icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科13巻3号

1978年03月発行

雑誌目次

カラーシリーズ Microsurgery・3

切断肢再接着術(Limb replantation)

著者: 玉井進

ページ範囲:P.198 - P.201

〔概説〕
 完全に切断された四肢をもとどおりに再接着し,さらにその機能をも回復させるということは,今世紀における画期的な進歩である.1962年,Maltらによる成功が端緒となって,現在では世界的に広く普及しており,適応を選べば,80〜90%の再接着成功率が得られるまでになっている.しかしすべての組織が同一レベルで切断され,かつそれらを同時に修復するという本手術の特殊性から,満足な機能回復を得ることは決して容易ではない.
 再接着肢の機能に関与する因子としては,一次的には受傷レベル,組織損傷の程度,阻血時間,患者の年齢があり,二次的因子としては血行状態,神経再生,筋・腱・関節機能などが考えられるが,さらに手術に当る外科医の技術と意欲,患者の協力なくしては,良好な結果を期待することはできない.

視座

プロの路

著者: 児玉俊夫

ページ範囲:P.203 - P.203

 最近ある方に,この頃immunologistは多くなつたが,rheumatologistはあまりふえていないのではないか,といわれて,はつとした.この20年間のリウマチ学会の発展はすばらしい.整形外科学会もそうだが,これが同一の学会だつたのかと思わせるほどだ.特にリウマチ学会では免疫学に関連した業績が賑つている.しかし,関節リウマチの患者と四つに取り組んだ内容のものは少なく,米国における膝関節滑膜切除術の多施設5年追跡の報告も尻すぼみになつている.患者の側に立つて努力する専門家は海外でも少ないようだ.今日の基礎的研究は明日の臨床に連なるといわれるが,臨床医は常に患者の身になつて考えることも必要だ.
 また先日,某大学に伺い,そこの整形外科の医局員の方々と懇談した際に,ある方より「私は今リウマチグループに所属しているが,整形外科とリウマチの将来性は」と問われた.ここで私たちはプロとアマの区分を明確にしておかねばならないと思う.

論述

Riemenbügel整復不成功例の検討—特徴と対策

著者: 石田勝正

ページ範囲:P.204 - P.211

はじめに
 Riemenbügel(以下R. B.と略す)による乳児先天股脱の治療により,治療成績は格段の進歩をとげた.しかし一方,R. B.による整復不成功例には問題があり,第13回先天股脱研究会で村瀬によりR. B.整復不能例に対する処置がテーマに選ばれた.

頸椎後縦靱帯骨化症脊髄症に対する前方椎間固定術の検討

著者: 冨永積生 ,   保野浩之 ,   重本弘文 ,   土井一輝 ,   中村修二

ページ範囲:P.212 - P.219

緒言
 過去10年間の,1976年までに,本症脊髄症症例65例を手術的に,73例を非手術的に入院治療した.手術例はすべて単なる椎間固定術であつた.
 術後1年以上を経過し,十分なる追跡データのそろつた手術例50例を対象症例とし,これに無差別に選び出した非手術例をかみ合わせて,本症における椎間固定化固定術のもつ意義を神経学的,レ線学的分析から検討した,併せて,この術式の限界についてもふれる.

整形外科手術後におけるDICについて

著者: 篠田侃 ,   田口厚 ,   川添達雄 ,   上野武久 ,   井手迪 ,   菅尚義 ,   山口博志

ページ範囲:P.220 - P.225

はじめに
 人口の老齢化とともに,老人の骨折が増加しているが,最近では麻酔学の進歩と外科的療法の進歩によつて早期離床が可能となつてきた.それとともに,相当の高齢者まで社会復帰が可能となつてきた.しかし,その反面,受傷時すでに造血系,循環系,神経系の障害を合併している症例がほとんどで,これらをいかにして骨接合→骨癒合→後療法→社会復帰のコースを辿らせるか苦心するところである.特に血液疾患を有する例の術前の全身症状の改善,術後の血液疾患の悪化や余病の併発の予防に心を悩ますところである.われわれは,大腿骨頸部骨折の手術後に発症したDIC(Disseminated Intravascular Coagulation)を経験したので,これを中心に高齢者,ことに血液疾患を有する整形外科領域での外科的療法について述べたい.

装具・器械

無菌手術のための新しい器械ユニット

著者: 弓削大四郎

ページ範囲:P.226 - P.234

はじめに
 清潔な環境の下で安全な手術をやりたいという念願は外科医にとつては昔からの夢であつたし,このためにわれわれの先輩たちが研究実験を繰り返していろいろの手術室の空気の消毒法を確立してきた.その代表的なものは加熱法,断熱圧縮法,静電気沈降すなわち電気集塵法,紫外線照射法,Glycol蒸気を用いる化学薬剤法,沪過除菌法である.近年宇宙工学特に軍事ミサイル,宇宙船の製造過程における障害微粒子(0.5〜1micron)が大きな問題となり,これらの微粒子が原因で不良品,誤測が生じて工場閉鎖を余儀なくされたこともある.そのため強力空気内微粒子沪過フィルターすなわちHEPAフィルターが開発され0.3micron以上の微粒子の99.97%を除塵できるようになり,さらに空気を送り込む機構として1時間に300〜600回の換気回数を持つ層流機構(Laminar flower system)が同時に開発された.この技術が医療の分野に導入されて,いわゆる「無菌手術室」が出現するに至つたわけである.この言葉がいかようにして生まれたかは,さだかでないが,「無菌手術室」という名に値するようなのは現実に不可能なことであつて,正確には空気中の塵埃粒子などに付着して手術室内を浮遊移動する微生物や細菌による汚染の防止と制御を強力に行なう手術室と定義できよう.

臨床経験

胸骨柄部硬化性骨髄炎について

著者: 喜多正鎮 ,   西崎博巳 ,   江口正雄

ページ範囲:P.235 - P.242

はじめに
 胸骨柄部体部間関節(manubriosternal joint,以下MS関節と略す)に腫脹,疼痛をきたす疾患はきわめて稀であり,Zimmer(1939),Liévre(1952)の発表した柄部体部間関節症,Savill(1951)の強直性脊椎炎におけるものが主で,そのほか慢性関節リウマチ,結核などが報告されている.われわれは臨床的にMS関節症と酷似し,レ線上胸骨柄部の骨硬化とMS関節,胸鎖関節に関節症変化をきたす3名を経験したので報告する.

外方辷りを呈した大腿骨骨頭辷り症の2例

著者: 藤中星児 ,   小山明 ,   細谷俊彦 ,   石井良章

ページ範囲:P.243 - P.249

はじめに
 大腿骨骨頭辷り症は1572年Paréにより初めて記載され,爾来欧米では19世紀後半より現在まで多数の報告をみる.一方本邦では阿部(1930)の青年性股内彎症としての報告以来現在まで百数十例の報告を数える.辷りの方向は,骨頭が後内下方へ転位する定型的パターンを示すものがほとんどで,外方のみの辷りを呈した例はわれわれの渉猟し得た限りでは本邦はもちろん欧米にもその報告をみない,最近われわれは,本邦・欧米を通じて初例と思われる大腿骨骨頭が外方辷りを呈した症例を治療する機会を得たので,若干の考察を加えて報告する.

骨盤腔内に突出し,大腿神経刺激症状を来たした軟骨性外骨腫の1例

著者: 浜田彰 ,   宮尾俊行 ,   森良樹 ,   森泰寿 ,   切目勲

ページ範囲:P.250 - P.252

 われわれは,右腸骨のtuberosity部で,骨盤腔内へ突出した鳩卵大の軟骨性外骨腫のため,大腿神経刺激症状をきたしていたと思われる症例を経験し,原因組織である軟骨性外骨腫の摘出により,無事全治するに到つたので,その臨床経過を報告する.

頭蓋底陥入症をともなうVon Recklinghausen病の1治験例

著者: 持田譲治 ,   若野紘一 ,   田中守 ,   中西亨

ページ範囲:P.253 - P.257

いとぐち
 Von Recklinghausen病に伴う骨の変化については,整形外科領域においても,その発生,治療の面より注目されており,報告も多い.今回本症のうち,上位頸椎および頭蓋底部に骨変化を有しかつ神経症状を呈した稀な症例を経験し,手術を行なう機会を得たので報告する.

小児外傷性股関節脱臼に続発した大腿骨頭のavascular necrosisの1症例

著者: 兼松秋生 ,   西本虎正 ,   鬼頭秀明 ,   大畑悦司

ページ範囲:P.258 - P.261

はじめに
 小児外傷性股関節脱臼整復後に発生する大腿骨頭のavascular necrosisは,欧米では1919年Elmslieが発表して以来文献上時々散見されるが,本邦における症例報告はきわめて少ない.
 最近われわれは小児外傷性股関節脱臼整復後約3ヵ月目に患側大腿骨頭のavascular necrosisを来たした症例を経験したので若干の考察を加え報告する.

脛骨末端部の圧迫骨折(Stauchungsfraktur B. G. Weber)の治療経験

著者: 奥村秀雄 ,   渡辺良 ,   琴浦良彦 ,   中根康雄 ,   高橋直久

ページ範囲:P.262 - P.268

はじめに
 距腿関節は,日常生活において,重要な役割を果しており,代償関節のないことから,その治療には,十分な注意を必要とする.距腿関節部の骨折の中で,脛骨の関節荷重面に骨折線が入つた症例の治療は,困難でしかもその治療成績は芳しくないようである3).今回,われわれの経験した症例の治療およびその成績について述べてみたい.

Weber-Huggler型人工骨頭の摩耗とその対策について

著者: 木下勇 ,   森本博之 ,   佐藤和之 ,   小川恭弘 ,   橋本博行 ,   佐々木徹 ,   滝川昊

ページ範囲:P.269 - P.274

はじめに
 Weber-Huggler型prosthesisは,ソケット,骨頭ボール,ステムの三つの部分からなる機構の特異なことと,若年層に使用した場合にも将来交換手術が容易であるという点から,比較的多くの整形外科医によつて採用されてきた.また,hemiprosthesis(単純人工骨頭)としても大腿骨頸部骨折などに応用されてきた.
 われわれも過去5例のみにWeber-Huggler型hemiprosthesisを施行した.しかし,生存3例のすべてが術後1〜2年目にして破綻をきたし,うち2例に改修手術を必要とした,ここにこれらの症例に基づく知見を報告する.

全人工股関節置換術におけるloosening,wear例の検討

著者: 井村慎一 ,   中瀬裕介 ,   長治孝雄 ,   竹多外志 ,   松本晴彦 ,   宮村秀一 ,   一前久芳

ページ範囲:P.275 - P.281

はじめに
 全人工股関節置換術が導入されて以来,すでに10数年経過し,多くの人たちにより手術適応,手術手技,人工関節の素材・組合せ・デザイン,さらに合併症などについていろいろ論議がなされている.
 全人工股関節置換術はすぐれた成績をあげている反面各種の合併症も報告され,いろいろ問題点が提起されていることも現実である.

椎間板ヘルニアの手術中総腸骨動脈を損傷した1例

著者: 杉浦譲 ,   西源三郎

ページ範囲:P.282 - P.284

 1934年,Mixter1)およびBarrにより,椎間板ヘルニアの手術が提唱されて以来,幾多の手術が行なわれてきた.近年に到り,この手術の術後成績に関しては多くの機関より種々の検討が行なわれてきた.しかし,術中,術後の合併症に関する報告は非常に少ない.術中合併症として,本邦では,上田ら2)の術中大血管損傷後の動静脈瘻形成の一例報告をみるのみである.彼らは動静脈瘻に続発する心不全につき内科的見地より考察を行なつた.1945年,Linton3)およびWhiteにより,始めて,手術中血管損傷の報告が行なわれて以来,欧米諸国では術中合併症としての,腹腔内臓器損傷,特にmajor vascular damageの報告4)は比較的多くみられる.欧米では,personal comunicationとして伝わる例が多いようであるが,本邦でも,この傾向にある.われわれは,昭和48年,椎間板ヘルニア手術中,左総腸骨動脈の損傷をきたしたので,整形外科的,救急医学的見地より,文献的考察を加えて報告する.

頻回の脊椎マニプレーションにより硬膜腔内に脱出したと思われる腰椎椎間板ヘルニアの1例

著者: 網屋貫志 ,   田島直也 ,   山本登

ページ範囲:P.285 - P.288

 腰椎椎間板ヘルニアは,その脱出する方向により後方ヘルニア,後側方ヘルニア,側方ヘルニア,前方ヘルニアに大別されその中で,後方ヘルニアが最多とされているが一般には硬膜外腫瘤として臨床症状を発生させるがきわめて稀に硬膜を破り硬膜腔内脱出を起こすことがあるとされている.われわれは最近頻回にわたるマニプレーションにより硬膜腔内に脱出したと思われる腰椎椎間板ヘルニアの一例を経験したので報告する.

サッカー選手にみられたsubungual exostosisの1例

著者: 内藤二郎 ,   武部恭一 ,   前田昌穂 ,   水野耕作

ページ範囲:P.289 - P.292

 手指および足趾の末節骨の爪下に発生するexostosisは,subungual exostosisと呼ばれ,比較的稀な疾患とされている.subungual exostosisは,1839年Dypuytrenにより初めて記載され1),欧米においては,それ以後数多くの報告があり,本邦では,1963年佐藤の報告2)以来32例みられる.本邦での報告例がこのように少ないのは,本疾患による臨床症状の発現が比較的少ないために,見すごされるためで,実際には,もつと高頻度に存在するのではないかと考えられる.最近われわれは右母趾に発生した本症の1例を経験したので,症例を報告すると共に,本疾患の発生原因等につき,若干の考察を述べたい.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら