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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻5号

1977年05月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 人工関節の手術・4

慈大型人工股関節

著者: 赤松功也

ページ範囲:P.410 - P.413

 慈恵医大整形外科で用いている人工股関節は,骨との固定に骨セメントを使用する外国製のものとは異なり,教室で独自に開発したもので.国産である.
 この型には,大きくわけて2つの特徴がある.その一つは,構造上の特徴であり,他の一つは生体との固定に骨セメントを用いない点である.まず,人工臼についてのべると,ステンレス鋼によりつくられた金属製の人工臼の内部には,HDP製の人工軟骨がはめこまれている.これはプラスチック対金属の組み合わせをつくりながら,しかも,プラスチック製人工軟骨の弱点を金属で補強したわけである.さらに,金属製人工臼の外部には3本の大きな溝つきの突起が出ており,これらは寛骨臼の骨に打ち込まれ,生体に固定される.したがって,骨セメントは全く用いない.突起の溝は打ちこまれたのちに,その部に新生骨が形成されることを期待しての設計である.次に人工骨頭側では,骨頭軸基部にひれ状の突起があり,これは回旋防止用に作られたものである.さらに,閂状の骨性固着を期待したself-locking用の穴,ならびに骨頭軸の尖端にまできざまれたきざみ目などは,いずれも骨セメントなしでの骨との固着を期待したものである.また,人工骨頭頸部の角度すなわち骨頭切除面に適合する人工骨頭頸部の水平面に対する角度は45゜として,荷重は主として,小転子部の非常に厚い骨皮質にかかるようにし,さらに骨頭軸は直型にしてある.

視座

学ぶことのむずかしさ

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.415 - P.415

 自分が教職にいると,人を教えることがいかにおこがましいかがよくわかる.所詮は,教えることは教えられることであり,学ばせることは自ら学ぶことである,といつた心境になる.
 最近私の教室で,学生臨床実習用の小册子をつくり,学生に配布したが,その扉に次のようなポリクリ心構えを書いた.

論述

多椎体にわたる頸椎後縦靱帯骨化に対する前方除圧術の検討

著者: 上小鶴正弘 ,   山浦伊裟吉 ,   藤井紘三 ,   四宮謙一 ,   磯部饒

ページ範囲:P.416 - P.424

 今日,頸椎後縦靱帯骨化によるmyelopathyに対する観血的治療として,椎弓切除術,Cloward法やSmith-Robinson法による前方固定術,前方除圧術(椎体亜全摘による骨化巣摘出,あるいは骨化摘出を行わずに脊柱管拡大のみを図る方法)など,いくつかの術式が選択適用されるようになつてきたことは,本症の治療体系確立上に意義あることである.
 このように術式が多様化するに至つた過程は,従来一般的に施行されてきた椎弓切除術のみでは必ずしも満足し得る成績が得られない場合があり得ること,また前方から後縦靱帯骨化が脊髄を高度に圧迫するとき,椎弓切除を行うと,脊髄のdefbrmationを招来せしめ,必ずしも脊髄の除圧効果が十分に得られるとは限らないなどの理由による.

Unicameral bone cystとaneurysmal bone cystの嚢腫内壁の微細構造の観察

著者: 森本一男

ページ範囲:P.425 - P.437

はじめに
 Unicameral bone cystおよびaneurysmal bonecystはともに骨に嚢腫を形成する骨腫瘍類似疾患で,種々の面で共通性を有するが,その成因については推察の域を出ない.これらの疾患の病態解明の緒として嚢腫内壁の表面構造を走査電子顕微鏡で観察し,微細構造を比較検討した.さらに走査電子顕微鏡で観察した同一資料をそのまま透過電子顕微鏡の標本に用いるように処理し,内壁を形成する細胞の超微形態を同定しようと試み,ここでその結果を述べる.

上腕二頭筋長頭腱皮下断裂の治療法

著者: 上野武久 ,   田口厚

ページ範囲:P.438 - P.441

はじめに
 上腕二頭筋長頭腱皮下断裂の治療法は文献上では手術療法が主流をなしていると考えられ,種々の方法が報告されている.その治療成績については,特に手術方法に優劣の差はなくおおむね良好とされている.しかしながら,保存的治療例や本症が見逃されたりあるいは患者が勝手に長期間放置し治療を受けていなかつた症例を検討したところ,意外にも柊痛,圧痛,肩関節運動障害,筋力低下などの症状が全くなく,腱損傷のための機能障害がない例がみられた.そこでわれわれは関連病院より蒐集した18症例を検討し,本症の治療上の問題点についての見解を述べてみる.

境界領域

D-ペニシラミンの薬理作用—特に免疫抑制作用について

著者: 吉野槇一 ,   石山昱夫 ,   井上一

ページ範囲:P.442 - P.446

はじめに
 慢性関節リウマチ(RA)の治療薬には,サリチル酸剤,非ステロイド抗炎症剤,ステロイド剤,金製剤,免疫抑制剤,D-ペニシラミン(D-P.と略す)などがある.
 特に,この内,D-P.のRAに対する治療効果は,世界的に注目されており,従来の抗リウマチ剤(主に金製剤)にとつてかわる画期的な薬剤であるとまでいわれている.しかし,本剤は,副作用も決して少なくない.

調査報告

既往注射内容の明確な大腿四頭筋拘縮症—発症と重症化の諸要因

著者: 森谷光夫

ページ範囲:P.447 - P.453

はじめに
 近年,大腿四頭筋拘縮症の集団発生が問題となつており,本症に対する社会的関心が高まつている.特に本疾患は,その発症要因として,先天性のものも存在するが1,2),今日の大部分は後天性のもの,とりわけ注射に,しかも乳幼児への筋肉内注射という医療行為にその原因がもとめられている.こうした中て,日整会,厚生省,日医などに研究班がつくられ,また多くの研究者が独自にとりくみ,本疾患に対する正確な実態の把握と分析がすすめられている,しかしなから,既往注射内容を,単なる聴取だけでなく,既往カルテの分析を行う中で,明確にし,本疾患との関連を論じたものは数少ない.
 著者は,主として愛知を中心とした患者の検診活動3),またカルテ分析による原因の検討4)などを共同で行つてきたが,今回,既往注射内容の明確である本症41例を詳細に検討する機会を得たので,考察を加えて報告する.

症例検討会

骨・軟部腫瘍14例—骨・軟部腫瘍研究会

著者: 青木望 ,   赤居正美 ,   赤星義彦 ,   明松智俊 ,   東博彦 ,   阿部光俊 ,   網野勝久 ,   荒井孝和 ,   池崎良三 ,   伊藤惣一郎 ,   伊藤忠厚 ,   井上駿一 ,   井深道生 ,   石井清一 ,   石川栄世 ,   石田俊武 ,   岩崎宏 ,   宇佐美文章 ,   牛込新一郎 ,   牛島宥 ,   薄井正道 ,   打村昌一 ,   姥山勇二 ,   江村厳 ,   遠城寺宗知 ,   大西義久 ,   大星章一 ,   大向孝良 ,   岡田聡 ,   小川勝士 ,   奥野宏直 ,   尾島昭次 ,   小野沢敏弘 ,   勝又壮一 ,   金子仁 ,   川井和夫 ,   川口智義 ,   川田憲司 ,   北野元生 ,   後藤守 ,   佐々木鉄人 ,   宍倉正胤 ,   篠原典夫 ,   下川邦泰 ,   下田忠和 ,   白川洋子 ,   鈴木清之 ,   鈴木義正 ,   須田暁 ,   高瀬武平 ,   高田典彦 ,   武内章二 ,   武田善樹 ,   武智秀夫 ,   竹嶋康弘 ,   田口孝爾 ,   田仲俊雄 ,   田中昇 ,   田畑昌夫 ,   陳世雄 ,   堤啓 ,   恒吉正澄 ,   所忠 ,   鞆田幸徳 ,   鳥山貞宣 ,   中島陽子 ,   長嶺信夫 ,   二山孝司 ,   館崎慎一郎 ,   花岡英弥 ,   浜田良機 ,   檜沢一夫 ,   平川恒久 ,   広田映五 ,   福島博 ,   福間久俊 ,   藤田守 ,   藤田昌宏 ,   古屋光太郎 ,   保高英二 ,   前川巌 ,   前田昌穂 ,   増田祥男 ,   町並陸生 ,   松浦康一 ,   松岡正治 ,   松野丈夫 ,   松本安司 ,   松森茂 ,   松山四郎 ,   間渕公一郎 ,   三方淳男 ,   宮川明 ,   森井一衛 ,   森本一男 ,   森山昌樹 ,   八木知徳 ,   山下広 ,   山中宣昭 ,   山脇慎也 ,   湯本東吉 ,   葉山泉 ,   吉井隆博 ,   吉門俊之 ,   渡部英一 ,   ,   ,  

ページ範囲:P.454 - P.504

症例1
 患者:3歳,男子.
 主訴:左大腿部腫瘤(先天性)

臨床経験

脊髄造影時におけるMyodilの血管内流出について

著者: 玉置哲也 ,   辻陽雄 ,   渡部恒夫 ,   篠原寛休

ページ範囲:P.505 - P.510

はじめに
 最も繁用されている油性造影剤であるMyodil®を用いて脊髄造影を行つた際に,造影剤が脊髄腔より速やかに消失してしまうことが時に経験される,この流出機序については,Lin & Clarkeによつて推論が加えられているが,われわれも最近,重篤な肺合併症を示した1例を含む4例を経験したので報告し,あわせてその流出機転とともに臨床的問題点と対策などについて考察を加える.

第2頸椎軟骨肉腫に対する第2頸椎全摘出の経験

著者: 佐々木正 ,   中川智之 ,   池田亀夫

ページ範囲:P.511 - P.516

 第2頸椎椎体より歯突起,関節突起に広がる軟骨肉腫に対して,前方および後方侵襲により第2頸椎をほぼ全摘出し,骨移植した症例を経験したので報告する.

若年性非進行性手・前腕筋萎縮症(平山病)の3症例

著者: 佐々木和義 ,   山内裕雄 ,   鈴木和彦 ,   月出弼

ページ範囲:P.517 - P.521

 1959年平山らにより報告された若年者の一側上肢の特有な筋萎縮を示す非進行性末梢型筋萎縮ほその後,若年性非進行性手・前腕筋萎縮症と改められ今日に至つている.
 最近われわれはその3症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

Nail-Patella Syndromeについて

著者: 中西忠行 ,   野末洋 ,   岡田菊三 ,   生沼昭一 ,   有馬亨 ,   町田信夫 ,   田辺碩

ページ範囲:P.522 - P.529

はじめに
 爪の栄養障害,骨格の形成不全とくに膝蓋骨の欠損と肘関節の形態異常を合併する先天性遺伝性疾患はNail-Patella Syndromeと呼ばれ,1897年Littleが発表して以来海外では比較的多く報告されている.その病態については時を経るとともに新しい知見が加えられてきたが,その代表的なものが"iliac horn"の発見と遺伝学的な研究といえる."iliac horm"は腸骨後面にみられる円錐状の骨隆起で,他の疾患には見られず本症を特徴づけるものの一つである,現在では,爪,膝蓋骨および肘関節の異常にこの"iliac horm"を加えて4大徴候としている.一方,遺伝学的には本症の遺伝子がABO血液型遺伝子との間に密接な関連があること,非伴性優性遺伝の形式をとることなどが証明されている.
 海外では,たとえば1963年Duncanが集収した症例数は44家系400例を越えるにもかかわらず,本邦での報告列はきわめて少ない.東洋人にはNail-Patella Syndromeはないという論文(Carbonaraら)も見受ける程であるが,事実は本症に対するわれわれの関心が薄いということらしい.著者らは本症の3家系を経験しているが,あとの2家系については,症例の検索中という本症に対する関心が高い時に発見したいいきさつがある.ここにその報告をするとともに文献的に本症の病態につき若干の考察を試みたい.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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