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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科11巻9号

1976年09月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・10

手の腫瘍および腫瘍類似疾患

著者: 田島達也

ページ範囲:P.784 - P.787

概説
手の領域にみられる腫瘍および腫瘍類似疾患については以下のような特徴が指摘できる.
(1)Ganglion,epidermoid cyst,mucous cystなど変性要素をもつ腫瘍類似疾患が多い.
(2)滑膜性腱鞘の巨細胞腫,結節性滑膜炎,sarcoidosisなど炎症要素をもつ腫瘍類似疾患が多い.
(3)血管腫,リンパ管腫(拡張症),動静脈瘤,exostosis,enchondromatosisなど先天異常ないし過誤腫の範疇にはいる腫瘍が多い.
(4)悪性腫瘍については上皮性,非上皮性,および原発性,転移性にかかわらず少い.ただX線曝射等による慢性潰瘍の悪性化は過去において往々みられた.
(5)爪周辺には比較的稀であるがglomus腫瘍melanoma等の特徴ある腫瘍が発生する.

視座

整形外科夢物語

著者: 児玉俊夫

ページ範囲:P.789 - P.789

 1985年のある日,過去10年間を振り返つてみた.
 1975年のコペンハーゲンでの第13回SICOTには,日本からの参加者は500名に近く,米国の300名をはるかに抜き,また採用演題も60題を超え,これまた1位だつた.翌年2月のシンガポールでのSEAPAL(南東アジア・太平洋地区リウマチ学会)も,全参加者250名の中,日本からは実にその半数近くの100名で,発表講演もむろん1位を占めていた.これらの数字だけからすると,日本の医学も世界に冠たるものと思われるかもしれないが,妙な噂が特にアジア各国から立ち始めた.日本が学会でもアニマルになつた.どうもつきあいにくいというのである.

論述

骨肉腫に対する化学療法—とくに術前局所動脈内投与法と手術の併用について

著者: 赤星義彦 ,   武内章二

ページ範囲:P.790 - P.797

はじめに
 四肢に原発した骨肉腫は,罹患肢の切断術によつて局所腫瘍の完全除去が可能であるにかかわらず,85%以上の症例が術後1ないし2年以内に肺転移を来たして死の転帰を辿る.これに対して術前放射線治療併用は古くから行われており,Coley's toxin,BCGなどによる術後の免疫療法や全身的化学療法も試みられているが,早期診断に若干の進歩がみられる現在においてもなお従来の方法,切断術のみでは5年生存率10〜15%の限界を越え得ない.すなわち骨肉腫の予後を決定するものは肺転移であつて,現時点における肺診断学で発見し難い肺の腫瘍細胞栓塞や微細転移巣を如何にして鎮圧するかが,第一の治療目標であり,治療成績向上のためには化学療法と局所根治手術併用しかあり得ないことは明瞭である.
 われわれは1963年以来,術前に制癌剤の局所栄養動脈内挿管投与intra-arterial infusion(以下i. a. infusionと略す)を行なつた上で切断等の根治手術を施行し,さらに術後の化学療法を行う一連の治療方式について基礎的,臨床的研究を進めて来た.本稿では,とくに術前化学療法の意義,実施法とその治療成績など,われわれの研究経過について述べ,諸賢のご批判を仰ぎたい.

悪性骨腫瘍の治療—特に肺転移巣の処置とその考察

著者: 柴田大法

ページ範囲:P.798 - P.808

はじめに
 悪性骨腫瘍,特に骨肉腫の治療成績を向上させるため種々の試みがなされてきたが,近年その予後の改善の上に化学療法が貢献していることが認められ5,20,21,24),そして一方では確実に長期生存例が増加してきている.一般に長期生存例には骨肉腫としては何らかの非定型的な面があることが指摘されており1,7),それらがかかる特殊例の積重ねに過ぎないともいえる一面があるのは否めない.長期生存例を検討してみるとそれが2大別されるのに気付く.一つは原発巣の根治手術後,転移を全く生じることなく健在なものであり,他は一旦転移を生じながらその切除に成功して健在であるものである.前者は骨肉腫一般からいえば非定型例であるのに対し,後者はむしろ定型的骨肉腫例の側面を有している.著者らは原発巣根治術後出現した肺転移に対して,肺手術をかなり積極的に行つてきたが,かかる骨肉腫転移巣に対する肺手術が果して根治手術たり得るのかという疑問をかねて抱いてきた.今回,われわれの症例をその意味で検討すると共に,文献的にみた肺手術の根治性を探求してみたので論述してみたい.

人工股関節のゆるみ—生体力学的実験と臨床的考察

著者: 末沢慶紀 ,   ,  

ページ範囲:P.809 - P.815

はじめに
 人工関節が変形性関節症をはじめ,あらゆる骨関節疾患の治療革命と評価され,欧米をはじめとしてわが国でも使われるようになつてから20数年を経る.その合併症は観察期間が長くなるにつれて,諸家により,臨床的,実験的に詳しく検討され報告されている.外界における滅菌方法をどのように改良しても,深在感染率をゼロにすることはできないように(Buchholtz 1973),最も深刻な合併症である感染の存在する限り人工関節の将来は全く楽観視はできないし,感染後の人工関節剔出術は,人工関節自体の運命の暗さを暗示しているようでもある.
 人工関節のゆるみは,感染と密接な因果関係にあり,臨床的,X線上,血液所見,培養所見,などを綜合してもこの二つの因子を別々にわけて考えることは難かしい.というより区別すべきでなく,互いに一次的,二次的に影響する.

軟部腫瘍およびその他の軟部疾患の血管造影について

著者: 上尾豊二 ,   広谷速人 ,   伊藤鉄夫 ,   田中寛 ,   坂本力

ページ範囲:P.816 - P.831

 四肢の腫瘍を診断するに際して,骨腫瘍は単純レ線撮影あるいは断層撮影で,かなり豊富な情報が得られる.しかし軟部腫瘍はinvasiveに骨をおかすことはあつても,その主病変は軟部組織であつて,骨腫瘍におけるようにはレ線像は有用ではなく,診断に困難を覚えることが多い.したがつて67Ga,97mTc-BLM等による腫瘍シンチや血管造影は軟部腫瘍の術前診断の有力な手段ということができる.われわれはあらかじめ腫瘍シンチを行い大体の予想を得た上で,血管造影を施行している.悪性軟部腫瘍と良性疾患では治療のプログラムおよび手術方針が全く異なることは言をまたない.血管造影の段階で,少なくとも悪性と良性の鑑別がつけば,強いてバイオプシーを行う必要がなく,転移の機会を減らすとともに,造影時のカテーテルを利用して,そのまま抗癌剤の動脈内注入を開始することができる.そのような意味からも血管造影による悪性,良性の鑑別は大きな意義がある.われわれは,これまでに施行した四肢の各種軟部疾患の血管造影の所見について検討を行つた.ここにその概略を報告する.

関節リウマチにおける肘関節形成術(皮膚中間挿入膜)後のレ線変化—特に骨吸収像を認めた例について

著者: 木村千仭

ページ範囲:P.832 - P.839

 関節リウマチ(以下RAと略す)における肘関節形成術は,他の疾患における場合と適応や術後成績に多少の異なりがあるとしても,目的・術式や効果は本質的に同じである.
 1973年,第46回日本整形外科学会席上,著者とProf. VainioはRAにおける208肘関節形成術(Herbert法およびHass変法)の成績が意外に良いことを発表したが1,2),これに関連して,皮膚を中間挿入膜としたHass変法による肘関節形成術の術後follow-upを,レ線像変化とくに肘関節の骨吸収を中心として検討したので報告する.

検査法

加熱熱電対法による皮膚・筋血流の測定

著者: 荒井三千雄

ページ範囲:P.840 - P.845

はじめに
 血流の測定のためにプラチスモグラフィー,超音波血流計,電磁血流計,RIを用いる方法,加熱熱電対法などが臨床にも応用されている.しかしこれらの原理はそれぞれ異なるため目的や測定部位によつては使用できないことがあり,また測定法の難易,精度などの点でも一長一短がある.
 整形外科領域において特に加熱熱電対法が有用とみられるのは次の理由による.1)注射針型のプローブを使用すればその先端のまわりで直径約3mmのごく狭い範囲の組織血流の変化を検出できる.2)注射針型のプローブの外径は0.8mmで,刺入時の痛みは少なく,また皮膚血流測定には小さな円板状のプローブを皮膚表面に貼るだけであり,被検者の負担が軽い.3)連続的に記録できるため各種の動作や運動時の血流変化を知るのに役立つ.4)多チャンネルの測定機器を使用すると皮膚と筋の血流,健側と患側の血流などを同時に記録して比較検討することができる.

