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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科14巻4号

1979年04月発行

雑誌目次

特集 脊椎外傷—早期の病態・診断・治療—(第7回脊椎外科研究会より)

巻頭言/脊椎外傷—早期の病態・診断・治療について

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.305 - P.305

 脊椎骨折や脱臼などの脊椎外傷の発生頻度が増加してきているかどうかについては,信頼できる統計に乏しいために断定できないが,高速化や高層化などの近代生活の条件はこの種の外傷が発生しやすい母地を醸していると考えられる.整形外科学においては脊椎外傷は永らくchallengingな課題であつた.しかし個々の整形外科医にとつてこの問題は決して避けて通れるものではないにもかかわらず,研究のmain themeとなることは少なかつたし,とくにわが国においてはたとえば本症の主たる後遺症の一つであるparaplcgiaについても社会的な対応が未だにきわめて不十分であるというのが現状である.
 たしかに脊椎外傷の重篤度は合併する脊髄損傷の有無と程度に左右されるし,またたとえば手術などによつてこの神経症状の予後に大きな影響を与えうる可能性がむしろ少ないのは残念ながら事実である.そのために脊髄障害の強いものでは神経学的予後が絶望的なために骨傷の治療はあまり重視されず,また神経障害を伴わないものは,その幸運のゆえに,ややもすればひととおりの治療ですまされるといつた傾向がなかつたとはいえない.

教室における脊椎損傷治療成績の検討から得られた脊椎損傷治療方針について

著者: 中川武夫 ,   井上駿一 ,   渡部恒夫 ,   豊田敦 ,   伊藤豊 ,   大木健資 ,   広瀬彰

ページ範囲:P.306 - P.312

はじめに
 脊椎損傷は交通外傷,労働災害,スポーツ外傷としてしばしば発生するが,高頻度に脊髄損傷を合併するため受傷初期よりの適切な治療が予後を大きく左右することはいうまでもない.現在われわれは脊髄損傷に対して積極的に除圧手術を施行しかつ損傷脊椎のalignmcntを回復し,脊椎の保護機能,支持性,安定性の再建を企図している.また呼吸管理,尿路管理を適切に行なうことにより合併症を予防し,リハビリテーションを早期より安全かつ円滑に施行するという原則に基づき治療を行なつているが,教室における脊椎損傷,脊髄損傷の治療法には脊椎外科の進歩に伴い少なからぬ推移がある.今回その治療成績につき検討を加え現在の治療力針につき述べることとする.

脊椎骨折の保存的療法の限界

著者: 竹内錬一 ,   井形高明 ,   高田広一郎 ,   成瀬章 ,   樋口幸夫 ,   辺見達彦 ,   米沢元実 ,   渡辺修身

ページ範囲:P.313 - P.318

はじめに
 脊椎外傷の治療が骨傷の整復固定による脊柱の支持性と脊髄保護作用の再建にあることは論をまたない.昭和40年以来,われわれは脊椎脊髄損傷に対して,積極的にとり組み症例の治療をかさねてきた.昭和40年より昭和47年までは主として,保存的に治療し,昭和48年以後は,脊髄動脈撮影を初期診断の一助として導入し,手術療法の適応を考慮してきた.今回は,これら治療法の成績をふりかえり,主として受傷当初において,われわれが採用した保存的療法の問題点をあげ検討を加え報告する.

