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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻8号

1977年08月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 人工関節の手術・7

京大式ソケット・カップ人工股関節

著者: 田中清介

ページ範囲:P.732 - P.735

 京大式人工股関節の特徴は,大腿骨側が髄内軸をもつ人工骨頭ではなくカップ関節形成術に用いるような金属力ップである点である.Charnley型で代表される髄内軸人工骨頭をもつ人工股関節では,人工骨頭挿入時あるいは術後の大腿骨骨折,髄内軸破損,人工骨頭のゆるみ,人工骨頭固定のため大量の骨セメントを使用することによる種々の合併症,再手術の困難,人工関節摘出を余儀なくされた時の骨欠損からくる著しい股関節機能障害などの問題があり,特に後二者のため60歳以下の症例には人工股関節置換術は必ずしも適応とはいえなかった.これらの問題に解答を与えたのが京大式人工股関節である.また,京大式全置換術は,寛骨臼のremodellingの難しいカップ関節形成術に比し,骨セメントを用いることにより問題はなくなり,またHDPのソケットと不銹鋼のカップの組合せにより股関節の動きは円滑となった.
 手術法はカップ関節形成術のそれに準じて行われる.寛骨臼および骨頭のreamingにはAufrancやHarrisのreamerをそのまま使うことができる.ソケットの臼への囲定をよくするために骨セメントを使用するが,カップと骨頭の間には,重合熱によるretinaculumの血管を損傷するおそれがあるので,骨セメントを使用しない.

視座

論文に対しての感想

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.737 - P.737

 文章を書くことは面倒なことである.簡単にすらすらと書き下ろせる人もあるが,何度書き直してみても思うようなものが書けないで困つている人もある.私も後者に属する部類で,今までさんざん苦労してきたものである.楽に書けるのも,苦労するのも,天分によるのであろうが,また普段から心がけて書き慣れるように努めたかどうかにもよるのであろう.
 診療や実験を通して,研究者には新事実の発見や研究の成果を発表する機会が多いが,単に口頭発表だけで終つては,たとえ抄録が残つていても,その発表は余り役立つものではない.どうしてもそのあと仕末として,論文発表をしておかなければならない.若いうちから論文を書くように慣れておくことが大切である.どういう風に書くかは各人の工夫によつて,異なるが,簡明要領よいものが良いにきまつている.論文の内容が豊富であれば当然長い論文となるが,逆に長い論文は必ずしも優れているとは言えず,もう少し短かくまとめられないものかと思う論文にも接する.学生の頃,内科教授呉建先生が「本当に立派な研究であれば,ただの一行の論文でも学位を授与する」と言われた言葉を思い出す.味わうべき言である.

論述

慢性関節リウマチの膝関節造影像—第二報 滑膜像について

著者: 冨士川恭輔 ,   田中義則 ,   戸松泰介 ,   柴崎昌浩 ,   松林経世 ,   島津孝 ,   伊勢亀冨士朗

ページ範囲:P.738 - P.744

はじめに
 1900年代初期にRobinsohnおよびWehrendorffによりはじめて空気を用いて行われた膝関節造影法はいろいろと改良が加えられ,1959年にはAndrenおよびWehrinにより水平X線軸二重造影法が発表され飛躍的進歩をとげた.
 現在水平X線軸膝関節二重造影法は日常臨床に広く応用されているが,その対象はいずれも半月損傷に限定されている憾みがある.

色素性絨毛結節性滑膜炎の14例—再発病変組織による病理機序の考え

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰 ,   小坂正 ,   三上隆三 ,   井上肇 ,   永野柾巨 ,   芝久喜照一 ,   高橋洋 ,   土居通秦

ページ範囲:P.745 - P.756

要約
 ①びまん性色素性絨毛結節性滑膜炎の14例の報告をした.
 ②組織像,特に再発病変組織像より,本症を,だ円形細胞の良性腫瘍性病変と考える.
 ③膝関節例においても,小範囲のX線像の骨変化は,それほど少ないものでなかつた.
 ④臨床的に再発を起こした例は,長期の追跡例では多く,厳密な病理学的再発例は更に多いものと考える.

後十字靱帯脛骨付着部の単独剝離骨折について

著者: 鳥巣岳彦 ,   加茂洋士 ,   平井啓 ,   佐藤護彦 ,   川島真人 ,   馬庭昌人

ページ範囲:P.757 - P.764

 後十字靱帯の単独損傷は稀であり,特に後十字靱帯脛骨付着部の単独剥離骨折は極めて稀であると考えられている.事実O'Donoghueは12)膝関節の靱帯損傷88症例の内で後十字靱帯の単独損傷はわずかに3例であつたと報告し,Solonen等は16)90症例中3例であつたと記載している.しかしTrickey14)やSmillieは15)この種の損傷が稀であるとの印象を与えているのは誤りであり,発生頻度はもつと多いはずである.多くが誤診され,あるいは見落されているためであろうと述べている.
 今回当院での後十字靱帯の脛骨付着部の単独剝離骨折の21症例の治療成績を追跡調査し得たのでここに報告するとともに受傷機転,手術の適応,手術方法などについて考察したい.

脊柱側彎症に対する後方固定術の遠隔成績について—Castによる矯正固定と術後早期離床例

著者: 渡辺秀男 ,   加藤実 ,   太田和夫 ,   児玉芳重 ,   小野村敏信

ページ範囲:P.765 - P.772

はじめに
 1917年および1924年にHibbsにより脊柱側彎症に対する脊椎後方固定術が報告されて3,4)以来,このHibbs法が本症に対する基本的な手術療法として広く行なわれるようになつた.その後,術後の外固定法としてturnbuckle castに代つてlocalizercast(Risser)が考案され12),更にHarringtonによるinstrumentationの開発5)は本症に対する観血的療法の成績を一段と向上させた.
 しかし,脊椎固定術により獲得された矯正角の戻りをより少くするために,また偽関節の発生を防ぐために術後どの程度の期間臥床安静をとらせるべきかについては未だ多くの議論がある所である.

肩甲骨全摘術について

著者: 武智秀夫 ,   伊藤士郎 ,   小野勝之 ,   安井一夫 ,   八野田実 ,   花川志郎 ,   高橋洋 ,   田口孝爾

ページ範囲:P.773 - P.779

まえがき
 元来肩甲骨の骨腫瘍は稀であり,その中でも悪性腫瘍はさらに少い.一方その手術的治療についてはあまり多くの報告をみないようである.肩甲骨切除術は1819年より報告があり,腫瘍に対しては1856年Symeがはじめて肩甲骨全摘術を行つたといわれる.その後出版された手術書を繙いてみても,本手術法は収録されていないようである.私どもは昭和44年から51年までの間に6例の肩甲骨悪性骨腫瘍に肩甲骨全摘術を経験した.そしてその手術術式とくに肩関節の再建について新しい試みを行なつた.ここでは私どもの経験をもとに手術術式を紹介し,本法の適応などについて考察を加える.

軟骨肉腫17例の治療経験

著者: 姥山勇二 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   森谷宏

ページ範囲:P.780 - P.787

はじめに
 軟骨肉腫は原発性骨悪性腫瘍においては,骨肉腫に次いで多いが,発生年齢が成人に多く経過も緩慢な腫瘍とされている3,9).我々はこれまでに経験した症例から従来よりいわれている種々の点,即ち発生年齢,初発症状,発生部位,レ線所見,血管造影所見,組織像と予後,治療効果等について検討した結果を報告する.

手術手技

吉野式膝人工関節—第一報:構造,手術手技,適応ならびに症例検討

著者: 小坂弘道 ,   内田詔爾 ,   吉野槇一

ページ範囲:P.788 - P.793

はじめに
 関節形成術の目的は疼痛除去,可動域拡大,ならびにADLの改善であり膝関節形成術は股関節形成術と同様に形成術の目的のなかで特に疼痛除去が強く要求される.我々は昭和51年12月現在,主に慢性関節リウマチ(RA)に対してtibial plateau prosthesis, Shiers type,Guepar type,Geomedic type,Yoshino type Iを62症例,79関節(一部変形性膝関節症(OA))に行つて来た(第1表).その結果はtibial plateau prosthesisは手術適応が狭くRAの活動性に成績が左右され易いこと,Shiers typeやGuepar typeは,metal particleによる関節炎,loosening,および感染などの合併症を生じた際そのsalvage operationが困難であること,そしてGeomedic typeは大腿膝蓋関節の疼痛および大きさの問題があることなどからYoshino type Iを製作し施行して来たが更に検討を加え,左右のthrust,脛骨部のsinkingなどの問題を考えYoshino type IIを製作したので,その構造,手術手技,適応ならびに手術症例を報告したい.

境界領域

重度頸髄損傷者のためのリハビリテーション工学—我国の現状と欧米の実情

著者: 赤津隆

ページ範囲:P.794 - P.799

はじめに
 我国のリハビリテーション工学も着々と発展しつつある.特に建築上の障害の排除,社会環境の整備については,昭和46年,天児名誉教授1)が工学者の協力を強く要望され,その後昭和48年からの身障福祉指定都市も50市を越えるに至つた.新幹線にも車椅子専用席が設けられる時代となつた.
 しかし重度障害者,特に重度頸髄損傷者個人に対する工学的援助は我国では未だ未開拓であり,この方面に興味をもつ工学者は,はなはだ少い現状である.私共が今直ちに必要としているのは,Staros等2)のいうClinical engineeringである.優れた電動義手の開発ができるのであれば,重度四肢麻痺者に対する工学的援助は,決して不可能なことではないと考える.ここにそのニードを提供して,工学者の御協力を得たいと思う.

臨床経験

Free hypogastric skin flapの経験

著者: 片井憲三 ,   城戸正詩 ,   清田幸宏 ,   小島哲夫 ,   大宮建郎 ,   小林晶 ,   黒瀬真之輔 ,   池本和人 ,   大屋国益

ページ範囲:P.800 - P.805

 1960年Jacobsonが小血管の手術に初めてmicroscopeを使用して以来microvascular surgeryの発展には目をみはるものがある.
 その一応用法として自己遊離組織移植がある.そのうちで血管柄付遊離皮膚移植(以下free skin flapと略す)には解剖学的にdeltopectoral flap,thoraco acrominal flap,axillary flap,iliofemoral flap(狭義のgroin flapとhypogastric flapを含む),intercostal flap,epigastric flap,thigh flap,popliteal flap,foot dorsal flap,upper arm flap,digital flap)等がdonor siteとして有力であるが,実際の臨床ではiliofemoral flap,deltopectral flap,foot dorsal flap等が多く試みられている.

Toe-to-hand transferの3例

著者: 吉村光生 ,   池野晋 ,   上野達弥 ,   中條正博

ページ範囲:P.806 - P.808

はじめに
 Microvascular surgeryのめざましい発達により,toe-to-hand transferが可能になり,手指再建術の新しい方法として注目されるようになつた.
 我々は,切断指再接着の臨床経験にもとづいて3症例4指に対し,toe-to-hand transferを行い満足すべき結果が得られたので報告する.

難治性側彎症に対するDwyer手術の経験

著者: 藤塚光慶 ,   井上駿一 ,   大塚嘉則 ,   鈴木弘 ,   山本日出樹

ページ範囲:P.809 - P.812

 脊柱側彎症における手術療法は,1960年Harrington法,1964年Dwyer法の登場により大きな進歩をとげた.更にhalo-Pelvic,halo-femoral traction,椎体前方侵襲によるspinal wedge osteotomy,muscle release,micro-surgical techniqueの開発などにより,今までは手術対象にならなかつた,言わば手遅れの重症高度な症例も手術適応に含められるようになつてきた.
 最近,我々は,高度なpelvic obliquityを伴つたparalytic scoliosisと,背部に高度な瘢痕形成を有した重度側彎症に対し,数度にわたる手術により改善を得た症例を経験したのでその大要を述べる.

いわゆるsubungual exostosisの4例

著者: 三浪明男 ,   石井清一 ,   佐々木鉄人 ,   飯坂英雄 ,   薄井正道

ページ範囲:P.813 - P.816

はじめに
 いわゆるsubungual exostosisは足指および手指の末節骨に単発性に発生し,緩徐な成長を示す爪下部良性骨腫瘍である.欧米では多数の報告例1〜11,15〜17)があるが,本邦では数例の報告をみるにすぎない.本症については本邦での報告例12,14)が稀れであるというばかりでなく,その組織学的所見および病因についても種々の議論の余地を残している.最近,著者らは4例を経験したので報告する.

上位頸髄腫瘍に対する前後同時侵入法の経験

著者: 八木知徳 ,   高橋一男 ,   原田吉雄

ページ範囲:P.817 - P.820

はじめに
 脊髄腫瘍に対する外科手術はHorsley(1887)1)が初めて摘出に成功してから広く行なわれるようになり,今日までに数多くの症例報告がなされている.しかし頸髄腫瘍の場合,臨床症状の特異性と生命に直接影響を与える危険性から正確な診断と慎重な治療法が要求される.特に上位頸髄腫瘍の場合は手術手技上,腫瘍の完全摘出が困難な場合が多く,未だ問題が残されている.一方,Habel(1972)2)青木(1975)3)らは頸椎に発生した砂時計腫に対し,前方および後方より同時に侵入し,良好な結果を得たと報告し,この種の腫瘍に対する手術手技の進歩がうかがわれる.
 最近我々は第3頸髄神経根部より発生した砂時計型の神経鞘腫に対し,前側方および後方より同時に侵入し,腫瘍を完全に摘出し得たので若干の考察を加えて報告する.

足関節のosteochondromatosisの1例

著者: 夏目交授 ,   鈴木勝己 ,   高橋定雄 ,   伊藤祥弘 ,   加藤佑吾

ページ範囲:P.821 - P.823

 osteochondromatosisは外国でも本邦でも比較的稀な疾患である.膝関節に発生したosteochondromatosisの症例は本邦においても数十例の報告があるが,足関節においては数例の報告があるにすぎない.我々は,最近左足関節に発生したosteochondromatosisの一例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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