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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科14巻10号

1979年10月発行

雑誌目次

視座

科学雑誌考

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.971 - P.972

 忙しい診療の合間に新着の本誌を手にとつて拾い読みを楽しんでおられる整形外科医が日本中に随分沢山いらっしやることだろう.アカデミツクな論文もさることながら解説記事や工夫あるいは「前者の轍」めいた小論にも教えられることが少なくない.些か文芸春秋的ではあるけれどもカラー頁や広告も毎度目を楽しませてくれる.
 ところで投稿されてくる原著が意外に少ないのには驚く.学会員が7,000名を越え,毎月のように学会・研究会があるにもかかわらずである.学位論文は機関誌へ寄せられるからその分少なくなるのは己むを得ぬとしても,毎年数千題の口演が日整会もしくは主要な地方学会でこなされている事実に照らすとやはり考えさせられる.もしも原稿の依頼や推薦を止めたなら,日整会誌以外の整形外科商業誌は休刊のはめに陥ることは疑いない.雑誌の質は結局のところ選りすぐられた原著の内容にあることは自明の理であるから,投稿原稿の少ないことは,即,質の低下に連なる.

論述

モアレトポグラフィーおよび低線量X線撮影装置による脊柱側彎症学校検診

著者: 大塚嘉則 ,   篠遠彰 ,   井上駿一

ページ範囲:P.973 - P.984

はじめに
 脊柱側彎症の早期発見,早期治療の体制を確立することは,今日の大きな社会的課題の一つになりつつある.このためには,側彎症の7割以上を占める特発性側彎症の多くが,学齢期に発症するところから,これを学校保健の場で確実に発見することが最も効果的な方法である.
 米国の整形外科学会は,早くから側彎症のschool screeningの必要性を説き,これに応じて各地で活溌な検診が行われ成果を上げている.

治療成績が不良であつた先天性股関節脱臼の観血的治療例の検討

著者: 蜂谷将史 ,   山田勝久 ,   森岡健 ,   高尾良英 ,   小林賢司 ,   金英煥 ,   奥義治

ページ範囲:P.985 - P.994

はじめに
 先天股脱の治療成績は早期に発見され,早期に治療されるようになつてから著しく向上してきた.しかし,日常の診療に際して難治性先天股脱と称するものに遭遇することが少なくない.これらを十分検討してみると先天因子というよりは,むしろ人為的因子にその原因が求められるものが多い.われわれは,かつて乳児期に治療されたものの中より成績不良例を検討し,第1表のごとき人為的因子によつて難治性先天股脱が作りだされていることを報告した.
 今回われわれは主として幼児期以後に,大腿骨骨切り術・Salter骨盤骨切り術・Pemberton骨盤骨切り術・Chiari骨盤骨切り術およびColonna手術を行つたものの中より,成績不良例を選びだし,その原因を各個別に検討を加えてみた.

膝関節伸展硬着に対するdésinsertion du quadriceps(J. et R. Judet)の手術術式と治療成績

著者: 弓削大四郎 ,   森康

ページ範囲:P.995 - P.1003

はじめに
 膝関節は強力な屈伸筋群,即ち大腿四頭筋という伸筋群,大腿二頭筋および腓腹筋という屈筋群に包まれた,可動域の大きい反面不安定な要素を内在する露出した傷つき易い関節である.他の関節におけると同じように伸展位と屈曲位硬着をみる.特に伸展硬着は大腿骨骨折や膝関節内骨折,膝蓋骨骨折,脛骨遠位端骨折の後遺症としてみられることが多い.特にこの後遺症は日本人の畳生活にとつては重大なマイナス要素であると共に,その障害者の要望を満足させることは非常に難かしく,常にわれわれ施療の立場にあるものと,受療者との間に期待感のギャップのあることに不満を抱いてきた.
 この伸展硬着の膝関節に対して多くの関節授動術が発表されてきた.その主なもものをあげれば,河野,山田,弓削,Bennett,Payre Thompson,Nicollなどである.これらに共通するものは膝関節周辺の四頭筋の中間広筋を切除したり,その靱帯を延長して可動域の増大をはかつたことである.更に膝上嚢再建術を加味したものであるが,山田はポリエチレン袋を4週間留置して再建をはかり,弓削は自家中間層皮膚を採取して袋を作りこれを包埋した.

調査報告

Ankylosing Hyperostosisと椎体窩溝

著者: 大本秀行 ,   森脇宣允 ,   津江和成 ,   瀬戸信夫 ,   服部奨 ,   早川宏 ,   河合伸也 ,   斉木勝彦

ページ範囲:P.1004 - P.1011

はじめに
 Ankylosing Hyperostosis(AH)またはAnkylosing Spinal Hyperostosis(ASH)は日常注意してみれば,比較的よく遭遇する疾患であり,脊柱周囲その他の諸靱帯の骨化をおこす代表的なものである.この疾患は日整会学術用語委員会で強直性脊椎骨増殖症と訳されており,最近後縦靱帯骨化(OPLL)を併発していることが多く注目されている.
 AHについては,前世紀より諸々の報告があるが,Forestier2)らが形態学的病理学的特徴を研究報告し,一つの独立疾患として認められてくるにいたつている.ゆえにForestier病といぜんとして呼称する人も多くみうけられる.AHまたはASHと略すことがあるが全身の靱帯の骨化傾向が強く認められることより,AHと略す方が良いと思われる.

臨床経験

骨・軟部腫瘍に対するCTの診断価値

著者: 八木知徳 ,   石井清一 ,   山脇慎也 ,   佐々木鉄人 ,   薄井正道 ,   松野丈夫

ページ範囲:P.1012 - P.1019

はじめに
 骨・軟部腫瘍のX線診断は,従来の各種X線撮影法の改良に加え,血管造影の普及やシンチグラフィーの進歩により,著しく向上した.しかし今なお得られる情報は充分とはいえない.
 ひるがえつてComputed Tomography(CT)は1973年Hounsfield4),Ambrose2)によつて脳外科領域で臨床応用されたのが始まりである.翌1974年には全身用CT装置が開発され8),数年の間に驚異的な発展と普及を遂げるに至つた3,5,6,13,14,20),CTは従来の諸種診断法を補う有用な方法として整形外科領域でもすでに脊椎疾患に対する応用例の報告がある11,15,16,19).さらに最近では骨・軟骨腫瘍への応用が注目されている7,9,10)

乳幼児脳障害の早期補助診断法—CT scanの利用

著者: 鷲見正敏 ,   謝典頴 ,   梁復興 ,   香川弘太郎

ページ範囲:P.1020 - P.1026

はじめに
 今日では脳性麻痺児の治療に関して,機能の再建をはかる目的での早期治療訓練の重要性に対する認識がたかまつてきている.もちろん,この早期治療を行うためには的確な早期診断が必要であることは言うまでもない.しかし,一般的に利用されている神経学的検査法は,実際には臨床上かなりの熟練を要するので確定診断の困難な場合が多い.殊に乳児期においては,既往における危険因子,姿勢反射所見等からVojta1)の述べる中枢性協調障害児・症候性危険児として診断されるに過ぎず,ただ将来の病的発達を防止するという意味で早期治療が行われている.
 このように早期診断の困難な脳性麻痺に対しては,従来からの補助的診断法としてX線単純撮影・気脳撮影,脳血管撮影・脳波検査などがあるが,必ずしも利用価値の高いものではない.そこで,著者らは乳児を主として対象とし,Computed Tomography(以下,CTと略す.)を施行し,脳性麻痺の早期補助的診断法として役立てるために,その有効性について検討した.

膝蓋骨転移をきたした腎癌の1例

著者: 木原未知也 ,   海村昌和 ,   椿原彰夫 ,   田中守 ,   鳥潟親雄

ページ範囲:P.1027 - P.1029

 膝蓋骨への癌転移は極めて少なく,なかでも腎癌の膝蓋骨転移は我々の渉猟しえた範囲では報告例をみない.今回,我々は膝蓋骨へ転移した腎癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

外傷性近位脛腓関節脱臼の1症例

著者: 鈴木康 ,   西本虎正 ,   今井秀治 ,   兼松秋生

ページ範囲:P.1030 - P.1034

 近位脛腓関節の脱臼は臨床的に看過され易く,その報告は極めて少ないが,最近我々は多発外傷に合併した本脱臼の一例を経験したので,とくにその病態を中心に検討を加えて報告する.

上腕骨滑車無腐性壊死の1例

著者: 安井一夫 ,   宮本政義 ,   小野田太郎 ,   井上一

ページ範囲:P.1035 - P.1037

 いわゆる骨端核の無腐性壊死なる疾患は種々の骨端部に発生する.Osgood-Schlatter病,Perthes病,Köhler病,Kienböck病,Scheuermann病などはその代表的疾患であり特徴あるX線像を呈する.肘関節にもPanner病と呼ばれるこの範疇に属する疾患がある.これは上腕骨小頭部の無腐性壊死であり,本邦においても稀れであるが報告例がある.一方,上腕骨滑車骨端核の無腐性壊死はPanner病に比べて報告例は少なくごく稀れな疾患と思われる.我々は最近,上腕骨滑車無腐性壊死の1例を経験したので報告する.

右橈骨に生じたdesmoplastic fibromaの1例

著者: 平山慶尚 ,   矢端信義 ,   菅野拓勇 ,   清水澄雄 ,   中里洋一

ページ範囲:P.1038 - P.1042

はじめに
 1958年Jaffe1)はその組織像が,腹壁のdesmoid tumorと類似するfibroblast由来の骨中心性腫瘍をdesmoplastic fibromaと命名した.以来同症例の報告は71例と比較的少ない.今回我々は17歳男子で,右橈骨に発生し広範囲切除術,血管柄付腓骨移植術を行つたが,術後1年3ヵ月にて再発したdesmoplastic fibromaの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

学会印象記

American Academy of Orthopaedic SurgeonsのAn Academy Continuing Education Course on The Neck,1979に出席しての印象記

著者: 伊藤達雄

ページ範囲:P.1043 - P.1047

 1979年4月9日から11日までの3日間にわたりLouisiana州New Orleansにて開かれたA. A. O. S.(American Academy of Orthopaedic Surgeons)の卒後研修会にあたるContinuing Education Course,The Neckに参加する機会を得た.
 参加者は,あらかじめ書類でA. A. O. S.本部に参加登録費とともに申し込む,定員は400名であつた.会場は当地のクラシックなたたずまいの高級ホテル,Fairmont Hotelであり,朝食,昼食つきで午前8時より午後5時まで全員ほぼ缶詰の状態であつた.米国では頸椎の外傷性疾患,先天性疾患などを整形外科医があつかい,いわゆる頸椎症は脳外科にて治療される傾向にあるが,ここに参加している整形外科医は頸椎症も積極的に治療しているようであつた.

第17回先天股脱研究会

著者: 坂口亮

ページ範囲:P.1048 - P.1051

 この会は,大きな学会では時間に追われたり,また雰囲気からいつて膝つき合せての討論など望むべくもないところから,それが十分できることを目標に掲げて発足した.回を重ねるごとに参会者もふえ,最近では会場の準備,設営,演題募集,プログラム作成等々,いわゆる学会と少しも変らない対応を迫られるようになつた.(同僚の原勇君がこの困難な仕事を一手に引受けて会を無事にすませた.)この学会的形式に走る傾向の中でせめて内容だけは,当初の精神そのままに討論を尽すことにつとめた.以下,演題順に従つて簡単な抄録を記し,印象を加えたい.文中,敬称,敬語を略させて戴く.
 1.鈴木(大津日赤)は単殿位分娩にクリック発現率が高い事を報告し,複殿位(股屈曲,膝屈曲位)では骨頭は求心位を保とうとするが,単殿位(股高度屈曲,膝伸展拘縮,およびそれに伴う膝屈筋緊張)では股伸展力が内在し,骨頭を上後側方へ脱臼させる力を生じやすいことを理由とした.

整骨放談

姿勢と態度

著者: 山田憲吾

ページ範囲:P.1052 - P.1052

 本誌12巻10号の本欄に京大伊藤鉄夫名誉教授の「天平の仏たちの姿勢」なる一文が掲載されているこの中で氏は「古仏像の示す特有な姿勢は緊張性頸反射なる一連の基本型に合致し,これが像に秘められた心の動きを強く表現している」という意味のことを述べておられる.多分,氏はこの仏像鑑賞を通じ,仏に具わる「こころの構え」なる形而上の事項と,像に具現された「からだの構え」なる形而下の事象とが,深く関わつていることを感得されたのではないかと思う.いずれにしても「心と身との関わりあい」は哲学上の古い命題であつたし,医学上の新しい課題でもある.しかし,その思索には必ずしも特定な場があつたわけではないようである.それ故,教育現場のような身近かな日常経験の中からもこれに類する課題が見出されてもよいと思う.そこで,おこがましくも「姿勢と態度」なる標題を掲げここで検討することにした両者は同意語としても使用されるが,ニュアンスの相違もあり,必ずしも同一ではない.ここでは辞書の多数が示す所に従つて言葉の意味を選び使用することにした.

カラーシリーズ

実験的頸髄圧迫の血管透過性に関する研究

著者: 酒匂崇 ,   富村吉十郎 ,   前原東洋 ,   矢野良英 ,   大迫敏史

ページ範囲:P.966 - P.969

 家兎頸髄に後方より重錘圧迫(100g,15分)を加え,頸髄実質内の微細循環の変化についてmicroangiographyを用いて検討を行っているが,ここでは血管透過性の問題について論ずる.
 頸髄が急性に圧迫を蒙り損傷されると,中心灰白質に出血巣が形成され,自己崩壊現象により病変は周囲に拡大する現象がみられる.出血巣の周辺灰白質および白質には阻血の所見が著しく,また血管の拡張や造影色素の血管外漏出もみとめられる.2.5%Evans blue bovinealbumine complex(EBA)の静脈注入により血管の透過性亢進状態を観察すると圧迫終了後5時間位までの間にEBAの漏出は最高に達する.血管壁透過性亢進は抗カテコールアミン剤(reserpine,alpha methyl tyrosine,phenoxybenzamine)の投与により著明な抑制をみ病変の拡大がみられない.これは損傷脊髄部にカテコールアミン物質が蓄積され,微小血管の収縮により,血管壁の破綻を生じ血液成分の血管外漏出を来たすというOsterholm説を支持するものと考える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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