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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻1号

1976年01月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・3

特殊な開放損傷とその治療

著者: 田島達也

ページ範囲:P.2 - P.5

 皮膚欠損を伴う開放創を適当な植皮を用いて速かに閉鎖する一般的方法を示した前回に引続いて,今回は特殊な型の開放損傷の治療法を示す.

巻頭言

第49回日本整形外科学会を開催するに当つて

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.7 - P.7

 今春,京都において日整会総会が開催されますが,学会の運営方針について会員の皆様に報告し,温かいご協力をいただきたいと思います.会期は4月8日(木)より10日(土)までの3日間であります。京都のこの時期は桜花爛漫と咲きみだれもつとも美しい頃であります.学会の運営方針として次のような3本の柱を立てております.1.臨床整形外科,2.基礎整形外科,3.教育研修,従来の学会においても,この3本の柱によつて計画が立てられていましたが,来年度はこれをかなり強調してみたいと考えております.近年,基礎研究分野が急速に発展してまいりましたので,これに一会場を当てることにいたしました.また教育研修を重視し,これに一会場を割当て,10演題を他の演題と平行して進めてゆきます.これには過去の優秀な映画も参加するはずであります.医師は常に新しい医学の進歩を吸収するために生涯にわたつて努力を続けてゆかねばなりません.この意味において,今後,教育研修を強化してゆくことが是非共必要であると考えます.委員会では,今後,整形外科学の全分野にわたつて系統的に計画を進め,内容を充実するよう努力しております.
 来年度のシンポジウムでは,焦点を股関節外科に絞り,この問題を深く追及することにいたしました.股関節外科は近年顕著な発展を遂げた分野であります.題目は1.変形性股関節症(病理と治療),2.人工股関節置換術の成績であります.

論述

巨細胞の出現する骨腫瘍およびその類似疾患の組織像について—I.骨腫瘍

著者: 大野藤吾

ページ範囲:P.8 - P.17

はじめに
 骨腫瘍およびその類似疾患でみられる巨細胞は,大きく分類すると腫瘍細胞性巨細胞と組織球由来の巨細胞に分けられる.骨では骨吸収の機能を持つ破骨巨細胞がしばしば出現するが,その機能から,組織球に近縁の細胞と考えられる.第1表に,巨細胞を列記するが,Sternberg-Reed巨細胞は,腫瘍細胞性巨細胞の範ちゆうに属するが,他の巨細胞はいずれも性格上,組織球由来の異物巨細胞と同類と考えられる.それぞれの歴史的背景により,特別な名称がつけられたにすぎない.
 一般には,巨細胞は,組織学的診断上の決め手とはなり得ないが,Hodgkin病に関しては,Sternberg-Reed巨細胞の存在が診断上の有力な決め手となつている.

日本における義肢の変遷—現況と将来の見通し

著者: 武智秀夫

ページ範囲:P.18 - P.26

まえがき
 切断者のリハビリテーションは片麻痺,脊髄損傷,脳性麻痺などのそれと異なり,いくつかの特徴をもつている.列挙してみると,
 ①リハビリテーション・ポテンシャルが高い.
 ②社会復帰のゴールを明確に設定できる.
 ③義肢が不可欠である.
になろう.
 一方切断者のリハビリテーションの機能を向上させる因子としては,
 ①医師の啓蒙(正しい切断術,術後管理,義肢に関する知識,技術の普及)
 ②よい義肢の製作(よい義肢部品の供給,製作技術者の育成,製作工房の整備)
 ③義肢装着訓練(PT,OTの育成,訓練施設の整備)
 ④義肢支給に関する法制上の問題(行政)があげられる.

先天性および外傷性橈骨頭単独脱臼の橈骨外旋骨切り術

著者: 山本真 ,   二見俊郎 ,   山下勇紀夫 ,   田場弘之 ,   余重徳

ページ範囲:P.27 - P.35

はじめに
 肘の橈骨頭単独脱臼は一般に稀であるが,まだ幾つかの問題を残している疾患である.外傷性脱臼が看過され陳旧性になつたものは当然屈曲制限や疼痛を生ずる.先天性脱臼は幼時には機能障害も小さく疼痛もないので気づかれぬことが多いが,思春期に到つて小さな外傷などが誘因となり疼痛を生じ,X線にて発見されることが多い.しかし多く治療上の困難さから放置され,橈骨頭や上腕尺骨関節などに2次変化が生じて症状増悪し,治療はますます難しくなることが知られている.できうれば症状を発現した若い時期に関節の相互関係を回復しておきたいものである.
 そこで治療についてみると保存的療法は考え難く,手術療法として代表的な輪状靱帯形成術,橈骨骨頭切除術についてむしろ悲観的な報告が多い.現在この橈骨頭脱臼の手術療法は1つの壁に直面しているといつても過言ではないであろう.

変形性関節症の病理

著者: 藤本憲司 ,   田口靖夫

ページ範囲:P.36 - P.48

まえがき
 骨関節炎すなわち変形性関節症の範疇は非常に広く,また変形性関節症に認められるような病理学的変化が,外傷性,炎症性,代謝性病変の終末像として,あるいはそれらに続発性に発生するほか,なんらの誘因もなく老年性の変化として発生することは周知の事実である.そこで前者は二次性,後者は一次性の関節症とよばれているが,二次性の関節症はそれぞれの原疾患に続発して起こつた結果的病態である.
 変形性関節症は病理学的には関節構成体である関節軟骨に,まず退行性変化が起こり,ついで骨および関節軟骨に増殖性変化が続発し,それらの変化が慢性に進行して関節の形態が変化するものであるということは定説となつている.しかし,このような病理形態学的変化は,炎症症状である疼痛,腫脹という本症の臨床症状と必ずしも平行しない面があり,本症の病態への炎症の関与,とくに本症の発症あるいは病変促進機序と炎症との関係については,今日まだ多くの議論がある.また,変形性関節症が老年性の一般的な変化,すなわち正常老化現象なのか,あるいは老人に起こる老年性の疾患なのか,明確に論じた学説はない.したがつて変形性関節症の病態を炎症という観点から究明する際には,一次性関節症の関節構成体である関節軟骨をはじめとして,関節滑膜および関節液の病理組織学的変化や生化学的あるいは物理学的(機械的)変化を解明することが重要である16,58)

腸脛靱帯付着部剥離骨折について

著者: 三倉勇閲 ,   伊勢亀冨士朗 ,   末安誠 ,   水島斌雄

ページ範囲:P.49 - P.55

 近年,産業,スポーツ,交通の隆盛に伴つて膝関節周辺部骨折にしばしば遭遇するところであるが,靱帯付着部の骨折は骨片が目立ちにくいこともあつて意外に看過されやすい.われわれは最近,腸脛靱帯付着部剥離単独骨折の2例と合併損傷の2例を経験した.腸脛靱帯の断裂および剥離骨折はきわめて稀なものであり,欧米においてもSecond12)(1879),Milch8)(1936),Smillie11)(1971)らの報告が散見されるに過ぎない.ここに自験例をもとに若干の考察を加えて報告する.

検査法

極微量X線による乳児先天股脱自動診断

著者: 土屋恵一 ,   井上駿一 ,   舘野之男 ,   田中仁 ,   飯沼武 ,   篠原寛休 ,   吉野紘正

ページ範囲:P.57 - P.64

はじめに
 われわれは昭和45年7月より長野県望月町にて,46年4月より松戸市,47年10月より千葉市において乳児先天股脱集団検診を行つてきたが,X線による集団の性腺被曝が,重要な問題となつた.それに対処すべく,X線被曝線量低減の問題にとりくみ,新しい松戸検診方式12)を編み出し,X線撮影児を集団の1/4に選択することを可能とする一方,従来のX線撮影方式に改良を加え,性腺防禦板装着の徹底化,新しい超高感度増感紙の開発,高感度フイルムの使用によつて被曝線量を従来の1/100に低減させることが可能となり,さらに新たにX線像瞬時撮影装置の開発に成功し,被曝線量を1/500〜1/800に激減せしめることができたことなど,すでに報告12,14,15)を行つてきた.
 今回われわれはさらに被曝線量の低減およびX線撮影大量集団処理の目的で,極微量X線による乳児先天股脱自動診断を試みた結果,理論的,実験的に可能となつたのでここに大要を報告する.

臨床経験

切断指再接着の経験

著者: 片井憲三 ,   黒瀬真之輔 ,   池本和人 ,   川上俊文 ,   小島哲夫 ,   大谷幸史 ,   大屋國益

ページ範囲:P.65 - P.70

 1960年Jacobson7)が手術用顕微鏡(microscope)を血管吻合に使用して以来microscope下手術は各科領域においていわゆるmicrosurgeryとして急速な進歩を遂げつつある.
 整形外科領域でも切断指(肢)再接着,末梢神経外科,脊髄外科,手の外科,遊離組織移植に応用されている.特に指再接着は1965年小松,玉井9),が世界で初めて成功して以来Obrien12),生田6)らにより次々と成功例が報告されている.

対麻痺に発生した下肢屈曲拘縮の臨床的,筋電図学的考察

著者: 伊藤信之 ,   穐山富太郎 ,   鈴木良平 ,   岡崎威 ,   田代直輔

ページ範囲:P.71 - P.76

緒言
 歩行不能で臥床している患者で,下肢では股関節と膝関節を屈曲し,足関節をやや背屈して伸展不能になつている例を見かけることがある.理学療法の普及に伴つてこのような屈曲性対麻痺の患者は減少しているが,時に遭遇することがある.
 一般にヒトは痙性麻痺に陥ると下肢では屈筋より伸筋が優位であり,上肢では屈筋が優位である.しかし一旦歩行不能になると,痙縮に基づく伸展反射と屈筋反射の解離により,下肢においても屈筋が優位となる症例がみられる.

脊髄麻痺を来たしたPTC欠乏性血友病の1症例

著者: 川村碩彬 ,   村上隆一 ,   月村泰治 ,   生越英二

ページ範囲:P.77 - P.81

 血友病は古くから知られた凝血因子の先天性欠乏による遺伝性出血性疾患である.血液凝固機序の解明に伴つて,今日数種類の血友病の存在が示され,それらの診断は,それほど困難なものではなく,また従来より止血の困難性のため禁忌とされていた外科処置も可能となつてきた.
 血友病ではその凝血障害のため,関節内出血,筋肉内出血さらに偽腫瘍などを生じ,整形外科的処置を必要とすることも少なくないようであるが,中枢神経系における出血は稀とされている.

鼎談

京大整形外科の昔を聞く

著者: 伊藤弘 ,   天児民和 ,   伊藤鉄夫

ページ範囲:P.83 - P.91

 天児 今日は昔の京都の整形外科のお話しを少し承りたいと思つております.先生は明治何年のお生まれでしようか.
 伊藤(弘) 明治18年7月29日生まれです.来月で満90歳.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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