icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻1号

1977年01月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 人工関節の手術・1

Charnley型人工股関節

著者: 長井淳

ページ範囲:P.2 - P.5

 人工股関節手術は術後臨床症状が確実に改善される点において多くの医師,患者の信頼を得て来た.なかでもCharnley型人工股関節は次の3点において最も信頼のおける入工関節である.すなわち,①HDPソケットと不銹鋼骨頭を骨セメントにて固定する現在の型が決定されたのが最も古く,それ以後基本的な変更はされていない.したがって臨床観察期間が最も長い.②厳格に規定された同一の手術手技によって行われた手術例数が,Charnleyの病院のみで10,000例以上に達した.多くの症例の実証がある.③関節の構造,材料,摩耗,手術手技,感染予防に関し,科学的な分析が行われ,文献として参考にすることができる.
 さて,手術を行う整形外科医にとって有利な点は次のとおりである.すなわち①いかなる症例に対しても同一の手術手技で対応できる.指示に従って手術手技を進めていけば,術者の経験の如何にかかわらず同様の優れた成績を得ることができる.②手術手技に適した器具が完備している.③脱臼性股関節症の多い日本においては,ソケット直径の最も小さいCharnley型が適している.

巻頭言

第50回日本整形外科学会総会を迎えるに当りて

著者: 伊丹康人

ページ範囲:P.7 - P.8

 日本整形外科学会が大正15年(1926)に田代義徳先生の音頭によつて創められ,今回で第50回を迎えることになつた.はからずも,この記念すべき第50回日本整形外科学会の会長を,小生がつとめることになつたことは,私にとつては無上の光栄であり,この上ない喜びである.と同時に,会員の方々に満足して頂けるような有意義な学会の開催に,非常な責任を感ずる次第である.
 なんといつても,まず第50回の学会を記念する式典と行事をやらねばならぬので,4月8日にそれを開くことにし,学術集会は9,10,11日の3日間とした.

視座

最近の論文原稿をみて

著者: 天児民和

ページ範囲:P.9 - P.9

 最近本誌に送つて来られる論文原稿は可なり多くなり受付けてから印刷公表になるのに10ヵ月〜1年を要する状況である.日本の整形外科学の研究者の増加と研究心の旺盛さを示すものとして慶賀すべきことと思う.しかし多くの論文の中には問題のあるものも少くない.
 読者の中には外国雑誌に投稿せられた経験のある方も多いと思うが,外国の有力な雑誌は論文の内容はもちろん,論文の形式等にも厳しい注文をつけ,編集方針に従わないものは遠慮なく拒絶返送して来る.日本でも今後は論文の内容,形式,図表の整備,引用文献の選択等改善を要することが多い.特に外国語の乱用は驚くべきものがある.国語に訳し難い言葉もあるので,その場合外国語をそのまま使用することもあるが,容易に訳し得る言葉を持ちながら外国語をそのまま使用しているのは日本だけの問題ではなかろうか.試みに米英やドイツの雑誌には外国語の氾乱したものはない.特にフランスでは国語の浄化を考え街頭の広告からも英語を追放しようとしている位である.われわれも日本語の論文では日本語をもつと大切に取扱うべきと思う.ことに滑稽に感ずるのはやたらに英語を使用し,しかもその意味を取り違えている時である.外国語に通じていることを誇示したいなら堂々と外国語で論文を発表すべきである.私は日本語をより美しくするためにも不必要な外国語の乱用を慎しむべきと思う.

論述

変形性股関節症大腿骨頭における破壊と修復

著者: 廣谷速人

ページ範囲:P.10 - P.20

 変形性股関節症(以下変股症と略す)における大腿骨頭の病理組織学的所見については,従来多くの報告5,8,16,18,19)があるが,病変の成立および進展に関与する要因についての十分な研究はみられない.
 われわれは変股症,とくに二次性変股症にみられる大腿骨頭関節軟骨および骨柱の変化を,剔出標本および両股関節のレ線像との関連において検索し,とくにbiomechanicalな観点からの解明を試みたので,ここに報告する.

強直性脊椎炎による股関節強直に対する人工関節置換術(Charnley)の経験

著者: 津布久雅男

ページ範囲:P.21 - P.27

はじめに
 強直性脊椎炎(Ankylosing Spondylitis,以下A. S.と略す.)で,仙腸関節や脊椎のみならず股関節に強直を来たすと,移動,歩行を中心とする日常生活動作(Activity of Daily Living,以下A. D. L.と略す.)に著しい障害をおこす.われわれはこれら6症例10股関節に人工関節置換術(Charnley低摩擦関節形成術)1)を行い,限られたものではあるが,確実な関節機能の改善,ひいてはA. D. L.の改善を得ている.以下われわれの経験を述べ,考案を加えて報告する.

