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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻2号

1976年02月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・4

手の外科におけるmicrosurgeryの応用

著者: 田島達也 ,   吉津孝衛 ,   勝見政寛

ページ範囲:P.94 - P.97

 手の外科においては(1)切断された手,指の再接着(replantation),(2)主要動脈の断裂,動脈瘤などに対する自家静脈移植による再建,(3)趾移植による失われた指,特に母指の再建,(4)断裂神経に対する"funicular or interfascicular suture"(5)遊離皮弁(free skin flap)移植,さらに近い将来の可能性として(6)遊離筋移植,(7)趾関節の指関節への移植などmicrosurgeryの応用範囲は広い.

視座

残された命と整形外科

著者: 山田憲吾

ページ範囲:P.99 - P.99

 あれからもいろいろなことがあつたが,大局的にみて「平和らしい」戦後30年ではある.当歳生れの若手医師も孔子流にいえば「三十而立」とか,それぞれに責任ある立場が求められるようになつたし,Brezhnevがソビエトの戦勝30年記念式挨拶で強調したように「父祖の不滅の偉業を名誉あるバトンとして受け継ぐべき若者」が地球の各地で成長しつつある.ともかく,この30年間における医学の進歩は目覚しく,我々が先輩から引き継いた整形外科分野でも画期的とすらいえるものが多々ある.ポリオの消滅,カリエスや骨髄炎の激減など,これに加えて25年にも及ぶ平均寿命の延長があるが,これは正に世紀的達成といつてもよかろう.
 ところで,これからの医師がその実践と理念を通して今日の医学に何を加えようとするか,ここに将来の課題がかけられている.いうまでもなく,人の生命は,その再現が不能であり,それ自身地球にも匹敵する重さを持つというが,宇宙の永きに比すればほんの束の間に過ぎない.その故にこそ貴く,畏敬の念が持たれることも当然であろう.ともかく,有限な人の命は長ければ長いだけに,短かければ短いだけに貴重である.

論述

側彎症を中心としたselective spinal angiographyの意義

著者: 鈴木弘 ,   井上駿一 ,   高良宏明 ,   大木勲

ページ範囲:P.100 - P.113

はじめに
 近年脊椎・脊髄外科の進歩にともない高度脊柱変形の外科的矯正法に画期的進歩が得られるにいたつたが,合併せる脊髄異常の術前診断あるいは術後合併症としての脊髄損傷の予防が大きな問題となつてきている.
 1970年の米国におけるThe Scoliosis Reserch Socictyのannual meetingにおいて,過去2年間に1年以上継続したparaplegiaは10000手術例中77例と報告され,その対策についての検討が行われた1)28)

股関節内圧

著者: 田中清介 ,   大西紀夫 ,   富永芳徳 ,   上尾豊二 ,   伊藤鉄夫

ページ範囲:P.114 - P.120

 関節腔内には圧力が存在し,これが関節運動により変動することは本邦でも島田(1934)11),浦山(1956)18)らをはじめとして古くから研究されており,その後Caughey(1963)1),Eyring(1964)2),Soto-Hall(1964)13),Reeves(1966),伊藤(1967)3),Jayson(1970)4)らによつても報告されている.しかし,これらの報告は主として膝関節についてなされたものであるが,その中でも,股関節についてなされたSoto-Hallの研究は関節内圧の上昇によつてretinacular vesselが閉鎖され,大腿骨頭壊死を来たすことを示唆した14).また,Tachdjianは実験的に関節内圧の上昇によつて大腿骨骨頭壊死を惹起させてSato-Hallの推定の可能性を証明し,関節内圧に1つの意義を見出した15).これらEyringやSoto-Hallの研究は液圧マノメータを使用したものであり,Tachdjianのそれは肢位や関節運動について行なつたものではない.今回,我々は圧力トランスジューサを用いて関節運動,荷重による股関節内圧の変動を測定した.

巨細胞の出現する骨腫瘍およびその類似疾患の組織像について—II.骨腫瘍類似疾患

著者: 大野藤吾

ページ範囲:P.121 - P.128

I.単発性骨嚢腫(第1図)
 一般に単房性の腔より成り,透明または淡黄色の液体を含む.稀れに隔壁が存在し,多房性となることがある.腔は,結合織の層で裏打ちされ,厚い部分にはしばしば多数の異物巨細胞様の多核巨細胞が出現し,hemosiderin沈着を認める.また,結合織内に硝子様物質の塊がみられ,ところにより類骨に似る.

装具・器械

装具の軽量化に関する工夫

著者: 大井淑雄 ,   塚本創一郎 ,   大木勲 ,   御巫清允 ,   竹本舜一 ,   竹内捨次

ページ範囲:P.129 - P.135

 装具の原理や形態についてはかなり以前から根本的な考えはほとんど変つていない.
 Lorenz Heisterの"iron cross"(1683〜1758)(第1図)あるいは紀元900年頃のコロンビアのインデアンによる白樺の体幹装具なと現在の形多そのままである(第2図).しかしながら部分的な創意工夫や使用材質の改良は続けられており,耐久性があり,軽量で構造も簡単で,しかも安価なものが理想であるといえよう.我々は今回いろいろな装具の部品の中で金属性支柱(up-right)を合成樹脂に置換する可能性を検討したのでその結果を報告する.

シンポジウム Silicone rod

Rodによる滑膜類似管腔形成—2次的腱移植法の検討

著者: 吉津孝衛

ページ範囲:P.136 - P.146

I.本法の歴史的経過
 手の外科領域においてもつとも困難で重要な問題の一つである腱修復後の癒着防止策に関し,過去1世紀にわたりさまざまな考え方の許に,実験的,臨床的に数々の試みや検討がなされてきた.
 近年Linsay1),鴇田2)らの実験的研究から,修復された腱は理想的な条件下ではparatenonを要せず,腱表面のepitenon由来の新生結合織で癒合が完成することが明らかになつたけれども,実際症例においては腱損傷部への血行障害,周囲組織損傷の合併などにより,そのような理想的な条件下で腱癒合が進行することは少ない.従つて"no man's land"内における腱修復や,腱移植の成績も依然として術後の癒着障害のため決して満足すべきものではない.特に高度挫滅例や周囲組織の瘢痕化の強い例においてはなおさらである.

Silicone rod臨床応用の問題点とその基礎的研究

著者: 矢部裕 ,   木内準之助 ,   小池昭

ページ範囲:P.147 - P.155

はじめに
 挫滅等による高度の軟部組織損傷を伴う腱損傷の再建は極めて困難とされている,それはたとえかかる状況下で腱修復術を行つても,腱と周囲の瘢痕組織間に癒着が生じ,腱の滑走が全く阻害されることによる.
 かかる不利な条件下において,癒着を防止し,滑走をもつ腱修復を可能にする試みは,かつて癒着防止膜を始めとし,幾多の工夫,研究がなされて来た.しかしながらいずれも決定的な解決をみるに至らず,近年Bassett1)およびCarroll1),そしてHunter9,10,11)等により,先ず腱の走行に一致してSilicone rodを挿入してあらかじめ癒着防止壁ともいうべきpseudosheathを作製しておき,2次的にこの中へ腱を移植する方法が開発され,秀れた成績をあげるに至つている.

手指屈筋腱損傷修復におけるsilicone rodの応用

著者: 三浦隆行 ,   中村蓼吾

ページ範囲:P.156 - P.165

 重度屈筋腱損傷の手指機能を遊離腱移植によつて回復する手術は必ずしも期待した効果が得られるとは限らない.この原因としては移植腱と周囲組織との癒着が挙げられ,この癒着は移植腱に対する血行再開のためには必須のものであると考えられている.このため人工腱を用いて機能再建を行なわんとする実験的,臨床的試みが数多く行なわれて来た.Dacron繊維をsilicone樹脂で封入したいわゆるHunter tendonもまたこの目的のため開発されたものである.しかし現在もつとも使用に適していると考えられるHunter tendonにおいてもなお腱と人工腱との縫合部に問題点を残しており,Hunter自身最近では中枢部の縫合は行なつていない.
 一方腱移植後の癒着を最小限に止め,可動性のある軟かい組織による血行を期待することは可能であり,この努力も多くの研究者によつて行なわれて来た.この目的のための一つの手段はsteroid剤などのcollagen生成に関与すると考えられる薬剤の使用であり,なお今後の開発,研究発展が期待される.

手指伸筋腱損傷修復におけるsilicone rodの応用

著者: 内西兼一郎 ,   鴇田征夫

ページ範囲:P.166 - P.171

 現在,silicone rodは,人工の代用腱としてではなく,space occupatorとして人工腱鞘pseudosheathを作るために利用されている.そしてno man's landの重度屈筋腱損傷の再建にsilicone rodを用いpseudosheathを作り,この中に二次的に腱の遊離移植を行う方法は今や一般化されている.

臨床経験

腰部脊椎管狭窄症とその手術成績

著者: 佐藤光三 ,   千葉武 ,   小野木正夫 ,   若松英吉

ページ範囲:P.172 - P.179

 腰部脊椎管狭窄症(以下本症と略す)は1954年Verbiest12)が生来比較的狭い骨性脊椎管を基本として,これにspondylosisが加わつて発生した馬尾神経や神経根の圧迫症状として発表した,1968年Jones & Thomson7)は椎管の狭小の程度の判定方法や本症の手術症例13例と手術成績の判定基準を呈示した.また,Schatzker & Pennal11)は本症の原因となる6種の病態を分類した.これらの発表以来,わが国でも本症が注目されはじめたようである.若松ら25)が,13例を,また山田26)も4例を報告したのが始まりである.その後第46回日本整形外科学会総会で,栗原ら21),円尾ら22,23),蓮江ら16,17),平光ら18,19)の報告があり,わが国でも本症の概念が一般化されてきた.
 われわれも,1970年若松らが報告して以来,まだそれ程多くの症例を経験したわけではなく,また手術後日も浅く,その経過もまだ流動的とは思われるが,その結果を一応まとめ,われわれなりの今後の治療指針にしたいと考え検討してみた.

老人の頸椎・頸髄外傷について

著者: 木村功 ,   嘉本崇也 ,   那須吉郎 ,   塩谷彰秀 ,   赤松凱彦 ,   新宮彦助

ページ範囲:P.180 - P.187

 本邦の平均寿命の延長にともなう高齢者の災害および交通事故発生の増加と,さらに比較的軽微な外力によつて外傷性変化の起こりやすい点と相まつて,私たちも外傷をうけた老齢者に対する診療機会が多くなつている.
 そこで,当院過去11年間の60歳以上21例の頸椎・頸髄外傷例の特殊性を検討してみたい.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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