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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻4号

1976年04月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・6

手の先天異常(その1)

著者: 田島達也

ページ範囲:P.288 - P.291

 手指には多種類のまた非常に複雑で正確に命名することも困難な奇形がある.手に限局するものの他,前腕や上肢全体に及ぶもの,さらに全身的奇形の部分現象として現れ,特定の「症候群」と呼ばれているものもある.したがって分類法も複雑でいろいろあるが,ここではアメリカおよび国際手の外科学会でほぼ認められているものを第1表に示す.遺伝が認められるものは高々全体の20%以内で,それらのうち単発性のものは常染色体優性遺伝型式をとるものが圧倒的に多く,全身的(系統的)奇形では劣性遺伝または染色体異常を証明できる場合もある.遺伝相談は両親にとって関心の高い問題である.手は顔面と同じく常に露出されている器官なのでその奇形に対しては機能的ばかりでなく整容的再建の要望も強い.

視座

医学,いま瞑想の刻

著者: 飯野三郎

ページ範囲:P.293 - P.293

 医学medicineがしずかなる瞑想meditationを必要とすること,今ほど切実なる刻はないといえるのではなかろうか.今日の医学をもつとも安直な1つの譬喩で表現するならば,いま地球上の空間をびつしり取巻き,さざめき,ブラウン運動にも似て狂い廻るジェツト航空網のごとくであるとでもいいたくなる.一見,輝かしく陽光を裂いて飛ぶ銀翼は,実はひ弱く揺れて危く,ここに無数に打たれた鋲の互いによそよそしい連結を頼みとして,でき得べくんば光速にも近づかんとするスピードと方向性に日夜血道をあげ,終局的に四次元の限界を破砕しようとしているようにさえみえる.そこには,悠々と空を翔びたい,という原始以来の「人間」の暢やかな願望の姿はなく,人はただ犇と楕円形の小窓にしがみついて,専ら大地への安全な着陸を待つている.
 早急に「進歩」の一途を辿つてきたここ数十年の人類文明は,いつの間にか肝腎の「人間」をおいてきぼりにして,徒らに無目標的な自己腫大に変貌した感なきを得ない.私は医学もその例外たり得ないような気がしてならないのである.

論述

放置された先天股脱(完全脱臼)に対するカップ関節形成術について

著者: 廣畑和志

ページ範囲:P.294 - P.302

はじめに
 先天股脱の早期発見と早期治療が普及されるようになつて,未治療の完全脱臼例は減少してきた.しかし,いぜんとして思春期や成人に達した完全脱臼や脱臼性股関節症の患者に遭遇することが少なくない.股関節外科の進歩した現在,これらの症例をいかに扱うか,専門医にとつてひとつの課題である.文献でも散見されるごとく,高齢者であれば,salvageという考えで人工関節置換に踏み切れるが,20歳や30歳代の青壮年期の患者に対しては,この手術には異論が多い.著者はかつて,これらに姑息的な骨切り術や固定術10,11)を行なつてきた.しかし,最近の成績調査では,これらの手術を受けたものの中に,少なからず不満を訴えるものがあつた.そこで現在は,脱臼骨頭を積極的に原臼に整復し,カップ関節形成術を行なつてかなり良い成績を得ている.今回は主として,この手術の目的・適応と手術法について述べ,その成績は一括して次の機会に報告したい.

整形外科とリハビリテーション—第24回東日本臨床整形外科学会講演

著者: 天児民和

ページ範囲:P.303 - P.312

いとぐち
 整形外科とリハビリテーションというテーマは大変平凡なテーマとも思われるが,さて講演するとなるとなかなかむつかしいテーマでもある.それは長い間整形外科とリハビリテーションとは一心同体であつたといつても過言ではなかつたと思う.医学の分科は現在沢山あるが整形外科ほど熱心に運動機能の回復に努力する専門学科はないと思う.これはリハビリテーションという言葉がなかつた古い時代からこの方面に努力をしてきたのは整形外科のみであつたのである.しかしながら第2次世界大戦後米国においてリハビリテーション医学が医学の分科として認められ専門医ができるようになり,専門的な技術が進歩し,いつの間にか整形外科とリハビリテーション医学の間に溝ができたとも考えられる.しかし2つの分科はいろいろな面で切つても切れない関係にあるといえる.このようなことを医学の進歩のあとを顧みながら話をしてゆきたいと思う.

