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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科12巻9号

1977年09月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 人工関節の手術・8

岡山大型人工膝関節

著者: 児玉俊夫 ,   山本純己

ページ範囲:P.826 - P.829

 1970年に私たちは最初の手術をおこなって以来,手術例は100例をこえた.岡山大型人工膝関節は.数回の改良を経て,現在使用しているMark-IIにほぼ完成された形をみるといっていいと思う.
 岡山大型人工膝関節Mark-IIの形態は,膝関節の生体力学的研究の結果を参考にしてデザインされた.すなわち,人工関節の関節面に円周の違った球面を組合せることにより,1つは本来膝関節がもっている屈伸および回旋運動などの複合運動をおこなわることにより,人工関節と生体間のストレスを軽減させることができる.また,膝関節屈曲時には関節運動が容易であるが,伸展時には支持性が高まるように設計されている.

視座

学会とお祭り

著者: 飯野三郎

ページ範囲:P.831 - P.831

 学会にお祭りは,多かれ少なかれ付きものである.ことに理工・文科系よりも医学系において,お祭りが華やかなようである.それも欧米より日本の方が,より派手で賑々しいように思える.あるいはむかしからの,たとえば神田祭はじめ全国津々浦々に伝承されている民族個有の庶民性の表われであろうか.おかげさまでわれわれのように年の効を経ると,ほとんど日本方々の郷士芸能がみられて,見方によつてはまことに有難いことである.
 しかしまたこうしたお祭り精神の一亜型として,わざと特に意地の悪い見方をすれば,少し大きな学会になると,たとえば外人ゲストをむやみに沢山呼んで,まるで後進国向けのような,いささかチャチな講演に過大な拍手を送らしめ,あとはフジャマ,ゲイシャや観光,夫人のshopping等に至れり尽くせりの無理をしたりする.ほんとうのいわゆる"Japanese Hospitality"からいささか逸脱したものを感じたりもするのである.

論述

Triple osteotomyの適応について—年長児遺残性亜脱臼の治療

著者: 石井良章 ,   泉田重雄 ,   家田浩夫 ,   中西忠行

ページ範囲:P.832 - P.841

はじめに
 先天股脱の治療が新生児期から開始されるようになつたものの,日常整形外科臨床で年長児の遺残性亜脱臼を治療する機会は今日なお少なくない.これらの症例に対して現在われわれは残念ながら将来の変形性股関節症を確実に予防し得る方法を見出すことができない.今日行なわれているのは,保存的治療法で経過を観察するか,観血的治療法で積極的に求心性の改善や新臼蓋の形成,臀筋バランスの改善を試みるかのいずれかである.すなわち年長児という生体の適応力が十分期待できる最終年齢期でありながら,これを活用した説得力のある治療法に欠けたまま今日に至つている.
 1973年Steelの報告したtriple osteotomyは,この点年長児の遺残性亜脱臼を解決する上で,きわめて画期的な手段をわれわれに提示したといえる.彼は7歳から17歳までの先天股脱や麻痺性脱臼を対象として行なつたが,1974年以来われわれは年長児の遺残性亜脱臼を中心に,本法をすでに20数例に施行し,見るべき成果をあげつつある.今日まで本邦において,年長児の遺残性亜脱臼の解決を目的として本法を適用した報告はない.われわれは術後1年以上経過した年長児の本法施行例を紹介し,その適応と問題点について言及する.

偽関節および遷延癒合骨折の骨癒合能力について

著者: 山本真 ,   真角昭吾 ,   石井勝巳

ページ範囲:P.842 - P.849

はじめに
 私達は長管骨骨折の骨接合術としての髄内釘固定に一工夫を加え,螺子横固定や髄内圧迫などの手法を用いて良好な骨癒合を得てきたことはすでに報告した8,13,14,16).そして75年版「あすへの整形外科展望」の中の「髄内釘骨接合術の新しい試みと問題点」16)という論文において,問題点として2つをあげた.その1は骨癒合と圧迫力との関係について,その2は偽関節治療についての疑問であつた.
 始めの問題点に関しては「骨折治癒過程に及ぼす機械的因子の作用の再考察」17)という小論にて,臨床例とささやかな実験結果をもとに一応の考え方を述べることができた.今回は第2の問題点について述べてみたい.

変形性膝関節症と膝蓋骨の高さ(第2報)

著者: 岡本連三 ,   腰野富久 ,   佐々木崇 ,   深谷茂 ,   紺野勉 ,   山田幸宏

ページ範囲:P.850 - P.856

はじめに
 膝蓋骨は人体内最大の種子骨である.そのため膝蓋骨関節面に作用する力は大きい.その力は片脚起立時膝を屈曲するにつれ増大し,屈曲140°では体重の約7倍以上の力が膝蓋骨関節面に作用するという7).このような状態では,膝蓋骨と大腿骨関節面になんらかの異常が存在すれば,容易に疼痛などの愁訴の発生につながることが想像される.実際膝蓋骨高位が4,6,12,15,17),臨床的に種々の訴えを起こすことが知られている.また膝蓋大腿部の関節面の変化は,変形性膝関節症にしばしば認められる所見である.そこで本論文では変形性膝関節症における膝蓋骨の位置を計測し正常人の膝蓋骨の位置と比較し,変形性膝関節症に膝蓋骨の高さの異常が存在するか否かを検討した.同時に変形性膝関節症を7型に分類し,各型と膝蓋骨の高さとの関係を検討し続いて変形性膝関節症発生の周辺と膝蓋骨の位置とのかかわりについても検討を加えた.
 今回は変形性膝関節症,男子57症例91関節,女子95症例146関節,計152症例,237関節について膝蓋骨の高さを検討した.

切断肢・指再接着後の血管造影所見

著者: 金子一成 ,   石井清一 ,   三浪三千男 ,   薄井正道 ,   村松郁夫 ,   高畑直司 ,   三宅晳 ,   森田穣

ページ範囲:P.857 - P.862

はじめに
 切断肢,指再接着後,吻合した血管は恒久的に開存し続けるものなのか,あるいは一時的な血行をつかさどり,いずれは側副血行によつて置き換えられるものなのかは議論のあるところである.また再接着肢・指における循環動態を知ることは,二次的機能再建術などの手術侵襲を加える場合にきわめて重要である.われわれは,肢・指切断例に血行再建を試み,再接着に成功した7例に血管造影を行ない,血管吻合部の状態を観察した.また,側副血行の形成および造影剤の消退などで推測される切断肢・指の循環動態について検討を加え,いささかの知見を得たので報告する.

境界領域

慢性関節リウマチに対するD-ペニシラミン長期投与症例の検討—特に投与期間と維持量について

著者: 吉野槇一 ,   小坂弘道 ,   内田詔爾 ,   島田畯介

ページ範囲:P.863 - P.867

はじめに
 慢性関節リウマチ(RA)の数ある治療薬のなかで,D-ペニシラミン(D-P)の抗リウマチ作用には著しいものがある1〜4)
 さて,RA患者にD-Pを長期投与(1年以上)した場合,投与前に比較して治療効果はどれぐらいあるのか,仮りに治療効果があるとしたら投与期間と投与量(維持量)をどのくらいにするのかが重要な問題になつてくる.

紹介

Judet-Letournelの「寛骨臼骨折の分類とそのメカニズム」

著者: 弓削大四郎

ページ範囲:P.868 - P.876

はじめに
 骨盤骨折は従来産業災害によるものが多く,従つて壮年男子にみられたが,近年自動車の普及に伴う交通事故の激増によつて受傷原因の首位を占めるようになり,すつかり西欧型に変つた観がある.
 わが国においては,この骨折の治療は保存的なものが主流であつて,観血的整復による骨接合術をとつている病院は少ないように思われる.骨盤環の骨折は強力な外力が作用して腹部臓器の損傷,外傷性ショックを生じ,時に生死に至る重篤なものであるが,骨折の治療そのものは保存的にやつてもいい結果がえられるのはよく知られている.骨盤骨折のなかで整形外科医にとつて治療上最も重要な位置を占めるのは,股関節脱臼を伴う寛骨臼(以下臼と略する)の骨折であろう.骨頭の外傷性壊死,臼の損傷による外傷性股関節症の発症がその予後を暗いものにするからである.

臨床経験

胸腰椎におけるdiscographyの意義について

著者: 田島健 ,   山川浩司 ,   谷良久 ,   沢海明人 ,   倉持英輔

ページ範囲:P.877 - P.882

はじめに
 1948年Lindblomがdiscographyについて発表して以来,わが国においても幾多の先人達によりその功罪が論じられてきたが,われわれは日常の診療を通じて,その評価について改めて考えることは意義のあることと考えた.
 近年の各種補助診断法の進歩発展に伴い脊椎疾患に対する診断率および術後成績は向上しているが,検査法も多様化しその選択を如何に使い分けるべきかは議論の多い所である.われわれは数年来各種検査法を通じて手術所見と合せ検討してきたが,discographyは症例を選べばすぐれた補助診断法であると考えるに至つた.

大後頭孔付近に発生せるmeningiomaの3例—(Foramen magnum meningioma)

著者: 久保健 ,   村上弓夫 ,   馬場逸志 ,   黒瀬靖郎 ,   石川進 ,   日比野弘道 ,   児玉安紀 ,   山本みゆき ,   糸賀叡子

ページ範囲:P.883 - P.890

 大後頭孔付近に発生せるmeningioma(foramen magnum meningioma)は,その臨床症状が多彩であり,脱髄疾患や頸椎変性疾患などとの鑑別が困難であるとされている8).Blom2)は本症が特徴的な神経症状を呈することよりnew syndromeとして紹介した.Cushing4)は本症をcraniospinal typeとspinocranial typeの2型に分類し,前者はforamen magnum上で脳幹の前方に発育したもので脳腫瘍に属し,後者はforamen magnumより下方で主として頸椎管に伸びたもので脊髄腫瘍に属するとしている.
 最近,われわれは相次いでcraniospinal typeの1例とspinocranial typeの2例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

多発性腱黄色腫症の2例—2例の報告と黄色腫のまとめ

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   小坂正 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰 ,   進藤登 ,   井上肇 ,   三上隆三 ,   楊鴻生

ページ範囲:P.891 - P.896

要約
 2例の高脂血症性xanthomaの報告と,整形外科的立場よりxanthomaのまとめを試みた.
 〔付〕Xanthomaの主病変であるlipid laden histiocyte出現の要因を大別して,histiocyte外の環境要因とhistiocyteの細胞内要因の2つに分け,いずれが強いかを仮定して,種々の場合のxanthomaの発生を説明することができる.これら要因の具体的な諸性質については未明の所が多いが,一般的にxanthomaの発生を説明するには便利である.
 a)細胞外要因と細胞内要因の想定.
 細胞外要因の想定の根拠は,高脂血症をきたす種々の状態で,一様にxanthomaが発生することと,xanthomaには好発部位のあることによる.Lipid laden histiocyte内の脂質は,高脂血症の分類のいずれでも,ほとんど遊離型コレステロールの形で,細胞内に蓄積される.この意味において,細胞外要因は,細胞内の代謝過程に量的に影響を及ぼすが,質的な影響は少ない.また高脂血症があつても,xanthomaは,外傷を受けることの多い,循環状態の悪い部(アキレス腱,膝蓋腱,手指の伸筋腱,肘関節伸側部等)に好発することは,細胞外要因中に,外傷や循環の悪いことが含まれることを示唆する28)

針麻酔,針治療の臨床応用

著者: 鎌野俊彦 ,   青木虎吉 ,   滝川一成 ,   梶原要 ,   坂本元彦

ページ範囲:P.897 - P.902

はじめに
 秦,漢の時代(BC 249〜AD 8)に編纂されたといわれる「黄帝内経」素問24巻1),霊枢12巻2)は現存する中国医書の最古のものとされ,特に霊枢は別名針経ともいわれ針術に関する論説と実施方法が詳細に記載されている.わが国へは奈良時代のはじめに,仏教とともに伝えられた.大宝令には医師,医博士,医生,針師,針博士,針生の官制が定められていた.医心方30巻(984)は現存するわが国最古の医書であり,その著者丹波康頼は針博士であつたといわれる,江戸時代に入り針灸術は急速に普及し,薬物療法(湯液)とともに日本独自の方法が完成され大いに発展した.明治時代に入り西洋文明の輸入とともに西洋医学が医学の主流となり東洋医学,特に針灸は非科学的な経験医学とされ民間療法としてとどまるにいたつた.しかし昭和に入つてからは,戦前戦後を通じて一部の医学者により針灸についての科学的研究がなされ今日に至つている.長浜の針灸理論3),間中の経絡研究4)は優れた著書であり,中谷の良導絡理論5),赤羽理論のシーソー現象6)は評価すべきりつぱなものである.
 電気的エネルギーを医学に応用する考えは1800年前後からあつたが臨床的に用いられることは少なかつた.1902年フランスのLuducが低周波電気の発生装置を考案し,医療面に応用されるようになつた.

小児肘顆上骨折の治療

著者: 渡辺健児 ,   加賀完一 ,   米延策雄

ページ範囲:P.903 - P.908

 小児の骨折は,仮骨形成が迅速確実で骨癒合が容易に起こり,成長過程での旺盛な修復力によつて,ある程度までの短縮や,周転以外の変形に対するかなりの自家矯正が期待されるので手術の適応はきわめて少ない.しかし関節骨折の場合は,1)できるだけ解剖学的形態に近く整復して関節不適合を除く.2)関節支持組織の損傷を十分修復する.3)早期運動が可能なよう確実に固定する等が治療の焦点であり,予後を大きく左右するので,新鮮例で関節内に及ぶ骨折は転位の状態如何によつてはきわめて高い手術の適応があることに異論は少ないと思うが,関節周辺の骨折となると初期治療法の選択に幾つかの問題が生じてくる.一方,陳旧例の場合,関節およびその周辺の骨折では手術による関節面の再適合がなかなか思うようにまかせず,関節や軟部組織に加わる侵襲が予後に不利な影響を与える結果となることも稀ではないので,観血的に処置するとしても,関節面の転位は温存したまま,周転や変形の矯正を主とした範囲に留めるほうが反つて好結果を得る場合が少なからず経験され,手術適応の問題はさらに複雑になる.
 小児肘関節は,骨頭核の出現時期や骨端軟骨の形態が複雑なために骨折像を正確に把握することが難しく,治療の適応を誤り時期を失して不慮の結果を招く場合も決して少なくないので,初期に適確な診断を下して迅速に治療方針を決定することが大切である.

陳旧性膝蓋靱帯断裂再建の1例

著者: 平野秀夫 ,   杉浦保夫 ,   木野義武 ,   服部順和 ,   横江清司

ページ範囲:P.909 - P.912

はじめに
 陳旧性膝蓋靱帯断裂の1例を経験し,靱帯再建にほぼ満足な結果を得たので若干の考察を加え報告する.

膝関節周辺滑液包に発生したオステオコンドロマトージス

著者: 三倉勇閲 ,   佐々木正 ,   細川昌俊 ,   伊勢亀冨士朗

ページ範囲:P.913 - P.918

 OsteochondromatosisについてはReichel(1900)11)がはじめてChondromatose der Kniegelenkkapselと題して報告して以来今日まで数多くの発表があるが,膝関節周辺滑液包に限局して発生したosteochondromatosisの報告は少ない.われわれは最近,膝関節の腓腹筋脛側頭内に限局して発生したosteochondromatosisの2例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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