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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻2号

1977年02月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 人工関節の手術・2

Charnley-Müller型人工股関節

著者: 敷田卓治

ページ範囲:P.100 - P.103

 Müller術式は,Charnley術式と並んで,もはや全置換術式における2大古典術式と称してよいまでに,普及化するに至た.Charnley術式が,いかにも確実なステップ・バイ・ステップの術式であるのに反して,Müller術式には,個性的な熟練による完成度が要求されている.そのためその術式は一見,容易にみえて初心者にとっては,極めて難解である.しかし一旦,彼の術式に習熟すれば,全置換術はよどみない水の流れのごとく,全く円滑に実施することができる、1967年11月,Müller先生の全置換術をアシストしたさい,彼はすでに1,000例を越える全置換術経験者であった.以来8年9カ月を経て,ようやく300例を越えた全置換執刀経験者にすぎない筆者が,改めて彼の術式を紹介することに躊いを感ずるが,Müller先生の量を質でカバーしようとする筆者の意図を了とされたい.彼の術式の特徴を図のように12項目に分けて図説する.

視座

手の触覚

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.105 - P.105

 皮膚知覚は手掌において最も高度に発達している.痛覚,触覚,温覚,冷覚のための特有の受容器があり,手掌では密に分布している.このうち触覚受容器はmechanoreceptorとして高度に発達しており,すばらしく精巧な構造をもつている.これには2種あり,第1のものは持続的圧刺激を正確な局在をもつて識別する受容器(Merkel's tactile cellおよびRuffini's ending)であり,圧を受けると,その刺激が持続する限り,求心インパルスを発射するからslowly-adapting receptorとよばれる.二点識別検査はこの受容器の感覚円の大きさとその分布密度を検査する方法である.刺激された2つの受容器の間に刺激を受けない1つ以上の受容器が介在するときに,大脳皮脳は2点を局在をもつて識別する.指頭の二点識別能は2mm以下であるから,その感覚円の直径は1mm以下である.第2の受容器は断続的圧刺激すなわち振動を感知するmechanoreceptor(Meissner's corpuscleおよびPacinian corpuscle)である.この受容器はたまねぎのような層状構造を有しており,圧刺激を加えた当初には求心インパルスを発射するが,速かに順応してインパルス発射が止まり,圧を除いたときに再びインパルスを発射する.

論述

大腿骨頸部内側骨折後の骨頭の運命と治療法の検討

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.106 - P.116

 大腿骨頸部内側骨折の研究の歴史は古く,おびただしい数の研究業績が報告されている.しかし今日まで疑う余地がないと思われていたPauwels分類法に対して英国学派(Garden)は反論し,骨折型はただ一つあるだけですべて同型である.異なるのは骨片の転位の段階であると主張した.この論争はまだ決着をみないまま今日に至つている.さらに治療面をみるに,Smith-Petersen三翼釘出現以来,実に多くの改良釘が試作されているにもかかわらず,治療成績は向上せず,術後の骨頭陥没collapse発生率は依然として20〜30%を下らない.これらのことは本骨折の難治の原因がまだ解明されていないことを物語つている.著者は人工骨頭置換術のさいに摘出された骨頭標本を蒐集し,骨折型,骨頭の病変について検討し,さらに実験的研究を行つて骨折後に起こる骨頭の病変について研究を行つた.本稿にその概略を記す.

頻回の関節内ステロイド注入により起こるステロイド関節症について

著者: 鳥巣岳彦 ,   馬庭昌人 ,   川嶌真人 ,   香月一朗 ,   北野元生 ,   徳藤真一郎

ページ範囲:P.119 - P.131

 1951年Hollanderら7)によつて紹介された関節炎に対する局所ステロイド注入療法は,局所において優れた抗炎症効果が期待できることや,全身的な副作用が少ないことより,広く一般に行われている.一方1958年Chandlerら3)はステロイド剤の関節注入は疑いなく関節炎の症状を改善させる反面,関節の著しい破壊を起こす場合があることを報告した.その後,頻回の関節内ステロイド注入によつて引起こされるステロイド関節症に関し,多くの報告があるが,そのほとんどは臨床的,レ線学的研究か動物実験による報告である.レ線所見に病理組織所見を対比させた報告は少ない.
 今回われわれは慢性関節リウマチの経過中,頻回のステロイド剤の関節注入によつて,急速に関節破壊を起こしてきた4症例について臨床的,レ線学的,病理組織学的検索を行なつた.その結果,これらの症例の関節軟骨の病理組織像は動物実験のそれと一致しており,しかも滑膜や露出せる骨組織より本症の発生機序に関する2,3の知見を得たので報告する.

