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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科14巻2号

1979年02月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 整形外科医のための免疫学・2

リンパ球の特異性—特にC3レセプターについて

著者: 石山昱夫 ,   小室絵里佳 ,   吉野槇一

ページ範囲:P.114 - P.117

 前稿で,組織抗原の簡単な分析法として,混合凝集反応の利用度について説明を加えたが,この反応はすでにいろいろの方面で活用されている.たとえば,抗原抗体反応の複合物は補体を結合するが,補体成分のなかのC3が結合した複合物はヒトの赤血球を凝集する能力がある.これを免疫粘着反応というが,これも混合凝集反応を利用して観察しているのである.すなわち,試験管内で抗原と抗体と補体を混じて一定時間37℃に放置したあとで,ヒトの赤血球(0.1〜0.5%くらいのうすい血球浮遊液)を加えて,更に1時間〜1時間半ぐらい放置するとC3を結合した複合物ができた場合には試験管の管底にうすい膜がはってくる.もし,陰性の場合には,管底に血球があつまった所見が得られる.この方法をつかうと抗原抗体反応の検出感度は時に数十倍もよくなることがある.この現象の原理は,抗原抗体反応複合物に結合した補体成分のC3は,未結合の場合のそれとはことなって,ヒトの赤血球表面にあるC3結合基(レセプター)と反応する作用が生ずるためといわれる.
 ところで,凝集反応という現象は,通常考えられているよりもかなり厄介なものである.

視座

Globalな視野と,経験をこそ

著者: 水野祥太郎

ページ範囲:P.119 - P.119

 京都のS. I. C. O. T.も終つた.人それぞれにいろいろな感慨をもつたことであろう.次期会長には多年にわたつて親交のあついDholakiaが当ることになつた.インドといえば低開発国として,これを意外と思う人も多いことであろう.私には,何となく当然のことのように思われるのであるが.
 京都で気がついたことに,開発途上国からの人たちの発言のたいへん多かつたこと,これらの人びとが,日本人が欧米人の前へ出たときに示すようなへどもどした態度は示さず,堂々と(?)していたことであろう.こういう傾向はこれからも,すべての面で,すべての機会にますます大きく出てくると思う.私にとつては,これは至極当然のことのように映るのであるが,日本の次の時代を背負うべき人びとに,どうこれが受取められたであろうか.

論述

滑膜の障害による膝内障について

著者: 冨士川恭輔 ,   伊勢亀冨士朗 ,   柴崎昌浩 ,   三倉勇閲

ページ範囲:P.120 - P.130

はじめに
 膝内障というbasket nameが包括する疾患の病態は,関節造影法や関節鏡の改良と普及によつて次第に解明されつつある.とくに膝内障のうちでも最も頻度の高い半月障害や靱帯損傷等の診断率は90%以上に及ぶが,日常臨床に際してなお原因不明の頑固な膝関節痛に困惑することも少なくない.滑膜によるいろいろな障害も注意深く観察してみると 1)いわゆる棚障害,2)膝蓋下滑膜脂肪体の障害,3)軟骨部へのsynovial invasionとirritarionなどさまざまな形態異常をとつて発症していることがわかる.
 いわゆる滑膜性障害の一つである棚障害は実際にはかなりの頻度で存在するが,一般にはまだ看過されがちであるように思われる.また,時には看過されるだけでなく半月損傷の診断のもとに半月剔出術をうけていることすらある.

人インターフェロンの抗腫瘍性

著者: 増田祥男 ,   福間久俊 ,   別府保男

ページ範囲:P.131 - P.138

緒言
 2種のウイルスが同一細胞に同時かまたは相前後して感染すると,どちらか一方のウイルスの増殖が抑制されたり,あるいは両方の増殖が抑制される現象はかなり古くから知られ,これはウイルスの干渉現象(interference)と呼ばれている.1954年に長野,小島はこの現象の原因と思われる因子を発見し,ウイルス抑制因子(virus inhibitory factor)と名づけて発表した.その後,1958年にはこの因子の作用には抗体の関与がない事を証明した.
 一方,1957年にIsaacs1)とLindenmannは抗体の関与しない発育鶏卵を用いたin vitroの実験で,ウイルスの干渉現象を引き起こす物質を発見し,これにInterferon(干渉因子)と命名した.

手の外科におけるsensory free flapの応用

著者: 坂本博志 ,   玉井進 ,   保利喜英 ,   龍見良隆 ,   中村義弥 ,   田北武彦 ,   清水豊信

ページ範囲:P.139 - P.147

はじめに
 皮膚移植の新しい方法として,groin flapをはじめ種々のvascnlarized free flapが臨床に応用されているが,知覚の存在が不可欠で,かつ皮下組織のうすいものを要求される手や指への皮膚移植としては,足からのfree sensory flapが最も有用な方法である2,3,5〜7)
 本皮弁は,皮弁の栄養血管で養われる領域と知覚神経の支配領域が一致する必要があるためdonor siteは自ずから限られてくる.

変股症およびR. A.における大腿骨頭軟骨下海綿骨のremodelling

著者: 日下部明

ページ範囲:P.148 - P.155

はじめに
 変形性股関節症の病因やその進行過程に関与する要因についてはいまだ明らかでない.末期変股症では関節軟骨の変性や破壊と,軟骨下海綿骨の旺盛な新生骨反応による硬化ないし象牙化や,骨棘やのう胞形成などの破壊と修復2つの病態が混在することが特徴であり,関節軟骨のみでなく軟骨下骨の変化も著明である.
 これまで一般的には一次性変股症は硝子軟骨そのものの内因性破綻や変性が先行し,それに生体力学的な機械的要因も加わつて進行していくと考えられており骨の変化はすべて二次的なものとされ,多くの研究は関節軟骨に集中されてきた.

リウマチ患者における下肢大関節固定術の評価

著者: 喜多正鎮 ,   秦立比古 ,   近藤正一

ページ範囲:P.156 - P.164

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下RAと略す)患者に対する外科的治療の進歩はめざましく,近年は寝たきり患者や歩行能力に著しい障害のある患者に対しても,機能回復のため多くの手術的試みがなされている.その適応についてはRAが多関節罹患のしかも全身性進行性疾患であることを考慮しつつ,関節破壊の程度や機能的予後の推測から慎重に決定されなければならない.下肢の股,膝関節に対する関節固定術の主たる目的は歩行能力の獲得であるが,無痛性および支持性の獲得,手術効果の恒久性といつた利点があるものの,関節の重要な機能である可動性を失なうため,RAの如き多関節疾患には用いるべき手術でないと考えられているのが現状であろう.しかしながらRAに対する下肢関節固定術の評価に関する詳細な報告は見当らない.
 我々は過去15年間に股,膝関節に固定術を受けたRA患者につき,ADLの推移および他関節におよぼす影響を追跡調査する機会を得たので,その結果を報告するとともに適応につき若干の考察を加えたい.

臨床経験

吉野式人工膝関節—第3報 中間成績について

著者: 吉野槇一 ,   小坂弘道 ,   内田詔爾 ,   村瀬研一 ,   松浦美喜雄

ページ範囲:P.165 - P.169

はじめに
 術後経過観察期間が最低1年以上経つているGeometric型人工膝関節12症例,17関節の術後疼痛を調べたところ"まつたく疼痛なし"2関節,"疼痛あり"15関節で,うち"術前より改善"14関節,"術前と変らず"1関節であつた.術後疼痛のある関節を検討したところ 1)膝蓋・大腿関節に変形性関節症が生ずる,2)人工関節が大き過ぎることが分つた.そこでGeometric型人工膝関節の一部を改良した人工膝関節(Yoshino type I人工膝関節)を製作した.この人工関節は術後経過観察期間が長期になるに従い,Geometric型人工膝関節と同じように 1)左右のthrust,2)人工関節(脛骨部)の内側sinkingなどが起きたので,脛骨部を大幅に改良したYoshino type II人工膝関節を製作した1).なお本人工関節の構造,手術手技,適応などは第一報で,脛骨の人工関節挿入前と挿入後の荷重試験については第二報としてすでに本誌に発表してある2,3)
 Yoshino type II人工膝関節(41症例,62関節)の術後経過観察期間は最低6ヵ月とまだ日が浅いが,本人工関節の術後成績を各疾患別に検討したので,現在臨床に使用されている各種人工膝関節の問題点(材質,手術適応など)を含め,若干の考察を加えて述べる.

重症頸部脊髄症の治療成績の検討

著者: 木村功 ,   新宮彦助 ,   嘉本崇也 ,   山崎堯二 ,   那須吉郎 ,   塩谷彰秀

ページ範囲:P.170 - P.177

はじめに
 頸部脊髄症に対する前方除圧固定法の導入により,その手術成績は飛躍的に向上しつつある.一方,後方よりの椎弓切除術による除圧法の成績も手術技術の改良と共に優秀な成績が報告されつつある.
 しかし,この両手術法に加えて積極的な保存療法による優秀な成績も報告されている.

合併損傷を有する多発骨折例について

著者: 寺島嘉昭 ,   三国義博 ,   青柳孝一 ,   石垣一之 ,   長谷川功

ページ範囲:P.178 - P.184

はじめに
 最近交通外傷が重大な問題となつているが,外傷の増加とともに,単発から多発へと変化し,治療の困難なものがみられる.当科において治療した多発骨折症例を統計的に観察するとともに,特に合併損傷を伴う症例の治療方針につき検討したので報告する.
 多発骨折の定義であるが,便宜上諸家の報告におけると同様,少なくとも体の2つ以上の異なつた部位において,2ヵ所以上の骨折を有するものとし,前腕や下腿における両骨骨折などは除外した.

腰部の硬膜内に脱出した椎間板ヘルニアの3症例

著者: 礒辺啓二郎 ,   山田均 ,   辻陽雄

ページ範囲:P.185 - P.187

 腰部硬膜内に脱出した椎間板ヘルニアの3症例について報告し,さらに文献報告例17例を加えて考察を行なう.

膝関節離断後17年を経過した血友病性偽腫瘍の1例

著者: 坂田敏郎 ,   川井和夫 ,   広畑和志

ページ範囲:P.188 - P.192

はじめに
 血友病性偽腫瘍の発生は,血友病患者の約1%とされ稀なものである5).著者らは,17年前(昭和35年)血友病Aの患者で,踵骨部に発生した巨大な血友病性偽腫瘍を経験した.当時は,血友病患者に対し,外科的侵襲を加えることは禁忌とされていたが,日増しに悪化する全身状態を考慮し,やむなく膝関節離断術を施行した.幸いにも関節離断に成功し現在特に支障なく日常生活を送つている症例を今回追跡し得たので報告すると共に,本偽腫瘍の最近の治療法に対する考え方につき述べたい.

極めて稀な外傷性第1腰椎後方脱臼の1例

著者: 泉田良一 ,   大谷清

ページ範囲:P.193 - P.195

 胸腰移行部は脊椎外傷の好発部位で,椎体圧迫骨折,脱臼骨折が多いが脱臼は稀であり,なかんずく後方脱臼は極めて少ない4,8〜10).我々はこの極めて稀な外傷性第1腰椎後方脱臼の一例を経験したので報告する.

稀有な脊髄ependymoblastomaの1症例

著者: 亀ケ谷真琴 ,   伊藤達雄 ,   辻陽雄 ,   斎藤隆

ページ範囲:P.196 - P.199

はじめに
 脊髄ependymomaは,Bailey3),Bailey & Cushing4,5),Kernohan etc15,17),Kernohan,Woltman & Adson16),Chigasaki6)らによると,全脊髄髄内腫瘍中約28〜42%を占め,かなり多いものである.しかし頭蓋内に発生せるependyxnomaと比べると,その頻度は低く,とりわけ脊髄原発のependymoblastomaに関しては,われわれが渉猟し得た文献中には1〜6,8,9,11,14〜17,20,22),いまだ報告をみない.

対談

開講50年—前田和三郎先生に聞く

著者: 前田和三郎 ,   天児民和

ページ範囲:P.200 - P.205

 天児 きようは,前田先生をわざわざこういう所までお呼びたてしまして,ほんとに恐縮に存じます.
 先生が慶応大学に整形外科の講座をお作りになつて今年(1978年)で50年とかいうので,何かお祝いをするとかいうご案内状をちようだいいたしましたので,その間先生にはずいぶんご苦労があつたろう,先生のご苦心談というようなものでもここでお話し願えたら,今の若い整形外科医が,今非常に整形外科が繁昌していますが,そういう先輩の苦労でここまできたということをご存知ない人がたくさんいると思いますので,きようは先生にその辺のお話をお願いしたいわけでございます.どうぞよろしくお願いいたします.

学会印象記

第14回国際整形災害外科学会議

著者: 佐藤孝三 ,   山室隆夫 ,   古屋光太郎 ,   池内宏 ,   赤松功也 ,   山内裕雄

ページ範囲:P.206 - P.217

はじめに
 国際整形災害外科学会(SICOT,Société Internationale de Chirurgie Orthopedique et de Traumatologieの略)は,1929年10月にパリーで12ヵ国21人によつて創設され,今年で丁度50年目を迎えた.その50年目に,アジアで初めてのWorld Congressが京都市(京都国際会議場)で開催された.会期は昭和53年10月15日から20日までの6日間,天児民和会長以下日本国組織委員会の過去3年にわたる努力の結果,世界60数力国から4,000人以上(うち同伴者約1,000人)の参加者があり,整形外科のあらゆる分野にわたる研究発表と活溌な討議が行なわれ,またパーティや観光を通じて国際交歓の実をあげ,盛大かつ成功裡にその幕を閉じた.
 その模様を簡単に紹介すると,まず10月15日午后4時から行なわれた開会式は,邦楽演奏に始まり,常陸宮殿下ならびに妃殿下がご台臨になり,津山直一事務総長司会のもとに,天児会長の開会宜言ならびに歓迎の挨拶,日本側各界代表の祝辞につづいて常陸宮殿下のおことばがあり,その後にSICOT50周年記念式典に移行した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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