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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻3号

1977年03月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 人工関節の手術・3

軸回転型人工股関節(岐阜大型)

著者: 赤星義彦 ,   渡辺良

ページ範囲:P.206 - P.209

 軸回転型人工股関節は骨頭と大腿骨用ステムとの間に,Trunnion-bearingと呼ばれる軸受型の関節を持っていることが共通の特徴でWeber-Huggler型,岐阜大型,前沢式,Christiansen型などが知られている.このtrunnion-bearingによって運動時の負荷が分散され,関節面の増大による単位面積当りの摩耗の減少,骨頭に働く勢刀の減少がもたらされる.岐阜大型は,骨格が小さく二次性変股症の多い日本人に適した入工股関節を目指して、東京工大笹田直助教授のご協力を得て開発され,金属との組合せで好ましい耐摩耗性を示す高分子ポリエチレン骨頭と,Co-Cr合金によるself-locking型ステムが大きな特徴である(第1図).Calcar femoraleの温存されていない骨折例,骨萎縮の強いRA症例,高齢者など,self-locking効果を期待しにくい症例に対しては,骨セメントを使用して固定するsolid typeのステムが準備されている(第2図).

視座

治療成績の評価に共同見解を

著者: 津山直一

ページ範囲:P.211 - P.212

 多年真実であり,優れた方法であると信じられていたものが年月と共に再評価を受け,価値を疑われ他のより良い方法によつて取つて代られたような事実は少なくない.今まで存在しなかつた薬物や器械のような新兵器の登場によつて過去の方法が捨てられるのは医学の進歩であつて当然であるが,そのような因子がなく今まで普及していた考え方そのものに誤りがあつて,真実は別にあることが判明したような場合,われわれは短見や偏見にとらわれて患者に無意味な負担をかけていたのではないかと深刻に考えさせられる.その治療法の主唱,推進者自体からはこのような反省はなかなか生れず,大勢の協力,再検討の結果真価のあるものが明らかになることが多い.欧米の医学会で種々な治療方法の成績を委員会を設けて共通の規準のもとに統計的,客観的に判定しようとする試みがなされることが多いのもそのためである.
 先天股脱の徒手整復,ギプス固定のLorenz式治療法が高率に大腿骨頭に後障害をきたすことに批判の口火が切られたのは1947年の第37回ドイツ整形外科学会であつて,その時Hohmannが代表して全ドイツ国内の整形外科教室の成績をまとめて検討したところ,徒手整復後10年目に解剖学的に正常と判定し得たものはわずか10%そこそこであるという事実が公表され,これがドイツ整形外科学会会員に大きなショックを与え,急速に早期診断と最少限の運動制限で治療する諸方法(Frejka,Becker,Pavlik,von Rosenその他)に切りかえられ始めたのである.

論述

先天性内反足に対する後方解離術の限界と問題点

著者: 松尾隆 ,   野村茂治 ,   藤井敏男 ,   熊谷洋幸 ,   近藤正一 ,   奥江章

ページ範囲:P.213 - P.224

はじめに
 先天性内反足治療の歴史の上で保存的治療の占める部分は大きく,中でもJ. H. Kiteは1つの頂点を形づくつている.Kiteはキャストテクニックの粋をこらして漸進的に内反足の各変形を矯正してゆけば内反足のあらゆる変形は矯正され得るとの考え方に立ち,具体的方法としては足内転,内反,尖足変形を順を追つて漸進的に矯正する方法を発表し,各変形を保存的に治療しようとする諸家を力づけることとなつている.
 しかしながら反面,より愛護的,そして変形の本体へ迫ろうとする観血的矯正という時代の潮流に対しては明らかな逆行を示しており,内反足治療の壁になつた面も見逃すことはできない.

