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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科13巻11号

1978年11月発行

雑誌目次

カラーシリーズ Microsurgery・10

神経血管付遊離筋肉移植術(Neuro-vascular free muscle transplantation)

著者: 玉井進

ページ範囲:P.986 - P.989

〔概説〕
 遊離筋肉移植は1800年後期から,多くの先人達によって試みられてきたが,いずれも血流がないために,移植筋は完全な壊死におちいり,結合織で置換されたり,軟化融解の経過をたどり,成功例は得られていない,筆者は1970年,microsurgeryによる神経,血管付筋肉移植の実験的研究を発表し,臨床応用への可能性を示唆した.
 1973年,上海第6人民医院において,Volkmann拘縮に大胸筋を移植して成功したのを端緒として,本邦でも,同年,波利井らは顔面神経麻痺に薄筋を移植して素晴しい成績を収めた.その後も,生田ら,片井ら,玉井らが臨床応用に成功しており,外国においても,近年,成功例の報告が散見されるようになった.

視座

外科と整形外科

著者: 田島達也

ページ範囲:P.991 - P.991

 私たちの整形外科が今日国民医療の中で大きな比重を占めていることは私たち自身ばかりでなく医療に関連する者が均しく認めるところで,総合病院は言うに及ばず,中小病院も整形外科の設置を望み,銀行も整形外科の開設には融資を惜しまないと聞いている.
 ところが医学界や医学教育における整形外科の比重は上述の認識とは裏腹に完全な"Kleinfach"である,僅かに国立大学より弾力性をもつ一部の私立大学において実勢を反映した比重が与えられている.このような認識の差の由来とその結果生ずる医学教育や実際医療上の歪みに今後どう対処すべきか考えてみたい.

論述

膝前十字靱帯機能不全に対する手術的治療

著者: 中嶋寛之 ,   近藤稔 ,   黒沢尚 ,   福林徹 ,   土肥徳秀 ,   古賀三郎

ページ範囲:P.992 - P.996

いとぐち
 膝関節は,スポーツ選手において最も損傷を受けやすい部位であり,スポーツ外傷の約4分の1は膝周辺に生じるとさえいわれている1)
 なかでも膝前十字靱帯の機能不全による不安定膝はスポーツ外傷に特徴的なものであり,その不安感からスポーツはおろか,日常生活にも支障をきたす例が少なくない.

上肢尺側列形成不全の発現様式

著者: 荻野利彦 ,   石井清一 ,   三浪三千男 ,   薄井正道 ,   村松郁夫

ページ範囲:P.997 - P.1003

緒言
 上肢先天奇形の中で母指形成不全は橈骨欠損を,また尺側指の形成不全は尺骨欠損を伴つて出現してくることが多い.これらの奇形は上肢の長軸方向に障害が限局しているため縦列形成不全と総称される22).縦列形成不全の中で,形成障害が橈側に限局しているものは椀側列形成不全,尺側に存在するものは尺側列形成不全と呼ばれている.橈側列形成不全の病態および発現様式に関しての報告は多い.一方,尺側列形成不全は橈側列形成不全に比べて出現頻度が少なく,病態および発現様式に関しても不明な点が少なくない.著者らは,尺側列形成不全の発現様式を明らかにする目的で,臨床例について病像の分析をした.さらに,動物実験でラットに尺側列形成不全を誘発して臨床例との関連を検討した.

最近の脊椎カリエスによる脊髄麻痺の特徴とその手術成績について

著者: 満足駿一 ,   里見和彦 ,   柴崎啓一 ,   大谷清 ,   野町昭三郎

ページ範囲:P.1004 - P.1012

はじめに
 1953年(昭和28年)以来5年毎に実施されている結核実態調査1)によると,前回の調査時即ち1973年(昭和48年)には,全結核要医療患者の人口対率はすでに1%以下となり,推定患者数でも82万人となつて始めて患者数が100万人を割つた.このような傾向に呼応して,一時は26万床も数えた結核病床数は,1973年には半数の13万床に減少したしその病床利用率も60%近くにまで低下した.その上,結核実態調査で発見されたこれらの全結核要医療患者の年齢構成をみると,1953年には,30歳未満が32%を占め,60歳以上は11%にしかすぎなかつたのが,年度が進むにつれて若年者層の占める割合が減少し,逆に高齢者の割合が増加してきた.すなわち,1973年には30歳未満は11%,60歳以上が37%となり,構成割合が1953年当時に比べて逆転し,45歳以上の患者が全患者のほぼ2/3を占めるようになつた.また,1973年の調査による新登録結核患者の発生率を年齢別にみると,45歳未満では年間10万対50くらいであるのに対し,45歳を過ぎると10万対150から200と急激に増加している.

