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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻11号

1977年11月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 人工関節の手術・10

手・指の人工関節

著者: 山内裕雄

ページ範囲:P.1028 - P.1031

 指関節用の人工関節は1958年のBrannon-Kleinの金属蝶番関節にはじまり,Flattの金属関節にいたる第1期のものがあるが,問題点が多く,第2期のものとして約10年前よりシリコンラバー単体構造のSwanson型・Niebauer型インプラントや,ポリプロピレンを用いたCalnan型・Calnan-Nicolle型が実用に供された.このうち前2者が未だ多く使われ,特にSwanson型が最も多く用いられている.私はその開発期,Swansonに協力していた関係上,この型のみに限って臨床応用して来た.このシリーズでは,特にSwanson型について図を主体に解説する.第3期のものとして,他の関節で評価の定まった,金属とポリエチレンの組合せのものがSt. Georg型をはじめとしていろいろと出て来ているが,未だ"時の判定"を得ていないし,問題が多いようでもある.以上のどれをとっても未だ完成の域に達したものはなく,今後の課題である.
 これら人工指関節の対象となるのは主として慢性関節リウマチ(RA)であり,私の経験もRA手に限られている.呈示例はすべてこの疾患を対象としたものである.詳しくは,最後に挙げた拙文を参考にしていただきたい.

視座

大腿骨前捻について

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.1033 - P.1033

 大腿骨近位端部の前捻は先天股脱においてしばしば異常に増大することは古くから指摘されており,このために骨頭の非固定性あるいは再脱臼の原因となることは既に1921年Brandesが記載している.
 先天股脱を数多く扱う整形外科医にとつて大腿骨頸部前捻はきわめて重要な問題であつて,前捻角の測定法,測定値の正確さ等について払われた先人の努力は周知のように極めて多大である.捻転などの幾何学的関係を考え便宜上,大腿骨を解剖学的に骨頭ならびに頸部を含む近位端部,骨幹部および顆部に三大別し,それぞれに頸軸,骨幹軸ならびに通顆軸(または顆部後方切線)を想定し,いろいろの方法が提案されている.

論述

側彎症の肺機能

著者: 太田和夫 ,   加藤幹夫 ,   佐川弥之助 ,   加藤実 ,   渡辺秀男 ,   樫本龍喜 ,   小野村敏信

ページ範囲:P.1034 - P.1044

はじめに
 側彎症は単に脊柱の彎曲異常を示すのみではなく,胸廓の変形を伴う事はすでに紀元前4世紀にHippocratesにより述べられている.このように変形した胸廓が肺機能の低下を伴う事については,1845年にSchneevoltが肺活量の減少を指摘して以来,数多くの報告がある.
 近年,側彎症に関する社会的な認識が高まるとともに,受診患者数は著明に増加しているが,本症患者が呼吸器症状を主訴として受診する事は極めて稀である.この事は側彎症の発症が多くは思春期以前であり,たとえ胸廓の変形を有していても,この年齢では呼吸器症状に関して代償機能が良く保たれており,無症状に経過する者が多いことを示している.しかしこの年齢以後には,彎曲の増加または加齢とともにその代償機能が低下し,呼吸器症状を来たす者があることは事実である.

脊髄損傷の初期治療

著者: 木下博

ページ範囲:P.1045 - P.1058

はじめに
 重度の脊髄損傷を手術的に治療するか,保存的に処置するかについては,議論がつきない.積極的手術論者は,長年,脊髄損傷の原因の一部が圧迫にあると考えて,手術による脊髄の除圧を主張してきたが14,15),果してそうであろうか.手術を行なうか否かは剖検や手術時に得られた骨傷と脊髄所見から損傷の病理を明らかにし,その基礎の上にたつて考えられるべきである1).著者は現在までに25例の外傷性脊髄損傷死亡例を剖検したが,その所見から麻痺の原因は急激な脊柱の屈曲,伸展,回旋によつて生じた脊髄組織の挫傷と,それに基づく出血,壊死,軟化などの不可逆的変化によるものであつて1),受傷直後完全麻痺を呈するものの大部分は受傷と同時にその運命がきまつており,除圧手術の効果は及ぶべくもないことを知つた2〜5,29,31).したがつて急激に発症した完全麻痺でそれが48時間以上つづく場合には麻痺の回復を企図した手術はすべきでないと考えている1,9,23,32,42).除圧手術の効果が期待できるのは,不全損傷例であり,手術の適応となるのは受傷後,新たに麻痺が生じたり,麻痺が進行する症例と考えられるが5,6,13),手術はあくまでatraumaticでなければならず,手術による二次的な脊髄の損傷や血行への影響も考慮しなければならない.不全麻痺を手術してかえつて麻痺を増悪させた症例の報告は多い7,8,18,38)

幼小児上腕骨顆上骨折後の内反肘—特に手術的治療を中心として

著者: 坂巻豊教 ,   村上宝久 ,   熊谷進 ,   水島辰也 ,   藤中星児

ページ範囲:P.1059 - P.1068

はじめに
 小児の骨折のうち肘関節部骨折とくに上腕骨顆上骨折は日常最もしばしば遭遇するものであり,その続発症としての内反肘の発生も少なくない.しかし矯正手術については,適応・手術時期・手術法などに関して,はつきりとした根拠によるものが少ないようである.今回著者らは自家症例を詳細に検討し,いささかの知見を得たので報告するが,内反肘手術の一つの手がかりとなれば幸いである.