慢性関節リウマチの診断と疫学調査

著者: 山本純己 ,   児玉俊夫 ,   古米幸好

ページ範囲:P.225 - P.231

はじめに
 慢性関節リウマチ(RA)の実態調査は,RA患者のおかれている環境および治療の実態を知るうえに不可欠のものである.さらに,実態調査はRAの治療およびその総合対策の基本となるものである.
 RAの実態調査には種々の困難がともなう。たとえば,RAという病名が不確実であるために,over diagnosisまたは診断もれといつた問題があろう.ここでは,最初にRAの疫学的診断の問題点にふれ,ついで私たちの行つた岡山県でのRAの実態調査について述べたい.さらに,わが国および諸外国におけるRAの実態にも言及したい.

人工股関節ゆるみの生体力学的研究

著者: 末沢慶紀 ,   ,  

ページ範囲:P.232 - P.237

はじめに
 股関節,特に臼蓋部における生体力学的研究から静,動的荷重時の臼蓋に与える影響を知り,人工股関節の最も重要な遅発性合併症であるゆるみの原因として,われわれはすでに1975年欧州各学会で弾力性の相異にもとついた,生体力学的不均衡を報告している,その結果Polyethylen-Metall-KomplexがMetall-Metall Komplexより生体力学的に優れていることがわかり,これは臨床統計的にも証明されている.
 さてわれわれの実験の基本となつたEpoxy樹脂骨盤モデルは,ヒト骨盤とちがい,一様な弾力性をもつている.静的荷重時の負荷力が初期の実験結果のとおり骨皮質層を主として伝達していくことを,いいかえると海綿骨層における負荷力伝達のきわめて小さいことを知るため,さらに後述の実験で確かめた.ヒト骨盤臼蓋部の各部位の弾力性を計り,骨皮質一骨海綿骨と同じ弾力性相異をもつEpoxy樹脂,Polyurethanからなる骨盤モデルを作つた.これに静的荷重を行い,外,内層にうめ込んだストレンゲージで負荷状態を観察する.

慢性関節リウマチにおけるMacIntosh膝関節形成術について

著者: 小林勝

ページ範囲:P.238 - P.244

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下RA)におけるMac-Intosh膝関節形成術の成績では,Anderssonら(1974)の悲観的な報告(良好例38%,平均2.8年経過)以外では,いずれも本法の有効性を述べている.その良好例はJessopら(1972)の平均3年経過で42%から,Hastingsら(1973)の同一経過の87%の範囲に分散している2,10,12〜15)
 本法適応の主条件は変形と骨破壊の程度に依存する.一方,骨萎縮を適応外に挙げたのは,Hendcrsonら(1969),Nelsonら(1971),Andcrssonら(1974)で,強度の骨萎縮を禁忌とした.Migrationの観点よりすれば,軽度の骨萎縮も無視できないと考える.しかもRAに必発である.

手術手技

われわれのHalo Pelvic Traction実施法

著者: 満足駿一 ,   大谷清

ページ範囲:P.245 - P.252

 Halo Pelvic Traction(以下H. P. T.と略す)のそもそもの歴史は,1959年のPerry & NickelによるHaloの考案に始まり,その後1970年Dewald & RayによつてこれにHooPが付け加えられて今日の原型ができ上つた.
 以来,多くの人達によつて種々改良が試みられ,現在はさまざまなタイプの本装置が使用されている.また,本法の応用に関しては,すでに多くの優れた報告が発表されており,わが国でも井上ら(1973)は独自の本装置を開発し,実際の装置とその応用について紹介している.このH. P. T.は,今後も整形外科領域における応用範囲は広く,種々の原因による高度な脊柱変形の矯正にその威力を発揮するものと大いに期待される.

境界領域

スポーツ選手における膝屈伸筋,足関節屈伸筋の筋力について

著者: 大井淑雄 ,   広瀬和彦 ,   村井俊彦 ,   西岡久寿樹 ,   御巫清允 ,   阿部徳之助 ,   渡辺慶寿

ページ範囲:P.253 - P.259

はじめに
 筋肉の収縮を物理学的に見ると等尺性収縮isometric contractionと等張性収縮isotonic contractionに分類されることはよく知られているが,1966年頃より新たに等運動性収縮isokinetic contractionという概念が提唱されるようになつた,これは筋収縮の速度を人為的に一定に制御して得られるものであるが,その等速性という特徴のゆえに得られる筋トルク曲線の解析がきわめて容易かつ便利であるという特徴を有する.
 1969年来著者らはこの等運動性筋収縮を可能にした一種の運動療法機器Cybex Machineを用いて正常人,種々の運動器疾患の患老の筋力,筋仕事量,最大筋力発揮関節角度,初期出力などについて検討を重ねてきた.スポーツ医学の分野にもこの概念の応用は可能であるので今回種々のスポーツ選手について筋力を検討した.

臨床経験

瘻孔を伴つた神経病性関節症の3治験例

著者: 川島真人 ,   岩渕亮 ,   佐藤護彦 ,   鳥巣岳彦 ,   北野元生

ページ範囲:P.260 - P.263

緒言
 脊髄癆患者に関節の高度の破壊をみることは,Charcot(1868年)の報告以来広く知られており,その後,脊髄空洞症や末梢神経損傷等の場合にもみられることからCzerny(1886年)は神経病性関節症と命名した.
 この神経病性関節症はいつたん発症すると関節の奇異な変形と破壊が進行し,形態的にも機能的にも種々問題点が残されているが特にしばしば難治性の瘻孔を伴い,二次的な感染も加わると多量の滲出液に患者は悩まされ,その治療は容易なものでないことが知られている.

Baker's cystに発生したosteochondromatosisの1治験例

著者: 鈴木邦雄 ,   石田暉 ,   柳下慶男 ,   市堰英之

ページ範囲:P.264 - P.267

はじめに
 Osteochondromatosisは1900年Reichelの報告に始まり以来かずかずの発表をみるが,bursal osteochondromatosisの報告は少ない.Popliteal bursaに発生したosteochondromatosisはbursal osteochondromatosisの中では最も多いとされているが,それでも,Jeffreys(1967)は8例,本邦では永田ら(1973)の1例の報告等をみるだけである.われわれも最近両側膝窩部gastrocunemio-semimenbranous bursaに発生したosteochondromatosisの1例を経験したので報告する.

両側脛骨内顆に生じたいわゆる特発性骨壊死の1症例—特に本症の成因に関する考察

著者: 古谷誠 ,   荻野幹夫 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰

ページ範囲:P.268 - P.272

 いわゆる膝の特発性骨壊死-spontaneous osteonecrosis of the knce-は大腿骨内顆に発生し,特有のレ線および臨床所見を呈する一疾患単位としてその存在を認められつつある.
 本症はその命名から明らかなように局所性の骨壊死によると推定されているが,その成因,発生機序についてはほとんど不明であり,従つてその名称の妥当性についても疑問のもたれる興味ある状態である.

乳幼児筋性斜頸の治療

著者: 加藤正 ,   布田由之 ,   望月一男 ,   河路渡

ページ範囲:P.273 - P.276

まえがき
 10年ほど前から,乳幼児筋性斜頸の治療法としてのマッサージの是非,徒手筋切り術の適応などの問題が目立つて論議されてきた.
 第47回日本整形外科学会総会の教育研修会において,篠田(1975)6)は,「マッサージ治療に関する限りは,効なしとする点で多くのひとびとの意見はしだいに合致しつつあるように思われる」と述べている.しかし,現実的には,マッサージ治療をうけているが,経過がよくないとの理由で,当科へ転医してくる患児が今なおあとをたたない.

二次性軟骨肉腫の1例

著者: 三井宜夫 ,   佐野貞彦 ,   三馬正幸 ,   中村義弥 ,   玉井進 ,   増原建二

ページ範囲:P.277 - P.281

はじめに
 軟骨肉腫は原発性悪性骨腫瘍の中で骨肉腫に次いで多いが,組織学的に分化した形態を示すものが多く,かつ臨床的にも比較的予後がよい点など骨肉腫とは異なつた性格を有している.また良性骨腫瘍から生じる二次性軟骨肉腫についてもよく知られており,大部分は軟骨性外骨腫および内軟骨腫からの悪性化である.しかし,内軟骨腫の悪性化例の中には二次性と断定しがたいものが多いともいわれてる.
 最近,多発性内軟骨腫から生じた二次性軟骨肉腫の1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

Dysphagiaを件つたankylosing cervical hyperostosisの1例

著者: 江川正 ,   朝長圀夫 ,   佐藤寿彦 ,   瀬良敬祐

ページ範囲:P.282 - P.286

 1897年,StrumpellおよびPierre Marieがankylosing spondylitisについて報告以来,長い間本疾患がspinal ankylosisの唯一の原因と考えられてきたが,1950年,Forestier2)は臨床的,解剖学的,レ線学的観点よりspinal ankylosisの特殊型としてsenile ankylosing hyperostosisを報告し,前者と区別した,それ以来,Bick2)は"Vertebral Osteophytosis",Smith,PughおよびPolley2)は"Physiologic Vertebral Ligamentous Calcification",Ott2)は"Spondylosis Hyperstotica"などとそれぞれ提唱しているが,1959年,Lackner1)はForestier病という疾患名による記載を行つている.
 最近私共は,頸椎レベルにおける本症の異常化骨が原因となつて,dysphagiaを生じた1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

受傷後16日目に上腕動脈破裂を来たした外傷性肘関節開放脱臼の1例

著者: 前田修 ,   鈴木善一郎 ,   熊谷真忠 ,   板津博之

ページ範囲:P.288 - P.292

 成書によれば外傷性肘関節脱臼は肩関節脱臼に次いで多く,全外傷性脱臼の約1/7を占める.
 このように外傷性肘関節脱臼は稀なものではないが,開放脱臼は稀でありかつそのほとんどに受傷直後動脈損傷を伴つている.

神経内ガングリオンによる腓骨神経麻痺の1例

著者: 前田敬三 ,   若山日名夫 ,   山田正人

ページ範囲:P.293 - P.295

はじめに
 ガングリオンによる末梢神経麻痺はその大部分が神経周囲に発生したものの圧迫によるものであり,神経内に発生したガングリオン(intraneural ganglion)による麻癖例の報告は少ない.最近,われわれは右腓骨神経内に発生したガングリオンによる知覚および運動障害をきたし,手術により軽快した症例を経験した.

座談会

最近の人工関節置換術について

著者: 寺山和雄 ,   長屋郁郎 ,   児玉俊夫 ,   敷田卓治 ,   伊藤鉄夫

ページ範囲:P.296 - P.304

 人工関節置換術は日本においてすでに4,000例を越え,特に最近は股関節で年間700例,膝関節で170例を数える手術になつている.この機会に過去の問題点,諸外国の現状等を検討し,日本におけるこの分野が正しい発展を遂げるための契機としたい.

海外見聞記

Microsurgeryとフランス

著者: 生田義和

ページ範囲:P.305 - P.310

 1976年6月初旬より,Parisで開かれたmicrosurgeryのwork shopと,Montpellierで開かれた手の外科の講習会に招待されたので,この機会を利用してフランス国内を約1ヵ月間見学して廻り,現在のフランスにおける整形外科領域のmicrosurgeryに多少触れることができたので報告したい.

学会印象記

第12回先天股脱研究会

著者: 上野良三

ページ範囲:P.311 - P.313

 第12回先天股脱研究会は,昭和51年10月16日大阪市関電ホールにおいて会員約400名の参加のもとで開催された.研究会のテーマは1)生後3ヵ月未満の予防と治療2)観血的治療の適用とし,特別講演は第63回ドイツ整形外科災害外科学会会長Giessen大学整形外科H. Rettig教授に「ドイツにおける先天股脱治療の現況」につき紹介して頂いた.
 今回はテーマ1)に関しては京大石田勝正氏,国立小児病院村上宝久氏ならびに長崎大岩崎勝郎氏による話題提供,テーマ2)に関しては帝京大原勇氏,岐阜大松永隆信氏の話題提供があり,テーマ1)の関連演題5,テーマ2)についての関連演題15および自由演題6題計26題が発表された.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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