icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科13巻10号

1978年10月発行

雑誌目次

カラーシリーズ Microsurgery・9

血管付骨・皮弁移植術(Vascularized osteocutaneous flap transfer)

著者: 玉井進

ページ範囲:P.894 - P.897

〔概説〕
 骨欠損に皮膚の欠損を伴っている場合に有用な方法である.Donorとしては,肋骨または腸骨が用いられる.前者は肋間動脈からの分枝である外側皮枝ramus cutaneous lateralisによって栄養される皮弁を肋骨および肋間筋の一部とともに摘出し,吻合には後肋間動静脈を用いればよい(第1図).後者は腸骨片をgroin flapとともに用いるもので,腸骨は浅腸骨回旋動脈より血液供給を受けているため,採取に当っては,第3図に示すように,縫工筋,大腿筋膜張筋の起始部の一部を含めて,皮弁と腸骨片との連続性を保つことがポイントである.これらflapはSensory flapとしても応用できることは大きな利点であり,前者すなわちcostal osteo-cutaneous compound flapでは肋間神経を,後者すなわちiliac osteo-cutaneous compound flapでは外側大腿皮神経,または,第12肋間神経外側皮枝を移植床の神経と縫合すれば,移植皮弁に知覚が獲得できる.

視座

SICOTとSIROT

著者: 津山直一

ページ範囲:P.899 - P.899

 第14回国際整形災害外科学会議(SICOT '78 Koyto)も数週の後に迫りました.今回のSICOTでは恒例の研修会,特別講演が世界中の権威により各種テーマにつき行なわれるほか関連学会として国際股関節学会(International Hip Society)と国際関節鏡学会(International Arthroscopy Association)がSICOT開会の前日の10月14日(土)に同じ京都国際会館で開かれます.またSICOT創立50週年記念の歴史展示,学術展示,機械展示も数々のシンポ,ラウンドテーブル,一般演題と共に開かれますが,今回のSICOT会議が従来のそれと最も異う点は一つは世界中に分立する整形外科関係の各専門分野の諸学会や研究会をSICOTの会期中にSpecialized Group Symposium(SGS,専門グループシンポジアム)として組み入れた点であります.これは整形外科災害外科がさらに専門分化し,諸学会が分れて行く結果,整形災害外科学が分裂,断片化してゆく傾向を憂え,真に整形,災害外科学を包括した学会としてSICOTを維持してゆくべく,関連専門分野諸学会をSICOTの傘下に統合する意図で行なわれるものであります.

論述

変形性股関節症大腿骨頭における骨嚢包の発生と進展

著者: 濱淵正延

ページ範囲:P.900 - P.909

はじめに
 変形性股関節症(以下,変股症と略す)における大腿骨頭には多彩な病変が認められるが,そのなかでも骨嚢包の発生は最も興味深く重要な病変である.
 欧米においては,一次性変股症における大腿骨頭の病理学的検索は古くよりなされ,多くの報告がある3,4,10,12,18,20).またわが国でも変股症の病理に関する研究がなされたが1,5,7,22),骨嚢包形成機転に関しては十分な解明がなされているとはいえない.

股関節手術にみられる大腿神経麻痺について

著者: 広畑和志 ,   梁復興 ,   武部恭一

ページ範囲:P.910 - P.917

はじめに
 従来の股関節形成術は手術の中でも難しいものの1つで,よく訓練され,高度の技術を身につけた専門医によつてのみ行なわれたためか今日の人工股関節置換術ほど普及しなかつた.また,その頃には適応が限定されていたのかあるいは,技術が優れていたのか股関節外科における大腿神経麻痺の合併症に関する論文がみあたらない.最近,人工股関節置換術が盛んとなり,ここ数年の間に大腿神経麻痺の合併症が散見されるようになつた.この神経麻痺も他の麻痺と同じく医原性因子が絡むので,股関節外科を専攻する人は,その発生原因,症状や予後などについて認識しておかねばならない.
 著者らは主として脱臼性股関節症に対するカップ関節形成術と全置換術後に発生した大腿神経麻痺の臨床経過を追跡した.その経験から特に麻痺の予防と治療について述べることにする.

