文献詳細
文献概要
装具・器械
無菌手術のための新しい器械ユニット
著者: 弓削大四郎1
所属機関: 1山口県立中央病院整形外科
ページ範囲:P.226 - P.234
文献購入ページに移動清潔な環境の下で安全な手術をやりたいという念願は外科医にとつては昔からの夢であつたし,このためにわれわれの先輩たちが研究実験を繰り返していろいろの手術室の空気の消毒法を確立してきた.その代表的なものは加熱法,断熱圧縮法,静電気沈降すなわち電気集塵法,紫外線照射法,Glycol蒸気を用いる化学薬剤法,沪過除菌法である.近年宇宙工学特に軍事ミサイル,宇宙船の製造過程における障害微粒子(0.5〜1micron)が大きな問題となり,これらの微粒子が原因で不良品,誤測が生じて工場閉鎖を余儀なくされたこともある.そのため強力空気内微粒子沪過フィルターすなわちHEPAフィルターが開発され0.3micron以上の微粒子の99.97%を除塵できるようになり,さらに空気を送り込む機構として1時間に300〜600回の換気回数を持つ層流機構(Laminar flower system)が同時に開発された.この技術が医療の分野に導入されて,いわゆる「無菌手術室」が出現するに至つたわけである.この言葉がいかようにして生まれたかは,さだかでないが,「無菌手術室」という名に値するようなのは現実に不可能なことであつて,正確には空気中の塵埃粒子などに付着して手術室内を浮遊移動する微生物や細菌による汚染の防止と制御を強力に行なう手術室と定義できよう.
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