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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科14巻1号

1979年01月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 整形外科医のための免疫学・1

簡単な抗原検出法—混合凝集反応の組織化学への応用

著者: 石山昱夫 ,   小室絵里佳 ,   吉野槇一

ページ範囲:P.2 - P.5

はじめに
 門外漢の連中が免疫学の紹介を行なうのはいささか問題があろう.臨床と基礎医学の間にはどうしても越えられないbarrierがある.しかし,抗原の同定とか,生物学的な細胞の性状などについては,ある程度まで共同して研究できる余地ものこっている.このシリーズでは,すでにいろいろと研究対象となっているテーマや,技術の紹介はなるべく取りあげないことにした.その理由は,基礎医学者達が患者の症状があまりよく分らないのに,これについての解説をしてもあまり意味がないと思ったからである.そこで,我々が自分で考え,試みかつこれからの臨床医学に役立ちそうなテーマを選んでみた,これらの点をご了承いただければ幸いである.

巻頭言

第52回日本整形外科学会総会を迎えるに当つて

著者: 津山直一

ページ範囲:P.7 - P.8

 長い歴史と伝統のある日本整形外科学会の第52代会長に会員の皆様が若輩の私を選んで下さいましたことに御礼申し上げます.真に光栄に存じます.日本整形外科学会がより正しく発展し学問の世界のみならず,社会的にも,国際的にも寄与するところ大なるよう,私と致しましてできる限りの努力を傾け,教室の者と力を併せ学会長の重責を果したいと考えております.皆様のご支援,ご指導をお願い致したく,就中,卒直なご助言やご忠言を賜わりたいと考えております.虚心に承り実行可能なものは実現に努め,毎年懸案のまま持越されている事項も結論を出せるだけ出したいものと存じます.今年は日本医学会総会が4月7,8,9の3日間東京において開かれますので,総会後1日おいた11,12,13日の3日間東京において開催,会場は渋谷公会堂,日本青年館,岸体育館を予定しております.各分科会が同時に開かれますため地の利の良い所にまとめて会場を設けることができず,渋谷公会堂と代々木の青年館の間が約2km離れており連絡バスを頻繁に用意いたしますが,何かとご不便をおかけすることと思われます.何卒ご諒恕賜りたく存じます.

視座

No man's landにおける屈筋腱修復術の進歩

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.9 - P.9

 周知のように手指の関節よりPIP関節までの間はno man's landあるいはdead zoneと呼ばれ,特殊な解剖学的関係からこの領域の損傷は予後極めて不良とされ,長い間,多くの外科医から敬遠されてきた.この領域の外傷は日常決して少なくなく,ガラス,ナイフ,包丁,その他鋭利な刃物などで,老若男女を問わず,頻発する.治療成績向上を目的に多くの努力が払われてきたが,一般に実効をあげるまでに至らず,難攻不落の領域とされてきた.
 従来,この領域における屈筋腱損傷に関する実験的研究はそれ程多くはなく,Lindsay(1960),Potenza(1962)らの業績が有名である.Lindsayはepitenonのみで修復可能といい,一方Potenzaは腱自体による修復はなく,腱鞘または腱周囲組織からの肉芽組織により修復されるといい,換言すれば一時期は必ず周囲と癒着するとした.実験部位は異なるが,Skoog(1954)は腱の修復はparatenonが主役を演じ,epitenonのみでは修復し得ないと両者の中間的見解をそれ以前に述べている.一次的腱縫合法は真に理想的方法と考えられるが.この領域ではPotenzaの説が大勢をしめ,縫合すると術後癒着が必発し,手術は失敗することが多いと信ぜられ,Bunncll以降二次的腱移植術が原則とされてきた.

論述

変形性関節症の進展—組織学的および力学的考察

著者: 二ノ宮節夫 ,   宮永豊

ページ範囲:P.10 - P.16

 関節は軟骨の老齢化に内在している変化と長年にわたる機械的損傷の蓄積によって退行変性に陥入ると考えられる.すなわち,関節の一次性退行変性は遺伝子的に支配された細胞の機能低下(内的因子)と長年月にわたつて損傷(microinjuries)の蓄積された状態(外的因子)で説明されている.しかし,具体的にこれらの各因子がどのような比重をもち,どのように関与して変性が進展していくかに関しては必ずしも明解な解答はない.
 そこで,これらを説明する目的で各種の基礎的な実験が従来より多数試みられているわけである.たとえば,関節の持続的圧迫10,19,36,39,40),固定14,15,22,32,38),あるいは完全な免荷20,39)により,関節軟骨が退行変性に陥入ることは臨床的,実験的に明らかである.しかし,臨床に近い退行変性を実験的に作製して変性の進展過程をみるには,できるかぎり生理的に近く,かつ極めて徐々に変性が進行する実験モデルが必要となる.HulthやTelhagら23,37)は家兎膝関節を用いて,側副靱帯と十字靱帯の切離,半月の切除により,不安定膝を作り,人間の変形性関節症に類似した慢性の退行変性を発生させた.

慢性関節リウマチにおける滑膜切除術の目的と意義—再生滑膜の免疫病理像からみて

著者: 石川斉 ,   大野修 ,   広畑和志

ページ範囲:P.17 - P.25

はじめに
 慢性関節リウマチの局所の関節病変に対して滑膜切除術が古くから行なわれて来た.Mignon1)に始るこの手技はSweet2)によつて確立された.しかしこの滑膜切除術は病変の初期に行なうべきであるとする,いわゆる"early synovectomy"の報告が多い3〜6)
 最近ではさらにFowlerら7)は中等度あるいは高度に破壊された関節でも適切なメディケァーと理学療法を併用すれば必ずしも成績は悪くなく,かつ進行性の関節破壊に予防的役割を果すと報告している.一方アメリカにおけるmulti-centerによる滑膜切除術の成績評価8)を見ると決して満足できるものでなく,いまだに慢性関節リウマチの局所病変に対する滑膜切除術の効果についてはさまざまな評価がなされている.そこで滑膜切除術をおこなつた症例の中から滑膜の生検を行ない得たものと,追加手術を必要としたものの再生滑膜を採取し免疫組織学的検索を加え,その所見を病変の再燃,鎮静という臨床的な問題と関連させて検討してみた.はたして滑膜切除術が慢性関節リウマチという全身病の一つである関節の炎症にどれだけ寄与するのか,またこれによつて臨床的に関節炎の進行は阻止され得るのかなどを免疫組織学的見地より考察する.

Chondropathia patellaeの臨床像

著者: 小林晶

ページ範囲:P.26 - P.35

はじめに
 欧米では以前よりchondromalacia patellaeの概念のもとに膝蓋骨を中心とする一つの疾患について数多く発表されてきた3,4,10,17,18,29,30,32,36).ひるがえつてわが国では正坐やしやがむなどの動作が欧米に比し多く,かえつて膝蓋骨に対する負荷が大きいと想像されるにもかかわらず関心が極めて薄くまとまつた報告は少ない.実際に欧米でいうchondromalacia patellaeの発生はわが国では少ないのであろうか?
 筆者はここ数年来膝蓋骨の愁訴を中心とした患者に注目してきたが,わが国でもかなりの頻度にみられることに気付いて2,3の発表19,20,21)を行なつてきた.今回はこれらの総括として臨床像をまとめると共に成因の一端について言及したいと考える.

小児の下肢内旋変形—前捻角症候群

著者: 矢野悟 ,   小林郁雄

ページ範囲:P.36 - P.46

はじめに
 小児の下肢内旋変形については我国ではこれまでまとまつた報告は少ないが,欧米ではBrandt2)をはじめとし下肢の内旋変形に関する多数の報告がみられる.
 その原因としてSwanson14),Salter15)は胎生期の特有な肢位や,生後の習慣による寝癖(habitual sleeping position)や坐り癖(habitual sitting position)により大腿骨,下腿の捻れが発生するものと考えている.その結果,特有な臨床症状として内旋位歩行(knee in gait3))や立位での膝の内向が生じ,歩容の異常や不安定性あるいは運動能力の低下等16)がみられる.

先天股脱に対する減捻内反骨切り術,骨盤骨切り術の治療成績の比較

著者: 井村慎一 ,   長治孝雄 ,   中瀬裕介 ,   辻成人

ページ範囲:P.47 - P.55

はじめに
 先天股脱の保存的ならびに観血的治療後にみられる臼蓋形成不全,大腿骨頸部前捻増強,外反股などの大腿骨骨頭の求心性不良に対し,減捻,減捻内反骨切り術,臼蓋形成術,骨盤骨切り術などの補正手術が行なわれてきた.
 減捻,減捻内反骨切り術,あるいは内反骨切り術などの大腿骨切り術は大腿骨頸部の異常を矯正し,大腿骨骨頭の求心性を獲得することにより,その後の股関節の正常な発育を促すものであるのに対し,臼蓋形成術,骨盤骨切り術は主として臼蓋に対する補正を行ない,その後の良好な股関節発育を期する方法である.

手術手技

Halo pelvic traction装置(千葉大式)とその装着法

著者: 篠遠彰 ,   井上駿一 ,   大塚嘉則 ,   鈴木弘 ,   大木勲

ページ範囲:P.56 - P.63

 Halo pelvic tractionは,頭尾方向の脊柱直達牽引法として,脊柱外科領域において現在広く世界で用いられている.本装置は,1959年J. Perry & V. Nickel1)らがポリオや外傷による不安定頸椎に対して,はじめてhalo装置を開発し,body castと連結させて牽引および固定を試みたのに始まる.その後,Freemanら2)はankylosing spondylitisの頸椎変形の矯正に,Thompsonら3)はcervical spine injuryの固定に,それぞれhalo femoral traction,halo cast法として応用していた.現在用いられているhaloにpelvic hoopを加えたいわゆるhalo pelvic traction装置は,1970年Illinoi大学のDewald & Ray5)により開発され側彎症の矯正装置として用いられ,従来のcastやfemoral tractionと比較してすばらしい矯正効果をもたらす画期的な方法として注目された.他方,Hodgson,O'brienら7,8)の香港グループも積極的な開発を行ない,現在ではさまざまなタイプの本装置が使用されている.

検査法

頸椎疾患のCT像

著者: 今井健 ,   藤原紘郎 ,   村川浩正 ,   角南義文 ,   那須正義 ,   中原進之介 ,   尾上寧 ,   児玉寛

ページ範囲:P.64 - P.70

はじめに
 1972年英国EMI社のG. N. Hounsfieldによつて頭部専用CT scannerが開発され,臨床的にはJames Ambroseによつて使用されて以来急速に普及し,頭蓋内病変の診断には重要な役割をしめるようになつてきた.
 1974年以来頭部専用から頭都をも含むwhole bod yscalmerが出現し,胸部,腹部への臨床応用例も多く報告されるようになつた.

臨床経験

悪性の疑われる線維性組織球腫の1例

著者: 荻野幹夫 ,   蜂須賀彬夫 ,   古谷誠 ,   村瀬孝雄 ,   浅井春雄 ,   小坂正

ページ範囲:P.71 - P.73

はじめに
 軟部組織に原発し良性と考えられる腫瘍の中で,組織像が複合形態を取りそれぞれ異なつた名で呼ばれていた幾つかの病変が,StoutとLattes7)によりfibrous histiocytomaとされたのは1967年の事であつた.それより前Ozzello4)等は組織培養法によりhistiocyteがfibroblastとなり得る事を示し,両者は環境によつて相互に変化し得るものとの根拠が得られていて,この命名は次第に広く用いられているが,一般の整形外科医にとつては,なお,なじみのうすい命名であろう.この名で呼ばれている腫瘍はほとんどが良性であり,再発する事はあつても転移する事は少ないとされていたが,Kempson2)とSoule6)はそれぞれ30例,65例の悪性fibrous histiocytoma例を報告した.本文の目的は,自験の悪性の疑われる線維性組織球腫の1例を報告し,線維性組織球腫の概念を整理する事である.

急激に発症し自然回復した圧迫性脊髄症の症例

著者: 塩尻邦彦 ,   池田彬 ,   芦田多喜男

ページ範囲:P.74 - P.77

 背痛および左上肢に放散痛を伴つて急激に両麻痺を来たし,ミエログラフィー上硬膜外圧迫像を呈しながら,短期間で自然回復した圧迫性脊髄症の症例を報告する.

後天的に指趾爪の多発性管状変形をきたした症例とその手術法

著者: 屋宜公 ,   中嶋寛之 ,   近藤稔 ,   鈴木勝己

ページ範囲:P.78 - P.81

 爪の変形を来たす疾患は種々知られているが,最近我我は指趾の爪が順次尖端から管状化を来たし疼痛を訴え,手術により症状の改善をみた稀な爪変形の症例を経験したので報告する.

膝蓋内側滑膜皺襞(棚)による膝内障の治療経験

著者: 猫塚義夫 ,   笠井康弘 ,   高畑直司 ,   辻晋 ,   山内潔 ,   岡本五十雄 ,   伊古田俊夫 ,   田村文雄 ,   益子忠之

ページ範囲:P.82 - P.85

はじめに
 我々は,膝蓋内側滑膜皺襞(以下棚と略す)による膝内障に対し,昭和51年9月より昭和52年8月までに関節切開切除術や関節鏡視下切離術を施行し,症状の改善を得たので,診断と治療および術後経過について報告する.

急性脊髄麻痺にて発症した白血病の1症例

著者: 渡辺俊彦 ,   今江道宣 ,   村上剛 ,   浅井浩

ページ範囲:P.86 - P.90

 白血病はその経過中に種々の神経症状を呈してくることは今までに知られており,特に脳出血による脳卒中症状は比較的よく併発する症状である.しかしその経過中に脊髄麻痺を呈する事は少なく,整形外科領域では内堀を初めとして6例の報告を見るにすぎない.我々は両下肢痛より急速に両下肢麻痺を呈し,その後も麻痺が上行し脊髄腫瘍の疑いにて硬膜を開き壊死に陥いつていた馬尾組織より骨髄芽球性白血病と診断された一症例を経験したので,本邦における最近25年間の報告例と本例とを合わせて30例を集計し若干の考察を加えて報告する.

筋肉腫瘤を主訴とした膠原病の1例

著者: 中村昌弘 ,   加賀完一 ,   那須範満

ページ範囲:P.91 - P.94

はじめに
 全身の膠原組織に広汎な炎症とフィブリノイド変性をきたす疾患を膠原病といい,臨床的には,発熱,発疹,筋関節症状,漿膜炎,腎障害,心血管障害等多彩な症状を呈する.
 最近,私達は筋肉腫瘤を主訴として種々の膠原病の特徴を備えた症例を経験したので報告する.

追悼

飯野三郎名誉教授

著者: 若松英吉 ,   青池勇雄 ,   天児民和 ,   片山良亮 ,   岩原寅猪

ページ範囲:P.95 - P.99

飯野三郎先生を悼む
 私たちの恩師飯野三郎先生が昨年10月26日お亡くなりになつた.28日に通夜,29日お葬式と慌しく終つてしまい,暫く日を置いた今になつて,何となく物足りなく,また物淋しい.時がたつにつれ,先生に纒わる断片的な記憶が甦つてくる.
 先生の東北大学ご在職中は香を焚きしめた整然とした教授室にゆつたりと夜遅くまで腰を据えておられた.そして先生が第一義的に重んじておられた独創的な研究について,プランをあれこれ考えておられた.先生は追試的な仕事を「そんなもの誰かがやつているさ」といわれ極度に嫌われた.先生の生涯の研究であるバゾグラムは独創的なものを求められた結果の一表現であろう.歩行の描写に円柱レンズの応用を考えつかれたとき,"やつたぞ"と大変意気揚々とご機嫌のようであつた.ある教室員が抄読会でInmannの歩行に関する論文を紹介したとき,うちの教室でやつていると同じようなという言葉をちよつと挾んだところ,何が同じだと大いに怒られたことがあつた.

座談会

多発骨折の救急医療と医事紛争

著者: 高木学治 ,   永井隆 ,   高山瑩 ,   伊藤忠厚

ページ範囲:P.100 - P.110

 最近の交通,労働災害による多発骨折は,合併損傷を伴う重篤な症状を呈する場合が多く,総合救急医療の立場から治療する必要がある.また合併損傷を伴う多発骨折は特に医事紛争を惹起し易い.
 第51回日整会総会の主題の一つである「合併損傷を伴う多発性骨折の治療」を踏まえて,多発骨折の総合救急医療の重要性と医事紛争の予防を中心にお話いただいた.「臨床整形外科」編集室

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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