臨床整形外科11巻3号

1976年03月発行

論述

Plica synovialis patellarisによる膝内障—いわゆるヒダ障害について

著者： 黒沢尚¹ 小出清一² 矢尾板孝子² 中嶋寛之³

所属機関： ¹東京大学医学部整形外科学教室 ²東京女子医科大学整形外科学教室 ³関東労災病院整形外科

ページ範囲：P.231 - P.237

緒言
　膝関節痛を訴える患者はきわめて多いが，そのうちで変形性膝関節症，半月障害等既知のカテゴリーにははいらず，しかも頑固な疼痛を訴え続けるものが少なくない．そのようなもののなかには，いわゆるヒダ障害による膝内障によるものがあることに注意を向ける必要があろう．1919年前田の"chorda"の報告以来，これら特殊滑膜組織についての解剖学的，関節鏡的あるいは臨床的報告が散見される．それらの報告例は特殊な"chorda"を除いてはすべて内側特殊ヒダについてである．
　一方われわれはここ数年間に，保存的療法に抵抗し，手術によつて治癒した外側に存在する特殊滑膜ヒダによる膝内障5例を経験したので^1,2），内側例2例に合わせてここに報告するとともに，その臨床的意義を強調し，さらに若干の解剖学的，文献学的考察を加えた．