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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻7号

1977年07月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 人工関節の手術・6

神大型臼蓋形成不全ソケット

著者: 梁復興 ,   柏木大治

ページ範囲:P.628 - P.631

 〔手術手技〕Watson Jonesの前外側進入路で人る.外転筋を大転子付着部で一部横切し展開を大きくする.関節包を切開し骨頭を切除する.浅くて広い臼蓋(第3図)が特徴的である.臼蓋の処置が本手術のポイントであり,まず関節包を切除し臼蓋縁を十分露出させて特に臼蓋内側の骨棘(第4図)を切除する.この操作によりソケットをできるだけ臼蓋内側に固定できるようになる.第5図に示したガイドはソケットと同じ曲率半径に作られており,これを臼蓋にあてながら円ノミで臼蓋を切削し臼蓋とソケットの曲率半径をぴったり合うようにすることが重要である.つぎにガイドにスパイクと同じ方向と部位に穴があけてあり,これに沿ってドリルを入れてゆけばスパイクを入れる穴があく.この時にガイドの方向指示棒をみながらソケットを入れる方向を決める.内側の2本は穴をあけにくい場合があるのでガイドでまず印をつけてからノミかエイヒで穴をあけるとよい(第10図).症例によってはスパイクとは別に恥骨・坐骨部にもanchor holeを作る.スパイクの長さは適宜リウエルで切って使用し,使用しにくい場合は1〜2本切除してもよい.亜脱臼位から原臼にまでたどってゆけば結果的に縦に長い臼蓋になる場合があり(第11図),このような場合はソケットを楕円形に削って使用するとよいfittingが得られる(第12図).ソケットが偏心性であるためソケットの上下をさかさまにしないこと,

視座

内旋歩行について

著者: 松野誠夫

ページ範囲:P.633 - P.633

 先天性内反足は今日の定型的早期治療法によつて一応の成績を挙げつつある.しかし後方解離例の60%,後内方解離例の70%の多きに内旋歩行がみられている.この内旋歩行は歩容が不自然であるばかりでなく,変形再発の観点からも好ましい歩容ではない.従来より内反足治療後にみられる内旋歩行に関しては下腿に起因することが多いと考えられてきたが,内旋歩行を考える場合,荷重関節である股関節,膝関節,足関節,足まで総合的に判断されねばならない.
 治療後の内旋歩行例を回転横断レ線撮影法によつて大腿骨,脛骨顆部,脛骨遠位端,距骨滑車,距骨頸部の捻転度を計測した.

論述

経口的環軸椎前方固定術に対する麻酔および術後管理に関する検討

著者: 伊藤達雄 ,   井上駿一 ,   辻陽雄 ,   山田均

ページ範囲:P.634 - P.638

はじめに
 我々は,これまで経口的侵襲による環軸椎前方固定法をFang,津山らの述べている方法にて行つて来た2,9).症例によつては,本法が根治的治療法の中で最も優れたものであると思われるが,気管切開による挿管,引き続いて気管内チューブを2週間程度留置すること,および2週間の経鼻管による栄養などの処置は,患者にとつても負担が非常に大であり,これまでその必要性などについて疑問を抱いていた.
 そこで経口的侵襲法による後咽頭部の手術について文献的に検索すると,Fang以前に,Thomsonらにより後咽頭膿瘍に,さらにCroweら(Southwickらが報告)により,膿瘍と,第2,3頸椎部の腫瘍に対し,経口的侵襲法を使用している6).Southwickらは,この時に経口挿管法による麻酔を用いているが,挿管操作による膿瘍破裂の危険がある場合や,手術野を広げる場合など,また術後の合併症などの点を考慮すると,経気管切開挿管がより適当であると述べている5).しかしその後の他の文献においては,術前に気管切開を行ない,麻酔は気管切開チューブにて行なつている3)

変形性膝関節症発生の周辺—股関節固定が及ぼす影響について

著者: 伊勢亀冨士朗 ,   宇沢充圭 ,   冨士川恭輔 ,   石井良章 ,   月村泰治 ,   鈴木邦雄

ページ範囲:P.639 - P.646

はじめに
 機能の荒廃した股関節疾患に対して股関節全置換術が風靡する昨今であるが,臨床的に耐久性,無痛性,安定性に富む片側性股関節固定術は小児にも青壮年にもなお魅力のある適応となつている.
 片側性股関節固定術によつて股関節運動は欠如するがそれは(1)骨盤の回旋の増加,(2)健側股関節運動域の増加,(3)固定側膝関節の屈曲位歩行の増加などで代償される3).しかし脊柱の運動性,健側股関節や固定側膝関節の状態,脚長差の程度によつて歩行様式は不均衡,不規則となるし外観上も醜い歩容を呈することがある.また股関節固定は固定側膝関節に膝変形や運動域異常をもたらすが8),脚長差や大腿骨の回旋欠如がこれらと相埃ると二次性にbiomechanicalな変形性膝関節症を招くことは当然といえる.

