ブドウ状球菌のほとんどすべてはα-ヘモリジンを産生するといわれ,ブドウ状球菌培養ろ液に存在するα-ヘモリジン活性を用いて血清のブドウ状球菌抗体価AStaLを測定することができる.この抗α-ヘモリジン価とブドウ状球菌感染の相関関係は多くの研究者により確かめられているので,抗αヘモリジンを検出することは生体が病原性ブドウ状球菌と接触したか否かを確かめる指標となりえる.1933年にすでにGrossが骨疾患においてAStaLが鑑別診断上特に意義があると述べており,1935年抗ブドウ状球菌α-ヘモリジンに対する国際単位が決められてからはこのAStaL反応の診断上の重要性が高められた.ブドウ状球菌代謝産物としては第1表に示すものが知られているが,このうちα-ヘモリジンが標準化して発売され試薬として用いうる唯一のブドウ状球菌抗原である.私達は今回初めてヘキスト社のベーリングベルク研究所より試薬の提供をうけ臨床例について応用する機会をえたのでその成果について報告する.

乳児大腿の悪性血管外皮腫の1例

著者: 徳永藏 ,   谷村晃 ,   中島輝之 ,   高宮紘士 ,   溝手博義 ,   矢野博道 ,   日吉保彦 ,   原田素彦

ページ範囲:P.730 - P.732

緒言
 軟部悪性腫瘍はしばしば多彩な組織像を示すために,その診断には困難をともなうことが多い.私達は最近出生時すでに右大腿内側皮下に母指頭大の腫瘤を認め,急速に増大するため5カ月後に摘出を受けた悪性血管外皮腫を経験したので報告するとともに,同疾患と鑑別すべき軟部の平滑筋肉腫について病理組織学的な面から述べてみたい.

極めて稀なる顎関節Synovial Chondromatosisの1例

著者: 渡辺克益 ,   小池真 ,   牧野惟男

ページ範囲:P.733 - P.736

 Synovial Chondromatosisは比較的稀な疾患とされているが,顎関節におけるSynovial Chondromatosisの報告は極めて稀である.我々が最近経験した顎関節に発生したSynovial Chondromatosisの1例は発生部位の点において興味あるものと考えたので報告する.

特異な病的骨折を伴った原発性上皮小体機能亢進症の1例

著者: 伊藤晴夫 ,   坂野克彦 ,   石田義人 ,   服部順和

ページ範囲:P.737 - P.741

 上皮小体機能亢進症は古くvon Recklinghausenの汎発性線維性骨炎の記載(1891)にはじまり,1925年Mandelが上皮小体腺腫剔出による治療法を報告してから独立疾患として重要視されるようになつた.しかしながら,本症はわが国においてはまれな疾患とされ,しかも報告例の多くが,尿路結石あるいは消化器症状より偶然発見されている.われわれは両側膝蓋骨上端部の剥離骨折を生じて来院し,大腿骨頸部病的骨折および上腕骨骨嚢腫の合併から精査をすすめて原発性上皮小体機能亢進症と診断し得た1例を経験した.上皮小体腺腫切除と骨接合術により治癒せしめ,3年以上の経過を観察する機会を得たので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら