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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻4号

1977年04月発行

雑誌目次

特集 胸椎部ミエロパチー

胸椎部ミエロパチーについて

著者: 服部奨

ページ範囲:P.315 - P.315

 脊柱の退行変性により脊髄症状を呈する胸椎部ミエロパチーは頸椎部のそれにくらべると日常遭遇する機会は少ない.しかしその診断,治療面においてかなり問題が多い.最近その病因,病態についても次第に明らかになりつつあるが,不明なところが少なくない.これらの理由から,第5回脊椎外科研究会のテーマとして本題がとりあげられたのである.さらにその主たる病因たる後縦靱帯骨化,黄色靱帯骨化,脊椎症および椎間板ヘルニア等は合併することも少くないし,病態も少なからず共通点を布すると考えられるのに敢えて別個に扱つたのは,おのおのの病態,臨床像,診断,治療等を詳細に分析することも必要と考えたからである.今後,合併例等総合的に検討することも必要である.
 全般的問題をとりあげた項では重要な問題の提起もあり,今後このような基本的な共通の病態,臨床症状,診断,予後,治療等について究明されなければならない.

総括/胸椎部ミエロパチー全般の部

著者: 服部奨

ページ範囲:P.316 - P.317

 第1席は胸椎椎体周辺部の骨変化に関する検討と題し,兵庫医大円尾氏の講演である.102例の患者の胸椎部レ線をA群(頸椎後縦靱帯骨化)20例,B群(頸椎後縦靱帯骨化がなく,頸・胸椎部に著しい骨化がある)18例,C群(以外のもの)64例の3群を対象とし検討された.また,血清学的検査,剖検時摘出標本の組織学的検討等も加えられた.以上の結果,胸椎部には後方骨棘はみられなかつた.バーソニー出現率はB群で83%陽性.血清学的検査では3群間に差を認めなかつたと結論した.
 埼玉医大都築氏が初期においては椎間板高位の骨化病巣の発生部位を組織学的に識別するには特殊染色等工夫を要するとの発言があつたが,靱帯骨化の機序解明にも関係する重要な問題であろう.

総括/後縦靱帯骨化の部

著者: 津山直一 ,   平林洌

ページ範囲:P.318 - P.321

 まず厚生省後縦靱帯骨化症全国調査の集計から胸腰椎部の骨化について,研究班を代表して東大黒川氏がその統計を報告した(本誌論文参照).
 第2席の横浜市大秋山氏らは,本症35例をX線学的に検討した結果,層状型4,線状型8,Bridge型18,混合型5に分類し,変形性変化の合併を88%の高率に認めた.後轡高度のものに多い事実から,本症と椎間板変性の間には密接な関連があるとした.

総括/黄色靱帯骨化の部

著者: 井形高明 ,   小野村敏信

ページ範囲:P.322 - P.324

 Cセクションは黄色靱帯骨化およびこれと縦靱帯骨化の合併に起因した胸椎部ミエロパチーに関する演題で,その多くは臨床経験に基づいた報告であつた.今回報告された症例は黄色靱帯骨化は111例,黄色靱帯骨化と縦靱帯骨化の合併は32例であり,骨標本39例の黄色靱帯骨化についての検討もなされた.そこで,これらの報告を総括し,骨化の臨床像,病態,ミエロパチーとの関連性およびその臨床所見と治療などの問題点についての要旨を述べ,討論の焦点を振返つてみることにした.なお,森崎教授からLig. flavumの解剖学用語は黄色靱帯であり,本来なら黄色靱帯骨化と称されるところであると指摘された.

総括/脊椎症・椎間板ヘルニアの部

著者: 片岡治 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.325 - P.327

 胸椎部ミエロパチーの諸問題に関しては,第45回中部日本整形外科災害外科学会,および第5回脊椎外科研究会で,ともにそれぞれの会長であり,当番幹事である服部奨教授により主題に選ばれた.日常診療でそう多く遭遇する疾患ではないが,その診断や治療に難渋し,暗中模索の域を脱しえなかつた本症をとりあげられ,少いながら個々の症例をもちより,まとまつた討論の場を提供し,体系だつた方針を確立する指標を作る機会を与えられた服部教授の勝れた着眼にまず敬意を表したい.
 担当した「脊椎症・椎間板ヘルニア」部門の発表の9題は別表のごとくで,これをめぐる討論がなされた,以下簡単に発表と詞論の要旨を総括し,その印象を述べたい.

胸椎部ミエロパチーの診断

著者: 児玉芳重 ,   加藤実 ,   渡辺秀男 ,   太田和夫 ,   小野村敏信 ,   遠藤紀 ,   二宮立三 ,   畠山勝行 ,   三木堯明

ページ範囲:P.328 - P.336

はじめに
 胸部脊柱の退行変性によつて脊髄症状を来たす,いわゆる胸椎部ミエロパチーは稀な疾患であり,日常遭遇する機会は少ない.胸部脊柱は頸部脊柱に比べてその可動性が少ない.また胸部脊柱管は解剖学的に狭い.そして胸髄の血行も比較的乏しく,他の部に比して易損性が高い.従つて頸椎部ミエロパチーと異なつた病態を示すのではないかと考えられる.
 これらの相異を知る目的で,我々は昭和33年より昭和50年までの17年間に,胸椎椎弓切除術を施行された症例のうち,脊髄腫瘍,脊髄損傷,脊椎カリエス等の症例を除外し,いわゆる胸椎部ミエロパチーと考えられる19症例について調査し,その診断学的問題について検討した.さらにその治療成績についてもあわせて報告する.

胸腰椎部の後縦靱帯骨化症について—後縦靱帯骨化症全国調査集計から

著者: 津山直一 ,   黒川高秀

ページ範囲:P.337 - P.339

 後縦靱帯骨化症は,昭和50年度より厚生省の特定疾患いわゆる難病に指定された.その調査研究班の初年度事業として実態調査を実施したところ,全国の主要な施設がご協力くださり合計2,162例の症例について詳細な個別資料をお寄せいただいた.調査集計結果のうち,胸腰椎部の後縦靱帯骨化に関する部分をここにご報告するにあたり,ご多忙な中をご協力いただいた各位に改めてお礼申上げたい.
 調査対象は,昭和49年1月1日より昭和50年10月31日までに受診した患者で新再来のすべてをふくんでいる.

胸椎後縦靱帯骨化の臨床的検討

著者: 今井健 ,   角南義文 ,   中原進之介 ,   西原伸治 ,   児玉寛 ,   岡本吉正 ,   村川浩正 ,   藤原紘郎 ,   小野勝之 ,   門前俊徳

ページ範囲:P.340 - P.344

はじめに
 頸椎後縦靱帯骨化は1960年の月本の報告に始まり,本邦では多くの報告がなされている.しかし,その成因に関しては,局所的な慢性外傷説,退行変性説,フッ素中毒説,糖尿病説,ankylosing spinal hypcrostosis(以下A. S. H.と略)の部分症であるとする説などがあるが,いずれもいまだ定説とはなつていない.われわれは数年前より胸椎椎体後縁に沿つて棒状の縦走陰影をみとめ,胸椎部での脊髄圧迫症状を呈する症例を散見するようになつた.胸椎の後縦靱帯骨化は,頸椎後縦靱帯骨化例で胸椎X線検査を行い発見されるという報告はあるが,胸椎のみに後縦靱帯骨化をみとめたという報告は少ない.文献上Keyの2剖検例が最初であるが,近年になつて本邦でも症例報告がみられるようになり,土屋の頸椎後縦靱帯骨化の剖検例でも胸椎から腰椎にかけての広範囲の後縦靱帯骨化像をみとめている.われわれは第43回中部日本整形外科災害外科学会で胸椎後縦靱帯骨化のX線像と臨床症状と題して報告したが,その後も少しずつ症例を重ねてきたので,今回は24例について,そのX線像,臨床症状,治療成績等について検討し報告する.

