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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科12巻10号

1977年10月発行

文献概要

整骨放談

天平の仏たちの姿勢

著者: 伊藤鉄夫1

所属機関: 1京都大学

ページ範囲:P.1025 - P.1025

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 定年退官して40年間の疲労が一度に出たような気がする.この疲れた心を奈良の古仏たちがそつと癒してくれる.東大寺の三月堂(法華堂)は天平の古仏で有名である.この古仏たちはそれぞれ特有の姿勢を示している.姿勢の基本型式は脳幹網様体によつて統御されているが,除脳状態においてこれをよく観察することができる.除脳状態では,仰臥位で頸が正面を向いているときは,両上肢は屈曲位,両下肢は伸展位に固定されているが,頸の運動(緊張性頸反射)や空間における体位の変化(緊張性迷路反射)によつて四肢に一定の型にはまつた屈伸運動が誘発される.これらの反射は汎在性平衡反応general static reaction of Magnus and de Kleynと呼ばれる姿勢反射であることは広く知られている.人のあらゆる運動はこの姿勢反射を基盤として行なわれる.古仏にみられる姿勢は頸の回転による典型的反射姿勢に一致している.緊張性頸反射では,頸を回転すると顎側の上下肢が伸展し,頭側の上下肢が屈曲する.また頸を前屈すると両上肢が屈曲し,両下肢が伸展する.
 三月堂の中央には本尊である不空羂索観音像があり,その両側に有名な日光菩薩と月光菩薩が,半ば眼を閉じ,静かに白い寂光を放つている.この3つの仏像は前方をながめ両上肢を軽く前方に出し,肘を屈曲し合掌して直立している.この姿勢は直立位における典型的基本姿勢である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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