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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻5号

1976年05月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・7

手の先天異常(その2)

著者: 田島達也

ページ範囲:P.374 - P.377

 前回に引続いて,ほぼ前回掲載した分類(第1表)にしたがって,手の主要な先天異常とその治療を供覧する.

視座

関節液研究断章

著者: 猪狩忠

ページ範囲:P.379 - P.379

 関節に病変がおこると,chemical mediatorとして作用するbiological amine,すなわちhistamine,serotoninといつた物質が関節液中にもみられるようになる,これらの物質は関節腔では一体何に由来するのであろうか.
 Histamineは皮膚,小腸・肺のように外界に接する組織に高濃度に含まれ,また肥胖細胞が産生することも知られている.このhistamine含有量は血漿のそれよりも関節液の方が,変形性関節症,慢性関節リウマチでそれぞれ高値を示している(半田).

論述

遺残亜脱臼および再脱臼について

著者: 上野良三 ,   原田稔 ,   倉一彦 ,   玉井昭

ページ範囲:P.380 - P.388

いとぐち
 先天股脱の予後を不良にする因子には,臼蓋形成不全,大腿骨頭ならびに頸部の変形および関節内外における軟部組織性の障害が考えられる.大腿骨頭に発生する変化はPavlik-BandageあるいはFlexionsbandage(Hoffmann-Daimler, Fettweis)などの機能的治療法や観血的整復術による整復障害因子の除去により発生頻度が減少したが,臼蓋形成不全や頸部の変形で代表される遺残性変化は,現在にいたるまでなお完全な解決がえられていない.強度の前捻や外反股の発生は開排位における整復位保持によるという考えからLorenz肢位の固定を避ける試みがなされているが,一般にはなお2〜4歳で頸部の変形を手術によつて矯正し,術後の臼蓋形成を期待するという転子間骨切り術が,Bernbeckらによつて提唱され,以来25年が経過している.その後,減捻内反骨切り術(DVO)の遠隔成績の調査から術後の臼蓋発育には限度があり,すべての症例で良好な臼蓋発育が期待されないことが明らかにされ(Schneider,Jaster,Klein,Weickertら),とりわけTönnisは1969年,165関節の減捻内反骨切り術の成績の統計的処理を行ない,一定以上の臼蓋形成不全を有するものには術後良好な臼蓋発育が期待されないことを明らかにし,臼蓋角の境界値を3歳では25°,4歳では24°とした.

頸椎症性脊髄症の病理組織学的研究

著者: 小田義明 ,   小野啓郎 ,   大田寛 ,   多田浩一

ページ範囲:P.389 - P.401

はじめに
 Cervical spondylotic myelopathy(以下C. S. M.と略す)の成因に関しては従来諸説があり,いまだ不詳の点が多い.頸椎骨軟骨症(3例),後縦靱帯骨化症(2例),および脊髄腫瘍(原発性3例,転移性10例)にともなうミエロパチー計18症例の剖検例をもとにC. S. M.の成因を追求する.そのために,1.C. S. M.の成因に関する従来の諸説をふりかえつてみる.2.C. S. M.後縦靱帯骨化症によるミエロパチーの組織学的特色をあきらかにする.3.Cord involvementという広い視野より脊髄腫瘍によつてひきおこされる脊髄病変を素直に観察し,各種障害因子による組織像の相違,特性についてしらべる.4.従来われわれがおこなつてきた実験的ミエロパチーの結果とあわせてみる.5.系統発生学的見地より脊髄血管,神経路の発達およびその特性を考察する.以上の諸点を柱に比較検討し,C. S. M.のpathogenesis解明の手がかりとする.

Entrapment neuropathyについて

著者: 上平用 ,   山崎堯二 ,   瀬谷斉

ページ範囲:P.402 - P.410

 末梢神経が線維性・骨性のトンネル構成部を通過する部位にて,何らかの原因によつて圧迫されたり締めつけられた結果,運動・知覚あるいは血管運動神経が障害されたものに対し,entrapment neuropathyという名称が,Thompson and Kopell(1959)によつて名づけられた.したがつて,数多くの末梢神経にentrapment neuropathyは発生しうるが,上肢においてはcubital-tunnel syndromeとcarpal-tunnel syndromeが,下肢においてはtarsal-tunnel syndrome(Keck 1962)が代表的であることは周知のとおりである.
 現在,carpal-tunnel syndromeと呼ばれる手関節部の正中神経障害についても,古くから記載(Paget 1854,Marie and Foix 1913,いずれも文献13より)されているが,Phalen(1966)は654手にのぼる多数例について報告している.

境界領域

Bone cementの肺,循環器に及ぼす影響についての実験的研究

著者: 今原敏博

ページ範囲:P.411 - P.415

 最近,methylmethacrylate cementが整形外科における手術,特に股関節の全人工関節置換術に広く使用されるようになり,症例数も増加しつつあるが,bone cement挿入後にしばしば血圧下降がみられ,時としてcardiac arrestを起こし死亡したとの報告もみられる.われわれはcement挿入後の血圧下降などの肺,循環合併症の病因について,家兎を用いた実験を行ない,若干の知見を得たので報告する.

総合討議

Fibrous dysplasiaの臨床と病理

著者: 前山巌 ,   遠城寺宗知

ページ範囲:P.416 - P.452

Fibrous dysplasiaの臨床
 Fibrous dysplasiaの病因は未だ不明ですが一般には骨を形成する未分化の間葉組織の異常と考えられており,先天的な要素が強く関与しているものと思われます.
 本疾患は,臨床的にも,病理組織学的にも特徴ある所見を有し,古くから多くの報告があるが,現在なお診断,治療上多くの問題が残されています.

臨床経験

慢性動脈閉塞性疾患における間歇性跛行の経過と予後

著者: 岩倉博光 ,   原勇 ,   立石昭夫 ,   赤坂嘉久 ,   曾我恭一 ,   伊藤維朗 ,   東博彦

ページ範囲:P.453 - P.457

はじめに
 馬の走行中の跛行が四肢の主要動脈の閉塞によつて生じることがあるとフランスやドイツの獣医によつて発見されたのは,19世紀の中頃のことであつた.1831年,獣医Bouleyにより,この症候が間歇性跛行と名づけられた.1846年Benjamine Brodieは人間において同様の症候群を発見して,"患者の大腿動脈が一見軟骨様の綱になつており,adductor canalの所まで,血行が認められない状態になつていると述べた.彼は跛行の原因が,筋肉運動の際増加する血行の需要に対して,動脈血の供給が不足することによると考え底たが,その後の研究者達の意見にはこの疼痛が運動筋の痙攣から山来するとか,下肢動脈のspasmを考えるべきであるとか,さらに虚血を生じた筋肉内に疼痛を発生させる物質が蓄積してくると述べる者などがあつた.
 次に動脈閉塞性疾患の分類に関して,これを年齢によつて50歳以下では"Buerger Disease"または"thromboangitis obliterans"といい,それ以上の年齢では,動脈硬化性閉塞とする考え方がある.あるいはLeriche(1947)のように動脈閉塞性疾患500例のうちthromboangitis obliteransを35歳以下とする報告もあり,35歳と50歳の間には両者にまたがる特長を有する群があるという.

脊髄腫瘍を思わせた第11胸椎椎間板ヘルニアの1例

著者: 樋口政法 ,   奥泉雅弘 ,   今井純郎 ,   平井和樹 ,   三浪明男

ページ範囲:P.458 - P.462

はじめに
 胸部椎間板ヘルニアは比較的稀有な疾患で一般に知悉されておらず,また症状多彩なために診断遅延を招来し,手術の好機を逸して成績不良に終ることが少なくないとされている.最近著者らは,脊髄腫瘍を思わせた胸部椎間板ヘルニアの1例を経験したので報告する.

学会印象記

第10回先天股脱研究会—各種治療後にみられる遺残問題の対策について

著者: 村上宝久

ページ範囲:P.463 - P.468

 第10回先天股脱研究会は,昭和50年9月27日,東京の日本都市センターホールで全国より約500名以上の熱心な参加者を得て盛大に開催された.本研究会も発足以来,今回で早くも10回を迎え,すでに一通りのテーマが出つくした感があるが,今回は「各種治療後にみられる遺残問題の対策について」というテーマを取り上げてみたところ,31題にも及ぶ多数の演題申し込みがあり,当初10時開会の予定を30分繰り上げて開始した次第である.演題1〜5は坂口亮,6〜9は植家毅,10〜12は山室隆夫,13〜15は上野良三,16〜20は香川弘太郎,21〜25は山田勝久の各氏に座長をお願いし,最後の26〜31は私が司会をつとめた.そして今回は,前記座長をお願いした各氏に,担当された演題についての概要と印象をまとめて頂いたので以下順を追つて報告する.

紹介

ドイツ一等功労十字勲章受勲の記

著者: 天児民和

ページ範囲:P.401 - P.401

 今回西ドイツ政府,正確にはドイツ連邦共和国のシェーレ大統領より勲章を頂きました.
 昨年12月,日本の外務省から電話があり,ドイツ政府が私に勲章を贈りたいといつているが,お受けになりますかと尋ねられました.突然のことで当惑しましたが別にお断りする理由もないので有難く頂きますと答えました.その後本年1月末になつて神戸のドイツ総領事から勲章を持つて行きたいが何日が良いかと問合せがありましたので,2月20日が西日本日独協会の例会がありますので,その日が都合がよいと返事をしておきました.さて,当日神戸から総領事ロエル夫妻が福岡に来られ,例会の席上で勲記と勲章を頂きました.勲章はドイツ一等功労十字勲章です.簡素ですが如何にもドイツらしい美しいものです.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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