RA膝に対するJK膜による関節形成術—その適応と問題点について

著者: 喜多正鎮 ,   近藤正一 ,   野副勝

ページ範囲:P.647 - P.654

はじめに
 最近10年間における人工関節の進歩はめざましく,各種の学会,研究会でその成果が発表されている.しかしその反面,幾多の合併症や失敗例を生じていることもまた事実である.感染や手術手技上の問題点は克服されつつあるものの耐久性や構造上の問題の解決にはさらに年月を要するであろう.
 膝関節の屈曲拘縮ないし強直はADL障害の中心である歩行能力の障害を来たす最も大きな原因の1つであり,寝たきり患者の原因でもある.このような患者に対し無痛性と可動性の獲得という利点から人工関節はしばしば利用されるが,適応は厳密に制限されなければならない.我々は人工関節の適応外と考えられた比較的若年者の慢性関節リウマチ(以下RAと略す)の膝屈曲拘縮に対し,JK膜による関節形成術を施行してきたのでその経験を報告し,その問題点につき検討を加えたい.

Spondylometaphyseal dysplasia

著者: 水島哲也 ,   加藤次男 ,   西岡淳一 ,   浜田秀樹 ,   内田淳正

ページ範囲:P.655 - P.668

 1967年,Kozlowski,MaroteauxおよびSpranger5)は,Schmid型のmetaphyscal chondrodysplasia(metaphyseal dysostosis)に汎扁平椎を合併した短軀幹型のコビト症の3例(散発例)について,「La dysostose spondylo-métaphysaire」と題して発表したのが,この疾病の最初の報告である.
 彼等はこの疾病の遺伝様式を常染色体劣性と考えたが,1969年,Refior13)は家族発生例を報告し,常染色体優性遺伝であると主張した.これはその後の報告例によつて裏づけられている.

膝関節症に対するhigh tibial osteotomyの検討

著者: 小野沢敏弘 ,   加藤哲也 ,   佐々木鉄人 ,   飯坂英雄 ,   須々田幸一

ページ範囲:P.669 - P.676

はじめに
 脛骨高位骨切り術(以下H. T. O.と略)は主に内反変形を伴なう変形性膝関節症(以下膝O. A.と略)に対して行われ優れた効果が報告されている.その目的とするところは変形矯正によつて膝関節内側に加わる過大な負荷を軽減せしめ健常な関節軟骨の残る外側に移行することにあるが,この他にも膝関節の不安定性の改善,関節運動の改善,骨髄内血液循環の改善,骨髄内知覚神経の切断等の効果も論ぜられている.
 当科においても昭和47年以来,膝O. A.に対するH. T. O.を行なつており手術効果を確認している.しかし膝関節は高度に複雑かつ精巧にできており,膝O. A.に関与する病態は複雑多岐にわたつている.そのためその一部を矯正することによつて得られる手術効果は必ずしも一定していない.

慢性関節リウマチにおける外反母趾と種子骨の関係

著者: 石川斉 ,   藤田久夫 ,   広畑和志

ページ範囲:P.677 - P.681

はじめに
 慢性関節リウマチにおける前足部変形,即ち外反母趾bunionの形成,cook up toesなどは外観や美容の点からは勿論のこと日常生活での靴や履物の着脱にとつて見逃すことのできない大きな変形である.これらに続いて2次的に足背,足底に多数の胼胝を形成してくると,しばしば強い疼痛を訴える患者も多い(第1図).DuVries1)らは通常に見られる外反母趾は近代社会のfasion化によつて先細の靴を履くことが,この変形を起こさせる大きな因子になると唱えているが,果してリウマチ患者に見られる外反母趾の成因も同様に考えてよいものであろうか.そこで著者らは,前足部に愁訴を有するリウマチ患者の足における外反母趾と種子骨の関係,それに関節破壊の程度を検討したので,その成果を述べる.

境界領域

Iliofemoral areaの動静脈系について—Microsurgeryの立場からangiogramよりのapproach

著者: 片井憲三 ,   小島哲夫 ,   城戸正詩 ,   清田幸宏 ,   大宮建郎 ,   小林晶 ,   沼口雄二

ページ範囲:P.682 - P.690

はじめに
 microsurgeryの普及は各分野に及び整形外科領域でもKleinert,玉井等の努力により益々活発となり,日々新たに種々の問題が提起されているといつても過言ではない.
 その中で血管柄付遊離皮膚移植(free skin flapと略す)は1973年にTaylor15)が初めて臨床成功例を報告したのに始まり,著者も1974年から主にsuperficial inferior epigastric artery(以下s. i. e. a.と略す)を中心とするいわゆるfree hypogastric skin flapを8例に試みている.

手術手技

高度腰椎辷り症に対する創外整復および固定器"Wire reduction device"の試作と応用

著者: 大木勲

ページ範囲:P.691 - P.694

はじめに
 腰椎辷り症に対する治療法は,その愁訴発現の機序が解明されていないことにも関連して,保存的治療法を主張する一派がある一方,保存的治療法では満足する結果が得られないことからも観血的治療法を選ぶ人も多い.しかし辷り度が50%を越える高度辷り症では脊椎の不安定性が強く,保存的治療法には反応し難いことなどから絶対的手術の適応となるものと考えられる.手術法には前方椎体固定術,後方固定術,後側方固定術,椎弓切除術または神経根圧迫除去術,辷りの整復と各種固定術の併用などいろいろな方法が考案され試みられている.辷った脊椎を生理解剖学的位置まで整復した後に,完全な固定術を行なうことが理想的治療法であることは異論のないものと思われる.この理想的治療法を行なうための一つの方法として,著者は創外より鋼線にて牽引して整復を行ない,同時に整復位に固定する手術器械を考案して実用に供してみたので,この器械の応用方法などについて述べることにする.

装具・器械

脊椎後方手術の体位とフレーム—特に術中出血量減少の対策について

著者: 金田清志 ,   藤谷正紀 ,   本間信吾 ,   樋口正法 ,   藤田正樹

ページ範囲:P.695 - P.703

 脊椎後方手術は脊椎外科の中で一般に広く行われている.特に腰椎下部では,椎間板ヘルニアや椎間板変性にもとづく諸疾患の後方手術が整形外科の中で最もありふれた手術の一つである.
 術中に体位の不備や麻酔中のしやつくり出現などによる脊柱管内静脈の異常怒張を脊椎外科医なら誰でも経験することである.

調査報告

医学部教育における整形外科学およびリハビリテーション医学の実態調査—特に義肢装具を中心として

著者: 武智秀夫

ページ範囲:P.704 - P.708

まえがき
 わが国で義肢装具が欧米先進国におくれている要因の1つに医師の啓蒙不足があげられている.整形外科医,外科医の啓蒙もさることながら,医学部教育でも義肢装具について一定量の知識は授業さるべきであろう.
 現在,義肢装具は整形外科学またはリハビリテーション医学の中で講義されている.しかしこの2科目の各大学における実情の調査もあまりみないようである,昭和51年4月に開かれた日本整形外科学会義肢装具委員会で,医学部専門課程でどの位義肢装具がとりあげられているかが論義され,委員長土屋弘吉教授より一度調査するよう御指示頂いた.

臨床経験

小児大腿骨頸部病的骨折の2例—付.小児大腿骨頸部骨折について

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰 ,   小坂正 ,   井上肇 ,   加藤之康

ページ範囲:P.709 - P.713

要約
 小児大脹骨頸部病的骨折の2例の報告と,同部の正常骨および病的骨折の文献の要約を試みた.

種子骨と思われる小骨の圧迫による尺骨神経麻痺の1例

著者: 川井和夫 ,   水野耕作

ページ範囲:P.714 - P.717

はじめに
 尺骨神経麻痺は種々の障害により引き起こされその原因は多く肘関節部に認められる.最近われわれは,総指屈筋起始部付近でその腱内に存在した種子骨と思われる小骨が原因となつた極めて稀な尺骨神経麻痺を経験したので報告する.

小児の手根管症候群の1例

著者: 佐藤勤也 ,   鱒渕秀男 ,   佐藤雅人 ,   森岡茂

ページ範囲:P.718 - P.720

はじめに
 上肢のentrapment neuropathyのうち,手根管症候群はまれな疾患ではなく,今日まで数多くの報告がなされている.しかしながら,その発病年齢は20歳代以後であり,小児の本症は諸外国においても極めてまれで,とくに特発性型の症例は本邦では未だ報告されていない.最近われわれは,9歳男子の手根管症候群の1例を経験したので,いささかの文献的考察を加えて報告する.

上腕骨末梢骨端のfracture separationの1例

著者: 獅子目賢一郎 ,   種田陽一 ,   杉浦譲

ページ範囲:P.721 - P.724

はじめに
 小児の上腕骨末端部はほとんどが軟骨であるが,その形態は成人のものと大差がないといわれている.軟骨構造が多いため,外傷による抵抗に弱く損傷をうけやすい.日常の診療でよくみかけられる上腕骨末端の骨端離解骨折は,外顆骨折,内上顆骨折がほとんどである.これら2つの骨折は一般に6歳以上の小児に発生し,X線診断も注意深く検討すれば決して難かしくない.しかし,これら2つの骨折より発症年齢が低く,epiphysisが全体としてepiphyscal plateで離解して骨折する上腕骨末梢骨端のfracture separationとよばれるものは極めて稀である.
 今回我々は,本骨折の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

手関節骨軟骨腫症と思われる症例

著者: 山中芳 ,   池田彬 ,   暈雅太郎

ページ範囲:P.725 - P.728

 骨軟骨腫症は1900年,Reichelにより初めて報告され,以後,多数の報告があるが,手関節発生例は極めて稀である.われわれは最近右手関節に発生した骨軟骨腫症と思われる症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

整骨放談

Orthopedicsと整形外科

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.729 - P.729

 本誌の英文名Clin. Orthopedic Surg.のPeをPaeに改めるようにと忠告があり,早速改めることになつた.ところが,アマノジャクの虫どもが「ほんとに改める必要があるの」とささやく.うるさいから調べてみよう.
 Orthopedicsは正しい言葉だ.だからこれを使つても間違いではない.しかし,英,米の学会を始め,調べた範囲の整形外科学術書ではほとんど総て,Orthopaedicである.だから,Paeに改めるのはもつともだ.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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