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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科13巻8号

1978年08月発行

雑誌目次

カラーシリーズ Microsurgery・7

神経・血管付皮弁移植術(Neuro-vascular skin flap transfer or sensory skin flap transfer)

著者: 玉井進

ページ範囲:P.714 - P.717

〔概説〕
 手の母指や示指に知覚が欠如しているときには,中指や環指からneurovascular skin island pedicle flap transferをおこなって,pinchに必要なpulpの知覚再建をはかる方法が日常よく用いられる手術であるが,成人では知覚のswitchingに難点がある.また,足底やアキレス腱部に知覚麻痺や瘢痕があるときには,靴ズレを生じ易い.従って,このような部位に対して,前回述べたような単なるvascularized skin flap transferをおこなっても,単なるcoveringの意味しかない.もちろん,長年月を経れば移植皮膚に知覚が自然に回復してくるが,決して満足すべきものではない.
 Neurovascular skin flap transferは皮膚移植に加えて知覚をも獲得できるという大きな利点を有する手術である.Donor siteとしては第1図のごとき部位があり,手の外科領域では足背からのdorsalis pedis flap,足母指外側からのhemipulp flap,指間部からの1st web flapがよく用いられている.

視座

論文や口演を理解しやすく

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.719 - P.719

 論文を書いたり口演をしたりする場合には,自分のいわんとするところを読者や聴衆によく理解してもらい,その内容を批判してもらわなければ意味がない.ところが現実には,その点に意を用いていない論文や口演がまま見受けられる.
 本誌の論文の場合には,原稿の段階で教授や部長の検閲が行なわれてから出版社に送付され,それをまた編集委員がチェックした上で印刷に廻すので,あまり見苦しい論文は掲載されていないはずである.しかし,ときには原稿の段階で,新鮮味に乏しいもの,冗長なもの,論旨が徹底しないもの,図や表が多過ぎるもの,エックス線や普通写真のコントラストが悪くて印刷に適さないもの,誤字や脱字が多いもの,なぐり書きで読みにくいもの,句読点の多寡が目立つもの,行の区切りがないもの,などいろいろの欠点があつて,その点を指摘して送り返さなければならない原稿もある.

論述

椎体のリウマチについて—第4腰椎に高度の骨破壊を来たした症例を中心に

著者: 菅野卓郎 ,   佐々木正 ,   足立秀

ページ範囲:P.720 - P.727

はじめに
 「椎体のリウマチ」というものがはたして存在するものだろうかという疑問を抱く人もあるかも知れない.たしかにそれは四肢の関節にみられるごとく普通のリウマチ病変の概念からはかなりかけ離れたものであるし,また平素数多くのリウマチ患者を診ている専門家でも臨床上実際にそれを問題にしなければならない機会はあまりない.そこで「椎体のリウマチ」があるとすれば,どのような臨床像を呈してくるか,また病理的にいかなるものであるかなどについて考えてみたい.

Duchenne型進行性筋ジストロフィー症の脊柱変形

著者: 斎藤篤 ,   服部恒明 ,   森尾昭

ページ範囲:P.728 - P.734

はじめに
 進行性筋ジストロフィー症児(以下DMP児と略す)の療育は,主として国立療養所において行なわれているが,病勢の進行を阻止する根治療法のない現在,患児の病気の進行に応じたリハビリテーションがなされている.最も多いDMP児Duchenne型の日常生活動作のうちその移動能力についてみると,小学校入学後9歳を境として歩行や起立性保持が次第に困難を伴うようになり,症状の進行と共に四つ這い,いざり移動,電動車椅子の使用と次第に移動能力の低下を増す.成長と共にいかに良好な体幹支持とバランスを維持させるか,またいかに脊柱変形を予防するかも大きな間題となる(第1図).
 当下志津病院においては畳の上で坐位を自由にとらせ日常生活動作を行なわせるいわゆる"和式療育"を行なつているが,他の施設では下肢の変形と拘縮を積極的に装具により矯正し,起立期間の延長を試みると共に,車椅子を用い腰掛ける生活をとらせるいわゆる"洋式療育"1)6)も行なわれている.畳での生活においては1日のうち両下肢の屈曲位保持期間が長く,下肢の屈曲拘縮が進行し,装具療法により積極的に起立位保持を行なう療育法に比べ歩行期間や起立保持期間は短縮する.

精神障害者に合併した脊髄麻痺とその治療上の問題点

著者: 満足駿一 ,   梶原敏夫 ,   大谷清 ,   野町昭三郎

ページ範囲:P.735 - P.742

はじめに
 一般に脊髄損傷は,産業災害や交通災害あるいはスポーツ災害などの,いわゆる不慮の事故に原因するものが大部分であるが,時には意図的な自損(自己破壊)行為の結果としてもこれが生ずることがある.すなわち,自殺企図者や精神病者による自殺行動がたまたま未遂に終つても,運悪しく脊髄損傷を伴つた場合がその例である.ともかくもこれらの場合には,自殺の動機もしくは背景となつた心理的過程や先行する精神病の存在そのものがひとつの特別の問題であるばかりか’実際,これらの条件は身体的回復処置にとつてもしばしば障害的である.もつとも精神障害と脊髄麻痺の合併という見地からすれば,なにも自損行為によるものだけに限らずとも,例えば精神病者がたまたまの事故や自然の疾病によつて脊髄麻痺に陥つた場合にでも,今述べたような事情は全く同じである.言い換えれば,いずれの場合にも事故もしくは疾病を契機として,先行する精神障害に重度な身体障害が新たに重複する.ところで,脊髄麻痺者にたいする精神科医の関与と役割についての文献は,従来より決して少なくはない.

境界領域

反射運動と随意運動の神経機構

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.743 - P.759

はじめに
 近年,整形外科学は非常な発展を遂げ,多く難治の疾患が姿を消し,あるいはその病理が解明されて治療の道が開かれた.現在,脳性麻痺は,悪性腫瘍や骨系統疾患とともに,挑戦すべき最後の研究課題になつた.重度の身体障害者の大部分が重度脳性麻痺である.この疾患を理解するためには運動神経学の深い知識が必要である.近年,神経学は著しい発展を続けている.殊にEccles等は単一神経細胞内電極挿入法を用いて大脳や小脳の機能の解明に大きな業績をあげた.この研究によつて随意運動が皮質連合野-小脳-皮質運動領の回路によつて統御され,この回路において小脳が複雑な運動のプログラム化に重要な役割を果すと推論されるようになつた.
 中枢神経は機能の観点から,中脳以下の下位機能単位と中脳以上の上位機能単位に分けることができる.中脳,橋,延髄,脊髄よりなる下位機能単位は反射運動を統御し,上位機能単位は主として随意運動を統御する.小脳はブイードバック機構の中枢として両機能単位の機能に密接に関与する.このことからわかるように,上下機能単位の間には機能水準進化の原則the evolunary principle of levels of functionがある.すなわち,神経系の機能単位はその進化の過程において獲得した機能を保持しており,下位機能単位は反射運動を統御し,上位機能単位は随意運動を統御し,下位機能単位よりも優位を占める.

臨床経験

過労性骨障害について

著者: 星秀逸

ページ範囲:P.760 - P.768

 1885年Breihaupt34)が強行軍後の兵士にみられた足部の疼痛性腫脹に対してFuß geschwulstとして記載して以来,軍陣医学,スポーツ医学などの各領域から過労性骨障害に関する幾多の報告がみられる.
 本邦においても近年スポーツの隆昌に伴いスポーツ障害として関心を集め報告例も多くなつてきている.

軟骨芽細胞腫の2例—殊に悪性化の考えられた症例

著者: 北城文男 ,   森松稔 ,   荒川正博 ,   矢野荘一 ,   横田清司 ,   生田久年

ページ範囲:P.769 - P.775

緒言
 軟骨芽細胞腫(Chondroblastoma)は稀な腫瘍である.1942年Jaffe & Lichtenstein6)が骨端部の軟骨細胞由来の腫瘍で軟骨肉腫に比して生物学的性状が良性であるとして,本腫瘍を骨巨細胞腫から区別するために組織所見の類似性から"benign chondroblastoma"と呼称した腫瘍で,以後あい次いで報告されている.一方本腫瘍は,Lichtensteinら9)によると組織学的に軟骨肉腫や骨肉腫と誤診され易い腫瘍の一つであると指摘されていると同時に,近来"malignant"chondroblastoma(Ackerman 1969)7)の報告もみられるように,chondroblastomaは良・悪性の判定に関して今後の問題点を残している.
 最近我々は,19歳女性の右距骨に発生したbenign chondroblastomaの1例および56歳女性の左大腿骨頭に発生したchondroblastomaで臨床的・組織学的にchondrosarcomaとの鑑別に難渋したchondroblastomaの1例計2症例を経験したので,若干の病理組織学的観察と文献的考察を加えて報告する.

Upper limb-cardiovascular症候群の6例

著者: 千葉晃泰 ,   三浦隆行 ,   前田敬三 ,   駒田俊明

ページ範囲:P.776 - P.780

 先天性心疾患と上肢異常の合併例は,1664年Nicholas Stenonにより初めて報告されているが1),1960年HoltとOramが,一家系において,4世代にわたる9人の先天性心疾患と上肢橈側列異常の合併者を認め,そのうちの4症例を報告していらい2),Holt-Oram症候群と呼ばれている.
 Holt-Oram症候群は,常染色体優性遺伝を示し,精神発達遅滞は無く,下肢は冒されない.心疾患としては,心房中隔欠損(ASD)・心室中隔欠損(VSD)が約2/3を占めていると報告されている3,4)

鎖骨後方腫瘍の治療経験—特にthorcoplastic forequarter amputationの手技と適応について

著者: 荻野幹夫 ,   蜂須賀彬夫 ,   古谷誠 ,   浅井春雄 ,   小坂正 ,   村瀬孝雄 ,   笹哲彰 ,   野田栄次郎 ,   櫻井正則 ,   岡部英男

ページ範囲:P.781 - P.785

はじめに
 腋窩より鎖骨上窩に至る領域は,前方は鎖骨と大胸筋により,後方を僧帽筋,肩甲骨,広背筋等による壁にかこまれ,深部は触診が困難な部分である.本領域は,上肢への大血管や神経幹以外にリンパ節,粗な結合織,脂肪組織を含み,軟部組織原発性悪性腫瘍の発生が見られるが,腫瘍が相当大きくなるまで圧迫症状を起こしにくいのと,触診が困難なため,診断が遅れがちである.特に再発生の腫瘍の場合,診断が遅れ,上肢への重要な大血管や神経幹に病変が及んだり,胸壁や肩甲骨との剥離が困難で,完全切除が困難な事が多い.これらの腫瘍のうち,肺や頸椎等に遠隔転移を起こし易いものは,大きな侵襲を加える完全切除の対象にはならないものが多いが,遠隔転移が遅く,局所的に再発したり浸潤するものに切除術の適応がある.このような4例の切除術を経験したので報告し,術式5)について述べるのが本文の目的である.

著明な腰椎側方辷りに伴うpara paresisの治療経験

著者: 伊藤達雄 ,   辻陽雄 ,   坂巻皓 ,   布施吉弘

ページ範囲:P.786 - P.789

 右手関節のRAと,右股関節の2次性OAを有し,さらに第2,第3腰椎部における著明な側方辷りによりpara-paresisをきたした1例を経験したので,病因等にいささかの検討を加えて報告する.

Intramedullary neurinomaの経験

著者: 宗広忠平 ,   真鍋昌平

ページ範囲:P.790 - P.793

序論
 脊髄腫瘍がGowers & Horsleyにより1889年に摘出されて以来,諸家の報告があいついだが,1932年Elsberg1)によつて208例の手術例が報告された事により本疾患の診断と治療法が確立されたと言える.
 我々は昭和29年より昭和51年までの当教室での手術例47例を真鍋ら2,3),野村ら4)によつてすでに報告している.今回これらの報告例中に含まれていた,きわめてまれなintramedullary neurinomaの1例について文献的考察を加えてみた.

右脛骨に発生した典型的なchondromyxoid fibromaの1例

著者: 久保山勝朗 ,   紫藤徹郎 ,   横江清司 ,   岡本一也

ページ範囲:P.794 - P.796

はじめに
 Chondromyxoid fibromaは比較的稀な疾患であるが,最近我々は,右脛骨に発生した典型的なchondromyxoid fibromaの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

ゴルフによる肋骨疲労骨折の4例

著者: 武藤芳照 ,   鈴木善朗 ,   竹内善則 ,   杉浦保夫 ,   青木正次

ページ範囲:P.797 - P.800

はじめに
 スポーツによる疲労骨折のうち脛骨・腓骨・中足骨の疲労骨折は若年者に多く見受けられるが,肋骨疲労骨折は中高年者に認める例が少なくない.特に本邦では近年著しく普及したゴルフによる場合が知られており,中高年のスポーツ障害として注目されている.著者の1人杉浦はさきにスポーツによる肋骨疲労骨折の11例を報告し,そのうち7例がゴルフによるものであつた1).さらに最近3年間に我々はゴルフによる中高年者の肋骨疲労骨折の4例を経験したのでその大要を報告し,若干の文献的考察を加える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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