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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科14巻6号

1979年06月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 整形外科医のための免疫学・5

関節リウマチの血清学的特異性—新しい組織学的アプローチ

著者: 吉野槇一 ,   石山昱夫 ,   小室絵里佳

ページ範囲:P.532 - P.535

 異常免疫反応は関節リウマチの原因ではないがその進展には深く関与しており,またD-ペニシラミン,免疫抑制剤,免疫調整剤といった抗リウマチ剤が開発され臨床に応用されて来ている現状では,免疫を知らないでは満足な治療ができない,といっても過言ではない.そこで関節リウマチと免疫のかかわりについて,また免疫学的研究の新しいアプローチなどについて述べてみたい.
 "免疫’とは文字が示すように"疫を免がれる"という意味で自己に対して"益"になる反応である.しかし時として自己に対し"有害"な反応を引きおこす場合がある.これを異常免疫反応,またはアレルギー(広義の解釈)という.では異常免疫反応がどのような作用機序で組織障害を起こすのかを系統的に述べたのがCoombsらである1).Coombsらは異常免疫反応を(第1図)のように4型に分類した,なお,I型,II型,III型は体液性免疫,そしてIV型は細胞性免疫である.

視座

研究分野の細分化

著者: 天児民和

ページ範囲:P.537 - P.537

 SICOTも無事に終つたが,今度のSICOTでは整形外科から枝分れした小さな研究会と学会をSICOTの傘下に集めようではないかということをカナダのRobichon副会長が先ず発言をし,我々もこれに賛成をした.そしていくつかの小さな学会をSICOTの期間中に開催することができた.
 さてSICOTが終つてからの我が国ではいろいろな小さな研究会が開かれている.整形外科という1つの分科も学問が進歩し研究がより細かくより深くなつてくるとどうしてもその方面の専門の人達の集りができてくるのは当然のことである.しかしその専門の人達の研究がいくら進歩しても整形外科の領域に浸透していかなかつたらその研究の効果は余り期待することができないし,自分達の研究が最も優れていると自惚が生じてくる可能性のあることは否定することもできない.そこで日本整形外科学会の総会においてもこのような小さな研究会および学会の研究成果を何らかの形で会員に知らせることができれば大変よいことだと思う.米国のRay氏が整形外科の基礎的研究の必要性を説きSIROTを結成せられたことは皆様もよく御存知と思う.

論述

慢性関節リウマチにおける膝滑膜切除術の成績とその功罪

著者: 広畑和志 ,   石川斉 ,   大野修

ページ範囲:P.538 - P.551

 最近,慢性関節リウマチ(RAと略す)における滑膜切除に対する批判が多い.例えば長期観察例では滑膜切除の効果は保存的療法のそれと変らないと疑問視する人や,炎症の抑制効果に否定的な見解をもつ人も現われている.ところが,米国リウマチ協会と英国リウマチ協会の主催で行なつた多施設での3年後の滑膜切除の効果判定2,3)をみると,全く相反する結果となつている.
 常にRAの治療の原則はmedical treatmentにあると考え,私達も滑膜切除術の経年的な成績の推移と悪化傾向を懸念してきた.一方では長年にわたる関節の病態や病変の研究成果6,8,9)を根拠に滑膜切除術を現在でもRAの姑息的な局所療法として行なつている.

Spitzy変法による臼蓋形成術

著者: 赤松功也

ページ範囲:P.552 - P.559

いとぐち
 1920年,Spitzyは8歳の先天性股関節脱臼児に臼蓋形成術を施行し,1924年にZeitschrift fur orthop. Chir.で報告した.即ち,脱臼位にある骨頭を引き下げ,原臼位にもどし,整復位で関節包を開放し,臼蓋部に脛骨より採取した骨片を移植した。関節包をもとにもどしたのち,さらにその上方に,もう一片の脛骨片を移植した.2年後の結果として,下骨片は完全に吸収されたが,上骨片は明らかに新臼蓋を形成し,患児は跛行もなく,運動制限もみとめられなかつた,と報告している.
 以下に述べる我々の方法が,果してSpitzyの変法といえるか否かは,問題のあるところであるが,手術法とその結果について略述する.

整形外科におけるmicrodissection techniqueの応用

著者: 清水豊信 ,   玉井進 ,   保利喜英 ,   龍見良隆 ,   坂本博志 ,   梅垣修三 ,   広岡靖隆

ページ範囲:P.560 - P.567

はじめに
 Microsurgeryの歴史は古く,1922年Nylen & Holmgren1)が耳硬化症の手術に双眼顕微鏡を使用したのが最初とされており主として耳鼻科,眼科領域に応用されてきた.しかし整形外科においてmicroscopeが使われ始めたのは,1960年Jacobson & Suarez2)がmicrovascular anastomosisの手技を紹介してからのことであり,主として切断肢・指再接着術に応用された.1962年Kleinert & Kasdan3)が不完全切断母指の再接着にはじめてmicrovascular anastomosisを応用し,1965年小松,玉井4)が完全切断母指の再接着に成功して以来,世界各国で数多くの成功例が報告されており,さらに皮弁,骨,筋肉など各種複合組織の移植に広く応用されるようになつた.
 一方,脊髄外科の分野でも1954年Greenwood5)によりはじめてbipolar coagulatorが応用され6例の髄内腫瘍の摘出がおこなわれたのを契機として手術の微小化が進み,1963年Kurze6)により拡大鏡をもちいた脊髄のmicrosurgeryの試みがなされた.その後Yasargil7),Rand8),辻9)らにより近年の本格的な手術手技がほぼ確立されるに至つている.

多数回手術を要した腰椎部疾患の問題—その原因と防止のための留意点

著者: 平林洌 ,   若野紘一 ,   丸山徹雄 ,   倉林博敏 ,   鵜飼茂 ,   山岸正明 ,   里見和彦

ページ範囲:P.568 - P.577

いとぐち
 日常の臨床にあつて症候別では最も多い腰痛患者に対する治療の重要性については今さら多言を要しない.
 これら腰痛患者の中で,脊髄腫瘍や巨大ヘルニアを除けば,手術の絶対的適応といえるものは決して多いものではない.ところが現実には,比較的適応としてかなりの数の手術が行われている.

乳児先天股脱のX線診断の動向とX線検診の社会的得失について

著者: 今田拓

ページ範囲:P.578 - P.586

I.診断に切りはなせないX線
 この20年ほど,乳児先天股脱の早期発見に関するX線像の分析について,鳴りをひそめていた西独の整形外科誌が,3年ほど前から,急ににぎやかになつて来た.静かであつた要因のひとつには,Von Rosen19,20)等の新生児早期発見法に派生するX線被曝の規制問題が,影響していたのではないかと思われる.
 もちろんVon Rosenが,X線撮影の規制を提唱したわけではない.14年前,宮城県白石市において,脱臼のない町づくりの活動を続けていた私を彼が訪ねてくれたことがある.その時たくさんの自然治癒症例のX線写真を並べて見せたが,彼がそれに非常な興味を示し,"こんな写真は見たことがない,教材にしたいので,後からコピーして送つて欲しい"と頼まれた顔を,今でも思い出すのである.

先天性垂直距骨変形—その診断と治療

著者: 浜西千秋 ,   石田勝正 ,   山室隆夫 ,   森英吾

ページ範囲:P.587 - P.598

緒言
 先天性垂直距骨変形は外観上扁平足を呈する足部変形の中では稀な疾患であり,先天件多発性関節拘縮症,脊髄髄膜ヘルニア,脳性麻痺,常染色体異常等,中枢性の神経筋疾患に合併する事が多く,他の四肢および内臓奇形を伴うことも多い.Congenital convex pes valgus(Lamy & Weissman 1939,Herndon & Heyman 1963,Tachdjian 1972),congenital vertical talus(Osmond-Clarke 1956,Lloyd-Roberts 1958,Eyre-Brook 1967),あるいはteratologic dislocation of the talonavicular joint(Tachdjian 1972)等と呼ばれるように生下時より距舟関節が脱臼状態にあり,距骨頭部は舟状骨の下に落ち込み内側足底部に突出しいわゆるrocker-bottom foot変形を呈する.また前脛骨筋,長趾伸筋,腓骨筋群等の異常緊張により前足部は強く背屈し下腿前面に接するような場合もある.

手術手技

静脈移植による四肢血行再建

著者: 木下行洋 ,   中村純次 ,   浜弘毅 ,   石森義郎

ページ範囲:P.599 - P.605

はじめに
 切断手・指の再接着術のさいに,またhypothenar hammer syndromeのような動脈血行が局所的,器質的に障害されたものの改善に対して,静脈移植の応用が求められることは,少なくないと考える.我々は,1973年microvascular surgeryの臨床を開始して以来,症例を選んで静脈移植を行なつてきたが,今回,3〜24ヵ月の追跡調査をし得た8例を検討し,その適応,手技,術後の問題点などについて述べる.

臨床経験

整形外科領域における軟部腫瘍の臨床診断

著者: 姥山勇二 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   井順和男

ページ範囲:P.606 - P.612

はじめに
 軟部腫瘍においてその最終診断は,病理組織学的診断によつて決まる.しかも腫瘍の種類によつては,その治療法や予後まで病理組織的診断によって決定されるものもある,従つてこの方面における臨床病理学的検索は,きわめて重要な意味を持つている8,9).一方我々臨床医は,病理組織学的診断にいたるまでの治療過程でとられた処置が,病理組織学的診断と矛盾しないよう努力しなければならない.即ち術前に良性腫瘍であるか,悪性腫瘍であるかを判断することが治療上きわめて大切なこととなる.以上の観点から今回我々が経験した整形外科領域における軟部腫瘍について,その臨床像を検討した結果を報告する.

1歳10ヵ月で発症したosteoid osteomaの症例

著者: 臼井宏 ,   花岡英弥

ページ範囲:P.613 - P.615

 Osteoid osteomaが5歳以下の幼児に発生することは稀であり,また,年少児例にはいくつかの特徴的な点がある,本邦文献上最年少と思われる症例を報告し,併せて年少児osteoid osteomaの特徴および留意すべき点について述べる.

膝関節に発生した樹枝状脂肪腫の1例

著者: 柿崎寛 ,   岩崎光茂 ,   川島信二 ,   小松満 ,   設楽正彰 ,   佐藤達資

ページ範囲:P.616 - P.619

 膝関節に発生した樹枝状脂肪腫はきわめて稀な疾患である.我々は関節鏡検査で術前にほぼ診断し,摘出標本の肉眼所見および組織所見から本疾患と確診した1例を経験したので報告する.

鎖骨末端部骨折を伴う烏口突起骨折の1例

著者: 安井一夫 ,   西原建二 ,   守谷節夫 ,   駒井康孝

ページ範囲:P.620 - P.622

 鳥口突起骨折は稀れな損傷である.鎖骨骨折をともなつた骨折はさらに稀れであり,われわれは最近この1例を経験したので報告する.

学会印象記

第16回先天股脱研究会

著者: 遠藤寿男

ページ範囲:P.623 - P.624

 第16回先股脱研究会は昭和53年12月2日,徳島市郷土文化会館で会員約450名が参加して開催された.今回は主題はもうけないで,提出された演題をもとに活発な討論をお願いすることにした.それは日頃の学会では実現できないような自由な発言ができるという特色のある本研究会も第16回を迎え,新しい出発点にしようと考えたからである.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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