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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻7号

1976年07月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・9

手の炎症性疾患

著者: 田島達也

ページ範囲:P.570 - P.573

 手の領域には頻発する外傷を誘因とする化膿炎がしばしばみられる.ただし最近有効な抗生剤の使用により,手掌から前腕に波及するような重篤な化膿性結合織炎は殆んどみられなくなった.指遠位部の化膿炎は瘭疽panaritium, felonと呼ばれる.慢性関節リウマチは手関節および指関節(DIP関節罹患はまれ)を最もしばしばおかす.一方リウマチ性腱鞘炎も少なくない.結核性手関節炎や腱鞘炎もなお往々みられる.その他狭窄性腱鞘炎や石灰沈着性腱炎のような物理的,化学的炎症の発生もこの領域に特徴的といえる.

視座

医業類似行為について

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.575 - P.575

 医業類似行為にはあん摩,はり,きゆうおよび柔道整復(以下あん摩等と略称)以外に,電気,光線,刺激,温熱,手技等による一群の行為が含まれる.後者は療術行為とも呼ばれ,その種類は多種多様で,昭和15年の調査で既に4百数十種にもおよんでいる.
 戦前は,あん摩等は各営業取締規則により規制されていたが,これら以外の医業類似行為は規制すべき法令がなく,単に有害なものに限つて国民医療法違反として罰せられ,大部分は各都道府県令により届出,認可制度の下に営業し,中には全く放任主義の府県もあつた.

論述

関節鏡所見より見た高位脛骨骨切り術の効果

著者: 藤沢義之 ,   増原建二 ,   松本直彦 ,   三井宜夫 ,   藤原博 ,   山口武史 ,   塩見俊次

ページ範囲:P.576 - P.590

緒言
 変形性膝関節症に対する外科的治療としての高位脛骨骨切り術については,1958年Jackson1)が初めて報告して以来,内外において採用され普及してきた.
 その手術的効果については,臨床的・レ線的2〜16)あるいはscintiscanning17,18)などの面からの検討が行なわれているが,内視鏡的見地から詳しく検討された報告にはまだ接していない.

脊柱側彎症の保存的療法

著者: 山本博司

ページ範囲:P.591 - P.601

はじめに
 脊柱側彎症はその大多数のものが成長期の小児に発生し,成長とともに増悪する傾向を示すことを特徴としている.本症の発生率は我が国で近年おこなわれた野外調査によつても約1%に達することが知られている.従つて,これら側彎症患児に対する予防治療対策が重要な課題となつている.
 側彎症に対する治療法には過去幾多の変遷が見られて来た.ヨーロッパを中心に前世紀より行なわれて来た装具,ギプス療法1〜5)はその治療効果が確実でなく,高度側轡症に対しては無力である等の理由により,Hibbs,Risser6,7)らにより展開された脊柱矯正固定術が本症治療の主流を占めて来た.しかし,比較的早期の側彎症に対し行なわれて来た予防的矯正固定術は決して確実なものとはいえず,種々の手術合併症が問題となることが知られ,近年,保存的療法が早期療法として再びその価値を認められるようになつて来た8,9)

大腿骨頭壊死について—X線像と組織像の比較を中心として

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰

ページ範囲:P.602 - P.613

要約
 ①本文においては,4例の大腿骨頭壊死の切除標本の連続全割標本と,X線像を比較し,②1例の大腿頸部骨折後の偽関節例の骨頭についても同様の処置をし,③これらの所見より大腿骨頭壊死ではX線像より正確な壊死巣の場所と範囲を知ることは困難であることを示し,④壊死組織像について骨梁壊死と骨髄壊死の必ずしも一致しないことを示し,⑤文献的考察を加えて大腿骨頭壊死の臨床病理的発症機序について考え方を示した.

境界領域

脂質代謝異常症としてのいわゆる"Membranous lipodystrophy"(Nasu)—その形態学的所見を中心に

著者: 田代征夫 ,   小出紀 ,   渡辺陽之輔 ,   丸谷真 ,   里見和彦

ページ範囲:P.614 - P.625

はじめに
 脂質代謝異常症としてのいわゆる"Membranous lipodystrophy"という疾患概念は,1971年に那須ら12)が,はじめて提唱したもので,骨髄および全身の脂肪組織に特徴的な膜様小嚢胞を呈する病変と脳にズダン好性白質変性をきたす特異な全身性脂質代謝異常症を思わせる極めて稀な疾患である.10代後半頃から繰り返す病的骨折で発症し,10数年の長期にわたる経過の後に,癲癇様発作を伴なう精神神経症状が発現し,遂には,"植物人間"となつて死に至る転帰をとる悲惨な疾患である.現在までの所,本症に関して,剖検例としては那須12)・薬丸18)の2例が報告されているのみであるが,生検例としては,われわれの経験した3例を含めて20例近い症例が報告されている.また,今回の生検例を検討した際に,過去に遡つて調べたところ,整形外科領域において骨髄内脂肪腫症あるいは,その類縁疾患として報告されていたうち,少なくとも6例が本疾患と同一のものであることが報告者の御協力で確認できた7〜10,15).このことから,今までに見落されてきた本疾患もかなりの数にのぼるのではないかと推測される.

臨床経験

手術例からみたいわゆるバネ指について

著者: 南條文昭 ,   川井香寿子 ,   萩原健二 ,   山崎典郎

ページ範囲:P.628 - P.634

 手指屈筋腱とその周囲組織の絞約性不適合のため腱の円滑な動きが障害されるいわゆるバネ指症例は日常少なからずみられ,Libscombらによると腱鞘炎の約58%が手に関係し,そのうちの約20%がいわゆるバネ指を主とした狭窄性腱鞘炎であるとされる.いわゆるバネ指にっいては1850年Nottaが初めて記載し,1858年にはNelatonが追加報告してより諸家の目が向けられた模様で,1889年にはSchönbornが腱鞘切開手術を記載し,現在にいたるまで多くの臨床的・症理組織学的報告や成因に関する論述がなされているが,その成因を含めて未だ不明確な点が多く残されている.
 著者等は昭和43年より昭和50年初頭にいたる過去6年間に,都立墨東病院整形外科において手術を行なつたいわゆるバネ指症例の追跡調査を行ない,症例分布や術後成績などについていささかの知見を得たので,手術時採取した腱鞘の症理組織像の検討と,文献的考察を併せて報告する.

脊椎カリエスに対する手術施行後5年以上経過例の検討

著者: 井村慎一 ,   高瀬武平 ,   船木清忠

ページ範囲:P.635 - P.642

はじめに
 結核予防法の制定以来,BCG接種,レ線間接撮影による集団検診,さらに抗結核剤や治療法の進歩により結核患者は激減した.昭和48年に行なわれた結核実態調査によれば,全国推計患者数は約82万人で,全結核要医療患者の有病率は0.74%であり,第1回実態調査(昭和28年)時の推計患者数は292万人,有病率の3.37%と比べ隔世の感がある.さらに全結核要医療者の年齢構成からみると,そのうちの37.2%は60歳以上と推定され,45歳以上の患者は65.4%を占め,かつて青年の疾患とされていた結核は,最近では高年齢層の疾患となつた.比較的重症で入院加療が必要であるものについてみると,半数以上が60歳以上であるといわれている.したがつて今後症例数は少ないが中高齢者の脊椎カリエスを扱うことが多く,老人医療の観点から考える必要があろう.
 われわれは昭和28年以来,当科にて手術が施行された脊椎カリエス患者は108症例であるが,そのうち術後5年以上経過した98例につき,検討を加えた.

Proximal-row carpectomy

著者: 木野義武 ,   三浦隆行 ,   前田敬三 ,   中村蓼吾 ,   駒田俊明

ページ範囲:P.643 - P.648

緒言
 陳旧性月状骨周囲脱臼,Kienböck病および舟状骨偽関節等により発生する手関節の疼痛,運動制限,筋力低下に対する治療法はいろいろ報告されているが,その選択適応の決定はむつかしい.これらの原疾患に対しStamm(1944)がはじめて報告したProximal-row carpectomyは,Stack(1948)により月状骨周囲脱臼9関節に対する優秀な成績が報告されて以来,積極的に行われるようになり,これまでにもMcLaughlin(1951)3例,Crabbe(1964)20例,Campbell(1965)8例,Jorgensen(1969)25例等の報告があるが本邦におけるまとまつた報告は無い.
 われわれは過去6年間に,その手術侵襲に対する懸念から適応を厳しく限定して10症例に,proximal-row carpectomyを施行しその術後平均観察期間も3年2カ月となつた.この機会に10症例の術後成績に検討を加え,本法の適応について考えたい.術後成績の評価として,術前,術後の握力,関節の可動域,疼痛,レ線所見等につき検討した.

中学野球部員における肘関節障害について

著者: 高槻先歩

ページ範囲:P.649 - P.658

緒言
 野球の場合のボールを強く投げるという動作は比較的異常な運動であり,肩・肘あるいは手関節に種々な程度のストレスを与え,これらの関節に時に障害因子として働くことは想像に難くない.一般に用いられている「野球肘」という用語は,野球により肘関節に訴えられる主として疼痛性障害に対する総称であり21),その中には肘関節の各種の病変が含まれている.
 文献を通覧すると,野球肘の調査研究は主に高等学校,大学,社会人あるいは職業野球選手に関するものである.小中学生に関しては,1953年大江ら22)が肘関節離断性骨軟骨炎の3例を報告し,少年野球ではボールの重量を軽くする必要があると主張し,1957年宮城ら17)が幼少年の投球動作には一考を要すると述べたが,1960年Brogdonら7)がlittle leaguer's elbowと名づけた3例を報告するまではあまり注目されなかつた.また,少年野球選手における各種の肘関節障害の発生頻度に関する調査研究としては,1962年前田ら15)の八幡市内中学校の調査,1965年のAdams11)の調査がある.しかしながら,これら貴重な症例報告や調査研究の成果はわが国においては,義務教育下の小中学校の野球指導には十分反映されていないようである.

慢性関節リウマチにみられた骨盤部疲労性骨折

著者: 森谷光夫 ,   岩田久 ,   河合克弘 ,   木野義武 ,   金子正幸 ,   杉浦保夫 ,   安原徳政

ページ範囲:P.659 - P.663

はじめに
 骨盤における疲労性骨折の頻度はMorrisら5)によれば,全体の疲労性骨折の約0.7%であり,比較的稀なものとされている.著者らは慢性関節リウマチ(RA)患者2症例の骨盤部(恥骨および坐骨)に疲労性骨折と思われる変化を経験したのでその臨床経過を報告するとともに発症機序につき考察する.

同側大腿骨下端骨端線離開を合併した大腿骨頭辷り症の1例

著者: 岡田勝 ,   打村昌一 ,   前田昌穂 ,   広畑和志

ページ範囲:P.664 - P.669

はじめに
 大腿骨頭辷り症の報告は本邦においては,第47回日本整形外科学会総会で,下村,二ノ宮ら,増田ら,泉田らにより報告されたものも含めて,166例188関節と比較的少い.今回われわれは,大腿骨頭辷り症の治療経過中に同側大腿骨下端骨端線離開を合併した1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

偏側肥大症—患側下肢周経の減少を伴つた症例と,その分類上の位置づけ

著者: 水島哲也 ,   加藤次男 ,   西岡淳一 ,   内田淳正

ページ範囲:P.670 - P.675

 先天性偏側肥大症の四肢における特徴は,健側にくらべて単に長軸方向の過成長のみでなく,四肢周径の増大が認められることであり,この周径の左右差は,年齢とともに増加する傾向にあることが知られている.
 ところが最近われわれは,脚長差が著しく,この点では偏側肥大症に合致するが,逆に長い側の下肢周径の少ない21歳と6歳の女子の症例に遭遇し,その診断に苦慮した.

追悼

Prof. Franz Schedeの苦闘の生涯

著者: 天児民和

ページ範囲:P.626 - P.627

 私は整形外科医として修練をしている間に多くの先輩にお世話になつたが,日本では神中教授,ドイツではFranz Schede教授の影響を一番受けていると思う.神中先生はドイツ的な古典的整形外科の殻を破られた先生であるが,Schede教授は正反対にあくまでもドイツ的な古典的な整形外科の伝統を守ろうとして一生を貫いた先生である.そのFranz Schede教授が本年2月16日亡くなられた.先生は1882年6月9日のお生れであるので本年で94歳になられるはずである.大変に御長命でよかつたと申し上げたいがこの94年の一生は決して生やさしいものではなかつた.今,先生の歩まれた道をふりかえつてみようと思うが,すでに私は昭和30年「外科」17巻,551頁に「Franz Schede教授の歩んだ路」という1文を掲載している.これは先生が70歳(1952)の日本流でいうと古稀のお祝いの席上で話された原稿を頂戴し,それを私が日本語に飜訳したものである.それからすでに24年の歳月が流れた.先生の御長命であつたことがこれでも分る.
 先生の家系は非常に古くてSchede教授の自叙伝"Rückblick und Ausblick"には御自分の家系について詳しく書いておられる.少年時代のことは省略をしよう.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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