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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科13巻12号

1978年12月発行

雑誌目次

カラーシリーズ Microsurgery・最終回

骨組織への血管移植(Blood vessel transplantation to bone)

著者: 玉井進 ,   保利喜英

ページ範囲:P.1082 - P.1085

〔概説〕
 新鮮遊離骨や腐骨に,動,静脈を含む血管束を移植することにより,旺盛な血管新生と骨新生が起こることを実験的に証明しえた.これを基盤として,臨床面で種々の骨壊死の治療や,骨移植の際に応用し,その有用性を確認することができた.
 手術用顕微鏡は手根骨などに対する細かい血管束移植の場合には用いるが,大腿骨頭などに対する移植の場合,顕微鏡下の操作は行なわない.しかし,microsurgeryによって培かわれた血管に対するatraumaticな技術が要求される.

視座

慢性関節リウマチの外科

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.1087 - P.1087

 難病慢性関節リウマチ(RA)が人類に及ぼしつつある災禍はかつての結核に亜ぐものがある.結核対策が確立されたこんにち,RAの対策の樹立が切に望まれる.
 結核においてはその病原が結核菌であることがいちはやく知られていたのに,それでもその対策の確立に半世紀あるいはそれ以上を要した.RAにおいてはそれが炎症であると知られながらまだその正体をつかみきれないでいる.ここに,問題解決の難しさの根源がある.

論述

先天股脱に対する観血的整復術不成功例の検討とその対策

著者: 山室隆夫 ,   石田勝正 ,   岡正典

ページ範囲:P.1088 - P.1096

はじめに
 最近では先天股脱の発症に対する予防運動の実践や早期発見とRiemenbugelの普及さらにover head tractionの手技の改良など種々の努力の結果,観血的整復術を必要とするような先天股脱症例は激減してきている.しかし,今日でもなお治療が難航し観血的に整復を行なう必要に迫られる症例やteratologicな症例などが専門家のクリニックへ紹介されてくるのは決して珍らしいことではない.特に,すでに種々の観血的治療を受けているにもかかわらず大腿骨骨頭がなお求心性を獲得していないような症例には繰り返えし観血的整復術を行なつてもその後の治療に難渋することが少なくない.
 そこでRiemenbugelやover head tractionによつて整復されない新鮮な症例に対する観血的整復術はどのような手技をもつて行なうのが最も望ましいか,また,すでに繰り返えし観血的整復術などの手術的治療が試みられた症例やteratologicな症例に対する観血的整復術ではどのような点に留意すべきか,さらに,観血的整復術後の亜脱臼を防止し臼蓋形成不全を改善する目的でしばしば補正手術がなされるが最も適切な術式は何かなどの諸問題を検討するために本研究を行なつた.

上肢型急性中心性頸髄損傷について

著者: 森脇宣允 ,   大本秀行 ,   千束福司 ,   津江和成 ,   服部奨 ,   小山正信 ,   斉木勝彦

ページ範囲:P.1097 - P.1103

はじめに
 Schneiderら2,3)は頸椎に外力をうけた場合明らかな骨折,脱臼の有無とは関係なく頸髄の一定範囲に可逆性の浮腫から出血,完全破壊に至る種々の段階の病変が生ずることを認め,それに基づく症状を急性中心性頸髄損傷症候群と命名した.
 我々が数多くの急性中心性頸髄損傷を経験したなかに,従来報告されてきた神経症状とは明らかに異なつた症状を示すグループの存在に気づいた9〜11)

脊椎脊髄外科領域へのhalo-pelvic tractionの応用

著者: 満足駿一 ,   柴崎啓一 ,   大谷清 ,   野町昭三郎

ページ範囲:P.1104 - P.1115

はじめに
 脊椎の直達牽引装置であるhalo-pelvic traction装置(以下,H. P. T.装置あるいは単に装置と略す)は,本来,より正確には,頭蓋骨盤牽引1)(Cranio Pelvic Traction)装置と呼ばれるべき性質のものであり,本法が,頭蓋および骨盤の外周に固定した各1個の円形環(HaloとHoop)を,前後それぞれ2本の伸張棒で連結し,脊椎をその軸方向に牽引伸張する方法を採つている事は衆知の所である.現在,本装置にはいくつかのタイプ2〜6)のものが開発されているが,基本的な原理や装置の構造には変りはない.本装置が登場して以来,脊柱変形の矯正が,従来に比して著しく安全にしかもより確実に行ないうるようになり,今日,本装置は,脊椎外科の分野では,応用途の広い極めて有用な治療器具となつたばかりか,最早その一部では必要不可欠なものとさえなつた.我々は,1973年3月,本装置を脊椎カリエスの1例に始めて応用したが,以来今日までに,本装置に対する我々の経験は60例を越えるに至つた.ここにこれまでの使用成績と共に今後の適用方針について述べる.

