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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻10号

1976年10月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・11

部分欠損(切断)手に対する把持機能再建術

著者: 田島達也

ページ範囲:P.902 - P.905

 手は往々先天異常,多くの場合外傷によって母指を含む何本かの指に部分的欠損を生じる.
 これによって手の最も重要な機能である物を把持する能力が失われるか著しく低下する場合が多い.このような場合,失われた部分を再建するのでなく手全体としての把持機能を再建することを治療目標とする.実際には母指またはその代用物を再建することによってこの目的を達することが多い,手術法は,(1)他の指の母指化(2)骨および管状皮弁移植による母指形成(3)第2中手骨摘出による第1中手骨の母指化(ミット型手の形成)(4)短縮(部分切断)母指の延長(5)母指に対向する指の形成,に大別できる.

視座

関節疾患の治療と膝人工関節

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.907 - P.907

 関節疾患の治療に際し,常に思うことであるが,運動性,荷重性,形態ともに発病前の状態に治すのが理想である.しかし,実際には,しばしば実現し得ないところから,ADLに不便のない所まで治すという便利な言葉が生れてくる.しかし,できないからといつて次善の状態に止まつて満足するのは一種の敗北主義でしかない.これを克服してゆくのが研究者の立場ではあるまいか.
 たとえば,膝関節では正座の可能な状態にまで治癒させるのが1つの理想である.今,これを膝人工関節についてみるに,近頃の傾向は直角あるいは直角を少し超えるところまで屈曲できれば,それでよいと思われているようであるが,これは誠に残念な考えである.

論述

変形性膝関節症発生の周辺—靱帯因子について

著者: 伊勢亀冨士朗 ,   末安誠 ,   冨士川恭輔 ,   水島斌雄 ,   伊藤恵康 ,   松賢次郎 ,   戸松泰介 ,   久保井二郎

ページ範囲:P.908 - P.916

はじめに
 整形外科の日常診療において変形性膝関節症は古くて新しい問題の一つである.本症はX線上の退行変性像に対するbasket nameであり,その本態や成因についての議論は今日においてもなお華やかで百家百態の感がある.
 われわれはすでに変形性膝関節症発生の周辺を半月因子の面から追求し,半月障害によつて変形性膝関節症が発症して行くしくみを報告してきた.

肩鎖関節脱臼の治療—特に烏口肩峰靱帯移行法と成績評価について

著者: 川部直己 ,   佐藤正泰 ,   吉川幸次郎 ,   岩城徳行 ,   安藤啓三

ページ範囲:P.917 - P.924

 現在,肩鎖関節亜脱臼に対しては保存的治療で行われ,完全脱臼に対しては特殊な場合を除き,一般的に手術が行われている場合が多く,その手術法も実に様々である.しかも最近,完全脱臼でさえ手術的か非手術的かが問題にされてきている.われわれはこのたび過去7年間に本院整形外科にて観血的に行れた22例について,平均3年の遠隔成績を得たので,われわれの施行している方法を中心に述べるとともに,この部の解剖学的,機能的知見を加えて検討し,成績評価に対しては点数による判定基準を考案したので大方の参考に資したい.

Condylocephalic nailing(Ender pin)による大腿骨頸部外側骨折の治療法

著者: 矢野悟 ,   有田親史 ,   鈴木国夫 ,   奥田智 ,   小林郁雄 ,   柏木大治

ページ範囲:P.925 - P.932

はじめに
 大腿骨頸部外側骨折は比較的骨癒合が良好で,保存的治療も可能である.しかし老人の場合,長期臥床による関節拘縮,老人性痴呆,全身衰弱のため予後はきわめて悪化しやすい.これらの対策として,多くの先人により種々の内固定法が開発され,早期関節運動が可能になつた.しかしながら全荷重までには長期間を要し,社会復帰が遅れるのが実状である。従来の内固定法は骨折部を広範に展開するため多量の出血を伴い,老人には大きな侵襲となり,術中,術後の管理面で大きな欠点となつている.私達は以上の点に直面しEnderにより考案されたcondylocephalic nailingを大腿骨頸部外側骨折に適用した.その結果,少ない侵襲で強い固定性が得られ,しかも早期に荷重が開始でき,上述の問題は改善された.今回その術式および症例を報告する.

手術手技

長管骨の病的骨折に対する金属メッシュ補強骨セメントによる手術法

著者: 飯田勝 ,   川口智義 ,   古屋光太郎 ,  

ページ範囲:P.933 - P.939

緒言
 癌の骨転移による,長管骨の病的骨折患者のうち1年以上の予命が期待できるものが30%以上あるとの報告がある9).したがつて,患者の全身状態が良好なら,苦痛を和らげ,看護の便宜を増し,活動能力を回復させるため,手術的に大腿骨中枢部では,人工骨頭やnail-plate,大腿骨骨幹部では,髄内釘やplateによる内固定が行われてきた8,12).しかし,この手術を行つた患者のうち約1/5だけが完全体重負荷可能であつたとの報告10)にもあるように,広範囲の骨皮質破壊があるため,通常の内固定具のみでは確実な病的骨折部の固定が得られず,特に体重負荷を要する下肢長管骨では,骨折部が癒合するまで,歩行できぬので,その成功率も低かつた.この欠点を改善するため病巣部を健常部も含めて広範に切除し,骨セメントでその欠損部を補充し,内固定具固定を行い,より確実な骨折部の固定を得ようとする試みは,Scheuba13)以来Müller11),Franklin2),Harrington3),Enis1)らにより報告され,わが国でも松崎10)が最近この手術法を詳しく紹介している.この再建法も,日常生活の活動に対してはどれ程一時的にしろ耐え得るかが疑問である.

境界領域

自家および同種関節部分軟骨移植に関する研究—酵素組織化学的および移植免疫学的検討を中心に

著者: 田中晴人 ,   野島元雄 ,   横山輝昭 ,   奥田拓道 ,   井上正史 ,   村岡俊春

ページ範囲:P.940 - P.951

 最近,関節形成外科領域において,かなり関節移植術がとりあげられる傾向になつてきた.こうした動向は古くには,Ollier(1807)は実験的に-2℃で冷凍した軟骨を用いて同種関節移植を行つた.次いで,Tüffier(1911)は,臨床的に膝関節に同種移植術を行つて,約10年間,その機能を保持し得たと報告し,その後,1934年にはLexer,Payerは移植関節軟骨組織の形態の推移についての報告がある一方,また,これをmetabolicな面からの検討をしたものに,Laskin(1953)がおり彼はこの研究を新鮮および保存骨移植を用いて報告した.
 さらに,1971年第58回ドイツ整形災害外科学会(D. G. O. T.)では関節移植(Die Verpflanzung von Gelenkknorpel)を主題としてとり挙げ,当時,臨床的,実験的研究が報告された.さらに1975年第62-D. G. O. T.ではBonn大学のThomas教授が一般演題のなかでGelenkteil und Volltransplantation zur Rekonstruktion von Knie und Hüfterkungenと題して発表し,自験例約10例の移植成功患者を示しながら講演していた.しかし,関節移植を普及化させるためには数多くの困難な問題点が予想され,今後,同種,異種を問わず関節移植実用化のためには,さらに詳細な基礎的および臨床的研究が重要と考えられる.

臨床経験

腰椎機能的ミエログラフィーについて

著者: 松葉健 ,   吉田宗彦 ,   原貞夫

ページ範囲:P.952 - P.957

 腰椎椎間板ヘルニアに対するミエログラフィーは造影剤の幾多の進歩をみて,欠かせざる検査法として現在広く普及している.しかし,従来行なわれている方法は静的な像よりその高位,大きさなどを診断するのみでヘルニアが単なる突出であるか,嵌頓しているか,あるいは還納性があるかどうかについて他覚的に証明することが困難であった.最近われわれは水溶性造影剤を用い腰椎の前・後屈運動時のミエログラフィー(機能的ミエログラフィー)を行なってみたところ興味ある知見をえたので報告する.

三たびの手術施行後も進行せる頸部脊椎症と思われる症例

著者: 大平民生 ,   平林冽 ,   細谷俊彦

ページ範囲:P.958 - P.964

はじめに
 頸部脊椎症は椎間板の変性に基づく,頸椎の静,動的機能の破綻によりひきおこされる疾患で,一般に慢性の経過をとり,局所症状,根症状,脊髄症状等多彩な病像を呈する.しかし典型的な経過,病像を呈する症例では,X線所見,椎間板造影,脊髄造影,EMG等の諸検査の結果を総合すれば,本症は比較的容易に診断できる.
 また治療的にはair-drillの導入により,その手術成績は近時一段と進歩し,放置もしくは保存的治療に終始すれば当然さらに悪化したであろう患者の予後を良好なものとしている.しかしながら術後の急性増悪の症例を別として,適切と思われる手術を行なつたにもかかわらず術後長期にわたり徐々に増悪する症例を稀れには経験する.

両側上腕および大腿に対称性に発生した骨嚢腫の2症例

著者: 堀部和好 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.965 - P.972

 長管状骨の骨嚢腫はほとんど孤立性に発生し,多発することは稀である.われわれは昭和43年東日本整形外科学会で発表した両大腿骨ならびに両上腕骨に対称性に発生した巨大骨嚢腫の2症例につき,その後約6年半の経過観察をし,種々の興味ある所見を得たので報告する.

Mutilating changesをきたした慢性関節リウマチの2例

著者: 高槻先歩

ページ範囲:P.973 - P.979

緒言
 Arthritis mutilansは,慢性多発性関節炎の経過中に,きわめて稀に発生する破壊性関節疾患である.本症はその特異な変形のため比較的知られた疾患であるが,実際にわれわれの目に触れることは稀である.
 私は最近,典型的な本症と思われる2例を経験したので報告する.

骨壊死について—大腿骨metaphysisに見られた骨壊死の1例を中心として

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰

ページ範囲:P.980 - P.985

はじめに
 血行不全が突然またはゆつくりおこり,組織の一部が壊死巣に変化することは内臓(心,腎,脾,肺等)にはしばしば見られる.同病変で整形外科に関係のあるものとしては,脊髄の前脊髄動脈症候群や種々の骨壊死症が知られている.
 骨に関するものでは,そのすべてが血行不全のみによつているかどうかは問題があるが少なくとも発症機序の極めて重大な役割を果していると思われるものにPerthes病を代表とする一連の骨端症,Gaucherの骨梗塞,膝等にみられるosteochondritis dissecans,成人の無腐性大腿骨頭壊死6),SLE21)および他のcollagen diseaseに関連する骨壊死,ある種の血液疾患(sickle cell anemia12,19,22,23)等)や副腎皮質ホルモンの過剰投与による大腿骨頭および他部の骨壊死,慢性膵炎や膵癌10,14,15)による骨髄中の脂肪壊死を介しての骨梗塞,decompression sicknessによる骨梗塞等2,7,18)が知られている.

骨髄炎を多発した小児慢性肉芽腫症(Chronic granulomatous disease)の長期観察例

著者: 東條猛 ,   村沢章 ,   大島義彦 ,   渡辺一郎

ページ範囲:P.986 - P.991

 小児慢性肉芽腫症(以下CGDと略す)は1957年Brendesら1)により報告されて以来90例を越え,本邦では1962年小林ら2)の報告以来9例の報告がある5,12,15,16)
 最近われわれはintracellular bacteriocidal capacityの測定およびNBT(nitro blue tetrazolium)還元能テストの結果よりCGDと診断し精力的な治療にもかかわらず3歳11ヵ月で死亡した男児例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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