胸椎後縦靱帯骨化に対する椎弓切除術の経験

著者: 村上弓夫 ,   馬場逸志 ,   木村治 ,   久保田政臣 ,   新谷貫之 ,   吉村理 ,   中崎哲郎 ,   小山鉱三 ,   坂信一 ,   住元吉明

ページ範囲:P.345 - P.352

はじめに
 胸椎の後縦靱帯骨化(以下PLLOと略す)は頸椎のそれに比し稀であるが,脊髄症状の合併頻度が高く,椎弓切除術の成績も不良である場合が多いことは,諸家の報告でよく一致しており治療上,問題の多い疾患の一つとされている.われわれは過去約6年間で広大ならびに関連病院で経験せる胸椎PLLOは19例であり脊髄症状を有するものは12例であつたが,そのうち6例に対して椎弓切除を行つた.症例数,術後経過年数ともに十分とはいえないがその成績を供覧しご批判を仰ぎたい.

胸椎後縦靱帯骨化症に対する前方除圧術の試み

著者: 大谷清 ,   満足駿一 ,   柴崎啓一 ,   野町昭三郎

ページ範囲:P.353 - P.359

はじめに
 近年,後縦靱帯骨化症は整形外科,脳神経外科,神経内科領域でにわかに注目され,広く認識されてきた.その結果,本症患者は少なくないことがわかつてきた.しかし,本症の病因は今のところ全く未知であること,しばしば重篤な四肢麻痺を合併してくること,したがつて画一的な治療法が確立されていないことなど,多くの問題が残されている.ともあれ,本症にたいしては今後ますます研究が進められていかれなければならない疾患の1つである.
 後縦靱帯骨化症は頸椎に頻発することは周知のとおりであるが,胸椎,腰椎にもみられ,あるいは合併する.中でも胸椎の後縦靱帯骨化症は解剖学的,生理学的理由から,前方除圧術の手術的処置が困難である.胸椎後縦靱帯骨化症に対する諸家の椎弓切除術の報告をみても,その成績は芳しくない.われわれは圧迫が原因でおこる脊髄麻癖に対しては,いかなる部位であれ,圧迫原因をとり除くべきであることを主張してきた.胸椎後縦靱帯骨化症による脊髄麻痺に対しても,前方除圧を優先すべきである.現在までに重度の脊髄麻痺をともなつた胸椎後縦靱帯骨化症の3例に対して前方除圧を試みた.

胸椎後縦靱帯骨化症の手術経験

著者: 宮崎和躬 ,   桐田良人 ,   林達雄 ,   野坂健次郎 ,   山村紘 ,   玉木茂行 ,   富原光雄

ページ範囲:P.360 - P.367

はじめに
 私達は頸椎後縦靱帯骨化症に対して145例の手術経験があるが,胸椎後縦靱帯骨化症は6例にすぎない.これら6例の手術成績は改善3例,悪化3例とはなはだ芳しくない.乏しい手術経験ではあるが,個々の症例を検討して,いささかでも本症の手術々式確立への手助けとなれば幸いである.

黄色靱帯骨化の病態—骨標本および手術症例による考察

著者: 酒匂崇 ,   富村吉十郎 ,   前原東洋 ,   森本典夫 ,   矢野良英 ,   大迫敏史 ,   川村英俊 ,   小路俊廣 ,   渋谷英二 ,   森園良幸 ,   伊藤哲

ページ範囲:P.368 - P.376

はじめに
 黄色靱帯骨化の記載はPolgárが最初であり,椎間孔部狭窄を来たす骨性異常陰影として報告した.
 近年,黄色靱帯骨化により脊髄障害の発現することが知られるようになつたが,本症に関しての報告は少なく病態に関しても不明の点が少なくない.

胸椎部黄色靱帯骨化の臨床と治療

著者: 米沢元実 ,   井形高明 ,   佐々木徹

ページ範囲:P.377 - P.380

はじめに
 最近,黄色靱帯の肥厚,骨化が神経障害を来たすことで注目されつつある.従来より,黄色靱帯骨化の診断は,臨床的にもレ線学的にも困難なことが多く,今だ,その検討は充分とはいえない.
 われわれは過去3年間に,20例の胸椎部黄色靭帯骨化を経験した.そして,その臨床症状,脊髄循環状態,局所病像(手術時)および治療について検討した.

