文献詳細
文献概要
論述
骨肉腫治療の変遷と最近の進歩
著者: 赤星義彦1 武内章二1 松岡正治1
所属機関: 1岐阜大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.1159 - P.1168
文献購入ページに移動骨肉腫の治療は,罹患肢の切断,離断というもつとも確実な原発巣の根治除去手段があるにかかわらず,肺転移のためその85%以上が1〜2年以内に死の転帰をとり,1960年代までは5年生存率も僅か10〜15%以内にとどまつていた.もつとも今世紀のはじめからワクチン療法,術前放射線治療,あるいは化学療法の検討など,基礎的研究を含めて,幾多先人の苦闘に満ちた試みと研究報告は数多くみられるが,治療成績向上の突破口は堅く閉ざされていた.
しかし近年化学療法の進歩開発とその応用によつて,漸くその突破口が開かれてきた.とくに本邦では1960年以降,原発腫瘍に対する術前の強力な制癌剤の局所灌流(perfusion)法,局所栄養動脈内挿管持続注入(i. a. infusion)法あるいは60Co,リニアック,速中性子X線大量照射療法などの導入を契機として精力的な研究が押し進められ,さらに1970年以降は術後のadjuvant chemotherapyとして強力な多角的(multimodal)免疫化学療法が行われるようになり,予後の改善と共に原発腫瘍の完全剔出,再建術成功例さえもみられるに到つた.このような骨肉腫の治療方式はすべての悪性骨・軟部腫瘍あるいは癌骨転移の治療にも通ずるものがある.
掲載誌情報