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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻3号

1976年03月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・5

手の腱損傷,特に指屈筋腱断裂の治療

著者: 田島達也

ページ範囲:P.192 - P.195

 手の領域における腱断裂は,周囲組織との強い癒着や縫合不全を来たすことなく癒合するよう,非損傷的かつ局所の血行障害を来たさないよう縫合(修復)するのが原則である.ただし指屈筋腱鞘におおわれた基節骨領域("no man's land")では遊離腱移植術など特殊な治療法が必要な場合が多く,また指背腱膜部損傷は副子装着のみで手術的修復を要しない場合が多い.

視座

揺れ動く心の悩み

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.197 - P.197

 最近の新聞にアメリカで,長期間いわゆる植物人間として蘇生器によつて生かされている1女性の親が,スイッチを切つて自然死をさせてほしいと訴えた事件に対して,裁判所がそれを許さない判決を下したというニュースが報ぜられた.人間の生命の尊厳を意識する限り,この判決は正しかつたと思う.スイッチを切る単純な行動も,殺人に連なる以上は,誰しも簡単にできることではあるまい.
 ところが,通常の状態ではそのスイッチを切れない人間達が,地球上のいたるところで,お互に殺傷をくりかえしてやむことがない.いつもどこかで戦争が行われ,どこかで内ゲバがおこり,どこかで刃傷沙汰がくりかえされている.そのときには,巻添えとなる犠牲者達を含めて,人間の生命の尊厳はまつたく無視されている.いや,生命というよりも,人間そのものが無視されているといえよう.

論述

上肢痙性麻痺に対する手術療法

著者: 土井照夫 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.198 - P.205

はじめに
 痙性麻痺の治療は,近年,リハビリテーション治療システムの発展によつて全般的な向上をみたが,手術的に機能改善をはかる必要性もリハビリテーションの一環として認識されてきている.ここでは痙性麻痺の中でも,最近とくに問題になつている成人片麻痺の症例を中心に,その上肢の手術的治療の問題について述べる.

下肢痙性麻痺に対する手術療法

著者: 三島博信

ページ範囲:P.206 - P.215

まえがき
 近年になつて中枢神経障害による痙性麻痺肢に対する観血的治療が再び活発に行なわれるようになつていますが,その背景にはリハビリテーション医学の普及とその技術的向上とがあると思います.また,日本人の生活様式の多様さと複雑さとが患者のニードを高めていることも否定はできません.しかし,これらの整形外科的手術の効果には自から限界があります.リハビリテーション治療におけるこれらの手術の果たす役割とその評価については慎重でなければならないと考えております.実際に,手術のみでよい結果を期待することは困難で,理学療法や作業療法との併用が重要であり,必須のものだといえましよう.
 ここでは,おもに,脳血管障害や脳外傷による片麻痺の下肢に対する手術療法について,これまでの経験とその追跡結果について報告したいと思います.

膝関節造影法について

著者: 冨士川恭輔 ,   伊勢亀富士朗

ページ範囲:P.216 - P.230

はじめに
 いわゆる膝内障の診断は,臨床症状からのみ確定することは必ずしも容易ではない.また,疑いはあつても,確定診断に至らない症例が少くない.確定診断のための補助診断法としての関節造影法は侵襲も軽微で外来で簡単な手技で,誰にでも行いうる利点がある.
 1900年代初期に,RobinsonとWerendorffによつて膝関節に空気を注入する膝関節造影法がはじめて報告された.その後1930年代まで大きな進歩はみられなかつたが,1930年代初期に,陽性造影剤が導入され,さらにほぼ同時期に空気と造影剤による二重造影法も行われるようになつた.造影剤の変遷も様々で,1930年代初期には,iodoxytypeが,その後iodopyracetate typeが長い間用いられ,短期間ではあるがacetrizoateが用いられたこともある.その後diatrizoateが用いられるようになり現在に至つている.

Plica synovialis patellarisによる膝内障—いわゆるヒダ障害について

著者: 黒沢尚 ,   小出清一 ,   矢尾板孝子 ,   中嶋寛之

ページ範囲:P.231 - P.237

緒言
 膝関節痛を訴える患者はきわめて多いが,そのうちで変形性膝関節症,半月障害等既知のカテゴリーにははいらず,しかも頑固な疼痛を訴え続けるものが少なくない.そのようなもののなかには,いわゆるヒダ障害による膝内障によるものがあることに注意を向ける必要があろう.1919年前田の"chorda"の報告以来,これら特殊滑膜組織についての解剖学的,関節鏡的あるいは臨床的報告が散見される.それらの報告例は特殊な"chorda"を除いてはすべて内側特殊ヒダについてである.
 一方われわれはここ数年間に,保存的療法に抵抗し,手術によつて治癒した外側に存在する特殊滑膜ヒダによる膝内障5例を経験したので1,2),内側例2例に合わせてここに報告するとともに,その臨床的意義を強調し,さらに若干の解剖学的,文献学的考察を加えた.

老人性骨粗鬆症の治療;Bone Mineral Analyzerによる治療効果の判定—6カ月間の治療成績の比較

著者: 滝沢博 ,   五十嵐三都男 ,   林泰史 ,   軽部俊二 ,   興津勝彦 ,   進藤裕幸 ,   益田峯男

ページ範囲:P.238 - P.244

はじめに
 骨粗鬆症の治療はAlbright1)の性ホルモン不均衡説,Nordin2)の負カルシウムバランス説等を基盤とし,種々試みられているが,その診断基準のむずかしさも加わり,治療効果の判定も困難で,老人性骨粗鬆症に対する治療効果を客観的に述べた報告は意外に少ない。1963年,John R, cameron3)はI125を線源としたBone Mineral Analyzerに関する理論を発表し,生体内における左前腕骨の骨塩定量を行い,測定誤差が3%以下であることを実証した.そこで,われわれは,Norland, Bone Mineral Analyzer(Clinical Model 178)を用い,老人性骨粗鬆症患者の左前腕骨の骨塩量を経時的に測定し,その測定値に統計学的処理を加え,われわれの試みた種々の治療法の効果を,より客観的に示すことを目的とした.

討論

骨・軟部腫瘍症例検討

著者: 青木望 ,   赤星義彦 ,   石川栄世 ,   石井清一 ,   伊藤慈秀 ,   稲田治 ,   牛込新一郎 ,   牛島宥 ,   薄井正道 ,   姥山勇三 ,   遠城寺宗知 ,   緒方孝俊 ,   小川勝士 ,   岡田聡 ,   金子仁 ,   後藤守 ,   佐々木鉄人 ,   佐々木正道 ,   佐野量造 ,   篠原典夫 ,   柴田大法 ,   角南義文 ,   田家哲彦 ,   田口孝爾 ,   田中昇 ,   田仲俊雄 ,   平宏章 ,   高田典彦 ,   武智秀夫 ,   高瀬武平 ,   高浜素秀 ,   立石昭夫 ,   堤啓 ,   恒吉正澄 ,   富田勝郎 ,   鳥山貞宜 ,   中西功夫 ,   那須亨二 ,   西田一己 ,   原寛道 ,   檜沢一夫 ,   福田宏明 ,   福間久俊 ,   藤田昌宏 ,   舟木清忠 ,   古屋光太郎 ,   別府保男 ,   保高英二 ,   前山巌 ,   町並陸生 ,   松﨑理 ,   松原藤継 ,   真鍋昌平 ,   三秋宏 ,   三上一成 ,   宮川明 ,   水島睦枝 ,   八木知徳 ,   山内四朗 ,   山口昌夫 ,   山脇慎也 ,   湯本東吉

ページ範囲:P.245 - P.276

症例1
 Osteoblastomaかosteosarcomaか確定困難な頸椎腫瘍の1例
 患者:37歳,男子.

臨床経験

先天性進行性化骨性筋炎に対するパロチンの効果の検討

著者: 田那村宏 ,   山本龍二 ,   片山国昭 ,   片山雅宏 ,   鈴木純一

ページ範囲:P.277 - P.282

要約
 1)2歳より14歳に至る12年間パロチンを投与し続けた先天性進行性化骨性筋炎の1例を経験した.14歳の現在一部の障害を除いて学校生活,日生活は可能である.
 2)パロチン投与下にあつては化骨の進行は徐々であるが,投与の停止で化骨形成が進行した.しかし再度の投与によつて,愁訴の消失をみた.これらのことよりパロチンはある程度は化骨形成を抑制する力があると推定した.
 3)本疾患に対する局所の外科的侵襲は再発や,さらに病状を悪化するとされているが,パロチン投与下においては,化骨剔出部の再化骨や増悪は認められなかつた.
 4)本疾患に対する適切な治療法がない現在,治療にパロチンを試みるのも一方法ではないかと考える.

幼児橈骨小頭陳旧性脱臼に対する輪状靱帯形成術の一方法

著者: 平井和樹 ,   奥泉雅弘 ,   今井純郎 ,   樋口政法 ,   三浪明男

ページ範囲:P.283 - P.285

 我々は,小児の尺骨近位端骨折に合併した陳旧性橈骨小頭側方脱臼に対し,独自の輪状靱帯形成術を行つたので,その方法を若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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