装具・器械

第5中足骨基部骨折の装具療法について

著者: 数佐正邦 ,   力田忠義 ,   倉田利威 ,   岡本則昭 ,   平松伸夫

ページ範囲:P.1116 - P.1118

はじめに
 足部の外傷は日常よく経験するものであるが 足を内反位に捻挫した際にしばしば生じる第5中足骨基部骨折は,下駄骨折とも呼ばれ,骨折の中でも多いものの1つである.
 過去3年間,我々は42例の同骨折を経験し,いずれも我々の考案した足底板を装着することにより,ギプスからの解放と同時に足関節の拘縮を予防し,治療期間の短縮をはかつてきたので,これを紹介すると共に苦干考察を加えて報告する.

臨床経験

Chondropathia patellaeの病態と治療について

著者: 末沢慶紀 ,  

ページ範囲:P.1119 - P.1127

I.序論
 膝蓋骨関節軟骨の軟化から欠損に至るまでの退行性変化は1906年Büdingerの記載を嚆矢とする.いわゆるChondromalazia patellaeの種々の変化については,さらにLäwen(1925年),Fründ(1926年)などの報告がある.前者はChondromalazia patellaeとArthrosis deformansとの病理所見と共通性をあげ,発症にはbegleitende Synovitisが大きな役割を果たすと述べた.FründはRachitis様の局所所見あるいは組織修復機転の障害を素地として,これに外傷などを転機として発症するであろうと推測した.
 Hinricsson(1939年)は604例のChondropathia patellaeについて,その66.9%に外傷の既往があり,また職業上膝を酷使する者に多くみられることを強調した。その病態発生については,その他Kulowski(1933年),Fairbanks(1937年),Chaklin(1939年),Hirsch(1944年),Cave(1945年),Fürmaier(1953年),Wiles(1956年),Outerbridge(1964年)などの数々の報告があるが,明確な定説はなく,結局,大腿膝蓋骨関節が何らかの原因で不適合をおこし,これが直接,間接的に疼痛の原因となるであろうと推測されるに止まつた.

肩関節に発生した神経障害性関節症

著者: 屋宜公 ,   中村千行 ,   古沢清吉 ,   伊地知正光 ,   吉野慎一 ,   近藤稔 ,   藤原将登

ページ範囲:P.1128 - P.1135

 下肢における神経障害性関節症(Neuro arthropathy)は本邦でも多数の報告があり,その病態もほぼ明らかになり有効な治療法の報告も少なくない.しかし肩を含む上肢の神経障害性関節症は稀で確立された治療法もないのが現状である.3例の肩関節に発生した神経障害性関節症を経験したので報告し,あわせて先に報告した脊髄空洞症による神経障害性関節症の経過も述べる.更に本邦における報告例を検討し考察を加えてみた.

Atlanto-axial rotatory fixationの治療—Halo牽引装置の改良と応用

著者: 大木勲 ,   渋谷光柱 ,   大井淑雄 ,   御巫清允

ページ範囲:P.1136 - P.1139

はじめに
 Atlanto-axial rotatory fixationはrotatory dislocationまたはrotatory displacementとも記載される疾患で,これについての報告は非常に少なく,本邦では未だみられない.本疾患の問題点はその病因と共に治療法が難しく,かなりの危険性があることである.
 最近著者らは改良したHalo牽引装置を用いてAtlantoaxial rotatory fixationの一例を治療し,満足すべき結果を得たので報告する.

高齢者の大腿骨転子間および転子下骨折に対するEnder-nailing法の経験

著者: 佐藤哲朗 ,   木田浩 ,   田畑四郎

ページ範囲:P.1140 - P.1144

はじめに
 高齢者の大腿骨転子問および転子下骨折に対する観血的治療法には種々の力法がある6)
 われわれは,手術侵襲も少なく,骨癒合を待たずに早期荷重ができるEnder's flexible intramedullary pinによる閉鎖的内固定法(以下,Ender-nailing法と略す)1,2,7,8)に着目し,本法を高齢者の転子問および転子下骨折におこなつてきた.成績はおおむね良好であるが,本法施行に伴い問題点もみられているので,少数例ではあるが検討を加えたい.

急激に四肢麻痺を呈した若年期頸部脊柱管狭窄の4症例

著者: 持田譲治 ,   若野紘一 ,   田中守 ,   里見和彦 ,   柴崎啓一

ページ範囲:P.1145 - P.1151

はじめに
 頸椎症性脊髄症の発症に頸部脊柱管個有の前後径の狭小が少なからず関与することは,Wolf1)(1956),Payne,Spillane2)(1957),Hinck3,4)(1964)等諸家の指摘するところであり,わが国でも近年,森5)(1968),今井6)(1970),長島7)(1973)ら数多くの報告がなされている.
 しかし大部分の症例は加齢的変化が増強する中,高年層に発症したものであるが,今回われわれは14歳から32歳までの若年期に発症し,急激な四肢麻痺を呈した頸部脊柱管狭窄を有する4症例を経験し,X線所見,臨床像の特長ならびに治療上の問題点について検討したので報告する.

頸部脊椎症性筋萎縮(祖父江)症例の経験

著者: 古川浩三郎 ,   倉持英輔 ,   白沢栄嗣 ,   新井実 ,   田島健 ,   高橋功 ,   堀川哲男 ,   阿部孝一 ,   星野亮一

ページ範囲:P.1152 - P.1156

 頸部脊椎症の臨床症状は,多彩であり,種々病型分類も試みられているが,日常診療上その診断に苦慮する症例も少なくない.Keegan6)によるdissociated motor loss,または祖父江11)のいう頸部脊椎症性筋萎縮の症例は,筋萎縮,筋力低下が顕著であるのに比し,知覚障害が無いかあつても僅かである点で,頸部脊椎症の臨床症状としては,非定型的であり,診断治療上問題点を有し,またその発症機転については興味の持たれるところである.

骨格筋に転移した骨肉腫の1例—転移経路としてのvertebral vein systemについて

著者: 渡辺康司 ,   川井和夫 ,   水野耕作 ,   南久雄

ページ範囲:P.1157 - P.1161

はじめに
 骨肉腫が骨格筋に転移することは非常に稀とされている.今回われわれは,その症例を経験し報告するとともに,骨肉腫の転移経路としてのvertebral vein systemの役割を論じたい.

馬尾神経症状を呈した脊髄硬膜終嚢高位の1例

著者: 古橋一正 ,   永田覚三 ,   江島正春

ページ範囲:P.1162 - P.1164

 最近我々は馬尾神経症状を呈し,手術によりその原因が脊髄硬膜終嚢高位によると診断した稀な1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

橈骨遠位端骨折の観血的整復後に来たした長母指伸筋腱および総指伸筋腱断裂の1症例

著者: 糸数万正 ,   漆谷英礼 ,   嶋充浩 ,   宮田敬三 ,   上羽康夫 ,   田中清介

ページ範囲:P.1165 - P.1167

 橈骨遠位端骨折の整復後に生じた長母指伸筋腱断裂は稀にみられ,その報告は古くからなされている.しかし,これに総指伸筋腱断裂を合併した例の報告は本邦では未だ見られず,ソ連のOnoprienko1)があるにすぎない.我々は最近,橈骨遠位端骨折に長母指伸筋腱および総指伸筋腱断裂を合併した症例を経験した.

進行性化骨性筋炎の1例

著者: 小野講三 ,   笠原勝幸 ,   梁瀬義章 ,   上羽康夫 ,   福永仁夫 ,   山本逸雄 ,   垣内洋 ,   雑賀興慶

ページ範囲:P.1168 - P.1172

 進行性化骨性筋炎は全身の筋膜,腱,靱帯および筋肉内の化骨と第一足指を中心とする短指症,外反変形等の奇形を特長とする疾患である.今回我々はこの稀な疾患を経験し,興味ある検査所見を得たので報告する.

9歳女児に発生した腰部椎間板ヘルニアの1治験例

著者: 中野昇 ,   冨田達也

ページ範囲:P.1173 - P.1176

はじめに
 若年者の腰部椎間板ヘルニアは稀で,とくに10歳未満の例は少なく,本邦での報告は我々の探した範囲では1例もなかつた.最近9歳10ヵ月の女性に発生した1例を経験したので,その治療結果について報告する.

左肩関節脱臼と誤診された新生児上腕骨骨端線離解の1例

著者: 河野光信 ,   江口寿栄夫 ,   藤原英一 ,   田中稔正 ,   筒井勝彦

ページ範囲:P.1177 - P.1178

 分娩外傷は,分娩手技の改論および児頭骨盤不均衡の認識等によつて,減少して来ているが,最近診断を付けるのに難渋した分娩時の外傷によると思われる上腕骨近位骨端線離開という稀れな症例を経験した.本症例に対する我々の反省を含めて,若干の文献的考察を加えて報告する.

Redundant nerve rootsの1例

著者: 中島昭夫 ,   東倉萃 ,   毛利保雄

ページ範囲:P.1179 - P.1182

 脊髄馬尾神経の異常な肥大,過長を示すredundant nerve rootsは比較的稀な疾患であり,その特異なmyelography所見より,しばしばA-V malformationまたは腫瘍と誤診され手術されることが多い.
 我々も腫瘍の診断のもとに手術を施行した症例において,典型的なredundant nerve rootsをみたので報告する.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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