新鮮遠位脛腓関節離解に対するsyndesmosis stapling法(Cedell)

著者: 三谷晋一 ,   佐藤悠吉 ,   楠本剛夫 ,   土方浩美 ,   福沢玄英

ページ範囲:P.28 - P.40

はじめに
 Cedell(1962)は足関節の回外-外旋損傷(supination-external rotation injuries)により生じた遠位脛腓関節を中心とする新鮮足関節損傷に対し,前下脛腓靱帯(anterior inferior tibio-fibular ligament)の観血的修復と同時に,修復された靱帯の補強固定のため,syndesmosis stapleを考案し,stapleにより,syndesmosisの固定を行なつた.腓骨骨折には,時に,cerclageで締結固定を行ない,また三角靱帯の断裂に対しては,靱帯の修復を行ない,内果骨折の固定にはPalmar pinを使用した.以上の方法により,非観血療法による成績(Magnusson,1944)と対比し,良好な成績を得たと報告している.
 われわれは,このCedellの方法が従来行なわれている各種観血療法に比べて解剖学的および生理的により良く合致していると考え,さらに適応をひろげ回外-外旋損傷のみならず回内-外旋損傷により生じた遠位脛腓関節離解(Lauge-Hansen,Stage Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ)および脱臼骨折にまで,応用を試みた(第1図).現在までのところ,比較的満足すべき結果を得ており,今回は,その手術手技を紹介するとともに,われわれの行なつてきた手術経験にもとついて,文献的考察と若干の知見を述べる.

検査法

ソフテックスX線撮影によるリウマチ手の検診

著者: 井上一 ,   杉田勝彦

ページ範囲:P.41 - P.47

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下RAと略す)のX線学的検査は,本疾患の診断ばかりでなく病期の進行を判定する上にも欠くことのできない検査法であることは衆知のとおりである.特にリウマチ手指における本症の発症頻度は90%を越しており,そのX線撮影は必須である.
 もちろんこれまでにRAのX線検査法,評価基準に関する報告は数多いが,病初期における読影は撮影フイルムの鮮明度にかかつており,不満足なことが多い.特に軟部組織の変化あるいは前びらん状態といわれる初期病変は,これまでの一般的なX線検査では確かな読影がえられない.もちろん,軟部組織撮影には,ノンスクリーンフイルム法などいくつか工夫されてきたが,条件設定も難しく簡単にはいかない.

臨床経験

骨Paget病の6例

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲明 ,   三上隆三 ,   井上肇 ,   田中秀 ,   山崎典郎 ,   杉岡宏 ,   曾我恭一 ,   土居通秦 ,   御巫清充 ,   大井淑雄

ページ範囲:P.49 - P.56

はじめに
 骨Paget病は1876年J. Paget23)が長期にわたつて観察した1例の報告以来,症例報告の増加とともに病態についても多くの知見が得られるようになつたが,なお原因不明の骨系統的疾患で欧米では比較的多数の症例が見られるが,東洋人には少い15,21)とされているものである.本症は病変の広がりによりpolyostotic typeとmonostotic typeに分けられる.この分け方は病期によるものか,本態的差によるものかは不明であるが,前者の例は後老の例に比し著しく少い.合併症として恐れられるPaget肉種の発生や高送血性心不全は,骨病変が烈しければその発症の可能性が増大する.骨病変過程を抑制することが最良の治療となるであろう.Calcitonin12),Mithramycin10),Diphosphonate26)等の投与により病変過程を抑制することができるとの報告がある.本交の目的は6症例(内2症例は既発表例)32)のまとめと,その中2例についてのcalcitoninの使用経験を述べ,多少の考察を加えることである.

悪性化をきたしたepidermoid cystの1例

著者: 三井宜夫 ,   中田和光 ,   原田稔 ,   高倉義典 ,   佐野貞彦 ,   玉井進 ,   増原建二

ページ範囲:P.57 - P.60

はじめに
 Epidermoid cystは主として指先の軟部組織に好発し,時には骨を浸食するが,悪性化をきたすことは稀である.
 最近,足底部から踵骨内へ浸潤してレ線上骨嚢腫様像を呈し,悪性化をきたした本嚢腫を経験したので文献的考察を加えて報告する.

