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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻8号

1976年08月発行

雑誌目次

特集 腰部脊柱管狭窄の諸問題

屍体晒骨標本による腰部脊柱管の形態学的研究

著者: 角田信昭 ,   上森茂彦 ,   脇田𠮷樹 ,   孫欽明 ,   丸井俊一 ,   秋山徹 ,   小野哲男 ,   芝啓一郎 ,   竹光義治

ページ範囲:P.677 - P.685

 腰部脊椎管狭窄に骨性因子が関与する条件を検討するにはまずVerbiestのいうdevelopmental stenosisが存在するか否か,またもし存在すれば如何なる特徴を有するかを検討し,その上に立つて臨床症状との関連を追求する必要がある.Verbiestは47例の骨標本で計測したHuizingaのデータを参考に,術中前後径を計測し,骨性椎管狭小がcaudal nerve roots compressionに寄与する度合いを検討している.しかし体格の違う日本人にHuizingaやVerbiestの基準を当てはめることにはいささか難点がある.
 また日本人について恒松は人類学的見地から屍体標本の椎体後上縁から椎弓内上縁までの距離で計測したが,これは最短距離を表わすものでなく実際的ではない.

腰部脊柱管X線計測法の再検討

著者: 辻陽雄 ,   宮坂斉 ,   山本日出樹 ,   栗原真 ,   西山徹 ,   佐々木健

ページ範囲:P.686 - P.693

I.腰椎椎管狭窄の概念と計測の意義
 Vcrbiest(1954)18,19)がdevelopmental narrownessとして注目した腰椎管の狭小例は,たとえそれが二次的な骨の肥厚増殖によつて修飾されているにせよ,椎管前後径がHuizinga7)(1952)の正常屍体における計測値の下限以下であつたことは本来の(狭義の)骨性狭窄があることを明らかに示している.J. A. Epsteinら2)(1962)は50本の骨骼標本の観察から,とくにlateral recessの狭小化を強調し,その後諸家の研究3〜6,8〜12,14〜17,20,21)が追加されて結局,腰椎椎管狭窄は椎弓,椎間関節突起の肥厚性変化,それにもとづくrecessの狭小化,椎管の三角状扁平化などが中心的な変化であつて,それに附加的に黄靱帯肥厚,椎間板膨隆や骨棘などが加わつて,より機能的有効椎管を狭いものにするものと結論できる.

腰部peridurographyによる腰部脊椎管について

著者: 藤沢洋一 ,   坪井誠司 ,   原田征行 ,   東野修治

ページ範囲:P.694 - P.700

はじめに
 1954年Verbiest4)が馬尾神経の圧迫を伴つた腰部脊椎管狭窄症7例を初めて発表して以来,その存在が知られるようになり,1968年Jones1)らの狭窄の判定法や,Schatzker3)らの病態分類の発表によりその認識は高まつてきた.本邦では1970年若松12),山田13)の報告を初めとし最近増加の傾向にある.その病因は種々あげられまた病態の分類も行なわれているが,その原因の如何を問わず形態的には硬膜外腔の狭少した状態であり,peridurography(以下periduroという)により硬膜外腔の形態を把握することは有意義と考える.われわれは腰椎部のperiduro,ならびにその回転横断撮影法を用いて腰部脊椎管の広さと形態につき検討し若干の知見を得たのでここに報告し,腰部脊椎管狭窄症(以下狭窄症という)における回転横断撮影法の診断的意義についても述べてみたい.

腰部脊椎管狭窄の病態—とくに馬尾神経の所見について

著者: 三河義弘 ,   黒田宏 ,   藤原郁郎 ,   岩本政仁 ,   小堀真 ,   秦公平 ,   森竹財三

ページ範囲:P.701 - P.707

はじめに
 腰部脊椎管狭窄は,種々の原因による脊椎管の狭窄というclinical entityとして捉えられている.1913年にElsbergが黄靱帯肥厚による馬尾神経の圧迫について初めて報告して以来,Verbiestに代表される幾多の研究者が,脊椎管狭窄の病因,病態について論及して来た.しかし,その症状発現に重要な役割を演ずると考えられる馬尾神経の病態についての知見には乏しい現況にある.今回われわれは,本症の手術時に馬尾神経を検策し,一部の症例ではmicrosurgicalにも調べる機会を得たので,その所見について若干の文献的考察を加えて報告する.