慢性関節リウマチの膝関節造影像(第一報)

著者: 富士川恭輔 ,   田中義則 ,   戸松泰介 ,   小池昭 ,   島津孝 ,   伊勢亀富士朗

ページ範囲:P.132 - P.143

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下RA)において,膝関節の病態は,多くの場合,臨床症状と単純X線写真所見から判定されるが,これらのみでは滑膜,関節軟骨,半月,関節のう等関節構成体の病態の十分な把握は難しい.しかるに水平X線軸膝関節二重造影法によれば,滑膜,関節軟骨,半月,関節のう等の関節構成体の変化をより直接的に知ることができ,しかも侵襲が軽微で,外来で簡単に誰にでも行うことができる.
 膝関節造影法は,1900年代初期のRobinsonとWerndorffによる膝関節空気造影法をもつて嚆矢とする.その後1930年代までさしたる進歩はなかつたが,1930年代初期に陽性造影剤が導入され,さらにほぼ同時期に空気と造影剤による二重造影法も行われるようになつてから大きな進歩を遂げた.

股関節内反変形に対する大転子下降術の成績

著者: 梁復興 ,   広畑和志

ページ範囲:P.144 - P.151

 昭和35年以来約16年の間神戸大学および兵庫県立のじぎく園において主として先天股脱に由来した内反股48症例56関節に対して大転子下降術を施行した.今回追跡調査をする機会をえた干で本手術の手術成績について報告し若干の考察を加えてみた.

脊柱後側彎症手術の麻酔管理について—その肺機能の推移を中心として

著者: 内海武彦 ,   井上駿一 ,   山根友二郎 ,   藤塚光慶 ,   小林健一 ,   平賀一陽 ,   安東昌夫

ページ範囲:P.152 - P.161

 脊柱後側轡症,特に胸椎側彎では,脊柱の変形のみならず胸廓の変形を常に伴い,それにもとづく二次的肺機能障害は治療にあたつて常に注意を払わなければならない問題である.
 側彎症矯正のための手術の試みは昔から様々な方法がなされてきたが,1962年Harringtonによつて発表された手術術式は,ようやくわが国でも一般的に行われるようになり,また高度例に対してanterior wedge osteotomyが加えられ,さらに椎体列で直接矯正を加えるDwyer手術も症例に応じて行われるようになつてきた.

装具・器械

手の外傷治療における弾性副子

著者: 三浦隆行 ,   木野義武

ページ範囲:P.162 - P.166

 四肢の外傷に際してはその支持機構が修復され,筋力が回復するまで関節を良好な位置に保ち,その可動性を保持することが必要である.また手の機能再建手術の結果は,術前に関節の可動域が十分に保たれているか,術後筋力の回復するまで関節の可動性が良く保持されているかに係つている.このため術前,術後を通じて適切な副子の利用が必要となる.このように手の外科治療に重要な役割を持つている副子であるが,リハビリテーションの面からはその検討が数多く行われていても外科的治療の途上で使用する副子に関する検討を行つた報告は意外に少なく,成書に記載された副子がただ漫然と使用されていることが多い,しかし症例の症状と使用目的を考えるときこれらの副子がその治療目的を良く果していることはむしろ少なく,数多くの不満足な問題点を残している.この改良を心掛け,最近になつてようやくかなり満足し得る治療用の副子を作製し得るようになつたので報告する.

臨床経験

一般手術室の管理と感染防止対策—とくに関節全置換術に関連して

著者: 渡辺良 ,   琴浦良彦 ,   奥村秀雄 ,   中根康雄 ,   高橋直久

ページ範囲:P.167 - P.171

 Clean orthopaedic surgeryにおける感染は,抗生物質のいわゆる予防的投与が広く行われている今日においても,昔と変りなく重大な合併症のひとつであるが,術後感染,およびその予防に特に大きな関心がよせられるようになつたのは,人工関節による全置換術の症例が増加しはじめてからである,人工関節置換術のように,巨大な異物を体内に永続的に埋没する手術では,術後に感染が起こつた場合,そのコントロールは非常に困難であり,salvage operationとしての人工関節抜去は,患者にとつて不幸な結果を残すことになる.抜去を前提として,一時的に金属材料が体内に埋没される骨折治療の場合よりも,一層厳重な感染予防対策が必要とされるゆえんである.
 われわれは,昭和45年から今日まで,従来型一般手術室において人工関節置換術を行つているが,本論交においては,さまざまの感染予防対策,空中落下菌検査の結果などについて述べるとともに,手術室の管理についても言及したい.