検査法

Müllerの全人工股関節置換術の術前作図法

著者: 藤原紘郎 ,   角南義文 ,   長野健治

ページ範囲:P.1069 - P.1076

はじめに
 Charnleyによつて組織的に始められた全人工股関節置換術(以下THRと略す)は,広く整形外科医によつて熱狂的に取り入れられ,事実多くの股関節疾患の患者に光明を与えている.そして小手先の器用さだけで挿入されたTHRでも近隔成績は幸いにも非常に優れていることが多い.しかし安易な考えからTHRをすれば将来に必らず悔を残すことは明らかである.そもそも股関節に限らず人工関節の手術は生体力学的に証明された正しい位置に人工関節を挿入しなければならないことは手術を行なう上での第一歩であり,もつとも重要なことである.そのためにTHRでは下肢における骨切り術とおなじように,術前に正確で合理的な作図を行なつておく必要がある.著者らはBern大学においてMüllerのTHRを習得してきたが,とくにここではMüller教授に等脚長にするための術前作図法の教示をうけたので,これを中心に紹介し,われわれの症例をつけ加えて説明したい.

装具・器械

脊髄疾患に対するCT scanの応用

著者: 米本恭三 ,   鈴木清之 ,   白石伸明 ,   室田景久

ページ範囲:P.1077 - P.1082

はじめに
 CT scanning(computerized tomographyの略)は神経放射線診断学上,画期的な検査法として,広く認められるようになつているが,開発されたのはごく最近のことである.すなわち,1972年英国のHounsfieldにより開発され,これをEMI社がCT scannerとして実用化し市場に出して以来,世界各地で製作が進められている.
 最近,われわれはこれを脊髄疾患に応用して,従来の診断法では知ることのできなかつたような知見を得ているので報告する.

臨床経験

軟部腫瘍の血管造影に関して

著者: 山脇慎也 ,   姥山勇二 ,   光崎明生 ,   後藤守 ,   森谷宏 ,   松野誠夫 ,   石井清一 ,   薄井正道 ,   佐々木鉄人

ページ範囲:P.1083 - P.1093

はじめに
 軟部腫瘍では,骨腫瘍の場合に較べて病理組織学的診断と同様に臨床的にも診断の根拠となる情報に乏しく,ときには良性と悪性の判定すら困難である.われわれは血管造影(動脈撮影)が原発腫瘍の局在,形態,大きさ,周囲組織との関連を間接的に表現し,さらに腫瘍血管の形態によつて良性悪性の判定に有効な手段となることを示した1)
 とかく軟部腫瘍では,その性状を明らかにすることなく安易に手術を行ないがちである.そのために,その後の治療に対して局所再発,遠隔転移その他の障害を生じて一貫した計画的な治療を逸しがちである.

環指屈筋腱皮下断裂についての考察

著者: 前田敬三 ,   若山日名夫

ページ範囲:P.1094 - P.1097

 手の屈筋腱皮下断裂はしばしば経験するものであるが,中でも環指における損傷が多く,私達もこれまでに3例経験した.これらの症例を提示するとともに,皮下断裂が環指に多いことについていささかの文献的考察を加えた.

骨内ガングリオンの2例

著者: 荻野幹夫 ,   小坂正 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰 ,   永野柾巨 ,   福島明 ,   柴久喜照一

ページ範囲:P.1098 - P.1101

 骨内ganglionの2例(1例は厳密には疑診例)の報告をし,他の嚢腫性疾患との鑑別について述べ,厳密な意味での定義をこころみた.

Chondropathia patellaeの治療経験

著者: 塚本創一郎 ,  

ページ範囲:P.1102 - P.1104

はじめに
 従来,Chondropathia patellaeに対する治療法は保存的療法に効果がなく,手術的にAbrasio patellae,膝蓋骨部分切除および膝蓋骨全切除1,2)の方法が用いられていたがよい結果をもたらさなかつた.MaquetおよびBandiは脛骨結節を浮上Abhebungすることにより満足すべき成績をあげ,著者は当科においてその実際にたずさわる機会を得たので報告する.

小児肘外顆骨折の治療

著者: 渡辺健児 ,   加賀完一 ,   米延策雄

ページ範囲:P.1105 - P.1109

 外顆骨折は,肘関節部骨折の中で顆上骨折に次いで頻度が高く,当院23年間に入院80例を数え,内75例が15歳未満の小児である.本骨折は肘伸展位で内反を強制された場合に起こるが,骨端核の出現時期が複雑なために初期診断が困難な場合もあり,外顆に附着するlateral ligamentと腕指伸筋群の収縮によつて骨折面に離開力が作用して外顆の剝脱転位を起こし易くほぼ整復された場合でも再転位することはしばしば経験される.初期のレ線診断で,前後,側面,斜位の三方向から転位の有無を確める他,経時的にも慎重な観察が必要である.

