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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科13巻7号

1978年07月発行

雑誌目次

カラーシリーズ Microsurgery・6

血管付皮弁移植術(Vascularized skin flap transfer)

著者: 玉井進

ページ範囲:P.626 - P.629

〔概説〕
 従来よりおこなわれてきた有茎皮弁移植には,皮弁内に特別の栄養血管を有しないrandom pattern flapと,特定の栄養血管(動・静脈)を有する皮弁,すなわちaxial pattern flapの2種類があることは衆知のことであり,後者の代表的なものとしてはgroin flap,deltopectoral flap,hypogastric flap(epigastric flap)などがある,血管付皮弁移植術とは,axial pattern flapを栄養血管とともに採取し,これらをrecipient siteの動静脈と吻合してやることにより,1回の手術で皮弁移植をおこなうものである.頻回の手術,特殊な体位保持による患者の負担,最終的に移植を完了するまでに長期間を要するなど種々の欠点を有する有茎皮弁移植に代る画期的な方法として,形成外科,整形外科領域で広く応用されている.微小血管外科の発達がもたらした皮膚移植術の一大革命ともいえるものであろう.

視座

整形外科研究会雑感

著者: 鈴木良平

ページ範囲:P.631 - P.631

 最近の医学界の傾向として,学会や研究会がやたらに多いのが問題になつている.わが整形外科領域でも研究会の数は枚挙に暇がながほどであり,直接関係のある研究会に全部出席しようと思えば,莫大な時間と費用が必要である.これら研究会の目的とするところは,比較的小人数の専門家が膝を交えて1つの問題についてディスカッションすることにあるので,学問の進歩に貢献するところが大きいのは論を俟たない.しかし果してこのような運営をしている研究会がいくつある低だろうか.はじめの目的はこのようなものであつても,余りにも熱心な学究が多いために急速に会はふくれ上り,学会形式をとらざるをえなくなる.そして発表演説を記録に残したが,会則も決めねばならぬということになつて,ミニ学会となつてしまう,こうなると研究会に出席せねば,また演題を出さなければバスに乗り遅れるような心理状態となり,研究会の規模の拡大と反比例して内容はお粗末なもの,焼き直しの演題が多くなる.これではいたずらにお金と時間の浪費になりかねない.この辺で研究会本来の姿に戻す努力が必要なのではあるまいか.

論述

先天性股関節脱臼の成立に関する考察

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.632 - P.641

はじめに
 先天性股関節脱臼(以下,先天股脱と略記する)は遺伝性疾患であることは古くよりよく知られてがる事実であるが,このことからも本症の発症要因としてprimary genetic factorが関与しているであろうことは容易に考えられる.Primary genetic factorが特に濃厚に関与している先天股脱症例は他の先天異常を多発性に合併していることが多く,奇型性脱臼(teratologic dislocation,Embryonale Luxation)と呼ばれ先天股脱症例全体の約2〜3%を占めてがる,これに反して,他の多くの先天股脱症例ではPrimary genetic factorの関与は比較的少なく,secondary intrauterine factorsやpostnatal environmental factorsの影響を受けて主として周産期に股関節の脱臼あるいは亜脱臼が成立してくるものと思われる.このような先天股脱症例はtypical dislocation,anthropologic dislocation,developmental dislocation,fetale Luxationなどと呼ばれている.
 本稿においては,後者のいわゆるtypical dislocationの成立機転について解剖学的,臨床的および実験的事実にもとづいて考察を加えてみたい.

Loose shoulderについて

著者: 信原克哉 ,   尾崎二郎 ,   塚西茂昭 ,   小林靖幸

ページ範囲:P.642 - P.652

はじめに
 世の中には随分不思議なことが多くある.私達はそれらをみてまず,驚異の目をみはるが段々,経験とともに慣れ遂には科学的解明を行なつてそれらをごくあたりまえの常識へと変える努力をしている.体の諸関節にlooseあるいはrelaxという不思議な病態があることは古くから多くの文献がありよく知られているが,こと肩に関しては麻痺性のものに与えられた動揺関節に留まり,いわゆる緩い肩につがての報告は少なく最近やつと臨床上の問題になつたにすぎない.
 それにしても何故このloose shoulderという病態がみのがされてきたのだろう.これが疾患として確立しなかつた理由はいろいろあろうが1つは肩は元々三次元の可動域をもつlooseなもので個人差がつよく異常の判断がしにくいこと,さらに1つは正常運動域をこしたものは亜脱臼という曖昧な概念で片づけられ,looseとしてとらえられなかつたこと,また1つは,発生因子が多く静,動態の観察,分析によつてもなおわからないことばかりということ,などがあげられる.いずれにしてもこの正体のはつきりしないloose shoulderが身近な診察室に訪れている.諸家の報告と自験例から見解をまとめ,その輪廓を少しでもきめてみよう.

不安定性を有する上位頸椎疾患の治療—Halo装置を使用して

著者: 佐々木邦雄 ,   脇田吉樹 ,   角田信昭 ,   丸井俊一 ,   秋山徹 ,   小野哲男 ,   芝啓一郎 ,   谷村俊次

ページ範囲:P.653 - P.661

はじめに
 上位頸椎部-後頭,環椎,軸椎-は機能的には一単位をなし,craniocervical junctionとよばれ,下部延髄より上部頸髄を包含し,下位頸椎とは機能・解剖学的に異なつている.同部の疾患は先天性異常,外傷,炎症,腫瘍等があり,脊髄に対し脊椎腔が広いという解剖学的特殊性より,項頸部の叩打痛,運動時痛,運動制限等のみで,脊髄症状,神経根症状を呈さない例が多く17),これが特徴であるが,一旦症状が出現し始めると進行性,非可逆性になる事が多く,脊椎不安定性の強い場合ならびに神経症状が出現し始めた場合には手術的治療の適応がある.特に不安定性の強い例の治療に際しては術前,術中,術後を通じ,不安定性を除去し,安定性を確保した上で麻酔,手術等を行なう事が必要であり,術前,術中,術後の装具,手術適応,手術法等について述べる.

特別講演

生理的ならびに病的環境下における骨の成長について

著者: ,   伊丹康人

ページ範囲:P.662 - P.671

 少年期および青年期において,骨に加わるいろいろな影響にたいする,骨の反応をコントロールしているのは,いわゆる成長要素(Wachstumsfaktor)である.骨の長径発育は,メタフィーゼにおける発育軟骨層(enchondrale Metaphysenplatte)によつて行なわれるわけで,その場合,長管骨の成長が増進される場合と,減退する場合とがある.また,その変化者が発育全体におこる場合と,部分的にみられる場合とがあるわけで,軟骨の成長が続く限り,成長過多,あるいは短縮がおこり,または不均斉な成長によつて,屈曲が増加したり,変形を来たす可能性が多い.われわれは,成長期に深刻な疾病に罹患したような症例に,成長層が未成熟な段階で,閉鎖する傾向をしばしば見るものである.
 私共は骨の発育に関与する要素を,1.ホルモンの影響,2.血行率,3.メタフィーゼにおける骨芽細胞(germinative Schichten)の破壊の程度,4.骨の発育層ならびに骨幹部に加わる機械力,などに分けることができる.

調査報告

韓国における頸椎X線調査—後縦靱帯骨化を中心に

著者: 那須正義 ,   手束昭胤

ページ範囲:P.672 - P.677

はじめに
 後縦靱帯骨化(以下O. P. L. L.と略す)は,1960年月本の発表以来多くの人に注目されてきている.つまり骨化した後縦靱帯が脊髄障害を惹起させたり,比較的軽微な外傷により正常では起こり得ない頸髄損傷や胸髄損傷を起こさせたりする.昭和49年には厚生省難病対策の1つに取り上げられている.最近になり欧米よりの報告も散見されているがBreidahlが"Japanese Disease"であると述べているように,日本人に特異的に多い疾患であろうか? その成因に関しては,minor trauma,椎間板変性,全身的退行変性,全身的骨化傾向,糖代謝異常,フッ素中毒説など多くの説があるが,いまだ定説はない.
 また山内らは,米国において頸椎X線写真を調査し,北欧系人種854例中では,典型的なO. P. L. L.を見いだしていない.同時に調査したハワイでのO. P. L. L.発生頻度は,ほぼ日本での統計に近いものであつた.つまり日系,イタリア系人種にO. P. L. L.を見いだしている。今回我々は韓国における頸椎X線フィルムを調査する機会を得たので報告する.

臨床経験

習慣性肩関節亜脱臼の病態と診断

著者: 水野耕作 ,   広畑和志

ページ範囲:P.678 - P.684

はじめに
 習慣性肩関節脱臼traumatic recurrent dislocation of the glenohumeral jointの病態や治療についての報告は数多くある.しかし,習慣性肩関節亜脱臼traumatic recurrent subluxation of the glenohumeral jointについては,言葉自体も聞き慣れず,CowanやDePalmaなどのほか散見するにすぎない.肩関節亜脱臼という言葉を使つた文献はかなりあるが,殆んどのものが,いわゆる動揺肩に関する報告であり,靱帯や関節包の弛緩を伴つた症例についてのものである.しかし,人の外傷性関節脱臼の中で外傷性肩関節脱臼の頻度が最も高いことからみて,肩関節に脱臼機序が働いても完全脱臼までに至らず,亜脱臼にとどまるという現象が起こつてもよいはずである.しかも,これらは,靱帯や関節包の弛緩をもつ動揺肩における亜脱臼とは,自らその愁訴,症状および病態に違いがあり,また,完全脱臼と比べても,異なつているはずである.
 そこで筆者らは外傷に基因する習慣性肩関節亜脱臼の4症例を経験したので,これらの所見をもとに,retrospectiveにその病態を追求し,診断法などについて報告する.

腰椎椎間板ヘルニアに併存した腓骨神経麻痺の症例について

著者: 武部恭一 ,   片岡治

ページ範囲:P.685 - P.688

はじめに
 腰椎椎間板ヘルニアの典型的な症状として腰痛,ラセグー徴候などに加え,下肢の知覚障害や筋力低下がみられるが,L5の根症状が時には腓骨神経麻痺に似た症状を示す場合がある.一般に両者の鑑別は容易とされてはいるが,この両者が合併した場合には複雑な病状を呈すると考えられる.しかし我々が知る範囲では腰椎椎間板ヘルニアに腓骨神経麻痺が合併した症例の報告はない.最近我々はこの合併症例3例を経験したので報告するとともに診断上の問題点等につき検討を加える.

慢性関節リウマチの頸椎変化について

著者: 手束昭胤 ,   藤内守 ,   岸陽二 ,   八木省二 ,   近藤憲二 ,   林一幸 ,   片山幸俊

ページ範囲:P.689 - P.693

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下R. A.)の患者には頸肩,腕の疼痛,肩凝りなどの項頸部に関する愁訴を有するものは多い.しかし多関節の多彩な症状にとらわれ,医師も患者も頸椎病変については案外等閑視してきたと思われる.しかし稀ではあるが脊髄や延髄の損傷のための死亡例の報告もあり,患者にとつて自分の頸椎変化を知つておくことは重要なことと考える.
 今回,私共は日本リウマチ友の会徳島支部会員の頸椎レ線変化を調査する機会を得たので,主として環軸関節の変化を中心に検討し報告する.

Juxta-cortical chondromaの2例

著者: 荻野幹夫 ,   小坂正 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   蜂須賀彬夫 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰

ページ範囲:P.694 - P.696

はじめに
 骨膜または骨膜周辺の結合織に由来し,主に骨皮質外にあり,骨髄腔には及ばない良性軟骨腫瘍は,Mason(1937)7)により,periosteal chondroma,Lichtenstein(1952)4)によりperiosteal chondromaと命名されたが,内軟骨腫に比し,遙かに稀なものである.本症の2例を報告するのが本文の目的である.

腰痛疾患に対する"Facet rhizolysis"について

著者: 鈴木信治

ページ範囲:P.697 - P.701

はじめに
 腰痛および下肢痛をきたす多くの整形外科的疾患のうち,椎間板に起因する神経根,馬尾神経の障害に対しては治療法もある程度確立され,保存的療法あるいは手術的療法が行なわれ良好な成績を得ている.
 腰神経後枝の支配領域に腰痛の求められる疾患,すなわちSteindler9)のいう"Posterior Syndrome"のうち,腰椎椎間関節に起因する頑固な腰痛,下肢痛は日常診療において多くみられるものであるが,理学療法や装具療法によつても軽快せず,関節内注射も一時的なものが多い.このような症例に対して,著者は高周波電流による腰神経後枝内側枝の焼灼を行なつている.

新生児筋性斜頸の臨床像について

著者: 沖高司

ページ範囲:P.702 - P.707

いとぐち
 篠田20-22)による徒手筋切り術および無処置経過観察という,新しい観点にたつての治療法が発表されてより,幾多の追試も報告され,筋性斜頸の治療法が体系づけられつつあるが,一方筋性斜頸の診断に関しては産科医,助産婦および母親等家族による発見に頼つているのが現状である.そのため,胸鎖乳突筋の硬結が大きくなつた生後1ヵ月前後に発見される症例がほとんどで,それ以前の筋硬結が形成される時期については,いまだ十分には解明されていない.
 また近年,先天性股脱の早期発見を目標に,新生児検診が全国各地で行なわれているが,筋性斜頸についてはほとんど注目されていない.著者らは昭和44年から名古屋第一赤十字病院において,先天奇形全般にわたつての新生児検診を行なつている.その結果,昭和48年までの5年間に7,262名の新生児が検診され,生後10日以内の新生児期に104例(以下新生児筋性斜頸と称す),生後10日以後の乳児期に67例(以下乳児筋性斜頸と称す)の筋性斜頸が発見された.これらの症例の臨床経過をのべるとともに,特に筋性斜頸の発生頻度および発症時期について考察を加える.

小児大腿骨頸部骨折の2例

著者: 鈴木正孝 ,   木野義武 ,   服部順和 ,   花木和春 ,   親川勝 ,   杉浦保夫

ページ範囲:P.708 - P.711

はじめに
 小児の大腿骨頸部骨折は稀なこともあつて小児特有の問題点が十分解明されていないにもかかわらず,成人と同様な考えのもとに治療されたり,良好な骨癒合が過信されたあまり,後発合併症をひきおこした報告が多い.
 我々は最近2例の小児大腿骨頸部骨折を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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