義肢装具クリニックの運営—兵庫県リハセンターの経験から

著者: 沢村誠志 ,   村田秀雄 ,   中島咲哉 ,   山下隆昭 ,   黒田大治郎

ページ範囲:P.313 - P.320

はじめに
 日頃の診療において切断者に対するリハビリテーション(以下リハと省略)サービスを,切断者本位の立場にたつて行なうとすれば,医師を中心とする義肢士,PT,OT,看護婦,エンジニア,ケースワーカー等この分野で熟練した各メンバーの協力が不可欠であると痛感される.このようなチームによるアプローチの必要性は,世界的に切断者が大量にでた第二次世界大戦とサリドマイドによる先天性四肢奇形児の出生を機会に自然の要請として生まれたものである.これらのメンバーのチームアプローチの場として切断義肢クリニックあるいは,これに装具が対象として加わつたクリニックが設けられるようになつた.
 これを歴史的にみると,米国では,第二次世界大戦を契機として1949年Veterans Administrationの組織のもとに30ヵ所のクリニックができ英国でも約30ヵ所にLimb fitting centerが設定された.ここでは,切断者に対する義肢の処方,適合判定および装着訓練が行なわれている.これに研究開発,教育等の機能が加わつたものがあり,Roehampton,Dundee等がその代表例といえる.

整形外科領域における微小血管外科の実際

著者: 奥津一郎 ,   二ノ宮節夫 ,   高見博 ,   立花新太郎 ,   中村耕三 ,   杉岡宏 ,   巌琢也 ,   阿部績 ,   加幡一彦 ,   勝間田宏

ページ範囲:P.321 - P.328

 近年,整形外科領域でも微小血管外科手技が普及し,切断肢・指の再接着術に応用されて,従来断端形成術の適応となつた四肢の救済に役立つている.しかし,その機能的予後についてはなお検討を要すると思われる.また,この方法は骨折や外傷に合併した損傷血管の修復や血管柄付き遊離植皮に対しても応用できる.
 われわれは1973年5月以降,25ヵ月間に微小血管外科手技を多数の臨床例に応用し,手術手技,術前および術後の管理,一部の症例では機能的予後について検討を加えた.

装具・器械

本邦で使用されているRiemenbügelについて

著者: 鈴木良平 ,   岩崎勝郎

ページ範囲:P.329 - P.334

いとぐち
 1957年に筆者がチェコスロバキアよりRiemenbügelを持ち帰り,乳児先天股脱の治療に使用しはじめてから18年になる.本装具は種々の特長から,短時日のうちに日本中に広まり,先天股脱の治療成績を著しく改善したことは周知の事実である.優秀な成績が各方面から報告されているが,その優劣を論じるに当つて,果してどのような装具が使用されているか,Pavlik自身の意図に相応しくないものが使用されているのではないかとの疑問から調査してみた.
 まず全国の補装具製作業者200余に対し,その製品の寄贈を依頼するとともに,納入先,製造法などについて質問状を送つたところ,70社近くから製品の寄贈を受けることができた.同一製作者で数箇の異なつた製品を寄贈されたところもある.これらを見てまず驚くことは,一つとして同じ製品がないことである.材料,留具はもちろんのこと,形も原型とは大分異なつており,これがRiemenbügelかと思われるようなものさえもある.それぞれ使用する医師によつて処方されたもので,苦労の跡がうかがわれ,すぐれたアイデアも数々あるが,一方では首をかしげたくなるようなものもある.これらの装具の優劣は実際に使用してみないとわからないが,まず原型を説明した上で,どのような点が異なつているかを各部分について説明してみよう.

臨床経験

大腿骨頸部骨折に対するSliding nail-plate法(Massie)による手術経験

著者: 三谷晋一 ,   白野明 ,   安田賢一 ,   楠本剛夫 ,   土方浩美 ,   佐藤悠吉 ,   市毛彰 ,   増渕正昭 ,   森崎直木 ,   福沢玄英

ページ範囲:P.335 - P.346

はじめに
 大腿骨頸部骨折に対する内固定法の1つにsliding nail法がある.Sliding nailはnailが,barrel(円筒)の中でtelescopeするように工夫してつくられているため,術中の整復操作や術後の骨折治癒過程において骨折面に加わつたimpactionが術後にその部位において骨の吸収が生じてもそのまま継続され(Dynamic impaction),骨癒合の促進(Faster bony healing)に有利に働くという利点がある.
 最近,大腿骨頸部骨折の新鮮例に対し術後合併症や長期成績に関して問題点の少なくない人工骨頭置換術および偽関節形成,変形治癒aseptic necrosis等の発生頻度が高かつたり,mechanicalな面においても問題点の多い従来のrigidな固定法に代つてsliding nail法が一部で行なわれており,比較的良好な成績が報告されている.

Malignant Melanomaについて—整形外科の立場より6例の自験例を中心として

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   笹哲彰 ,   村瀬孝雄 ,   広川浩一 ,   高橋真理子 ,   井上肇 ,   土居通泰

ページ範囲:P.347 - P.354

はじめに
 Malignant melanoma(またはmelanocarcinoma.以下m. m.と略す)は,melanin形成能を持つ細胞に由来する腫瘍(melanoma)中,悪性のもので,予後が不良なことと,鑑別を要する疾患が多いため,皮膚科では長い間注目されてきた.整形外科領域とは,①四肢軟部組織腫瘍,②骨転移の2つの場合にかかわり合いがあるが,②の多数例報告は少ない.また,①,②を問わず,melanin形成の少ないamelanotic melanomaに近いものでは,診断上問題がある.本文の目的は,m. m.の6例(骨転移例3例,非骨転移例3例)の報告をし,整形外科医に必要と思われる本腫瘍の臨床および病理像の知見を,文献的考察を加えつつ要約し,整理することである.まず自験例の報告をする.

Shiers型人工関節置換術後切断した脊髄癆性膝関節症の1例

著者: 光安知夫 ,   小林晶 ,   上崎典雄

ページ範囲:P.355 - P.360

 神経病性関節症については,1868年,Charcotが脊髄癆に伴つて発生した関節の変化を記載して以来,多くの先人の報告がみられる.本症を診断することは,必ずしも困難なことではない.それにもかかわらず,われわれにとつてこれを治療するということはきわめて困難な問題を含んでいる.中でも脊髄癆性膝関節症の治療については,きわめて困難であり,主として関節固定術が試みられている.しかし,これも多くの症例において完全な癒合が得がたい.われわれは,膝関節固定術を施行し癒合が得られなかつた症例に対して,効果の持続性に不安があつたが,関節の安定性と可動性を確保できればと考え,人工関節置換術を施行し,これも成功せず,遂に切断の止むなきに至つた1例を経験した.ここに症例報告とともに,若干の考察を述べたい.

興味あるレ線像を示した大腿骨におけるSubperiosteal A V Malfomationの1例

著者: 平井和樹 ,   奥泉雅弘 ,   今井純郎 ,   樋口政法 ,   三波明男

ページ範囲:P.361 - P.363

 先天性血管奇形の一つである動静脈奇形は,頭部,脊髄領域,四肢軟部組織においては,決して稀なものではないが,最近われわれはosteo-periostitic sclerosisを伴つた,動静脈奇形と思われる1例を経験したので報告する.

Werner症候群の姉弟例

著者: 呂明哲 ,   田中秀

ページ範囲:P.364 - P.366

 Werner症候群は皮膚の萎縮性変化と局所の角質化,思春期以降の発育停止,特異な身体的特徴,若年性両側性白内障をはじめとする早期老化現象,その他,諸内分泌機能異常および同胞罹患傾向などの諸症状をそなえる比較的稀な疾患である.われわれは,姉弟に発症した本症候群で,重篤な四肢潰瘍をもつた姉に対しては植皮術ならびに両下腿切断術を,弟に対しては化学療法を施行した症例を経験したので,これを報告するとともに,若干の考察を加えた.

Pigmented Villonodular Synovitisの1例

著者: 立野勝彦 ,   東田紀彦 ,   小林茂信 ,   室谷静雄 ,   竹林俊一郎

ページ範囲:P.367 - P.370

 本疾患は,病理組織像が腫瘍と炎症の中間に位するものとして,種々の名称で呼ぼれてきたが,1941年Jaffeらがpigmented villonodular synovitis,いわゆる色素性絨毛性滑膜炎と使用して以来,最近とみに注目され,わが国でも多くの報告例があるが,その本態に関しては,未だ定説がない.われわれも膝関節に発生した1例を経験したので若干の考察を加え報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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