上位頸椎損傷

著者: 小山正信 ,   服部奨 ,   早川宏 ,   礒部輝雄 ,   伊達洋次郎 ,   小田裕胤 ,   今釜哲男 ,   井之川義典

ページ範囲:P.319 - P.328

緒言
 近年交通の軸輻湊化に伴い,頸椎損傷患者も増加の傾向にあり,上位頸椎損傷例も増加している.上位頸椎は頭蓋骨の直下で,形態学的にも,機能的にも,中・下位頸椎とは著しく異なる部位である.解剖学的には環椎と軸椎は頭部と脊椎の移行部にあたり,機能的には後頭骨・環椎・軸椎は統一性を有しながら大きな運動範囲を持つている.運動のうち,主たる回旋運動は環椎の前弓と横靱帯との間に囲まれて存在する歯突起与軸として,環軸関節が主となつて行なわれ,全頸椎の回旋の50%はこの部位で占められている1).前方部分の運動の中心都は強靱で大きい横靱帯と翼状靱帯で結合され,運動の中心部から離れた部位は比較的弛緩した粗で脆弱な結合織で連結されている.すなわち,後方部分では環椎・軸椎間は椎弓間靱帯を欠き,他の頸椎部に比しゆるく結合され,大きな動きが可能なように形作られている。これは機能的には好都合であるが,外力に対しては抵抗減弱部となつている.また,上位頸推部は第3頸椎以下と異なり,椎間板がないため,衝撃吸収機構がないことが,本損傷の発生に大きく関与していると思われる.

小児における環軸椎脱臼症例について

著者: 遠藤紀 ,   小野村敏信 ,   渡辺寛 ,   山本定 ,   池田勝己 ,   石村俊信 ,   加藤実 ,   渡辺秀男 ,   太田和夫

ページ範囲:P.329 - P.336

はじめに
 小児における環軸椎脱臼には,明らかな外傷によるものと,他の原因,すなわち素因や炎症が重要な要因をなす場合とがある.前者ではtransverse ligament環椎翼状靱帯や十字靱帯などの損傷,断裂により環椎の脱臼をきたすものが最も多い.後者のうち,環軸椎回転性脱臼については,1830年Bellが初めて咽頭部潰瘍に続いて発症した例を報告して以来,Wittek,Grisel,Comerらの報告例がある.本邦においては,神中が耳鼻咽喉性斜頸として,1931年に詳細に報告している.
 本疾患は,環軸関節が脱臼位に強く固定されて経過するのが特徴である.その原因として従来挙げられているのは,炎症の先行を前提として靱帯の弛緩および損傷がおこり,これに炎症による頸筋のスパスムスが加わつて発症し,外傷や脊柱の先天異常などは,付加的な因子と考えられているが,現在なお明確でない点が多い.われわれは,種々の原因による小児の環軸椎脱臼および亜脱臼9例を経験したので,発症要因および治療について若干の考察を加えて報告する.

頭部外傷を伴う頸椎頸髄損傷

著者: 児島義介 ,   岡田孝三 ,   荻野洋 ,   小野啓郎 ,   山本利美雄 ,   杉本侃

ページ範囲:P.337 - P.342

はじめに
 頸椎頸髄損傷は交通事故や転倒,転落などの災害事故,ラグビー,アメリカンフットボールなどのスポーツ中の事故などによく発生する.たんに頸椎頸髄損傷といつても受ける外力の大きさにより種々の程度のものがあり,また重篤な他の合併症を伴うこともまれではない.特に上位頸椎損傷では重篤な頭部外傷を伴うことが多く,長島5)によると環軸椎損傷19例全例が,軽重の差はあつても頭部外傷を伴つていたと述べている.頸椎が頭に隣接し,それを支えているという特殊性を考えると,症状出現の有無は別にして,頭部に何の衝撃も加わらないような頸椎頸髄損傷は非常にまれであると思われる.
 今回頭部外傷(頭蓋骨骨折,血腫,数日間以上続く意識障害などの既往を有する症例)を伴う頸椎頸髄損傷患者と頭部外傷を伴わない頸椎頸髄損傷患者の臨床像,診断,治療などについて比較検討を加えた.脳振盪など一過性に数分間の意識消失にとどまるものは今回は頭部外傷を伴わない群に入れた.

頸椎損傷の治療成績

著者: 山田博隆 ,   加藤文雄 ,   林弘道 ,   岩崎三樹 ,   岡村博道 ,   中越直樹 ,   松田弘彦 ,   塚本創一郎

ページ範囲:P.343 - P.346

はじめに
 頸椎損傷は転落,交通事故などの不慮の事故により発症し,加えられた外力の方向および頸椎の肢位により多彩な病像を示す.したがつてその治療にあたり,骨折,脱臼または異常可動性の有無,損傷の高位,および合併する神経損傷の程度に応じた適切な加療が必要である.
 なかでも高度の脊髄損傷を伴つた症例では,呼吸機能障害,ショックなどにより生命の危険をきたす場合が多く,また生命の危険を脱しても,四肢麻痺,膀胱直腸障害,褥創の併発などにより社会復帰は困難となる.そのうえ受傷年齢が青壮年に集中しているため,社会的な影響も大きい.

頸椎脱臼,骨折に対する前方手術の経験

著者: 今井健 ,   十川秀夫 ,   石川正志 ,   横山良樹 ,   藤原紘郎 ,   安田金蔵 ,   村川浩正 ,   那須正義 ,   中原進之介

ページ範囲:P.347 - P.353

はじめに
 頸椎の脱臼や骨折の多くは脊髄麻痺を伴うが,その程度は完全麻痺からごく軽度の不全麻痺のものまでさまざまである.従来頸椎脱臼,骨折に対しては頭蓋牽引による長期の安静固定が主として行なわれており,手術的には椎弓切除術や後方固定術が行なわれていたが,受傷早期の椎弓切除術は損傷された脊髄に対してさらに損傷を加える危険性があるし,脱臼や骨折によつて不安定になつている脊柱をさらに不安定にする可能性があるとして最近では疑問視されるようになつた.これに対して本邦では中野や石川らにより,頸髄損傷に対して早期の前方除圧,固定術の優秀性が報告され多く行なわれるようになってきた.頸椎前方経路による手術の利点は,麻痺の原因となつている脱臼,脊椎管内へ陥入した骨片や椎間板などの病変を直視下に安全に手術ができ,除圧としつかりした固定を同時に行なえることである.

胸,腰椎圧迫骨折の診断と治療について

著者: 鈴木信正 ,   平林洌 ,   岩上哲郎

ページ範囲:P.354 - P.359

 胸,腰椎圧迫骨折に対する治療法は,本邦ではできるだけ完全な整復を行ない,ギプス固定の後,後療法を行なう方法が主流をなしてきた.他方,Nicoll,Holdworthらのごとく,何らの整復操作を行なうことなく,早期の離床,歩行を行なう方法を提唱するものもある.著者らは今回骨折に対する治療後経過の追跡調査を行ない,治療方法および治療成績を検討したのでその結果を報告する.

脊椎圧迫骨折初期治療の検討

著者: 新井永実 ,   中野謙吾 ,   円尾宗司 ,   和田剛正 ,   吉川泰生

ページ範囲:P.360 - P.366

はじめに
 脊椎の圧迫骨折は,日常よく遭遇する骨折の一つであり,そのほとんどはstable typeのものである.その発生部位は胸腰椎移行部に多く,治癒後も変形を残し力学的に無理な力を受けやすく,そのためなんらかの症状を訴えるものが意外に多い.しかし比較的安易に治療されているようである.そこで今回われわれは本骨折のX線所見を検討し,後彎変形と臨床症状,治療法等の関係を調べ,さらに脊椎2次元モデルによる力学的検索をも行なつたので報告する.

胸腰椎移行部脊椎損傷に対する治療法の選択—観血的治療を中心に

著者: 藤村祥一 ,   里見和彦 ,   満足駿一 ,   柴崎啓一 ,   大谷清

ページ範囲:P.367 - P.376

はじめに
 損傷脊柱の治療目的は脊柱の構築学的,生理機能的復元にある.すなわち脊柱変形の矯正,脊柱支持性の再獲得,しかも無痛性であることになる.それによって脊髄麻痺例に対しては脊髄損傷の加重を防止し,早期より円滑なリハビリテーションの軌道にのせ,早期社会復帰を可能ならしめる.
 胸腰椎移行部は脊椎外傷の面から,いくつかの特徴を備え,その好発部位であり,しかも脊髄損傷を合併することが多く,治療法の選択,特に観血的治療の適応に関しては論ずべき点も多い.

神経合併症を伴う脊椎損傷(胸椎,腰椎)の早期手術療法—Harrington instrumentationによる整復,除圧,固定

著者: 金田清志 ,   本間信吾 ,   樋口政法 ,   野原裕 ,   小熊忠教 ,   藤田正樹 ,   松井繁 ,   藤谷正紀 ,   土谷允男

ページ範囲:P.377 - P.386

いとぐち
 脊髄あるいは馬尾神経の合併症を伴う胸椎腰椎損傷の治療は古くから論議されている問題であるが,その目標は損傷神経機能の回復と損傷脊柱の支持性と安定性の獲得である.
 脊椎損傷の治療を振りかえってみると,1920〜1930年代はDavis6),Rogers,Böhler,Watson-Jonesらによる脊柱過伸展による整復とその後のギプスジャケット装着であつた.Albee(1940)は観血的整復と骨移植を行なつた最初の人である.Stanger(1947)37)は43人の胸椎腰椎脱臼骨折の過伸展整復による保存療法も,手術療法も整復された損傷脊柱に高率に変形再発をみた.Guttmann(1949)13)は開放損傷以外は早期手術療法の適応はなく,背臥位による保存的整復法を強調した.Nicoll(1949)30)は過伸展による保存療法の結果が不満足なものであり,胸腰椎部骨折は安定型と不安定型に分けられるべきとした.

腰椎損傷について—50例の経験から

著者: 里見和彦 ,   藤村祥一 ,   泉田良一 ,   満足駿一 ,   柴崎啓一 ,   大谷清

ページ範囲:P.387 - P.394

はじめに
 近年,交通事故や産業災害の増加により,外傷性脊椎損傷は逐年増えるとともに,複雑化する傾向にある.事故防止のための社会的な環境づくりはいうまでもなく,外傷の発生にあつては,より良い社会復帰のための早期診断,治療がなされねばならない.
 昭和41年以来,当院で経験した脊椎損傷は279例を数え,そのうち胸腰椎移行部(T11〜L2,以下Tは胸椎,Lは腰椎を示す)は151例と圧倒的に多く,腰椎中下部)L3以下)は10例と極端に少なくなつている.腰椎中下部損傷は麻痺があつても馬尾あるいは神経根損傷によるため,一般には麻痺の予後が良好である.また,そのために歩行を開始した後,腰痛を訴える例もみられ,適切な初期治療が要求される.ここに自験例を中心に腰椎損傷を吟味し,その診断,治療上の問題につき言及する.

総括

腰椎損傷の部

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.395 - P.396

 腰椎部は解剖学的,機能的にも上位の脊柱とは異なつた特殊性を有しているので,外傷の診断・治療にもこれらの点に関する基本的な配慮が必要であろう.この部門では腰椎損傷に関する4題(別表参照)の発表が行なわれ,主として早期治療を中心として討論がもたれた.以下簡単に演題ならびに討論の内容を紹介し,印象を加えて報告したい.

胸腰椎部損傷—圧迫骨折,保存的療法の部

著者: 竹光義治

ページ範囲:P.397 - P.399

 脊椎骨傷中もつとも頻度の高い胸腰椎移行部圧迫骨折の治療方針に関しては次のような問題点があげられる.
 1.遺残変形の程度と後遺症状の関係
 2.(早期)積極的矯正の要否
 3.矯正方法,臥床期間,固定法とその期間
 4.保存的療法の限界
 5.麻痺合併その他の場合,等

胸腰椎部損傷—観血的治療の部

著者: 井形高明

ページ範囲:P.400 - P.402

 脊柱損傷の治療目標が,そのレベルや程度に関係なく,痛みのない,強靱で可動性のある背骨の再建にあり,解剖学的修復よりは安定性の付与に主体が置かれている.この際,諸付属靱帯の断裂を伴つた脊椎骨折では骨性癒着による安定性獲得を期待しなければならない.このセクションで発表された7題は胸腰椎部損傷の再建に観血的整復や癒着法を適応した報告であつた。その多くの症例は神経障害を合併した不安定性損傷であり,それに伴う二次的合併症の予防や早期のリハビリテーション開始の両立にも手術目的が置かれていた.これまで,脊髄損傷を伴つた脊椎外傷に対する観血的療法はそのdemeritの大きさに鑑み,適応が狭められてきた国立村山病院の藤村氏らが述べているように,最近の長足の進歩を遂げた脊椎外科をもつてすれば,保存的療法に固執することなく,両者を縦横機敏に駆使することも可能な時代と思われる.このような観点もあつてか,各演者の内容に深く立ち入つた討論がなされた.以下,その要旨を総括的に述べることにする.

若年者の脊椎損傷の部

著者: 辻陽雄

ページ範囲:P.403 - P.404

 若年者の脊椎損傷と題するこのsessionでは成長期腰椎における後方骨端部損傷と,小児上位頸椎頸髄損傷との二つに大別され,別表のような報告と討議がなされた.
 これらの二つの主題について討議された内容をふり返りながら,まとめてみたいと思う.

頸椎損傷—病態,診断,症例の部

著者: 片岡治 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.405 - P.408

 著者らの担当したIV-aセクションは,主として頸椎損傷の病態と診断法に関するものである.発表の11題は別表のごとくで,これらをめぐる討論がなされた.以下各発表の簡単な紹介と討論の要旨をまとめ,印象を述べる.

頸椎損傷—手術成績の部

著者: 金田清志

ページ範囲:P.409 - P.411

 このセクションは以下の7題の頸椎損傷に対する手術療法が論ぜられ,とくに手術適応,手術時期,牽引療法,手術術式などについての討論が行なわれ井上教授(千葉大)と筆者が司会を行なつた.
 さて,外傷による頸髄の完全麻痺あるいは重度の不全麻痺の治療は保存的に行なわれるべきか,手術的になされるべきかは議論され続けてきている問題である.受傷時の脊髄麻痺が可逆性の部分があるのか,全く非可逆性なのかを判定する確実な方法のないことが一因でもある.近年整形外科領域では外傷性の頸髄損傷患者に,二次性の脊髄障害加重の予防,機能障害の改善,合併症の予防,早期リハビリテーションの開始などの目的で損傷頸椎の整復と固定と脊髄除圧の早期手術療法が盛んに行なわれるようになつた.しかし,手術時期,手術方法,術後careとrehabilitationの方法など必ずしも一致をみていない.このセッションでは下位頸椎損傷の手術について7題報告され,1題が陳旧例に対する成績で,他の6題は手術の時期に相異があつてもほとんどが新鮮例に対する手術療法の結果の分析であつた.

頸椎損傷—治療法の部

著者: 服部奨 ,   石川芳光

ページ範囲:P.412 - P.414

 頸椎損傷の治療は内容は非常に広範にわたるが,このセクションでは8題の演題を伺がつた上で,次のようなことが討論の対象になると考えられる.
 1つはhalo castおよびhalo pelvic apparatusが頸椎骨折の整復および固定に有効であるとの意見が出されたが,適応,時期などの問題があろう.次に中下位頸椎損傷では,特に脊損を伴つた脱臼骨折の治療が,多くの問題を含んでおり,その治療法の選択,手術するとすれば,その時期,方法が検討されなければならない.さらに骨傷のない脊損ではレベルの決定等診断上の問題が加わり,治療法もいずれをとるか考えねばならない.いずれにしても頸椎に加えられた損傷の種類,患者の全身状態その他種々の因子をもとにして治療法を考えるべきであろう.最後に上位頸椎外傷の問題であるが,中下位頸椎と比べてやや特殊な面があり,外傷という面よりの診断,治療法を検討したいと考えます.

脊椎損傷全般・病態と治療方針の部

著者: 平林洌 ,   小野村敏信

ページ範囲:P.415 - P.417

 このセクションでは,とくに障害高位に関係の少ない脊椎外傷全般にまたがる演題がとりあげられ,病態と治療方針について討議された.そして昨日より行なわれた高位別あるいは年齢別の脊椎外傷に関する討論を前提として,現在の時点における本症の診断・治療の総括を求めることが意図された.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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