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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科14巻3号

1979年03月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 整形外科医のための免疫学・3

悪性腫瘍の血清学的特異性—血液抗原と悪性度

著者: 石山昱夫 ,   小室絵里佳 ,   吉野槇一

ページ範囲:P.220 - P.223

 癌組織の免疫学は以前からいろいろの研究者によって分析されているけれども,なかなかすっきりとした決定打がないのは衆知のごとくである.
 最近hepatomaにおけるα-フェトグロブリンや,CEA抗原などの胎生期由来の抗原が特殊な癌に発生するという所見が得られ,実際の診断にも応用されている.ところで正常の細胞と癌細胞との間に組織抗原的になんらかの差異を求めようという意味で分析したのがDavidsonである.我我はこの方法の重要性を認め,かつDavidsonの方法をさらに改良した.

視座

SICOT京都を省みて

著者: 諸富武文

ページ範囲:P.225 - P.225

 極東で初めての国際整形災害外科学会がこの秋日本で唯一の国立国際会議場のある京都で開催された.天児会長を頂点として長い間の努力の積み重ねの結果の大壮挙である.この成功は何よりも会長とスタッフ,各委員の熱意と努力によるものであり,多数の参加者(外国人約3千人,日本の整形外科学会会員および夫人方1千人以上)の協力の賜と御同慶に堪えぬ次第である.なおこの成功の陰に千年の古都,山紫水明の美しい京都が果した役割を忘れてはなるまい.
 学術集会は,この学会が始まつて以来最大の規模であつたように思われた.特別講演,シンポジウム,フリーペーパー,ラウンドテーブルディスカッション,オーディオビジェアル,学術展示さらにはポスター発表,教育研修講演,専門グループシンポジウム等に分けられた.これによつて整形外科,災害外科のほぼあらゆる領域が展望された.

論述

小児円板状半月障害における半月部分切除術について

著者: 冨士川恭輔 ,   伊勢亀冨士朗 ,   三倉勇閲 ,   竹田毅

ページ範囲:P.226 - P.234

はじめに
 日常の臨床において,膝関節痛を訴えて外来を訪れる小児は決して少なくなく,診断や治療に苦慮することがしばしばある.
 近年,小児膝内障に対する関心も次第に高まり,関節造影法や関節鏡検査の普及によつて膝内障というbasket nameの病態も次第に解明されつつある.しかし患児自身の訴えが明確を欠くこと,臨床症状が成人のそれに比較して不定なこと,あるいは単純X線写真による情報量が極めて少ないことなどから的確な診断が下されないまま,成長痛,急性関節炎,関節リウマチ,捻挫,神経痛など誤つた診断で誤つた治療が行なわれがちである.

膝蓋・大腿関節障害と下肢アラインメントの関係について

著者: 岡本連三 ,   腰野富久

ページ範囲:P.235 - P.242

 膝蓋骨は生体の中で強力な筋肉の一つである大腿四頭筋の筋力を膝蓋靱帯を介して効果的に下腿に伝達する役割を担つており,丁度てこの支点のような作用をしている.しかもてこの腕を長くして同筋の効率を強めている.膝屈曲位での起立位保持は,大腿四頭筋の収縮力が膝蓋骨を大腿骨に強く圧迫することによつて容易となる.このため膝蓋大腿関節には大きな力が作用し,立位で膝屈伸運動を行なえば,同関節は強く摩擦される6)
 実際高齢者では,階段の昇降時や日本式トイレット動作時,またゆかから立ち上る動作をする時にしばしば膝蓋骨部に疼痛を訴える.このような症例の立位荷重時の膝蓋骨軸射像(skyline view)を観察すると,多くは膝蓋大腿関節の裂隙に狭小化が観察され変形性関節症の所見を呈する2,4)

特発性側彎症の家系内発生例の検討

著者: 船津恵一 ,   井上駿一 ,   大塚嘉則 ,   北原宏 ,   鈴木弘 ,   篠遠彰 ,   礒辺啓二郎

ページ範囲:P.243 - P.250

はじめに
 近年,特発性側彎症の病因として遺伝的素因が注目され欧米を中心に諸家1-4)の報告がなされているが,いまだはつきりした遺伝形式は解明されていない.今回我々は当科に登録されている特発性側彎症の家系内発生例につき臨床像およびHLA抗原系をはじめとする遺伝形式につき検討を加えたので報告する.

股関節全置換術の成績と成績不良例について—100例130関節の追跡調査より

著者: 小林勝 ,   沢村誠志 ,   村田秀雄 ,   前野耕作 ,   南久雄 ,   土井恭平 ,   中村幸夫

ページ範囲:P.251 - P.260

はじめに
 Newman22)によれば股関節全置換術(以下T. H. R.と略す)の試みは古く,1938年Philip Wilesに始まる.その後中断して1950年代のCharnley,Mckeeらによる人工関節の開発と骨セメントの臨床応用で本手術は急速に普及した.しかし,鎮痛,可動性,支持性,変形矯正に関する劇的効果に相反して,長期経過で種々の問題を包含する20)
 我々は昭和45年10月,第1例の手術以来,術後1年を経過した症例は昭和52年2月末までで126例157関節となる.このうち追跡時に他疾患により10例(11関節)が死亡していた.本文は追跡しえた100例130関節について平均2年経過の報告をするとともに,成績不良例を抽出して,合併症ならびに本手術の問題点を検討して報告したい.

境界領域

Cephalosporin系抗生物質の骨髄内移行濃度について

著者: 桜井実 ,   松木昇 ,   植田俊之 ,   北原博

ページ範囲:P.261 - P.268

はじめに
 人工関節置換術など骨組織に接して大きな異物を挿入する場合の感染予防の観点から,術前に抗生物質を投与する方法がとられているが,散在する菌がかなりの高率でペニシリンに耐性を持つていることから,できるだけ新しい広範囲の菌に作用する抗生物質を用いた方が有利である.
 股関節全置換術を行なつたときの大腿骨近位の骨髄内血液へのcephalothin(CET)の移行濃度は,血清中濃度に比してかなり低いことが見出され,したがつて大量の投与の望ましいことをすでに発表したが1)(整形外科,29巻,485P),その後cefazolin(CEZ)および新しい抗生物質SCE-963について同様の検索を行なつてみたところ,逆に骨髄内の方が高濃度である例にかなりの頻度で遭遇した.これは生体内のesteraseによつてCETが分解される機序が関係しているらしいことが想像される.以上3種類のcephalosporin系抗生物質の骨髄内移行濃度について検索した結果を報告したい.

臨床経験

慢性関節リウマチにおける膝関節の臨床病態—膝病変と「レ」線変化

著者: 忽那龍雄 ,   岡本勉

ページ範囲:P.269 - P.275

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下,RAと略す)において,膝関節は好発関節のひとつであり,罹患後,特に荷重関節であるために,各種の病変が日常生活動作を著しく障害し,外科的療法の適応となる事も少なくない.このようなRA膝を合理的に管理するには,種々の病態を充分把握しておく必要があろう.近年,RA膝に対する外科的療法,特に,人工膝関節置換術などについての報告は多い.しかし,本邦におけるRA膝の臨床病態の把握は充分とはいえない.そこで,私たちはdefiniteならびにclassical RA患者61名120膝関節について,臨床的および「レ」線学的な面から,これらRA膝の臨床病態を明らかにすべく検討を加えたので報告する.

踵骨隆起摧裂骨折の7例

著者: 井原秀俊 ,   加茂洋志 ,   前川正幸

ページ範囲:P.276 - P.281

 踵骨骨折は日常しばしぼ見受けられるが,その内で隆起部の摧裂骨折は稀であるといわれてきた.諸外国の報告をみると,全踵骨骨折の中でその占める頻度は,Böhler 180例中1例0.5%,Rothberg 80例中1例1.02%,Rowe等154例中4例となつている.当院においては,1970年4月〜1978年3月までの8年間に踵骨骨折97例(うち片側性89例,両側性8例)を経験しているが,そのうち7例7.2%に睡骨隆起の摧裂骨折を経験したので考察を加えて報告する.

肩甲下部以外に発生した弾性線維腫(Elastofibroma)の臨床病理学的検討

著者: 長嶺信夫 ,   野原雄介 ,   伊藤悦男

ページ範囲:P.282 - P.289

はじめに
 弾性線維腫は稀な軟部組織腫瘍であり,自験例を除くと海外例を含めわずかに81例の報告例があるにすぎない.これらの弾性線維腫の発生部位はほとんど肩甲下部であり,肩甲下部以外に発生した弾性線維腫の報告は著者の症例以外にわずかに5例の報告をみるのみである.
 著者は1978年9月1日までにすでに140例の弾性線維腫症例を経験している.これは海外例を含めた全報告例221例の63%をしめ驚異的な症例数である.これら140例のうち今回は肩甲下部以外に弾性線維腫が発生した25例を中心に報告する.この中には現在までに報告のみられない右肩甲下部,両側側胸部,両側肘下部計7か所の弾性線維腫発生例や,両側肩甲下部,左肘下部,右坐骨結節部計4か所の弾性線維腫発生例も含まれている.

セメントによる手掌部high-pressure injection injuryの1例

著者: 奥住成晴 ,   鈴木一太 ,   武内鉄夫

ページ範囲:P.290 - P.294

はじめに
 流動体,半流動体の高圧注入による,いわゆるhigh-pressure injection injuryはRees(1937)7)の発表以来かなりの報告がある.最近われわれは,セメントの高圧注入による手掌部損傷の1例を経験したので報告する.

股関節全置換術後4回にわたり大腿骨骨折をおこした難治例の経験

著者: 扇谷浩文 ,   黒木良克 ,   山本龍二 ,   斉藤進 ,   新井治男 ,   森雄二郎

ページ範囲:P.295 - P.299

 股関節全置換術は近年増加し,それに伴う術中術後の合併症についていろいろの考慮が必要となる.今回我々は,股関節全置換術後,5年間に4回にわたる大腿骨骨折を合併した1症例を経験したので若干の検討を加えて報告する.

紹介

先天性骨系統疾患,先天異常の国際命名,分類法の改訂

著者: 杉浦保夫

ページ範囲:P.300 - P.303

 筆者はすでに1973年,本誌8巻343頁に『骨系統疾患の命名,分類についての最近の動向』と題して4),1970年,MaroteauxらによつてAnnales de Radiologie誌上1)に発表された国際命名試案決定に至る経緯とその内容を紹介した.しかし,その後もこれら疾患に含まれる新しい独立疾患としてのいくつかの疾患単位の確立,鑑別診断,分類はきわめて急速な進展を来たしたため,その改訂の必要に迫られるに至つた.
 1977年5月,パリにおいてMaroteaux(パリ小児病院人類遺伝学部長)の要請により,ヨーロッパ小児放射線学会およびNational Foundation-March od Dimesの後援を得て,Dorst,Fauré,Giedion,Hall,Kaufmann,Kozlowski,Langer,Lenzi,Maroteaux,Murphy,Poznanski,Rimoin,Sauvegrain,Silverman,Stanescu(R),Stanescu(V)の諸氏によつて諸種検討が加えられ,その結果に基づいて改訂案が発表された2,3)

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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