Freeman-Sheldon症候群について

著者: 嶋村正 ,   白田寧 ,   本田恵

ページ範囲:P.61 - P.66

はじめに
 Freeman-Sheldon症候群は,1938年にFreemanおよびSheldonが,顔面,手,足に特有の変形を有する先天異常の2例を,cranio-carpo-tarsal dystrophyとして報告したのに端を発し,1953年にOtto3)が,3例目の報告をして以来,われわれの渉猟し得た範囲では,現在まで38症例(本邦では3例18,19))の報告例をみる.今回,われわれは先天性股関節脱臼を合併したFreeman-Sheldon症候群の1例を経験したので,過去の報告例を集計して,その症候の比較を試みた.

関節強直をきたした左上肢脂肪腫症(lipomatosis)の1症例

著者: 三枝憲成 ,   赤坂勁二郎 ,   伊藤恵康 ,   竹田毅 ,   里見和彦 ,   内藤信行 ,   西田一己 ,   樋口公明

ページ範囲:P.67 - P.72

はじめに
 脂肪腫は軟部良性腫瘍の中でも高頻度にみられるが,多発性で浸潤傾向を示すものは少なく,特に骨関節にまで浸潤がおよぶものは,文献上Oosthuizen(1947)の報告例をみるに過ぎない.今回,われわれは,50年の経過をへて左上肢の各関節に浸潤し,関節強直をもおこした多発性の脂肪腫症(lipomatosis)を経験したので報告する.

Ellis-van Creveld症候群の1例

著者: 奥平信義 ,   平松伸夫 ,   村瀬雅之 ,   久保敬

ページ範囲:P.73 - P.77

緒 言
 1940年Ellisとvan Creveldがectodermal dysplasia,多指症,chondrodysplasia,先天性心疾患を4主徴とする疾患をのべ,1933年のMcIntoshが記載した1例に自験2例を加え,計3例をchondroectodermal dysplasiaと名づけ発表した.後にこれはCaffeyによりEllis-van Creveld症候群と名づけられるようになつた.その後外国では1964年までに100例近い症例報告があり,本邦でも1954年の小田の報告以来本疾患として現在までに報告されているものは,著者の調べ得た範囲では15例に達している.最近われわれは典型的な本症候群の1例を経験したのでその臨床像について述べ,Ellisらの報告例と本邦報告例を比較し,文献的考察を加えて報告する.

硬膜腔内に脱出した第12胸椎,第1腰椎間椎間板ヘルニアの1例

著者: 中島聰 ,   寺部章介 ,   伊藤雅則 ,   猪飼通夫 ,   加藤隆

ページ範囲:P.78 - P.81

 椎間板ヘルニアが硬膜外腔に脱出遊離する例は稀なものではないが,今回われわれは第12胸椎・第1腰椎間の椎間板が硬膜腔内へ脱出したきわめて珍らしい症例を経験したので報告する.

まれな橈側手根伸筋短縮症の1例

著者: 見松健太郎 ,   杉浦皓 ,   鈴木竑俊

ページ範囲:P.82 - P.85

 まれな橈側手根伸筋短縮症に腱のZ延長術を行い,症状の改善した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

骨斑紋症(osteopoikilosis)の症例

著者: 前田敬三 ,   来田治

ページ範囲:P.86 - P.92

 Osteopoikilosisはosteopathia condensans disseminata,spotted boneなどとも呼ばれているが,主として管状骨骨端部,骨幹端部にX線写真上直径2〜10mmの円形ないし楕円形の班点,時に線状の骨硬化陰影の像が見られるものである.稀なものといわれながらも次第にその症例報告が増えてきているが,われわれも典型的な1例を経験したのでその概要を述べて本邦における症例に追加報告したい.

学会印象記

第11回先天股脱研究会

著者: 石田勝正 ,   森下晋伍

ページ範囲:P.93 - P.97

 先天股脱研究会も回を重ねるに従い盛大に発展してきた.創立に尽力された坂口,山田,香川諸先生に座長をしていただき,前回と同じテーマを村上先生にお願いした.研究会も,ともするとかた苦しい学会のようになりやすいが,研究会という名である以上ざつくばらんな討論と情報交換の場であつてはじめてその意義が生まれよう.今回も気軽な雰囲気の内に討論が進められたことは,本研究会の伝統と思う.そして貴重な経験と研究をもとにして力強く前進する気迫が感じとられた.
 先天股脱多発国である我が国は難問題をたくさんかかえている.今回は成因や予防もテーマにとりあげたが,全会員が力を合わせてこの問題にとり組むなら,必ずや大きな進歩がもたらされよう.まず先天股脱の少ない国にしてから,この疾患を再検討するのが正しい道と考える.この研究会が予防運動についてもその機能をはたしつつあり,好ましいことである.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら