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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科14巻5号

1979年05月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 整形外科医のための免疫学・4

移植と腫瘍免疫—腫瘍免疫のモデルとしての移植免疫について

著者: 張紹元

ページ範囲:P.420 - P.423

 近年の移植手術の進歩は,外科領域に多大の進歩をもたらした.古くから行なわれている皮膚や骨移植に加えて,近年では腎移植やその他の臓器移植も,盛んに行なわれるようになってきた.
 ところで,我々整形外科医は,誰でも知っていることであるが,皮膚移植を行なう場合,患者自身の皮膚は活着するが,一卵性双生児を除き,他人の皮膚は活着しない.このように自己の皮膚以外の皮膚が活着しないのは,移植した皮膚に対して,移植を受けた方(recipient)が免疫反応を起こすためである.即ち移植された皮膚(あるいは臓器)と,移植を受けたrecipientの間に,組成の異なるものがあると,recipientは当然この組成の異なる物質を非自己のものと認識し,この物質に対して免疫反応を起こす.この結果移植片が炎症を起こし,破壊されて脱落する.このように,その化学組成の違いによって,移植の際に抗原となって働き,recipientに免疫反応を引き起こす刺激を与えるものを,移植抗原または組織適合系抗原と呼び,このために生じる免疫反応を,移植免疫反応と呼んでいる.

視座

日本人と外国語

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.425 - P.425

 SICOTに出席して思つたことであるが,近頃の若い方は外国語ことに英語が非常に上手になられたと思う.外国の方の間に伍して少しも遜色のないのを拝見して,心から嬉しく思つた次第である.英国やアメリカのような英語を母国語としている方は別としても,他の国の方に較べて日本人の英語は凡そのところ発音がよろしいのではあるまいか,同じ英語を話しても,それぞれの国によって,その国の訛りを伴いがちであるが,日本人などは比較的少ない方ではあるまいか.先日のSICOTの演説でも何処かの国の言葉で話しているんだなと思つていると,その中に英語らしい言葉が出て来て,やつぱり英語だと思つたことが何回かある.しかし日本人もこの点では決して安心はできない.これについて面白い伝説がある.ある有名な外科の先生がアメリカで英語で講演したところ,沢山にアメリカの医者が来ていて,中には日本語の達者な二世も混じつていた.講演が終つたところで,あるアメリカ人がその二世に,日本語も英語に似たところがあるんだなといつたという.

論述

旁骨性骨肉腫とその鑑別診断

著者: 古屋光太郎 ,   川口智義

ページ範囲:P.426 - P.436

はじめに
 労骨性に骨を形成しうる腫瘍として労骨性骨肉腫が最も良く知られている.
 しかし労骨性骨肉腫の発生頻度は低く,一施設にて多数症例を経験することが難しく,それだけに本症とその類似労骨病変との鑑別には困難を感じることが多い.

人工膝関節置換術の臨床成績—Geomedic型人工膝関節118例の検討

著者: 菅野卓郎

ページ範囲:P.437 - P.444

はじめに
 人工膝関節は股関節のそれに比べ歴史も浅く,まだ開発途上の段階にあるといえる.新しい形式も種々研究され改良も試みられてはいるが,理論と実際臨床との間には必らずしも一致しない面もある.
 私は一定の手技である数の症例を経験したいと考え,数例の特殊例を除き現在まで大部分のものにGeomedic型を用いてきた.今回はこれらの一般成績をまとめるとともに,とくに成績を左右する要因について検討した.

金療法無効RAに対するD-ペニシラミンの効果について

著者: 宗広忠平 ,   真鍋昌平 ,   山田義夫 ,   野村忠雄 ,   西島雄一郎

ページ範囲:P.445 - P.448

 D-ペニシラミン(以下D-Pとす)は,従来,Wilson病(肝レンズ核変性症)や,鉛,水銀,銅などの重金属中毒の解毒剤としてや,また,シスチンと結合して容易に尿中に排泄されることより,シスチン結石の治療剤として用いられてきた.その後,DeutschとMorton1)(1957)が本剤のマクログロブリン解離作用を報告して以来,本剤の免疫学的性質に関する種々の研究がなされてきた.慢性関節リウマチ(以下RAとす)においては,リウマトイド活性を低減させるという根拠よりJaffe2)(1965)が初めて本剤を用いた.以後RAに対するD-Pの使用については,多くの研究,報告があり,その臨床的有効性は確立されつつある.しかしながら諸家の報告に見るごとく,その副作用もかなり高率を示し,いまだRAの第1選択薬剤としては不適当であると思われる.
 そこで我々は,従来どおりの消炎剤と金療法の併用を行ない,しかるのち金療法の効果が十分現われない症例に対して本剤を投与する方針をとつてきた.ここでは,これら金療法無効例に対するD-Pの効果について述べてみたい.