紹介

電気的仮骨

著者: 井上四郎

ページ範囲:P.846 - P.851

はじめに
 第13回国際整形外科災害外科学会(SICOT 1975年)において,第一会場のメインホールでもたれたシンポジウムは ①電気刺激による骨癒合の促進 ②人工股関節全置換術 ③開発途上国における整形外科医の教育,の三題であった.
 電気刺激による骨癒合の促進は大きくクローズアップされた.このことは日本からの出席者には意外の感があつたかもしれない.日本の学会では,京都第二赤十字病院整形外科より,適時出題されていたが,奇異な演題として論議を呼ぶこともなく見過ごされてきたのが現況である.しかし,現在この研究が脚光を浴びてきた理由は,骨,関節を扱う整形外科医が直面している諸問題に解答を与えてくれそうだと期待され始めたからである.この点について解説を加え,われわれの小さな成果を追加して報告する.

臨床経験

Lumbar spinal canal stenosisと燕尾様椎弓

著者: 国分正一 ,   保坂武雄 ,   武田久雄

ページ範囲:P.852 - P.855

はじめに
 Verbiest(1954)の報告以来注目されているlumbar spinal canal stenosisは,その成因に関しても,定義と解釈の異なる立場から数多くの報告がなされている.それらの中で,Epsteinら(1962)は成因を椎管前後径の狭小のみに限ることなく,脊椎後方成分,ことに椎間関節周囲の形態にも求めて,developmentalな要素としてbulbous facets,shallowness of lateral recesses,vertical orientation of facetsを挙げている.Schatzkerら(1968)はそれを支持しているが,一方,若松ら(1970)は,lateral recessの短縮は椎体後縁,関節突起,椎弓などの肥厚に由来し,それらがspondylosisにおける骨変化と一致すると述べている.Vertical orientation of facetsを除くshallowness of lateral recessesやbulbous facetsをdevclopmentalな要素と断定するには問題があるようである.
 最近,私達はlumber spinal canal stenosisの症例であつて,腰椎椎弓がレ線前後像で特徴的な形態を呈する2例を経験した.

Zuggurtungsosteosyntheseの適応の拡大—上腕骨骨折・鎖骨骨折・肩関節固定・脛骨上端部骨折・high tibial osteotomyへの応用

著者: 横江清司 ,   坂野克彦 ,   服部順和 ,   伊藤晴夫 ,   平野秀夫 ,   石田義人

ページ範囲:P.856 - P.862

 "Zuggurtung"という言葉は,機械学からとられたもので,一般の建築技術の中に広く用いられている.1945年Pauwels9)は,人体の支持ならびに運動器官の機械学的な面からの研究を発表した.彼によれば筋肉や靱帯が体重による長管骨への歪力に対しZuggurtungとして働き,歪力の強さに応じた筋肉の緊張が骨への負担を少なくすると述べている.1963年Weber13)はZuggurtungsosteosyntheseの原理とその可能性について詳細な研究を発表,肘頭骨折,股関節部の骨切り術・膝蓋骨骨折,足関節顆部骨折におけるZuggurtungsosteosynthescの実際について述べ,その他の可能性として肩峰骨折・小児上腕骨顆部骨折・hightibial osteotomy・第5中足骨粗面の骨折をあげている.
 1965年Pauwels10)は,膝蓋骨骨折・内反股の外反骨切り術・大腿骨上腕骨の偽関節・大腿骨頸部内側骨折に対するZuggurtung法の実際について述べ,その原理は持続的に加わる歪力を骨折面への持続的な圧迫力として利用する機能的圧迫固定法であると述べている(第1図).

慢性関節リウマチ100症例に対するD-ペニシラミンの臨床成績

著者: 吉野槇一 ,   小坂弘道 ,   島田畯介 ,   内田詔爾

ページ範囲:P.863 - P.868

はじめに
 Wilson病,重金属中毒,シスチン尿症またはシスチン結石の治療に応用されているD-ペニシラミン(D-P.)にマクログロブリン解離作用があることがわかり,マクログロブリン血症,溶血性貧血にも用いられるようになつた.特にこれら疾患で血中のマクログロブリンが減少するという事実にJaffe(1965)が注目し,初めて慢性関節リウマチ(RA)の治療薬として使用した1).その後,D-P.に関する基礎的,臨床的研究が数多く発表され,特にRAに対する高い治療効果は世界的に注目されるようになつた.
 しかし,D-P.の副作用は決して少なくなく重篤な副作用も数少ないが報告されている.今回著者らはRA患者100症例にD-P.(商品名:メタルカプターゼ)を投与したので,その臨床効果,副作用,各検査値の推移などを文献的考案を併せて述べてみたい.

腱黄色腫について

著者: 陳義龍 ,   松井宣夫 ,   藤塚光慶

ページ範囲:P.869 - P.878

緒言
 運動器官を扱う整形外科医が最初に腱に起こる腫瘤を見る機会が多い.腱黄色腫は腱に現われた高脂血症による腫瘤である.この疾患は稀であるが,その背後に重大な家族性心血管系障害があり,また1967年,Fredrickson以来,血漿リポ蛋白の分析法が導入され,いわゆるphenotypeによる分類から,腱黄色腫は高β-リポ蛋白血症の現われであることが分り,ほとんどが家族性Type IIであることが明らかになつた.本疾患の発生機序については,今だに推測の域を出ていないが,臨床の面から,本邦文献上収集し得た50例中,記載明確である36例を表にまとめて検討し,われわれが経験した2例を付け加えて報告すると同時に,その本態について,今までの知見をまとめてみる.

脳疾患に伴うpara-ostéo-arthropathyの治療経験

著者: 小泉正明 ,   山口智 ,   林輝明 ,   岡本連三 ,   秋山典彦 ,   木下潤

ページ範囲:P.879 - P.885

はじめに
 脊髄損傷に合併する異所性化骨の診療や研究の報告が比較的多数みられるのに比べて,片マヒ等の脳疾患のそれの治療成功例の報告は少ない(第1表a).片マヒはRusk13)もいうようにその90%は歩行を期待し得る疾患であり,手術により歩行不能のものを可能とすることができるのでその臨床的メリットは大きい.われわれは当リハ・センターにおいて異所性化骨が発生し強直となった6症例の手術を行いADLに著しい改善を見た.
 片マヒ患者の歩行は下肢に随意運動がなくても,つまり分離動作が完全でなくても陽性支持反射を利用して可能である場合が多い21).痙性による内反や尖足に対して腱の手術を行ないそのdeforming factorを減少したり利用したりして歩行は可能となり得る.POA合併の患者でも内2例にこの種の手術を併用して効果を上げた.

股関節全置換術,術中,術後管理の経験とその反省

著者: 白井希明 ,   秋山泰高 ,   菅沼紘 ,   藤田繁 ,   寺本健二

ページ範囲:P.886 - P.889

 長浜病院整形外科における股関節全置換術手術麻酔症例をまとめその症例の中より興味ある所見をまとめて見た.
 股関節全置換術に関する合併症1〜3)については既に多くの報告があり,その対策14〜16)についての報告がある.

座談会

Microsurgery—筋肉の遊離移植をめぐつて

著者: 玉井進 ,   生田義和 ,   波利井清紀 ,   岩原寅猪 ,   矢部裕

ページ範囲:P.890 - P.899

 この前の第2回microsurgery研究会でシンポジウムを拝聴して,microsurgeryがこんなに進歩したかということを知つて,驚き,かっ喜んだことでした.その企画の少なくとも主要部分をここに移して,できればもう少し臨床的に深く突つ込んだお話をしていただき,現時点における日本のmicrosurgery,あるいは国際的な情勢を読者にお伝えしたらという願いから,この企画をしたのであります.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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