Lumbar canal stenosisの手術所見

著者: 片山雅宏 ,   山本龍二 ,   片山国昭 ,   田那村宏 ,   鈴木純一

ページ範囲:P.708 - P.711

 いわゆる腰部脊椎管狭窄の症状を呈する高齢者をしばしば経験するが,このうち種々な保存療法にもかかわらず症状の増悪傾向を示した42例に脊髄腔造影術を行い,ことに脊椎管が後方あるいは側方より著しく狭窄されている28例に椎弓切除術を施行した.
 いまだ症例が少なく手術所見も様々であるが,脊椎管の狭窄に関与していたと思われる骨・軟部組織の肉眼的変化およびその組織所見について報告する.

腰部脊椎管狭窄の概念とその診断について

著者: 佐々木正 ,   細川昌俊 ,   中川智之 ,   三倉勇閲 ,   鵜飼茂

ページ範囲:P.712 - P.723

 Verbiest(1954)がA Radicular Syndrome from Narrowing of the Lumbar Spinal Canalと題して7症例の報告をしてから腰部脊椎管狭窄という病態が注目され始め,本邦でも最近5,6年この病態に関心が深まつて来ている.
 今回,われわれはこのような病態が主病因と思われる28例を中心として,晒骨標本18例と水溶性造影剤による脊髄造影で腰部脊椎管狭窄のない50例を参考とし,腰部脊椎管狭窄の概念とその診断について述べてみたい.なお,28例中20例に広汎椎弓切除を施行している.

Achondroplasiaに起因する脊椎管狭窄の1手術例

著者: 四方実彦 ,   森英吾 ,   真鍋克次郎 ,   小野村敏信

ページ範囲:P.724 - P.728

はじめに
 Achondroplasiaは脊柱はじめ全身の四肢,関節の特異な発育障害ならびに変形を有する疾患として注目され,多くの報告がみられるが,その脊椎管の骨性狭小および形態異常に起因するparaplegiaに関する報告は比較的に稀である.1953年にSchlesinger & Taveras1)が,次いで1954年Verbiest2)がdevelopmental spinal canal stenosisの概念を発表して以来,本邦においても注日されはじめて,その病態および治療法に関する多数の報告がみられるようになつた.しかしながらdevelopmental stenosisの典型的なものとされているachondroplasiaのparaplegiaに対する手術症例の報告は外国でも稀で,その成績は不良とされており,本邦では未だ報告がみられない現状である.われわれは今回典型的なachondroplasiaの脊椎変形に起因するparaplegia患者に対して広範囲な胸腰椎椎弓切除術を施行し,治療の困難性をいろいろと経験したので,その臨床所見ならびに術後経過と問題点を検討した.

Postoperative lumbar spinal canal stenosisについて

著者: 越前谷達紀 ,   金田清志 ,   大西英夫 ,   藤谷正紀 ,   大脇康弘

ページ範囲:P.729 - P.732

 腰部脊柱管狭窄症の原因には種々のものがあり,その分類は必ずしも一致をみていない.
 Schatzker & Pennal(1968)はこれを6つの病態に分類しているが,この中にiatrogenicという項目をあげている.他の原因による腰部脊柱管狭窄症については数多く報告されているが,iatrogenic stenosis,すなわち何らかの程度の椎弓切除術後,あるいは脊椎後方固定術後に年余の経過とともに腰部脊柱管狭窄症の症状を呈してくるpost-laminectomy stenosisやpost-fusion stenosisについての報告は非常に少い.これらはpostoperative lumbar canal stenosisと称されるべきものであろう.

腰部脊椎管狭窄症の定義と分類について

著者: 栗原章 ,   片岡治

ページ範囲:P.734 - P.739

はじめに
 本邦をはじめ欧米諸国でも,腰部脊椎管狭窄症の概念が一般化してきた現在でさえ,本症の定義ひいては分類については,なお,定まつたものはみられない.従つて,その用語についても国内外で種々様々なものが用いられているが,これには,疾患単位としてうけとろうとするものと,症候群として取扱おうとする研究者達の二つの態度によるところが大きいと思われる.
 このような状況下で,カナダのKirkaldy-Willisの提唱で本症の定義と分類に関するシンポジウムが開かれ,われわれもこのシンポジウムに参加する機会を得た.そこで,このシンポジウムにおいて決定された定義と分類について述べるとともに,われわれが経験した185例の手術症例をこの分類にあてはめて検討を加えた.

腰部脊椎管狭窄症に対する保存療法—Williams' lumbosacral flexion braceの応用

著者: 永田覚三 ,   藤原克彦 ,   中村勝年 ,   石橋鉄夫 ,   寺井誠 ,   加藤恭之 ,   檜山建宇 ,   地葉幸泰

ページ範囲:P.740 - P.750

はじめに
 いわゆる腰部脊椎管狭窄症に対する治療は従来の報告をみても手術療法のみが強調され保存療法については一般に効果がないと考えられているためか,文献上わずかに散見されるのみでほとんど検討されていない.
 しかし,本症は比較的高齢者に多く,心身に何らかのハンデイキヤップを有し,たとえ手術療法の適応と考えられてもにわかにこれに踏み切れぬことは日常しばしば経験するところである.したがつて有効な保存療法の確立が急務であり,改めて検討してみる必要があると考える.

腰部脊椎管狭窄に対する観血的療法の考え方について

著者: 河合伸也 ,   服部奨 ,   小山正信 ,   早川宏 ,   東良輝 ,   小田裕胤 ,   井之川義典 ,   瀬戸信夫

ページ範囲:P.751 - P.760

 腰部脊椎管狭窄は1954年Verbiestがdevelopmental narrowing of the lumbar vertabral canalについて報告して以来注目されてきた概念であるが,腰椎部において構築上の異常により椎管径が全体または部分的に狭窄をきたし,馬尾神経や腰仙部神経根に障害をもたらしている病態を指しているものと解釈される.脊椎管を構成する要素として,前方(椎間板・椎体・後縦靱帯),側方(椎弓根),後側方(関節突起・椎間関節),後方(椎弓・黄靱帯)があり,いずれの部位の病変にても脊椎管腔の狭窄を来たしうる.従来から変形性脊椎症,黄靱帯肥厚,脊椎辷り症などすでに管腔狭窄の概念は漠然としながらも存在しており,腰部脊椎管狭窄は独立疾患として扱うよりも個々の疾患の病態として把握することが妥当であると考える.ただdevelopmentalなものに関しては,頸椎部におけると同様腰椎部にも当然存在しうると考えられるが,頸椎部における脊髄症状と異なり腰椎部において管腔狭窄が単独に馬尾神経症状を発現させる頻度は少なく,症状発現に変形性脊椎症性変化の関与するものが多いであろうと推測する.

腰部脊椎管狭窄症手術症例185例の検討

著者: 川井和夫 ,   片岡治 ,   栗原章 ,   松田俊雄 ,   土居忠史 ,   竹内一喜 ,   田中寿一 ,   𠮷岡裕樹

ページ範囲:P.761 - P.767

はじめに
 腰痛,下肢痛を来す疾患のなかに椎弓と黄靱帯の著しい肥厚を示す症例があり,これらは椎弓切除術により治癒されたという報告は,すでに1900年代の始めより散見される.1950年代以後その病態解明が急速に進むにつれて椎弓や黄靱帯の肥厚のみならず,骨性脊椎管自体の発育上の狭小,lateral recess,椎間板,関節突起,椎体後方骨棘などの問題が注目されてきて,clinical entityとしての腰部脊椎管狭窄症の概念がほぼ確立した.現在ではその治療法として,馬尾神経や神経根を圧迫するこれらすべての要因を切除する広範囲椎弓切除術が,広く一般的に受れ入れられ,その術後成績も向上している.
 われわれの腰部脊椎管狭窄症の手術症例は185例の多きを数える.この論文の目的は,この豊富な症例の臨床的所見の概略を述べ,その術後成績と,その成績を左右する因子を検討することにより,手術法としての広範囲椎弓切除術の妥当性を論ずること,および,さらには,これらの結果よりclinical entityとしての腰部脊椎管狭窄症の概念の重要性につき言及することにある.

第4回脊椎外科研究会印象記—病理・病因の部—主として解剖学的基礎的問題について

著者: 竹光義治 ,   金田清志

ページ範囲:P.768 - P.771

 腰部脊柱管狭窄は独立した疾患ではなく馬尾神経および神経根を圧迫して間歇性跛行を主症状として呈する症候群ないし病態で,多くは多元的複合的変化にもとづいて発生し,起立歩行する人類に特有のもので姿勢と深い関係がある.硬膜を介し馬尾神経と神経根を絞扼するものはこれを取りまく各種の比較的硬い組織,すなわち,脊椎骨,椎間板,関節および靱帯成分であるが,まずこれらについて13題の基礎的問題が論じられた.
 内容を大別してみると,成人晒骨標本から実測値をだし,検討をしたものが3題あり,新鮮解剖標本を使用したもの1題,単純レ線写真からの検討3題,myelographyからのもの1題,回転横断撮影によるものが5題,診断についてのもの1題であつた.

第4回脊椎外科研究会印象記—病理,病態,診断の部—主として造影所見

著者: 井上駿一 ,   辻陽雄

ページ範囲:P.772 - P.774

 筆者らが座長をつとめたBセクションは表のような13題が発表された.病態,病理,およびレ線特殊診断の一部がこのセクション中に含まれるという大変幅広い範囲にわたつたため座長の不手際もありまとまりを欠いた点を先ずお詑びしなければならない.spinal canal stenosisの概念がVerbiest(1954)らによつて成人の腰痛起因疾患として登場して以来,後部脊柱における病的状態に再び注目し一種のentrapment syndromeとして詳細に検討しなおされ腰痛の病態論に1石を投じた点は評価されるが反面既存の椎間板ヘルニア,変形性脊椎症,分離辷り症,無分離辷り症など一連の「椎間板症」の病態をこのspinal canal stenosisの概念とどのようにマッチさせて行くかが大問題となつている.いわば従来の疾患を縦に見る行き方に対し横断的に"stenotic condition"として新しくとらえる行き方であるため現状では発表者個々にとつてspinal canal stenosisの内容のとらえ方に少しずつ差があり論議のすれちがいがあることは止むを得ない過程かも知れない.

第4回脊椎外科研究会印象記—症状・病態の部

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.775 - P.777

 筆者と片岡治講師が司会を担当したCの部では,腰部脊柱管狭窄に関連する問題のうち,臨床例の分析,とくにその臨床症状や検査所見の解析,特殊な疾患に起因する脊柱管狭窄および腰部脊柱管狭窄症の定義,概念,分類等に関するものがとりあげられた(表参照).以下これらの問題に関して行われた発表の要旨と討論の焦点を中心に振返つてみたい.

第4回脊椎外科研究会印象記—治療の部

著者: 平林洌 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.778 - P.780

 このセクションに課せられた討議内容として,治療効果の判定基準,保存的治療と観血的治療の適応,方法,成績,さらには固定術併用の要否,長期予後不良例の検討などが予定されたが,現時点では多くの点が未解決の問題として残される結果となつた.以下その経過を述べ,座長印象記にかえたい.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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