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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科13巻1号

1978年01月発行

雑誌目次

カラーシリーズ Microsurgery・1

Microangiorrhaphyの基本手技

著者: 玉井進

ページ範囲:P.2 - P.5

〔概説〕
 近年,整形外科領域でのmicrosurgeryの進歩は目覚しいものがあり,とりわけ手の外科の分野では必須の技術となってきた.
 さて,外径1.0mm前後の血管を対象とするmicrovascular anastomosisの基本手技については,Jacobson & Suarez(1960)以来,多くの人達によって紹介されてきたので,この分野に興味をお持ちの読者には,すでにお馴染みのことであろうが,これから1年間にわたってmicrosurgeryのカラーシリーズを担当させていただくに当って,今回はその手はじめとして,我々が日常おこなっている基本手技を紹介する.

巻頭言

第51回日本整形外科学会総会を開催するに当り

著者: 猪狩忠

ページ範囲:P.7 - P.8

 今春,盛岡市において第51回日本整形外科学会総会が開催されることになりました.ここに2,の点について所懐を述べ,会員諸氏の温いご協力を得て,実り多き学術総会となるよう念じております.
 我々の日本整形外科学会もその齢,既に半世紀を過ぎ,後半世紀に入つたのであります.過去50年間の先人の立派な業績のうえに,後半世紀への輝しい門出にふさわしい学会となることを期待しております.

視座

学会に思う

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.9 - P.9

 最近,学会での研究発表は,専門化,細分化され,微に入り細にわたつて,われわれ老骨には理解し難いことが多い.私どもの学校を卒業した頃は,外科の学会にゆくと稀ならず整形外科的な演題が出ていたし,整形外科の学会でもときどき一般外科の演題がまじつていたもので,その領域はそれほど截然とはしていなかつた.
 しかし当時の学会は,ある教授が,学会は真剣勝負の場であると申されたほど厳粛なもので,演説時間もよく守られていた.その頃は時間を知らせるのに鈴が用いられ,8分演説なら6分で予鈴が鳴り,8分で終了を告げる鈴が鳴つたものである.ところが,演説に余り熱中していると,その鈴が聞えないことがあつて,そのまま演説を続けていると,ジャンジャン鳴らされ,終には演説ができなくなつてしまう.これをわれわれは叩き落されると言つたもので,私にも経験がある.この鈴を青と赤のランプに変えたのは多分私が始めではないかと思う.昭和23年会長のときである.以来,青,赤のランプのみでもよく時間が守られ,かつ鈴が鳴らないから会場が静かにもなつた.ところが最近はどうかすると,赤,青のランプが無視され時間をオーバーする方がないでもない.これはアウトロウである.

論述

先天股脱観血的整復後に発生する巨大骨頭について

著者: 岩崎勝郎 ,   鈴木良平 ,   宮田定倫 ,   松本直昌 ,   田副司郎 ,   片山修史

ページ範囲:P.10 - P.21

はじめに
 先天股脱観血的整復術後に発生する巨大骨頭に関しては,本邦において最近とくに注日をあつめている問題である.第10回先天股脱研究会19)においてはこの問題に関して種々討議が行なわれたが巨大骨頭とはどのようなものをいうのか,すなわち定義やその表現の方法などの基本的な事柄が一定していないために,その発生頻度に関しても報告者によってかなりのバラツキがあり,更に発生原因,経過ならびに対策などについていまだ不明な点も少なくない.
 いうまでもなく巨大骨頭(coxa magna)とは骨頭すなわち大腿骨中枢端の関節軟骨によつて被覆されている部分が肥大してくるもので,それにつづく頸部もこれに関連して,その大きさを増しているわけであるが,これら一連の過成長の範囲は関節包内の骨,軟骨に限られたものである.そしていわゆるペルテス様変化とは厳密に区別されねばならない.

膝関節のlateral compartment syndrome—外側側副靱帯,大腿二頭筋腱損傷について

著者: 三倉勇閲 ,   伊勢亀冨士朗 ,   末安誠 ,   冨士川恭輔 ,   中川智之

ページ範囲:P.22 - P.30

はじめに
 膝の靱帯損傷のなかでも内側側副靱帯の損傷は古くから注目され,その膝関節運動における重要な機能が強調されて来た.
 内側側副靱帯損傷を前後十字靱帯,半月などを含めたいろいろな複合損傷の組合せで検討してみると,個々の構成体の損傷として判断するよりむしろ内側構成体全体の損傷として取扱弓べきであることも次第に分つて来た.
 一方外側構成体の損傷は症例の少ないこともあつて比較的等閑視されて来たが,われわれは外側構成体も内側構成体に比べて決して主従の関係にとどまるものでなく膝関節運動において全く独立した機能と内側と協同する2つの重要な機能を持っていることを述べ,社会環境の変遷に伴つて本症の発生も増加して行くであろらことを提言して来た.

大腿骨頭無腐性壊死における人工骨頭置換術の成績

著者: 増田武志 ,   加藤哲也 ,   伊藤邦臣 ,   平井和樹

ページ範囲:P.31 - P.37

はじめに
 大腿骨頭無腐性壊死ははなはだ難治性の疾患であり,その治療にあたつては病像に即した適切な治療法を選択することが最も肝要である.北大においてはこれまで123症例の大腿骨頭無腐性壊死が登録されており,これまで132関節に対して観血的治療を施行している.うち最も多いのが人工骨頭置換術であり52関節を数える.今回は本症に対する人工骨頭置換術の成績を評価するため,術後の追跡調査を行い,その結果を報告するとともに,若干の考察を加え発表する.

股関節合力から見た全人工股関節置換術の検討

著者: 井村慎一 ,   中瀬裕介 ,   長治孝雄 ,   竹多外志 ,   松本晴彦 ,   宮村秀一 ,   一前久芳

ページ範囲:P.38 - P.44

はじめに
 股関節疾患の手術的療法においては,除痛,支持性,可動性および手術効果の持続性が要求されるが,近年,これらの諸条件を満足させるものとしてcup arthroplasty,人工骨頭置換術,全人工股関節置換術などの方法が行なわれてきた.これらの手術は異物による関節再建術であり,当然人工的素材(金属,プラスチック,セラミックス,アクリル樹脂など)の破損・磨耗およびこれらの素材の生体への反応が問題となる.
 全人工股関節置換術においては,その手術適応(年齢,原疾患など),手術手技,使用人工股関節(素材,素材の組合せ,デザインなど),合併症(人工素材の破損・磨耗,loosening,感染など)についていろいろ論議がなされ,さらにbiomechanicalおよびtribologicalな検討もなされている.

調査報告

頸椎後縦靱帯骨化の疫学調査

著者: 手束昭胤

ページ範囲:P.45 - P.52

はじめに
 頸椎後縦靱帯骨化症例は1960年の月本の報告を嚆矢として,最近特に本邦において報告例が増加している.一方欧米における報告例は少なく,Japanese diseaseとも呼ばれている.
 私共も過去約13年間に本骨化を183例(男120例,女63例)を経験し,その中64例に対し,観血的治療を適用してきた(第1図).しかし未だその成因,病態,治療に関しても多くの未解決な問題が残されている.一咋年4月,本骨化が整形外科方面で初めて厚生省特定疾患(いわゆる難病)調査研究疾患とひて採用せられ,種々の角度より研究されつつあり,その成果が大いに期待されるところである.今回,私は本研究の一環として,発生頻度,性比,年齢等についての疫学調査を行なつたので,その結果を報告する.

臨床経験

当科における先天性橈尺骨癒合症—その合併症と治療を主として

著者: 前田敬三 ,   三浦隆行 ,   駒田俊明 ,   千葉晃泰 ,   木野義武

ページ範囲:P.53 - P.59

はじめに
 先天性橈尺骨癒合症は,その原因として内因説,外因説のいずれもがとりざたされ,最近は,染色体の異常10),家系内発生2,4,14,15,19)との関連から内因説が重要視されている.しかし,これら成因に興味が持たれる一方,私達整形外科医がさらに関心を持ち苦慮している問題は当然ながらその治療においてである.前腕回旋障害の処置における考え方が諸家において未だ流動的であるのは決定的な解決法がないためであろう.私達も,これまでの経験を振り返つて2,3の反省と考察を加えて,この疾患に対する今後の方針を見出すための参考としたい.

老齡者の下肢神経症状と腰椎X線計測の検討

著者: 木村功 ,   嘉本崇也 ,   那須吉郎 ,   塩谷彰秀 ,   赤松凱彦 ,   新宮彦助

ページ範囲:P.60 - P.64

 最近,高齡化社会にともない,わたくしたち整形外科医にとつても老人医療にたずさわる機会が増加している.とりわけ腰痛,膝関節痛の症例が外来クリニックでも目立つ.
 また,最近の麻酔学の著しい進歩によつて,これ等の症例に対しても高齡といえど観血的療法を施行する場合が多くなりつつある.

Fibrous dysplasiaの14例

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰 ,   小坂正 ,   山崎典郎 ,   田中秀 ,   山辺登 ,   土居通秦 ,   井上肇

ページ範囲:P.65 - P.73

はじめに
 線維性骨異形成(fibrous dysplasia)は,未熟な骨梁を含む線維性組織が,骨髄,骨梁および骨皮質を置換するもので,Albright1)が1937年その名を冠して呼ばれるAlbright症候群(以下ASと略す)を報告して以来,独特な病変とされて来た9,10).骨病変のみについては,多発性骨病変例9)(polyostotic fibrous dysplasia,以下PFDと略す)と,単発性骨病変例15)(monostotic fibrous dysplasia,以下MFDと略す)がある.MFDはPFDに比して多い.PFDにはASの部分症状のものと,そうでないものがある.従つて線維性骨異形成例は,AS,PFD,MFDに分けられる,なお,甲状腺機能異常を伴う例が1961年頃より報告されているが2,8),本文ではMFD,PFD中に含めた.本文の目的は線維性骨異形成の14例をまとめ,考察を加える事である.
 症例は表にまとめた.表中の組織像の特徴で同上とあるのは,症例1と同様である事を示す.

腰椎棘突起に発生した孤立性骨原発性脂肪腫の1例

著者: 田場弘之 ,   中島啓雅 ,   田中俊夫

ページ範囲:P.74 - P.77

はじめに
 脂肪腫は主に,軟部腫瘍として生理的に脂肪組織の存在する皮下,後腹膜に好発する.しかし,骨髄にも大量の脂肪組織があるのにもかかわらず,骨原発の脂肪腫の報告は少ない.今回我々は,部位的には報告のみられない,第4腰椎棘突起に発生した骨原発性脂肪腫を経験したので報告する.

神経幹内に著明な炎症を認めた前骨間神経麻痺の手術経験

著者: 中川研二 ,   矢部裕

ページ範囲:P.78 - P.80

 母指IP関節と示指DIP関節の屈曲障害を主微とする前骨間神経麻痺についての報告は少なくないが,その発生機序については,neuritis説,entrapment neuropathy説,myelitis説等の諸説があり,まだ定説はない,われわれは本症の1例の手術において,神経幹内に著明な炎症症状を認め,本症発生機序に関する重要な所見と考え,報告する.

D-ペニシラミン投与中に腎障害を呈したいわゆる悪性関節リウマチの2症例

著者: 内田詔爾 ,   小坂弘道 ,   島田畯介 ,   吉野槇一

ページ範囲:P.81 - P.86

はじめに
 ペニシラミンはマクログロブリン解離作用を有し,慢性関節リウマチ(RA)においてリウマトイド因子活性値を低減させる1,2)ことから,RAの治療に使用されはじめ3),さらに悪性関節リウマチ(Malignant Rheumatoid Arthritis:MRA)に対しての効果が期待されている。著者らはすでに"慢性関節リウマチ100症例に対するD-ペニシラミンの臨床成績"を報告4)し,D-ペニシラミンは画期的な抗リウマチ剤であるが,副作用も少なくないことを述べた.今回,MRA患者にD-ペニシラミンを投与していたところ,腎障害を呈した2症例に遭遇したので若干の考案を加えて報告する.なお本文中のMRAは厚生省診断基準5)により判定し,definite MRAを意味するものとする.

Foraminotomyを必要とした頸椎ラディクロパチーの3症例

著者: 沢海明人 ,   田島健 ,   山川浩司 ,   谷良久

ページ範囲:P.87 - P.91

はじめに
 われわれは保存的療法に抵抗する頸椎ラディクロパチーに対しては,ほとんどに前方固定術を行ない,良好な結果を得ている.しかし,症例の一部にはforaminotomyを必要とするものがあると考えている.
 今回foraminetomyにより症状の改善をみたと思われる3症例を経験したので,手術手技,および適応に関する私見を加えて述べたい.

座談会

先天股脱遺残亜脱臼に対する補正手術

著者: 上野良三 ,   香川弘太郎 ,   山田勝久 ,   坂口亮 ,   泉田重雄

ページ範囲:P.92 - P.104

 先天股脱治療後の遺残亜脱臼の補正手術として従来行なわれてきた各種の臼蓋形成術や骨盤骨切り術に,適応,術式,手術時期等の面から再検討を加えたい.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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