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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科13巻2号

1978年02月発行

雑誌目次

カラーシリーズ Microsurgery・2

Microneurorrhaphyの基本手技

著者: 梁瀬義章 ,   広谷速人 ,   山本潔

ページ範囲:P.108 - P.111

 手術手技;Funicular suture法を中心に
 皮切は神経の走行に沿ってほぼ直上で十分に大きく加える.神経の露出は神経損傷部位が受傷機転などより必らずしも皮膚の創傷瘢痕部に一致しない場合が多いため,健常部にてまず神経を確認しタンポンガーゼなどをかけて目印とし,損傷部へ剥離してゆく.ここで神経上膜に8-0ナイロン1針ずつ結節縫合を行ない神経幹の位置づけをする(marker suture).
 ついで顕微鏡の拡大下(10〜16倍)に両断端の瘢痕を切除し,神経束間の瘢痕も少なく健常な神経束が膨隆してくるレベルまで新鮮化する.瘢痕の切除には薄刃の安全カミソリの刃かMillesiのnerve scissorsを用いている.端々縫合に際して手術介助者は隣接関節を屈曲し,両断端を接近せしめ,その肢位を変えないようにする.中枢端と末梢端のfunicular pattern(第1図)をスケッチし,intraneural topographic atlasを参考にしながら対応する神経束を確認する.ほぼ180°の位置に8-0ナイロン各1針ずつstay sutureとし(第5,6図),他は8-0〜10-0ナイロンの結節縫合を行なう(第3,9図).

視座

西洋一辺倒はやめよう

著者: 伊丹康人

ページ範囲:P.113 - P.113

 2,3年前の日整会総会の時でした,私が出席した会場では,人工股関節についての多数の発表がなされていた.その中で,関西方面のある病院の先生が,数種類の人工股関節を,多くて5〜6症例,少ないものは2〜3症例に用い,全症例25〜26症例の成績を発表されていた.
 発表されるご本人は,おそらく得意であり,自分の発表が,必ず有益なものを,聴く人に与えるであろうと,考えてのことであつたにちがいない.

論述

下位頸椎リウマチによる脊髄症について

著者: 片岡治 ,   栗原章 ,   木村浩 ,   沢村誠志 ,   小林勝

ページ範囲:P.114 - P.120

まえがき
 慢性関節リウマチ(以下RAと略す)の頸椎病変発生率は,古くは40%といわれ5,17),最近ではclassical RAとdefnite RAの80%に頸椎X線異常所見を認めた報告がある10).そして,これに伴う神経症状・所見および外科的治療法の報告が,occipito-atlanto-axial complexに関しては多いが,subaxial levelでの頸椎RA変化に伴う頸部脊髄症についての報告は欧米でも比較的少なく,日本では見当たらない.また,この問題は重要でないと示唆している研究者もある6,9,12,18).最近,それぞれ特殊な原因で発生したsubaxial levelでのRA頸椎による脊髄症の2例に,外科的治療を施行してかなりの効果与えたので,その概要与述べ,RA下位頸椎病変による頸部脊髄症の外科的治療の問題点につき論じたい.

膝関節支持機構の複合損傷例に対する半腱様筋腱固定術

著者: 浅井浩 ,   立沢喜和 ,   堀純市 ,   織田静信 ,   村田剛

ページ範囲:P.121 - P.128

 膝関節内側側副靱帯損傷に他の靱帯損傷や半月板損傷などを合併したいわゆる膝複合損傷は近年いよいよ増加の傾向にある.このような膝複合損傷では,内側側副靱帯単独損傷の場合と異なり一般に膝の機能的予後を推定することが難しい場合が多い.また損傷靱帯の解剖的修復が必ずしも膝の機能的修復に結びつかない点で,新鮮例でもその治療は困難とされている.われわれは,内側側副靱帯の再建法として半腱様筋腱固定術なる術式を考案し,1967年より主として陳旧症例に実施して良い成績を得ていることはすでに第48回日整会総会において報告した18).その後症例数を重ねるとともに,今回はそのうちより膝関節内骨折を含む複合損傷例をとり上げ,その手術成績について内側側副靱帯単独損傷例の場合と比較し検討を加えたので報告する.

脊柱側彎症に対するMilwaukee braceの適応と治療効果について

著者: 大木勲 ,   井上駿一 ,   鈴木弘 ,   高良宏明 ,   篠藤彰

ページ範囲:P.129 - P.135

はじめに
 脊柱側彎症治療の歴史は古く中世の頃からいろいろな試みが行なわれてきており,整形外科領域で最古くから関心が持たれていた疾患の一つである.
 保存的治療による矯正効果については,現在でも疑問とする意見があるが,1944年BlountおよびSchmidtら1,2)により考案されたMilwaukee braceは最初は手術治療前後の矯正保持を目的として用いられていたが,その後はBlountやMoe3)などの種々の改良の結果,現在用いられているMilwaukee braceの型ができ上り,この装具の治療法もほぼ完成し保存的治療法の主流を占めるようになり,世界中に広く用いられるようになつてきた.

臨床経験

クル病治癒後に発生した特発性低リン血症性骨軟化症の稀な1例

著者: 水野耕作 ,   山本政治

ページ範囲:P.136 - P.140

はじめに
 通常,クル病は治癒すると骨成長停止後に再発することはないといわれる.
 最近,クル病が治癒したにも拘らず,臨床上およびX線上にも高度な骨軟化症をきたした稀な症例を経験したので報告する.

最近経験したacroosteolysisについて

著者: 屋宜公 ,   鈴木勝己 ,   高橋定雄 ,   中川太郎 ,   近藤稔 ,   富沢尊儀

ページ範囲:P.141 - P.147

はじめに
 強皮症,癩,脊髄空洞症などに末端骨溶解が合併することは以前より知られており,その他X線所見として末端骨溶解を有する疾患は多々報告されている.1950年Harnash10)により初めてacroosteolyseという語が使用され,現在手指,足趾,鎖骨外側端などの骨溶解を示す言葉として用いられている.末端骨溶解の病因としては諸説紛々としていまだ定説をみない.最近われわれは皮膚疾患に伴つた末端骨溶解の4例を経験したので塩化ビニールモノマー(VCM)の経験も含めて報告し,文献的考察を加えたい.

新生児先天股脱:新生児リーメンビューゲルによる治療およびその意義

著者: 渡辺真 ,   本田邦彦 ,   小野自仙 ,   山川浩司 ,   高橋公 ,   高橋功 ,   黒羽根洋司

ページ範囲:P.148 - P.154

 先天性股関節脱臼の発見と治療は,より早期になされてきている傾向にある.新生児の先天性股関節脱臼(以下新生児先天股脱)の治療に関しては,von Rosen splintを中心としていろいろと試みられて報告されている.われわれは1967年から新生児の股関節を検診し,新生児Riemenbügel(以下新生児Rb)を用いて治療を行なつている.新生児Rbによる治療体系の報告はみられない.われわれがこの治療をはじめて10年をすぎたが,追跡期間1年以上の1975年までの症例をここに報告する.

Benign chondroblastomaの4例

著者: 荻野幹夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   笹哲彰 ,   村瀬孝雄 ,   小坂正 ,   高橋洋 ,   土居通泰

ページ範囲:P.155 - P.161

はじめに
 良性軟骨芽細胞腫,benign chondroblastoma(以下BCと略す)は,骨原発性良性腫瘍の中ではまれなもので,良性軟骨系腫瘍中でも,chondromyxoid fibromaなどとともにまれなものである.本腫瘍はKolodny(1927)12),Ewing(1928)5)が初期の記載をし,Codman(1931)2)が9例の報告をして以来独立疾患と認められ,Jaffe & Lichtenstein(1942)8)がbenign chondroblastomaと名づけて以来,その名で報告されることが多くなつた.
 BCは,臨床的に特徴があり,その存在を知つていれば,年齢,発生部位,X線像などで,診断上の疑いを置くことは容易である.わが国の報告は文献上20例を越えず,少数である.本文の目的はBC4例の報告と,考察を加えることである.

見逃された有鈎骨骨折にulnar tunnel syndromeと正中神経掌枝のentrapment neuropathyを合併した1例

著者: 松崎昭夫 ,   清水万喜生

ページ範囲:P.162 - P.165

緒言
 手根骨の単独骨折はそれ自体珍しい骨折に属する.中でも有鈎骨鈎の骨折はまれであり,ルーチンのレ線撮影で見つかり難いため診断されずに放置され症状を残す例があること,Guyon's canalのlateral-distalの壁をなすために尺骨神経に影響を与えること,屈筋腱断裂の原因になる場合があることなどのため問題となる1,3,4,6,10,14,18,19).われわれは,以前に有鈎骨骨折を起こし,診断されないまま偽関節となり,幸い症状もなく経過していたものが,再度受けた同部の外傷により尺骨神経麻痺と偽関節部の疼痛を呈したにかかわらずレ線で診断されないまま経過し,同時に正中神経掌枝の外傷瘢痕によるentrapment neuropathyを合併した症例を経験したので報告する.

人工膝蓋骨置換術の小経験

著者: 馬庭昌人 ,   鳥巣岳彦

ページ範囲:P.166 - P.170

 高度に破壊された関節に対して,関節の全体あるいは一部分を人工的な物で置換することにより,その関節の機能の再建が可能となつてきた.
 欧米においては膝蓋骨関節面の再建に人工膝蓋骨置換の報告がある1,3,8,9,13,14,16).しかし,わが国では,1975年加藤ら12)の膝蓋骨全置換の報告のみで,膝蓋骨関節面の置換は行なわれていないようである.そこで,私達は高度に破壊された大腿骨膝蓋骨関節症に対し,McKeever型の人工膝蓋骨置換術を施行し経過良好な1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

伸筋腱が整復障害因子となつた環指MP関節背側脱臼の1症例

著者: 阿部宗昭 ,   木下光雄 ,   南部正敏

ページ範囲:P.171 - P.175

 MP関節背側脱臼は,若年者の示指に好発し,指が過伸展位を強制された場合に生ずる.本脱臼は徒手整復が困難で,そのほとんどが観血的整復術を要するが,その整復障害因子については掌側に突出した中手骨頭が屈筋腱,掌側板,靱帯などより成る井桁構造に捕捉されるためであるとするKaplanの意見が代表的なものとされている.
 著者らは,最近,受傷機転および整復障浩因子死が従来の報告例と全く異なる環指MP関節背側脱臼の症例を経験したので報告する.

原発性アミロイドーシスの1剖検例

著者: 小坂弘道 ,   内田詔爾 ,   島田畯介 ,   吉野槇一 ,   青木幹雄

ページ範囲:P.176 - P.179

はじめに
 AmyloidosisはRokitansky1)の発表に端を発し,Virchow2)により諸臓器に固くwax様に変性を来たす疾患,すなわちamyloidの沈着を来たす疾患として記載された.しかし未だその発生原因は不明であるが,amyloidの沈着様式およびamyloidそのものの免疫グロブリンの類似性などから膠原病などと同じように異常免疫説が有力になつている.今回著者らは慢性関節リウマチ(RA)様の関節症状と紫斑を呈したprimary amyloidosisを剖検する機会にめぐまれたので,本症例の経過,病理所見および問題点などを文献的考察を加えて述べてみたい.

Silver's syndromeと思われる1例

著者: 太田信夫 ,   河路渡 ,   山田敏子

ページ範囲:P.180 - P.183

 1953年Silver1)は,かなりの程度の身体非対称,短躯,尿中ゴナドトロピン増加を伴つた2症例を報告した.また翌年Russell2)は子宮内発育障害に基づく,顔面に特徴のある侏儒の5例を報告している.両者に多少のずれはあるものの,多くの共通した症状を示すため1961年Black3)はLow Birth Weight Dwarfismの論文の中で,子宮内発育障害の範ちゆうに属するものとしてRussell-Silver typeの侏儒とした.現在までに半側肥大についての報告は150例近くにのぼるが1973年までに,同症候群の報告は51例4)であり,本邦においては,小児科領域においても,その報告例は少なく,整形外科領域においては,ほとんどみあたらない.今回我々はSilver syndromeと思われる1例を経験したので多少の文献的考察を加え報告する.

殿筋拘縮症の1例

著者: 野口耕司 ,   田村清

ページ範囲:P.184 - P.187

はじめに
 大腿四頭筋拘縮症に代表される子供の筋拘縮症はHnévkovsky's3)(1961)以来数多くの報告がみられ,その原因については先天性と後天性があることが知られている.大部分を占める後天性筋拘縮症の原因として,乳幼児に対する薬液の筋肉内注入に原因があるとされ,現在医原病として社会問題となつている.そのため筋肉内注射を受ける部位は大腿四頭筋から殿筋へと移行する傾向がみられる.しかしその障害が軽いせいか殿筋拘縮症の報告は意外に少ない.今回われわれは筋肉内注射が原因と思われる殿筋拘縮症の1例を経験し手術の機会を得たので報告する.

大腿骨頸部骨折のリハビリテーション

著者: 三好正堂 ,   杉山栄一 ,   浦野良明

ページ範囲:P.188 - P.191

はじめに
 大腿骨頸部骨折は整形外科領域で最も治療困難な疾患の1つであり,治療法に関しても議論が多い.そのリハビリテーション(以下リハビリと略す)の重要性は広く認められており,術後できるだけ早期に運動を開始すべきであることは一般論になつている。しかし具体的に何時,どのような方法で開始しプログラムを進めるべきかについては,まだ一定の見解がないようである.早期訓練がよいことがわかつていても,過誤や転倒による再骨折の危険性を念慮し,消極的にならざるをえないというのが多くの整形外科医の真意ではないかと思われる.
 著者らは整形外科疾患のみならず,脳卒中片麻痺などのリハビリも担当しているが,日常の診療を通じて感じることは,大腿骨頸部骨折患者と片麻痺患者との著しい類似である.一側下肢障害者であること,高齢者が多いこと,廃用性筋萎縮,痴呆などの続発性障害や内科疾患を高率に合併していること,などである.ところで,脳血栓片麻痺患者の場合発病後2〜3日目より健側下肢を使つて坐位より起立させ,健側下肢の廃用性筋萎縮を予防して筋力を正常に維持することが歩行能力の回復の要であり,さまざまな続発性障害を防いでリハビリを成功させる出発点である.大腿骨頸部骨折の場合も同じことがいえるはずである.

学会印象記

第14回先天股脱研究会

著者: 田辺剛造

ページ範囲:P.192 - P.195

 昭和52年10月22日(土)午前9時より途中昼食時2時間の休憩を入れて午後6時まで,約300名の参加者を迎えて,岡山市古京町の岡山衛生会館三木記念ホールで発表ならびに討議が行なわれた.
 今回はあらかじめ2つの主題を設定した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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