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特集 脊椎外傷—早期の病態・診断・治療—(第7回脊椎外科研究会より)
小児における環軸椎脱臼症例について
著者: 遠藤紀1 小野村敏信1 渡辺寛1 山本定1 池田勝己1 石村俊信1 加藤実1 渡辺秀男1 太田和夫2
所属機関: 1大阪医科大学整形外科学教室 2京都大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.329 - P.336
文献購入ページに移動小児における環軸椎脱臼には,明らかな外傷によるものと,他の原因,すなわち素因や炎症が重要な要因をなす場合とがある.前者ではtransverse ligament環椎翼状靱帯や十字靱帯などの損傷,断裂により環椎の脱臼をきたすものが最も多い.後者のうち,環軸椎回転性脱臼については,1830年Bellが初めて咽頭部潰瘍に続いて発症した例を報告して以来,Wittek,Grisel,Comerらの報告例がある.本邦においては,神中が耳鼻咽喉性斜頸として,1931年に詳細に報告している.
本疾患は,環軸関節が脱臼位に強く固定されて経過するのが特徴である.その原因として従来挙げられているのは,炎症の先行を前提として靱帯の弛緩および損傷がおこり,これに炎症による頸筋のスパスムスが加わつて発症し,外傷や脊柱の先天異常などは,付加的な因子と考えられているが,現在なお明確でない点が多い.われわれは,種々の原因による小児の環軸椎脱臼および亜脱臼9例を経験したので,発症要因および治療について若干の考察を加えて報告する.
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