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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻6号

1976年06月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・8

手の先天異常(その3)

著者: 田島達也

ページ範囲:P.472 - P.475

 今回は前々回(第4号)に掲載した分類(第1表)の第II大項目〔部分分離障害〕のうち残した骨性合指症から第VII大項目に至る代表的奇形とその冶療を供覧する.ただしカラー効果を考慮し順序は変える.

視座

Microsurgeryの発達

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.477 - P.477

 10年ばかり前アメリカにいつたとき,マウントサイナイ病院でmicrosurgeryの設備をみて,これを早急にわが国に導入しなければならないと思つたことである.当時ようやく勃興してきていた手の外科には是非採り入れなければならないと考えた.
 これよりさき,奈良医大の恩地裕教授(1958)はすでに,動物実験的に切断肢の再接着に成功しておられた.切断肢指の再接着は顕微手術的に処理することによつて成功率をたかめ,あるいは成功を確実にすることができる.

論述

骨折後の脂肪塞栓症候群

著者: 鶴田登代志 ,   藤沢幸三 ,   塩川靖夫 ,   駒田信也 ,   吉川和也

ページ範囲:P.478 - P.484

 以上の臨床像を要約してみると,脂肪塞栓症候群には多くの症状,所見が存しているけれども,そのいずれもが特有症徴的ではない.従つて本症候群の臨床診断は非常に困難であり,わずかずつしか現われていない症状,所見をていねいに探し集めて綜合判断しなければならない.本症候群が欧米諸国に比して本邦には少ないといわれている一つの理由は,この臨床診断の下し方の差と剖検例における脂肪塞栓検索の差にあるのではないかとも考えられる.

乳児先天股脱に対するリーメン・ビューゲル再装着の試み

著者: 植家毅 ,   猪飼通夫 ,   高井康男 ,   宇佐美平雄 ,   池田威 ,   獅子目賢一郎 ,   船橋建司

ページ範囲:P.485 - P.492

いとぐち
 乳児先天股脱に対してRiemenbügel(以下R. b.と略記)を装着した場合,その8割近くは1ないし2週の間に容易に整復されるが,2〜3週後にもなお整復不能の場合にさらにR. b.装着を続けて自然整復を期待するのか,あるいはR. b.を除去して牽引あるいは徒手整復など他の治療術式に切り換えるのか判断に迷うことが多い.この判断は術者のR. b.による自然整復に対しての信頼感・期待度によつて異なるが,それとともに術者が脱臼位でのR. b.の長期装着の影響をどのように考えているのかによつてもかなり違いがあるように思う.
 1963年先天異常クリニック開設以来1970年頃まで,股関節異常に対しては原則として関節造影を施行した上で治療術式を決定してきた私たち(名古屋市立大学・先天異常グループ)は,R. b.による整復不能例には入院・牽引療法後に徒手整復,開排位装具固定を行うことを原則としてきた.しかし1973年以降,こうした整復不能例に対しては,一旦R. b.を完全に除去して患児を自由に遊ばせ,2〜4週後に再度R. b.を装着の上整復を期待するという試みを行なつている.現時点では,再装着によつてどれだけの症例が整復できたのかということに過ぎないが,ある意味ではR. b.法の根幹に触れる点もあるのでその概略を述べ,再装着の問題点について私たちの見解を明らかにしてみたい.

三角筋拘縮症について

著者: 三浪三千男 ,   石井清一 ,   薄井正道 ,   寺島嘉昭

ページ範囲:P.493 - P.501

はじめに
 三角筋拘縮症は大腿四頭筋拘縮症と並んでその原因が筋肉内への注射によるものが圧倒的に多いという特異な点で社会的に注目されてきた.特に最近各地での積極的な検診によつて潜在していた本症の患者が多数発見されつつある.
 今回われわれは三角筋拘縮症80例118肩関節を対象にして,とくにその病態について種々の観点から詳細に分析した.一方われわれはこれまでに32症例40肩関節に千術をおこなつているが,このうち術後2年以上を経過した7例7肩関節について術後成績を検討したので併せて報告する.

肩関節にみられた"Charcot like arthropathy(Chandler)"の一例—その発生機序と"内因性関節外傷"の提唱

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰

ページ範囲:P.502 - P.509

要約
 本文においては,血清梅毒反応は陽性であつたが,臨床的に梅毒性神経症状がない例での五十肩に,繰り返し局所的にsteroidを投与した結果発症したと思われるsteroid arthropathyの一例を報告した.
 その病理組織像の検索を行い,本症の発生機序をsteroidの抗炎症,疼痛軽減作用,組織修復力の低下によつて助長され,加速されておこつた"内因性関節外傷"による骨・軟骨骨折に神経病性関節症の色彩を帯びたものとしこれを図示した.
 "内因性関節外傷"は"外因性関節外傷"に対するもので,この概念は肩関節のような負荷の少ない部分にも,膝のような負荷の多い部位と同様に適応でき,病変の発症機序の説明に都合がよい.内因性関節外傷と外因性関節外傷は区別して考えるべきものと思われる.

整形外科領域における無芽胞嫌気性菌について

著者: 若原和男 ,   赤星義彦 ,   松永隆信 ,   陳世雄 ,   高井秀典 ,   高橋直久 ,   三和敏夫 ,   上野一恵 ,   鈴木祥一郎

ページ範囲:P.510 - P.516

 抗生剤やステロイドホルモンの過剰使用により,かつて弱毒または非病原性とされていた微生物が感染の主役を演ずる場合がしばしばみられるようになり,最近ではとくに嫌気性菌感染症が各科領域で注目されている1).整形外科領域においても,感染症の変遷につれて難治症例や,遅発性感染など治療上困難な問題も生じつつあり,とくに嫌気性感染は看過できない重要な課題と考えられる.
 われわれは種々の整形外科臨床症例について嫌気性菌を検索する目的で,各種検体の培養検査を行つた.また岐大微生物学教室では長年にわたり,嫌気性菌に関する種々の基礎的研究が行われ,とくに嫌気性菌の培養法についてはGAM培地など詳細な研究開発が続けられている.今回の協同研究によつて極めて興味ある知見を得ているので,現在までの検出状況を報告し,若干の考察を加える.

臨床経験

腰痛疾患の診断と治療におけるリスクと落とし穴

著者: 大井淑雄

ページ範囲:P.517 - P.525

要約
 腰痛疾患の診断と治療上の問題点について実例とともに簡単に議論し,研修医の参考に供した.

腋窩神経損傷による外傷性三角筋麻痺の3例

著者: 岩崎敬雄 ,   高岸直人 ,   松崎昭夫 ,   竹嶋康弘 ,   木田浩隆 ,   清水万喜生 ,   柴田玄彦 ,   岡部芳博 ,   河崎可昭 ,   花村達夫

ページ範囲:P.526 - P.529

はじめに
 肩関節部の外傷後に発生する腋窩神経の単独麻痺は文献でみるかぎり稀にしかみられない.麻痺が存続するにもかかわらず肩関節の外転ができるようになつた症例の報告はさらに稀である.我々は外傷性三角筋麻痺をきたした3例を経験し,内1例は麻痺が存続するにもかかわらず肩関節の可動性が正常になつた症例である.3例とも手術を行つたのでその所見,および治療経過について報告する.また,肩関節後方腋窩部の外傷後に発生するQuadrilateral space syndromeについて若干,文献的考察を行つてみた.

右手背に初発し,かつ右肘,右肩へも拘縮の出現を見たExtra-abdominal desmoid tumorの1例

著者: 山内裕雄 ,   伊藤謙三 ,   本田英義 ,   田島宝

ページ範囲:P.530 - P.536

 われわれは,最近,右手背部に初発し,同部に再発を繰り返し,かつ,右肘・右肩へも拘縮の出現をみたextra-abdominal desmoid tumorと思われる1例を経験したので,これを報告するとともに,本邦における,われわれの文献上調べ得た症例について,若干の考察を加えてみる.

滑膜肉腫の5例

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰 ,   永野柾巨

ページ範囲:P.537 - P.543

要約
 本文では,S. S. 5例の症例報告と,本症の文献上の知見の要約を試みた.他の軟部悪性腫瘍の治療と同様に,臨床的に悪性腫瘍であれば組織学的診断にこだわらない,早期の広範開切除を最良の治療法と考える.

Pycnodysostosisの1例

著者: 石田俊武 ,   浅田莞爾 ,   越川亮

ページ範囲:P.544 - P.549

 1962年,MaroteauxおよびLamyは,小人症,骨陰影の濃化,手・足指の末節骨の部分的形成異常,大・小泉門の開存や頭蓋縫合の閉鎖障害などの頭蓋骨の異常,前頭骨および後頭骨の突起,下顎角の形成不全などを主徴候とする症侯群を,Pycnodysostosisと命名した11).本疾患は,欧米においてすでに1923年,MontanariがAchondroplasiaの異型として報告しており,それ以後,1968年Sedanoらの調査によれば19),わが国の島(1950)16),青池(1958)2),梶井(1966)らの報告した3家系4症例を含めて,51家系73症例が集計されている.わが国においては,青池・石塚が,1945年口腔病学会東京部会5月例会に,"大理石骨病(アルベルス・シェンベルグ)について"と題して報告したのが最初で1),青池は,1954年本症を,"新しい遺伝性骨疾患,Dysostosis generalisataとOsteopetrosisの合併型に就て"と題して発表している2).以後石田了久らの報告によれば8),29家系41症例が集計されている.われわれも最近本症と考えられる一例を経験したので発表する.

小児に発生した浸潤性脂肪腫の1症例

著者: 藤内守 ,   桧沢一夫

ページ範囲:P.550 - P.553

緒言
 脂肪腫は良性軟部腫瘍の中では最も多い腫瘍であるが(1600例/8086例,遠城寺ら1)),大部分は成人の皮下脂肪組織に発生する.これに対して,小児や深在の軟部組織に発生する脂肪腫には,通常の脂肪腫とは異なつた特殊の形態と増殖様式を示す脂肪芽腫,浸潤性脂肪腫,血管脂肪腫など種々の腫瘍がみられる.私達は1歳7ヵ月,女児の左側胸部の深部軟部組織に発生し,特異な組織像を呈した先天性の浸潤性脂肪腫を経験したので報告する.

座談会

変形性膝関節症

著者: 岩原寅猪 ,   寺山和雄 ,   松井宣夫 ,   腰野富久 ,   伊勢亀富士朗 ,   渡辺正毅

ページ範囲:P.554 - P.567

 膝関節は,とくにわが国においては股関節と並んで多くの問題を抱えている関節である.この膝関節の疾患中,変形性関節症は膝内障とともに雙壁をなすものである.
 さきの第24回東日本臨床整形外科学会におけるシンポジウム変形性膝関節症は優れた企画であり有意であつたと思う.この企画にならい,さらにつつこんでお話し合いをしていただき,現在われわれが持つ変形性膝関節症に関する知見を読者に紹介いたしたくこの座談会を計画した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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