手術手技

自家腸骨片移植による補形的脛骨近位関節面形成術

著者: 冨士川恭輔 ,   伊勢亀冨士朗

ページ範囲:P.918 - P.926

はじめに
 関節内骨折の治療の基本は,関節面の適合性を復元することにあるが,日常臨床では整復が不十分なために経過と共に大きな機能障害を続発することが少なくない.
 特に荷重関節の一つである膝関節では,関節面の整復が不十分であると,疼痛,不安定性,変形を遺残し,局所的な変形から経時的には汎関節型の変形性変化にまで進展する.

境界領域

多発性骨髄腫

著者: 高久史麿

ページ範囲:P.927 - P.934

はじめに
 多発性骨髄腫は骨髄中に存在する形質細胞の腫瘍性増殖で,腫瘍化した形質細胞すなわち骨髄腫細胞のために骨の破壊とともに骨髄内造血細胞の低形成が起こつてくるのが特徴的である.
 増殖した骨髄腫細胞は通常活発な免疫グロブリンの産生を行なうため,免疫グロブリン,あるいはその構成成分であるポリペプタイドが血中あるいは尿中で異常に増加し,そのための症状も起こつてくる.多発性骨髄腫では骨髄腫細胞の異常増殖のため骨に著明な変化が起こり,そのための症状を初発症状として整形外科医を訪れることが稀でない.従つて多発性骨髄腫に関する臨床的な知識を十分に取得することは整形外科の医師にとつて是非必要である.本文においてはそのような観点から多発性骨髄腫についての臨床的な事項の概略を述べる.

臨床経験

頸椎後縦靱帯骨化を有しながら他の原因で発症した脊髄症症例について

著者: 栗原章 ,   片岡治 ,   謝典穎

ページ範囲:P.935 - P.941

はじめに
 頸椎後縦靱帯骨化(以下OPLL)が,頸部脊髄症を惹起することは,よく認識されているが,一方,頸椎にOPLLが認められても無症状のものもあることも知られている1〜4,7).さらに,頸椎にOPLLを有するものは,他の脊椎管構成靱帯の骨化を伴うことも多い2,5,6).従つて,頸椎にOPLLがみられ,脊髄症状を呈する症例の診断と治療にあたつては十分な検討を要する.今回,われわれは,頸椎にOPLLを有しているが,OPLL以外の原因で脊髄症を発症していると考えられ,それに対応した観血的治療を行なつた症例について検討した.

著明な出血傾向を来たした転移性骨腫瘍の2例—DICの要約

著者: 荻野幹夫 ,   蜂須賀彬夫 ,   小坂正 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   村瀬孝雄 ,   井上肇 ,   三上隆三

ページ範囲:P.942 - P.945

はじめに
 近年凝血学的検査法の進歩によつて,正常の凝固諸因子が急速にかつ大量に血管内の多発性血栓形成によつて消費され,その結果,著しい出血傾向が出現するDIC(disseminated intravascular coagulation)はdefibrination syndrome,ICF症候群(intravascular coagulation with fibrinolysis syndrome)等と呼ばれ,各科領域で注目されている.整形外科領域でもDIC症候群はそれ程稀なものとは思えないが,なお多くの報告はなされていない.本文の目的は,経過中DICを起こした2例の転移性骨腫瘍例を報告し,DICの概念や診断治療法の要約を試みることである.

骨腫瘍に対する下肢および骨盤の広範切除術の経験

著者: 三木浩 ,   阿部光俊 ,   大野藤吾 ,   張紹元 ,   長谷川攻 ,   小原康史

ページ範囲:P.946 - P.950

 膝関節,股関節および骨盤に広範囲な病巣をもつ骨腫瘍の切除に関しては,その適応・術中・術後の問題など解決されていない諸問題がある.
 われわれは昭和48年より今日まで,膝関節,股関節,骨盤に発生した原発性,転移性骨腫瘍10例に対して広範囲切除術を施行したので,上記諸問題につき検討を行なつた.

膝関節内ganglionの2例

著者: 内藤二郎 ,   石川斉

ページ範囲:P.951 - P.955

 膝関節内に発生したganglionは,1924年Caan1)によりはじめて報告された疾患で,欧米ではそれ以後報告が散見されるが,本邦では1975年笠井2)の報告がみられるにすぎない.本疾患には臨床症状に特徴的なものがないので見すごされ易い.従つて実際にはもつと高頻度に存在するのではないかと考えられる.最近われわれは本疾患の2例を経験したので,これらの症例を報告し,本疾患の発生原因等につき若干の考察を加えたい.

先天性四肢短縮型小人症の2例

著者: 稲田治 ,   豊島良太 ,   松井克明 ,   山本吉蔵 ,   前山巌

ページ範囲:P.956 - P.966

 Thanatophoric dwarfismおよびasphyxiating thoracic dysplasiaはともに先天性に骨形成障害を示す疾患であり,それぞれ先天性四肢短縮型小人症として知られている4).しかしその病因については現在までのところ明確ではなく,わが国においては報告例もきわめて少数である.私共は胎児期あるいは新生児期に死亡し,四肢の短縮を認める上記疾患と考えられる2症例を剖検する機会を得,臨床的・エックス線学的・組織学的(光顕,電顕)に検索したので,その結果について報告する.

Kasabach-Merritt症候群—病的股関節脱臼を呈した症例

著者: 渡辺正美 ,   井沢淑郎 ,   亀下喜久男

ページ範囲:P.967 - P.970

 血管腫は稀に血液凝固系の異常を伴う場合があり,1940年KasabachおよびMerritt1)が血小板減少症を合併した血管腫を初めて報告した.以来Kasabach-Merritt症候群,hemangioma-thrombocytopenia症候群,さらにhemangioma with disorder of coagulationなどの名称にて欧米では今日までに少なくとも80例以上の報告がなされている.本邦での報告は比較的少なく,小児科2),皮膚科3),放射線科4)等における報告がほとんどで,整形外科領域では,堺田5),工藤6)らの計3例にすぎない.
 なお病的股関節脱臼を伴つた症例の報告は本症例が初めてと思われる,

マルファン症候群に合併した側彎の手術的矯正について

著者: 生越英二 ,   大谷清 ,   石名田洋一 ,   満足駿一

ページ範囲:P.971 - P.976

はじめに
 マルファン症候群に合併する脊柱側彎は,進行性でかつ早期から可撓性が低下し疼痛を伴い易く,その予後は不良とされている.従来より本側彎に対する手術的矯正は大方が悲観的であつた.それは本症が全身的結合織疾患で,心臓血管系に重篤な変化を来たすことが稀でなく,生命的予後が危惧されるためである.一方これら重篤合併症が除外できれば今日では積極的に側彎の手術的矯正を行なうべきとの意見も出されており,その報告がみられる.
 われわれは最近本症に合併した高度脊柱側彎に対しDwyer手術により矯正を行なつた2例を経験したので報告する,

中指DIP関節内外にみられたsynovial chondromatosisの1例

著者: 寺井誠一 ,   福沢玄英 ,   山岡明治

ページ範囲:P.977 - P.979

はじめに
 関節内に生ずるsynovial osteochondromatosisあるいは,synovial chondromatosisの発生部位としては,膝関節,肘関節がその大半を占め,次いで股関節,足関節に多く,指関節等の小関節の報告は少ない.
 私共は最近左中指DIP関節の内外に見られた本症の一例を経験したので報告する.

学会印象記

第15回先天股脱研究会

著者: 猪狩忠 ,   本田恵

ページ範囲:P.980 - P.983

 第51回日本整形外科学会第1日目の昭和53年5月18日(木)に学会終了後,午後6時30分から岩手医大歯学部講堂で約340名の参加者によつて開催された.今回は日整会会期中のため夜間に行なわれるところから,時間に制限もあるので特に「先天股脱非観血的治療法の不成功例の検討(Limbus周辺の問題を中心にして)」と問題をしぼり討論していただいた.なお司会は国立仙台病院の赤林惇三先生にお願いした.

急告

第14回国際整形災害外科学会議(SICOT '78 KYOTO)プログラム(抄)

ページ範囲:P. - P.

会 期 10月15〜20日  会 場 京都国際会館
開会式 10月15日 16:00於 メインホール

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら