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脂質代謝異常症としてのいわゆる"Membranous lipodystrophy"(Nasu)—その形態学的所見を中心に
著者: 田代征夫1 小出紀1 渡辺陽之輔1 丸谷真2 里見和彦2
所属機関: 1慶応義塾大学医学部病理学教室 2慶応義塾大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.614 - P.625
文献購入ページに移動脂質代謝異常症としてのいわゆる"Membranous lipodystrophy"という疾患概念は,1971年に那須ら12)が,はじめて提唱したもので,骨髄および全身の脂肪組織に特徴的な膜様小嚢胞を呈する病変と脳にズダン好性白質変性をきたす特異な全身性脂質代謝異常症を思わせる極めて稀な疾患である.10代後半頃から繰り返す病的骨折で発症し,10数年の長期にわたる経過の後に,癲癇様発作を伴なう精神神経症状が発現し,遂には,"植物人間"となつて死に至る転帰をとる悲惨な疾患である.現在までの所,本症に関して,剖検例としては那須12)・薬丸18)の2例が報告されているのみであるが,生検例としては,われわれの経験した3例を含めて20例近い症例が報告されている.また,今回の生検例を検討した際に,過去に遡つて調べたところ,整形外科領域において骨髄内脂肪腫症あるいは,その類縁疾患として報告されていたうち,少なくとも6例が本疾患と同一のものであることが報告者の御協力で確認できた7〜10,15).このことから,今までに見落されてきた本疾患もかなりの数にのぼるのではないかと推測される.
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