両側性橈骨神経深枝麻痺を呈したneuralgic amyotrophyの症例

著者: 小林慶二 ,   横井正博 ,   関恒夫

ページ範囲:P.172 - P.176

 橈骨神経麻痺は末梢神経麻痺の中では頻度の高いものであるが,純運動枝である深枝麻痺は比較的少なく,ことに両側性の麻痺については内外の文献を渉猟したところではその報告をみていない.最近われわれは両側性の橈骨神経深枝麻痺の一症例を経験し,その発生機転などにっいて,いささかの知見を得ることができたので考察を加えて報告する.

人工足関節について

著者: 高倉義典 ,   北村紀文 ,   北田力 ,   山下正道 ,   増原建二 ,   梅垣修三 ,   広岡靖隆 ,   小野魏 ,   清水豊信 ,   山口武史

ページ範囲:P.177 - P.184

はじめに
 関節間相互の関連が乱れ,疼痛の持続する足関節症に対して近年まで関節固定術が施行されてきた.しかし,その成績,外固定の期間および日常生活動作の制限などに問題が残されている.これに対して1973年BuchholzとLordがそれぞれ異なつたtypeの人工足関節を発表して以来,欧米において近年施行されてぎつつある.Buchholzは第1図のごとく関節本来の姿に近い人工関節を作製し良好な結果を得ている1).一方Lordは全人工股関節の臼蓋と骨頭の関係を逆にした球関節の人工関節を考案し,その臨床例を報告しているが,その結果については不明である2).そのほか多種多様の関節が開発され臨床に供されつつある.
 そこで,われわれは日本人の足関節を基準にして足関節のsimulatorを作製し,摩耗実験を行い,その結果を基にして人工関節を作製した.現在までに外傷後の足関節症,化膿性関節炎後の関節症および関節リウマチに全置換術を施行したので,それらの症例の経過,手術方法および術後成績を報告し,併せてその適応,人工関節のtypeの選択および今後の問題点を検討する.

腕神経叢の引き抜き損傷に合併した頸髄損傷例

著者: 満足駿一 ,   木村彰男 ,   大谷清

ページ範囲:P.185 - P.190

 脊椎および脊髄損傷の原因は通常,脊椎のhyperflexion,hyperextensionおよびcompressionのいずれかに求められることが多く,側屈(lateral flexion)がその主因として取り上げられることは少ない.
 もつとも多くの場合受傷時には,flexion,extension,compression,rotation,lateral flexion等のいくつかが同時的に作用し,従つて直接原因となった外力を純粋に1つだけ分離することは必ずしも容易ではない.にもかかわらず,明らかに側屈がその主因と考えられる脊髄損傷の症例も稀には存在する.しかし,側屈による脊髄損傷の報告は文献上も少ない.

レックリングハウゼン病に合併した多発性脊髄腫瘍の2例

著者: 永瀬譲史 ,   辻陽雄 ,   松井宣夫

ページ範囲:P.191 - P.196

 レツクリングハウゼン病(以下「レ」病と略)に合併した比較的稀な多発性脊髄腫瘍症例治療例の長期経過につき述べ,文献的考察を加え報告する.

軟部悪性腫瘍150例の統計的観察

著者: 荻野幹夫 ,   蜂須賀彬夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰 ,   小坂正 ,   林泰史 ,   立石昭夫 ,   鈴木斌 ,   三上隆三 ,   井上肇 ,   山崎典郎 ,   二瓶隆一 ,   永野柾巨 ,   高橋洋 ,   山辺登 ,   栗村仁 ,   橋本茂 ,   司馬正邦 ,   東博彦

ページ範囲:P.197 - P.203

はじめに
 軟部悪性腫瘍中,整形外科で取り扱うことが多い四肢の骨外軟部組織原発性の悪性腫瘍については,昭和46年度より厚生省のがん特別研究班が認可され,登録例が増え診断もより正確になり,よい統計が得られつつある.著者の一人は,この統計とは別に昭和41年第39回日本整形外科学会総会において,東京大学関連各病院を昭和34年より40年までに訪れた同症例の113例について統計的観察を述べた6).本報告の後,一連の学園紛争があり,集められた貴重な資料の散逸と紛失があり,詳細を文献にすることがないままにされていたが,同資料の大部分が再利用できるようになつたので,昭和45年以降の自験例37例を加え,総計150例として統計的観察を行つた.前述の理由により,追跡調査が一部を除いて十分でない点に問題があるが,本統計の大部分は未登録例であると思われ,観察の価値があると考える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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