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論述
Loose shoulderについて
著者: 信原克哉1 尾崎二郎1 塚西茂昭1 小林靖幸1
所属機関: 1信原病院整形外科
ページ範囲:P.642 - P.652
文献購入ページに移動世の中には随分不思議なことが多くある.私達はそれらをみてまず,驚異の目をみはるが段々,経験とともに慣れ遂には科学的解明を行なつてそれらをごくあたりまえの常識へと変える努力をしている.体の諸関節にlooseあるいはrelaxという不思議な病態があることは古くから多くの文献がありよく知られているが,こと肩に関しては麻痺性のものに与えられた動揺関節に留まり,いわゆる緩い肩につがての報告は少なく最近やつと臨床上の問題になつたにすぎない.
それにしても何故このloose shoulderという病態がみのがされてきたのだろう.これが疾患として確立しなかつた理由はいろいろあろうが1つは肩は元々三次元の可動域をもつlooseなもので個人差がつよく異常の判断がしにくいこと,さらに1つは正常運動域をこしたものは亜脱臼という曖昧な概念で片づけられ,looseとしてとらえられなかつたこと,また1つは,発生因子が多く静,動態の観察,分析によつてもなおわからないことばかりということ,などがあげられる.いずれにしてもこの正体のはつきりしないloose shoulderが身近な診察室に訪れている.諸家の報告と自験例から見解をまとめ,その輪廓を少しでもきめてみよう.
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