神経血管圧迫症状を呈した胸鎖関節後方脱臼の1治験例

著者: 森本敬三 ,   長谷川和治 ,   近藤正雄

ページ範囲:P.1110 - P.1113

はじめに
 胸鎖関節脱臼は,近年の交通事故および労務災害の増加とともに,日常診療の中で時々遭遇する疾患である.通常鎖骨の胸骨に対する位置関係で(1)胸骨前脱臼,(2)胸骨上脱臼,(3)胸骨後脱臼の3つに分類3)されているようである.我々はその中でも甚だ稀であつて,直達外力により鎖骨内端が胸骨柄の後方に脱臼した,所謂,後脱臼により神経血管圧迫症状を呈した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

慢性関節リウマチのsynovial cystについて

著者: 三井弘 ,   宮永豊 ,   園崎秀吉

ページ範囲:P.1114 - P.1118

はじめに
 慢性関節リウマチ(RA)によりsynovial cystが起こることはよく知られている.これは関節tendon sheath,bursaeと関連して形成されると考えられているが,その発生メカニズムについてもいくつかの考えがありまだ結論は出ていない.RAのsynovial cystはほとんどの場合,膝関節や手関節周辺にできるが,まれに他の四肢関節周辺にできる事もあり,神経圧迫やcystの感染,cystそのものによる関節運動の障害等を起こし臨床上,問題となる場合もある.また膝窩部のcystのようにまれに破裂を起こし,感染を併発することもある.
 今回の論文の目的はまれな部位に発生したRA synovial cystの症例の治療経験を中心とし,その臨床像,X-P像(造影所見を中心として),組織像を検討する事により,RA synovial cystについての考察を行なう事である.

左第10肋軟骨に発生したRib-Tip Syndromeと思われる1例

著者: 望月一男 ,   河路渡 ,   加藤正 ,   向後博 ,   布田由之 ,   太田信夫 ,   河口幸博 ,   草野佐

ページ範囲:P.1119 - P.1123

 肋骨弓部に局在する激痛を主徴とする,いわゆるRib-Tip Syndromeは,その疼痛が激烈かつ特徴的であるが,その治療が比較的容易であることと,比較的ありふれた症状の故に,広く一般に認識されていない.本症候群は1919年E. F. Cyriaxが初めて別個の疾患として記載し1),1922年R. Davies-CollcyがSlipping Ribと命名し2例報告して以来2),種々の呼称で呼ばれつつ1個の症候群として鑑別されようとしている.文献的に本症候群を概観すると,その疼痛は肋軟骨のanterior endのhypermobilityに伴つて発生し,多くは第10肋軟骨に発症するが,ときに第8,第9肋軟骨にも発症する.肋軟骨が直接胸骨に付着する第1肋軟骨より第7肋軟骨には発症せず,肋軟骨が相互に付着しているか,looseな線維性組織によつて付着している第8,第9,第10肋軟骨に発症する.この解剖学的特異性は,第8,第9,第10肋軟骨にhypermobilityを招来し易く,外傷との関連性が大いに問題となるところである.また,本症候群は上位肋軟骨のcostochondral junctionsやchondrosternal junctionsを冒すことはない1,3)(第1表).

追悼

Trueta教授の思い出

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1124 - P.1124

 去る7月9日から第10回ラテンアメリカ整形災害外科学会に招かれてRio de Janeiroの学会に出席した.その席上OxfordのDuthie教授にお目にかかつたが,そこでTrueta教授が数ヵ月前に亡くなられた話を聞いた.病気は直腸がんで手術したが切除できなかつたという話であつた.私のよく知つている世界の整形外科学界の長老がだんだんと少なくなつてゆくことは誠に淋しいことである.私がTrueta教授にゆつくり逢つて話をしたのは1965年で,現在の九州労災病院にPT,OTの学校ができる時に英米のその方面の学校を視察し,ドイツの整形外科学会に出席するのが大きな目的であつたが,British Councilが私に見学のコースを世話してくれた.丁度Oxfordに義肢のFitting Centerの計画があるというのでOxfordを訪ねた.その時Trueta教授の部屋でいろいろ話をし,一緒に食事をし写真をとつたりしたし,その後2回ほど日本にくるよう招待状を出したが残念ながら先方の日程とこちらの日程がうまく一致せずついに実現できなかつたのである.
 さて,ブラジルでTrueta教授が亡くなつたという話を聞いて日本に帰つてくるとJ. B. J. S.のBritish版が到着した.そこにTrueta教授の死亡の通知といろいろの思い出話がのつている.皆様もお読みになつたことと思う.Truetaは元来スペインの出身である.丁度彼がBarcelonaにいる時にスペインの1935年市民戦争が始り,Barcelonaの街も大半が爆撃せられ,多くの負傷者を彼は取扱い,新しいアイディアで創傷の肝油ギプス包帯法を発見した自もちろんこれは彼だけではなくてOrr氏も同様の方法を考えていたが,それを彼が多くの患者に実行した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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