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臨床経験
抗ブドウ状球菌αヘモリジン反応AStaLの臨床応用
著者: 宮崎通城1 酒井俊通1 橋本廉平1 東條猛2
所属機関: 1下都賀総合病院整形外科 2新潟大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.724 - P.729
文献購入ページに移動溶血性連鎖状球菌感染症の診断上抗ストレプトリジン0(ASLO)については広く用いられているが,ブドウ状球菌感染症の診断のための血清学的検査については,ほとんど知られていない.1901年にすでにNeisserとWechsbergは大多数の人血清はブドウ状球菌の溶血素に対する抗体を含むことを認めた.
ブドウ状球菌により産生される毒素は単一ではなく,1935年GlennyとStevensはブドウ状球菌からαヘモリジンとβヘモリジンの2つの溶血素を同定することに成功した.人間に対する病原性ブドウ状球菌のほとんどすべてはα-ヘモリジンを産生するといわれ,ブドウ状球菌培養ろ液に存在するα-ヘモリジン活性を用いて血清のブドウ状球菌抗体価AStaLを測定することができる.この抗α-ヘモリジン価とブドウ状球菌感染の相関関係は多くの研究者により確かめられているので,抗αヘモリジンを検出することは生体が病原性ブドウ状球菌と接触したか否かを確かめる指標となりえる.1933年にすでにGrossが骨疾患においてAStaLが鑑別診断上特に意義があると述べており,1935年抗ブドウ状球菌α-ヘモリジンに対する国際単位が決められてからはこのAStaL反応の診断上の重要性が高められた.ブドウ状球菌代謝産物としては第1表に示すものが知られているが,このうちα-ヘモリジンが標準化して発売され試薬として用いうる唯一のブドウ状球菌抗原である.私達は今回初めてヘキスト社のベーリングベルク研究所より試薬の提供をうけ臨床例について応用する機会をえたのでその成果について報告する.
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