手術手技

先天性(幼児)下腿偽関節症に対する水島式手術—脛骨交換術と遠位脛骨腓骨間骨癒合術

著者: 水島哲也 ,   浜田秀樹

ページ範囲:P.449 - P.459

はじめに
 先天性(幼児)脛骨偽関節症に対しては,現在までにいろいろな手技を用いた手術法が行なわれてきた.これらの手術法のなかで,Campbellの手術書にはBoyd,VanNes,McFarland,およびSofieldなどの手術法がとりあげられている.しかし,これらの手術法によつても良好な成績をあげることの困難さは周知の事実であつて,1971年にSofieldが発表した106例109肢に対する手術成績では,58肢に骨癒合をみたに過ぎない.
 本疾病の生じる原因が未だ不明であるにしても,局所に何らかの欠陥が存在することが考えられている.われわれは骨癒合が生じ難い理由として,偽関節部分の骨膜,骨皮質,骨内膜,および骨髄組織などの全て,あるいはこれらの幾つかに機能障害があるためであろうと考えた.そこで同部を正常な骨皮質,骨内膜,および骨髄組織を有する骨幹,すなわち健側からの骨幹により,骨膜下に置換すれば機能障害が改善されて骨癒合を営むのではないかと推測した.健側は骨膜が正常であるので,骨膜下に移植された患側骨幹の表面に骨形成を生じ,骨癒合がおこるものと考えた.これらの骨片の固定には,良好な固定と長期間留置する可能性を考慮して,ダイヤ型のRush pinを用いることにした.

症例検討会 骨・軟部腫瘍18例

症例1—左大腿骨腫瘍

著者: 陳信成 ,   立石昭夫 ,   宮永豊 ,   今村哲夫 ,   町並陸生

ページ範囲:P.460 - P.463

 患者:40歳,男.主訴:左膝関節痛.
 昭和50年1月左膝関節痛出現し,6月跛行が生じ,51年6月夜間痛が出現し,左膝上部に腫脹がみられた.10月2日歩行困難となり10月20日当科受診した.左大腿下部に腫脹と圧痛がみられた.入院時検査では,LDHの軽度上昇と血清Pの低下以外特に異常所見はみられない.X線像で大腿骨遠位骨幹端部に骨破壊像があり,骨吸収と骨皮質の膨隆があり,一部に骨膜性反応が認められた(第1-1図).11月1日病的骨折が生じ血管撮影ではhypervascularityとtumor stainが認められた.生検を施行し,軟らかい灰白色ないし赤色の実質性の腫瘍で,病理診断では原発性悪性骨腫瘍かまたは転移癌が疑われた.原発巣を検索したが,検査では異常所見はみられなかつた.11月22日大腿切断術を施行した.52年7月断端部痛出現し,10月のX線像で大腿骨大転子部に骨皮質の破壊がみられ,再発を疑い11月16日生検の上,左半側骨盤離断術を施行した.その後Adriamycinによる化学療法を行なつた.53年7月現在,局所再発,転移巣はみられず,特に原発巣を思わせる所見もない.

症例2—左膝窩部腫瘍

著者: 佐々木鉄人 ,   石井清一 ,   山脇慎也 ,   薄井正道 ,   八木知徳 ,   松野丈夫

ページ範囲:P.463 - P.465

 症例は19歳女性.4歳頃,四肢の関節近傍に多発性の腫瘤が出現し,multiple osteochondromasの診断で14ヵ所の腫瘍摘出術をうけた.以後12歳の時,左膝窩部腫瘤に気づくも放置,18歳になり腫瘤は次第に増大し,運動痛および膝の機能障害が加わつたため,昭和52年7月当科に入院した.家族歴で同族6名に類似の腫瘤形成をみている.
 入院時レントゲン所見では,全身性にmultiple osteochondromasを認め,特に左大腿骨遠位端mctaphysis後面に約6cmの基部を有する骨膨隆像が認められた(第2-1図).骨破壊も著明であり,悪性腫瘍が疑われた.

症例3—右大腿部腫瘤

著者: 石田俊武 ,   大久保衛 ,   高見勝次

ページ範囲:P.465 - P.468

 患者は11歳男子で,主訴は右大腿中枢半分の腫脹と疼痛である.
 既往歴として,約3年前より気管支喘息にかかつている.現病歴は,昭和52年1月スキーに行き,ころんで右大腿部を打撲したが,その約2週間後より右大腿中枢側の鈍痛に気付くようになつた.疼痛は次第に増強しかつ持続的となり,同部の腫脹にも気付くようになつて,昭和52年10月当科を受診した.全身状態に著変はないが,右大腿中枢半分はびまん性に腫脹し,その部に骨と癒合した大きな腫瘤をふれる.

症例4—右大腿骨転子部腫瘍

著者: 福田宏明 ,   町田信夫 ,   秦順一 ,   長村義之

ページ範囲:P.468 - P.471

 患者:19歳,男性,会社員.
 主訴:右股関節痛

症例5—左上腕骨腫腸

著者: 田中昇 ,   高田典彦 ,   館崎慎一郎

ページ範囲:P.471 - P.473

 左上腕骨malignant fibrous histiocytoma.
 52歳,男,現在までの経過は約1年半.1977年2月,左上腕痛,良性左上腕骨腫瘍ないしbone cystの疑いで当院に転送.当時のX線像は第5-1図左半のごとく骨幹部に多胞性吸収像と一部の骨皮質吸収像がみられ,同年5月に病的骨折,6月に入院.X線所見で悪性所見が疑われたが(第5-1図右),血管新生像顕著でなく,生検を行なつた.組織所見は成熟度の良い新生骨梁が線維性組織の中にみられ,fibrous dysplasiaが疑われた(第5-2図).6月30日に広汎な掻爬と骨移植が行なわれた.掻爬組織は多彩な所見を示し,骨破壊像が顕著で,一部に初回と同様なfibrous dysplasiaに酷似する部分,稠密紡錘細胞,線維芽細胞様細胞の腫瘍性増殖巣が混在し,しばしば瘢痕様,硝子化巣がみられた.これら細胞増殖部,線維性部分は極めて著明ないわゆるstoriform patternを呈し(第5-3図),異型細胞の存在は目立たなかつたので,悪性組織像と同定することをちゆうちよした.

症例6—左母指球部腫瘍

著者: 竹崎徹之 ,   大野藤吾 ,   安田寛基 ,   小坂井守

ページ範囲:P.474 - P.475

 41歳,男.昭和40年9月左母指球深部に腫脹,疼痛出現し病巣切除術を受け昭和41年7月局所再発および左上肢皮膚に米粒大結節数コ出現して左肩甲胸廓間上肢切断術施行,昭和42年12月頭部皮膚の米粒大結節切除を行う.昭和52年12月,当科初診時,頭部,頸部,右大腿の皮膚に米粒大結節出現.X-Pで左大腿深部に骨を侵す病巣および右肺に転移様陰影が認められた.昭和53年2月皮膚および左大腿深部の病巣切除術施行.大腿深部病巣は灰白色肉芽組織様で侵蝕された骨の表面は硬かつた.標本は今回の切除材料から提出したが組織学的に原発巣と基本的には同じであつた.
 組織学的所見:原発巣は円形または類円形のやや大型な細胞の異型増殖で線維性組織が入り込み血管成分も多く,一見肉芽腫様外観を呈するところがある.今回の切除標本は比較的大型の核小体の明瞭な円型また類円型細胞が密集増殖し,ところにより小空胞を形成しまたは管腔をとりまくように類上皮様に増殖している.

症例7—後腹膜腫瘍

著者: 野島孝之 ,   小池忠康 ,   松野丈夫 ,   前山巌 ,   湯本東吉

ページ範囲:P.476 - P.478

 62歳,男性.
 主訴:腹部膨満感.

症例8—再発をくり返した左手掌部腫瘍

著者: 田所衛 ,   牛込新一郎 ,   熊谷憲夫 ,   田井良明

ページ範囲:P.478 - P.480

 患者:21歳,女性.
 主訴:左手掌部腫瘤.

症例9—左大腿中央部腫瘤

著者: 網野勝久 ,   古屋光太郎 ,   荒井孝和 ,   和田成仁 ,   川口智義 ,   青木望

ページ範囲:P.480 - P.484

 患者:30歳,女性,美容師.
 主訴:左大腿中央部腫瘍

症例10—脊椎,坐骨などの多発性腫瘍

著者: 久保山勝朗 ,   紫藤徹郎 ,   横江清司 ,   岡本一也

ページ範囲:P.484 - P.487

 患者:19歳,男子.信用金庫職員.
 主訴:背部痛.

症例11—左腸骨部腫瘍

著者: 近藤秀丸 ,   田中潔 ,   下田忠和 ,   山下広 ,   石川栄世

ページ範囲:P.487 - P.490

 症例は左臀部痛および腫瘤を主訴とする20歳の女性である,当科初診の8ヵ月前の昭和51年7月頃より,左臀部に痛みを感じ,その7ヵ月後には同部の腫瘤に気づいた.同年3月9日,当院整形外科外来を訪ずれ,5月18日入院した.既往歴・家族歴には特記すべきことはない.
 入院時所見では,左腎部に熱感を伴う鵞卵大の腫瘤を認めた.基底部との移動性はなく,弾性硬で,圧痛があつた.

症例12—左下腿腫瘍

著者: 大平修 ,   北川敏夫 ,   高木克公 ,   田嶋光 ,   本田五男 ,   岩政輝男

ページ範囲:P.490 - P.494

 患者:69歳,男子.
 既往歴:13年前高い所から落ち左腓骨骨折.

症例13—右大腿骨遠位端部腫瘍

著者: 伴真二郎 ,   榊田喜三郎 ,   岡崎清二 ,   常岡秀行 ,   調幸治 ,   土橋康成 ,   山際哲夫

ページ範囲:P.494 - P.496

 18歳,男子.
 主訴:右膝関節部痛.

症例14—右大腿骨遠位部腫瘍

著者: 武内章二 ,   赤星義彦 ,   松岡正治 ,   常田昌弘 ,   安福嘉則 ,   宮下剛彦 ,   尾島昭次

ページ範囲:P.496 - P.501

 患者:16歳,女子.
 昭和51年2月頃より,特に誘因なく右膝関節部の運動時疼痛に気ずいていたが放置.同年12月頃より,疼痛はやや増強し,局所の腫脹を伴うようになつた.昭和52年2月より,強い疼痛と跛行を来たし,3月1日当科に入院した.

症例15—左前腕軟部腫瘍

著者: 姥山勇二 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   井須和男 ,   宮川明 ,   安塚久夫

ページ範囲:P.501 - P.503

 患者:12歳,男.主訴:左前腕腫瘤.
 臨床経過:昭和51年1月,左前腕の自発痛出現整骨院でマッサージを受けたところ腫脹が出現.以後徐々に腫脹と疼痛が増強.昭利51年8月某医にて試験切除の結果,悪性軟部腫瘍の診断で当科紹介され入院.同年9月前腕にて切断手術.以後昭和52年4月までADM総量600mg全身投与.昭和53年4月肺転移出現し現在化学療法中である.

症例16—左脛骨骨腫瘍

著者: 岡田聰 ,   吉田憲一 ,   明松智俊 ,   広畑和志 ,   水野耕作 ,   梁復興 ,   稲用博史

ページ範囲:P.504 - P.507

 患者:22歳,女.
 主訴:左下腿部荷重時痛.家族歴および既往歴:特記事項なし.現病歴:昭和51年12月頃から左下腿部に荷重時痛が出現し,翌年1月某医を受診した.レ線像(第16-1図)にて,左脛骨近位部に小児手拳大の骨吸収縁が発見された.この病巣は一見多房性で,骨皮質は一部やや非薄化しているが,膨隆や骨膜反応はない里近位部には骨硬化像があるがepiphysisは侵されていない.某医にて良性骨腫瘍として病巣掻爬および骨移植術が施行されたが,約4ヵ月後に手術創部が膨隆してきたため,52年10月に再手術が行なわれた,その時の組織診で悪性腫瘍の疑いがあるといわれ,翌月神戸大整形外科に転科してきた.本学で生検をかねて手術を施行,悪性腫瘍と診断し,局所灌流の後左大腿切断術を施行した.本年7月現在,患者は社会復帰して元気な日常生活を過している.

症例17—左大腿中央部腫瘍

著者: 伊藤慈秀 ,   水島睦枝 ,   西原幸一 ,   坂手行義 ,   遠藤徹 ,   渡辺俊介

ページ範囲:P.507 - P.509

 患者:72歳,男,農業.
 病歴:昭48・10(68歳)自覚症状のない皮下腫瘤1個が左大腿中央外側部に発生し,昭50・3摘出.腫瘤は長径1.7cm大,長楕円形で硬く,境界鋭利で下部組織との癒着はなかつた.摘出約2年後,同一部位に同様な皮下腫瘤が生じ,徐々に増大したため,昭52・6摘出.再発腫瘤(第1回)は3×2.8×2cm大,結節状で境界はきわめて鋭利,被膜なく,割面は線維充実性で,灰白色を呈し,特異な模様はなかった(第17-1図).第1回再発腫瘤摘出約9ヵ月後,再び同一部位に長径1.5cm大,扁平な長楕円形の第2回再発皮下腫瘤がみられ,一部表層筋膜と連続していた.この第2回再発腫瘤摘出後約3ヵ月目に,再び同一部位に1.5×4cm大,扁平長楕円形で境界不明瞭な第3回再発腫瘤が摘出された.この腫瘤は主に皮下組織内にあつたが,明らかに真皮深層を侵し,数ヵ所で表層筋膜とも連続し,また中心部では出血壊死がみられた.

症例18—右上腕軟部腫瘍

著者: 恒吉正澄 ,   岩崎宏 ,   篠原典夫 ,   香月一朗

ページ範囲:P.509 - P.512

 患者:78歳,男.
 臨床経過:昭和42年ごろ,右上腕皮下に小豆大の腫瘤に気付いたが,放置していた.昭和47年に腫瘤は急激に大きくなり,昭和48年1月某医で摘出されたが,小さな腫瘤が数珠状に連なつた10×5cmの大きさであつた.昭和49年1月,1回目に再発した6×6cmの腫瘤を九大1外科で摘出し,術後照射を行なつた,昭和50年2月,2回目の再発がみられ(第18-1図),昭和52年2月,3回目の再発腫瘍の摘出を行なつたが翌月再発し,九大整形に入院した.入院時,右上腕の大胸筋付着部近くに弾性硬の境界不明瞭な腫瘤が見られ,血管造影では腫瘤に一致して不規則な血管の増生が見られ,悪性腫瘍と考えられた.摘出腫瘍は6×5×5cmで,粘液腫状と線維性硬の部が混在していた.同年9月,皮膚瘢痕部の4回目の再発腫瘍は線維性硬を呈していた.昭和53年1月,5回目の再発腫瘍が見られた.現在まで遠隔転移は見られない.

症例検討その後

ページ範囲:P.512 - P.514

 症例は42歳男.昭和36年誘因なく右膝関節に歩行時痛を覚えてより,疹痛は消長を繰り返し,昭和38年頃から腫脹が目立ってきた.昭和42年疹痛激しく当科受診,右膝関節内側の上下に腫脹・熱感・圧痛が著明で,レ線像で大腿骨内側上穎および脛骨内側頼に,それぞれ骨端部から骨幹端部にひろがつた鶏卵大の不整形の骨透明像を見る.反応性骨増生および皮質破壊は乏しいが,大腿骨側に著明な皮質の膨隆を見る.
 昭和43年,生検および掻爬骨移植術.腫瘍はいずれも血性黄色の液体を満した嚢腫状で,実質性の腫瘍としては嚢腫壁に軟かい線維性組織を認めるに過ぎない.

臨床経験

最近5年間における上肢末梢神経損傷の手術成績

著者: 岡義範 ,   堀内行雄 ,   伊藤恵康 ,   内西兼一郎

ページ範囲:P.516 - P.522

はじめに
 近年microsurgerの導入によつて整形外科学の手術は著しく進歩してきた.末梢神経外科においてもfunicular suture法の開発(伊藤5)),microelectrodeによるdirect funicular stimmulation(Hakstian2)),interfascicular nerve grafting(Millesi7))などmicrosurgeryを加味して種々の手技改善に努力が払われている.しかしなおその治療成績は必らずしも充分満足できるものとはいえない.
 今回我々は,最近5年間に手術を施行した上肢末梢神経損傷患者の治療成績を調査し,今後の末梢神経損傷の治療の一助とすべく,若干の検討を加えたので報告する.

Ectrodactyly-ectodermal dysplasiaclefting (EEC) syndrome

著者: 須藤容章 ,   上羽康夫 ,   梁瀬義章 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.523 - P.525

はじめに
 1936年Cockayne4)により兎唇,口蓋裂,涙嚢炎および裂手,裂足を合併する症例が最初に報告されて以来,欧米には18例のectrodactyly-ectodermal dysplasia-clefting (EEC) syndromeの報告例2,3,4,8,10,12)があるが,本邦にはまだ報告例がないようである.最近,我々は定型的なEEC syndromeの一例と非定型的なEEC syndromeの一例を経験したので報告する.

整復障害をみたLisfranc関節脱臼の1例

著者: 瀬尾泰 ,   長谷川修 ,   池庄司敦

ページ範囲:P.526 - P.528

 Lisfranc関節の脱臼はそれほど稀なものではないが,諸家の報告によると非観血的整復が不可能であつた症例も多いようである.過去10年間に我々は7例のLisfranc関節脱臼を経験しているが,最近前脛骨筋腱の介在によつて整復障害をみたLisfranc関節脱臼骨折の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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