胸椎椎管内靱帯骨化のX線所見と症状との関連について

著者: 宮坂斉 ,   辻陽雄 ,   井上駿一 ,   藤塚光慶 ,   渡部恒夫 ,   永瀬譲史

ページ範囲:P.381 - P.386

はじめに
 近年,脊椎管内における靱帯骨化が,頸椎部や胸椎部をとわずしばしば重篤な脊髄麻痺をおこしうることから,外科的脊椎疾患の1つとして注目をあびるようになつたが,胸椎部における椎管内靱帯骨化に関してはむしろ症例報告的なものが散見される現状にある.従つて,診断および治療上多くの未解決の問題点を含んでおり,治療成績は必ずしも満足すべきものではない.ここで,本症の臨床的特徴と病態の一端を把握することは成績向上の1つの要因ともなると考えられる.
 今回,われわれの経験した胸椎椎管内靱帯骨化32例(うち手術例9例)のX線学的所見と臨床症状を中心として検討を加える.

胸椎部脊柱管内靱帯骨化によるmyelopathyの手術例の検討—後縦靱帯と黄色靱帯の骨化による

著者: 金田清志 ,   藤谷正紀 ,   本間信吾 ,   樋口政法 ,   藤田正樹 ,   大西英夫 ,   越前谷達紀 ,   大脇康弘

ページ範囲:P.387 - P.394

 脊柱管内靱帯の後縦靱帯や黄色靱帯の骨化による脊柱管狭窄が脊髄圧迫症状を呈することは,頸椎後縦靱帯骨化症では一般に知られてきた9).そして,その手術的治療法や成績については数多くの報告がある.胸椎部における脊柱管内靱帯骨化による脊髄症については,報告が少い.外国では最近Forcicr & Horsey(1970)8)の一例報告があるに過ぎず,一方わが国では,頸椎後縦靱帯骨化症の概念が一般化した最近になりやつと胸椎部のことが注目されだした4,10〜12)
 当教室では,現在まで胸椎部脊柱管内靱帯骨化による圧迫性脊髄麻痺の手術例が27例ある.このうち黄色靱帯骨化のみによるもの8例,後縦靱帯骨化のみによるもの4例で,残りの15例は後縦靱帯と黄色靱帯両者の骨化によるものである.今回これらの15例につき検討したので報告する.

胸椎症性脊髄症の診断と治療

著者: 中山喬司 ,   平林洌

ページ範囲:P.395 - P.400

はじめに
 近時,胸椎部における脊柱の変形性変化に起因した脊髄症が注目され,その報告例も漸次増加しているが,われわれも第3回脊椎外科研究会に報告したとおり1),その病因,病態については,なお不明なところが少なくない.
 臨床的にも胸椎部であるために明瞭なX線所見が得にくく,そのために頸椎症性脊髄症に比べて本症の確定診断および高位診断がむずかしいことや,初診時,すでに脊髄麻痺の程度が強いものが多いために手術効果も十分でなかつたりなど,診断,治療上の問題点が少なくない.

胸椎部脊椎症性ミエロパチーの診断と治療

著者: 早川宏 ,   服部奨 ,   小山正信 ,   河合伸也 ,   斉木勝彦 ,   森脇宣允 ,   重松昭彦 ,   加藤勇満

ページ範囲:P.401 - P.407

 頸椎部脊稚症性ミエロハチーは数多くの報告をみるが,胸椎部脊椎症性ミエロパチーについての報告は少ない.
 当教室において炎症,腫瘍,外傷,側彎症等を除いた胸椎部,胸腰椎移行部の病変によつてミエロパチーをきたし手術を行つた症例は17例である、内訳は脊椎症7例,後縦靱帯骨化4例,黄色靱帯骨化6例である.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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