手術手技

人工股関節全置換術に対する腰部硬膜外麻酔法の応用について

著者: 津布久雅男

ページ範囲:P.1013 - P.1017

はじめに
 われわれは,昭和47年にCharnleyの低摩擦人工股関節置換術(Low Friction Arthroplasty)1)を採用した.その成績が極めて良好であることから適応疾患は変形性股関節症(以下O. A.と略す),から慢性関節リウマチ(以下R. A.と略す),強直性脊椎炎(以下A. S.と略す)等のリウマチ性疾患はもとより,大腿骨頸部内側骨折,大腿骨骨頭無腐性壊死,股関節結核へと拡げられた.
 元来,高齢者が主なる対象であるので心肺機能の障害,脳血管障害,あるいは糖尿病等の老人病を合併している例が多いのはもちろんであるが,さらに適応疾患の拡大により,それぞれの疾患に特有な合併症を有する症例(例えば,R. A.における頸椎,頸髄障害,開口障害,強直性脊椎炎の肺合併症,股関節結核の肺病巣,大腿骨骨頭無腐性壊死にしばしばみられる肝障害等)に遭遇することが少なくない.したがつて,これらの症例の麻酔には,吸入麻酔での逆行性挿管等の新しい工夫を加えるか,吸入麻酔以外の麻酔法の選択を必要とするようになつた.

検査法

臼蓋角-OE角図表による股関節の考察—乳児を中心に

著者: 石田勝正 ,   森下晋伍

ページ範囲:P.1018 - P.1022

はじめに
 股関節は臼と骨頭とで一組の関節を形成していることは当然である.従つて,臼蓋角と骨頭の位置とは互いに密接な関係にある.ところがこれまでは臼蓋角と骨頭の位置はそれぞれ独立した角度としてしか表現されていなかつた.本論文では,これら両者が本来もつべき相互依存的関係を表現する手段として,臼蓋角とOE角(CE角の代用(山室))4)を組み合わせた二次元グラフを提案したい.

装具・器械

新しい素材による固定包帯Hexceliteの使用経験

著者: 藤巻有久 ,   青木虎吉 ,   村瀬鎮雄 ,   近藤秀丸 ,   菅原黎明 ,   大塚嘉則

ページ範囲:P.1023 - P.1027

はじめに
 従来より広く愛用されているGips包帯は,重いこと,水に弱いこと,X線透過性が悪いことなどの欠点を忍んで,整形外科,保存的療法において重要な医用材料として用いられている.今回,われわれは,東京衛材社の御好意により,新しい材料であるHexceliteを臨床的に使用する機会を得,4施設において試用していささかの知見が得られたので報告する(第1図).

臨床経験

習慣性足関節亜脱臼に対するElmslie法の変法(Chrisman & Snook)の手術経験

著者: 三谷晋一 ,   白野明 ,   楠本剛夫 ,   福沢玄英

ページ範囲:P.1028 - P.1035

はじめに
 足関節捻挫をくり返し,しかも不安定感を伴い,足関節の底屈と内反強制位で,X線上明らかに外側関節裂隙が増大する症例は,足関節の習慣性亜脱臼もしくは,習慣性脱臼と称され,その治療に関しての報告が散見される.これは主に,足関節外側靱帯(第1図)の損傷が原因とされ,その治療法としては主に手術療法が求められている.現在まで,広く行なわれている術式として,短腓骨筋腱を利用するWatson Jones法のほか,各種の再建術が考案されている(第2図).
 Chrisman & Snookは1968年に,足関節外側靱帯損傷の再建法として,Elmslie法が,大腿広筋膜を使用しているのに対して,短腓骨筋腱の前半部を筋腱移行部から停止部近くまで切離し,停止部とは連続を保つたまま遊離したのち,その走行を変え,前距腓靱帯および,踵腓靱帯の解剖学的走行に一致させて修復する方法を行ない(第3図),良好な成績を得たと報告している.我々も,この方法が解剖学的にも,機能的にも,従来行なわれている他の方法にくらべ,より合目的であると考え,5年前より,本法の追試を行なつて来た.現在のところ,比較的満足すべき結果を得ているので,我々の経験に基づいて,その術式および,術後成績を述べるとともに,若干の文献的考察を加えたい.

副神経損傷による僧帽筋麻痺について

著者: 梁瀬義章 ,   上羽康夫 ,   須藤容章 ,   上尾豊二 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.1036 - P.1041

はじめに
 肩甲帯部の運動障害を主訴として整形外科外来を受診する患者の多くは,頸椎骨軟骨症,肩関節周囲炎,腕神経叢損傷,筋原性疾患などがその原因となつている.また,肩関節運動障害や翼状肩甲を主訴とする患者の中には副神経麻痺に起因するものがある.副神経麻痺の原因には種々のものがあるが,側頸部や後頭三角部の手術侵襲がその原因であることが多い6,12,20,21,23,24).耳鼻咽喉科領域などでの頸部悪性腫瘍に対する頸部廓清術時には副神経機能の温存が困難な場合もある.しかし,いまだに単なるリンパ節の生検や頸部良性腫瘍摘出に際して副神経損傷がしばしば起つていることは,外科整形外科領域での副神経の機能に対する認識が低いことを意味していると思われる.われわれは最近5年間に副神経損傷による肩関節運動障害の患者6例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

脊髄髄膜瘤に伴う背柱変形

著者: 伊藤裕夫 ,   村地俊二 ,   沖高司 ,   野上宏 ,   夏目玲典 ,   荻野武彦

ページ範囲:P.1042 - P.1049

はじめに
 脊髄髄膜瘤(Myelomeningocele,以下M. M.と略す)の欧米における発生頻度1〜5)は,1,000人の出生に対して,1〜4人と言われる,一方本邦の発生頻度は村上6)によれば,新生児1,000に対して約3例の出生と言われ,高橋7)によれば,1,000の分娩に対して0.17〜0.44で,欧米に比し約1/10の頻度であろうと述べている.
 このようにM. M.の発生頻度は,本邦では欧米に比べはるかに少ないものであるが,山田ら8)も述べているように,中枢神経系の先天異常の中では比較的多く,特に小児中枢神経系の外科疾患において大きな位置を占めている.

大腿骨,硬膜外腔に発生し原発巣を決めかねた細網肉腫の1剖検例

著者: 加藤隆 ,   猪飼通夫 ,   榊原弘喜 ,   加藤作郎 ,   杉浦浩

ページ範囲:P.1050 - P.1055

はじめに
 Reticulosarcoma(細網肉腫)は1928年Oberlingにより独立疾患としてリンパ肉腫から分離され,かつ同時に骨の細網肉腫の存在も示唆された.その後1939年ParkerとJackson10)により,従来Ewing肉腫,Hedgkin病,リンパ肉腫などに含まれていたものの中から臨床像および予後の異なる原発性骨細網肉腫が報告された.
 硬膜外腔細網肉腫に関連する報告は,1910年Welchによる脊髄腫瘍としての悪性リンパ腫が最初である.硬膜外腔を原発巣とする悪性リンパ腫が存在するか否かは,この部位にリンパ組織が存在するか否かという解剖学的問題を含め論議のある所である.

長期間偽関節にみられた髄内釘折損の症例について

著者: 武部恭一 ,   梁復興 ,   水野耕作

ページ範囲:P.1056 - P.1061

はじめに
 長管骨の骨幹部骨折に対する髄内釘による固定法は優れた方法ではあるが,その合併症のひとつに髄内釘の屈曲や折損という問題がある.釘の屈曲は術後比較的早期に多く,折損は晩期に多いとされているが5),折損例の多くは材料の粗悪なことによるものあるいは疲労現象に基づくものと解釈されている4,5)
 最近我々は長期間の偽関節例にみられた髄内釘折損の1例を経験し,再手術により骨癒合をみたのでこの症例を報告するとともに髄内釘折損の原因につき考察を加える.

骨原発性小円形細胞肉腫の2例—Ewing肉腫と細網細胞肉腫の鑑別について

著者: 荻野幹夫 ,   蜂須賀彬夫 ,   小坂正 ,   村瀬孝雄 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   井上鉄三

ページ範囲:P.1062 - P.1066

はじめに
 骨原発性悪性腫瘍中,病理組織学的に特徴のある,一様な小円形細胞肉腫を示すものには,Ewing肉腫,骨原発性悪性リンパ腫16)(細網細胞肉腫を含む)がある.(他に同様な組織像を示すものにneuroblastomaの転移13)がある).Ewingは19214)年7例の骨原発性小円形細胞肉腫を報告し,以来Ewing肉腫の名で,同様の多くの症例が報告された.しかし既に1928年Oberling14)により骨原発性細網細胞肉腫の存在の可能性が示唆され,Ewing自身も1939年5)にその存在を認めている.骨原発性細網細胞肉腫に関する最大の功績は,Parker & JackSonの報告15)であり,軟部原発性細網細胞肉腫と同様な組織像を持ち,予後のよい疾患単位が確立された,他方Ewing肉腫の定義は,いずれの報告1,12,19)でも,明白でない。発生母地についても,Ewing自身が示唆したendothelioma説は,今日,認める人は少なく,Oberlingの述べたごとく14,19),Ewing肉腫,細網細胞肉腫,血液細胞悪性腫瘍の3者は,いずれも同一起原のもので,分化段階の異なるものであるとする説にも決定的根拠はない.

「椎間板炎」と思われる6症例について

著者: 瀬良敬祐 ,   江川正 ,   朝長圀夫 ,   坂本暁拓 ,   吉田博利

ページ範囲:P.1067 - P.1070

はじめに
 椎間板炎には,椎間板造影や椎間板摘出手術後に発生する場合と,なんら外科的侵襲なしに1次性に椎間板炎を起こす場合がある.
 われわれは,最近8年間に当院にて経験した,いわゆる「椎間板炎」と思われる6症例について,その臨床経過を中心に報告する.症例は第1表に示すごとく,血行感染によると思われるもの2症例,術後感染4例である.

Candida parakruseiによる骨関節炎の1例

著者: 高橋貞雄 ,   冨士武史 ,   西塔進

ページ範囲:P.1071 - P.1074

はじめに
 この数年間,抗生剤や抗癌剤,免疫抑制剤などの多剤投与やcatheterizationの多用が一般化するにつれ,candidsisが増加してきた.このような背景のなかで,従来きわめてまれなものとされてきたcamdidaによる骨関節炎の報告も数多くみられるようになつた1)
 最近,私たちはcandida parakruseiによると考えられる骨関節炎に遭遇し,amphotericin Bの間歇投与と病巣掻爬,骨移植によって治癒させた1例を経験したので報告する.

膝半月板骨化症の1例

著者: 清水正章 ,   板倉和資 ,   嘉悦博

ページ範囲:P.1075 - P.1078

 膝半月の骨化症については1931年Wollenbergの報告以来sesamoids in the knee jointまたはlunulae(Pearson 1921)とかあるいはossification in the internal semilunare cartilage(Burrow 1934),ossicle in the knee menisci(Symeoider 1972)などと種々の名称で呼ばれているが,半月の石灰化と異なりその報告例は極めて少なく,私の調べた範囲では外国例23例,本邦19例にすぎない(第1表).
 Weaver(1942)は骨化機転に関して半月に変性のみられるものをsecondary,みられないものをprimaryと区別しているが,骨化の大部分はsecondaryで硝子様軟骨組織を基盤とした骨形成であり,primaryすなわちinter meniscal lunulaeといわれる症例は更に少ないと述べている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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