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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科15巻10号

1980年10月発行

雑誌目次

視座

骨肉腫に対するメソトレキセート大量療法に関連して

著者: 古屋光太郎

ページ範囲:P.929 - P.929

 骨肉腫は原発性悪性骨腫瘍の約半数を占め10歳代の青少年に好発し,整形外科領域における最も難治性の疾患であることは周知の事実である.本腫瘍は患肢切断という根治手術を行っても約80%は術後1年以内に肺転移をきたし,1960年代の諸家の報告では,その5年生存率は10〜20%と極めて悲惨な結果である.
 1960年に東大グループにより抗癌剤の局所灌流療法が,また1963年に赤星教授により局所動脈内持続注入法が導入され,化学療法に関する認識がたかまり術前・後に計画的なadjuvant chemotherapyが行われるようになつた.そのため1972年より1977年までの骨肉腫登録例の5年生存率は29.7%となり,術前転移を認めなかつた症例の5年生存率は38.5%と著しく上昇している.ちなみに青池名誉教授の行つた1961年までの骨肉腫登録例の予後調査では5年生存率14.3%であり,進歩のあとがうかがえる.

論述

長管骨転移病巣に対する金属メッシュ補強骨セメント置換手術法の臨床成績

著者: 川口智義 ,   和田成仁 ,   松本誠一 ,   網野勝久 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.930 - P.938

はじめに
 長管骨転移病巣に対する金属メッシュ補強骨セメント置換手術法については,1976年飯田が本邦最初の報告を行つた4).これには一例の臨床例が述べられている.
 この方法は腫瘍部を可及的en blocに切除しその欠損部を髄内釘,金属メッシュで架橋,さらにその間を骨セメントで充填補強し強固な支持性を意図するものである.従つて,単なる髄内釘手術に比すと侵襲が大きいきらいがある.そのため著者らは手術を全身状態が良好で,肺,肝,腹腔臓器などの重篤な転移巣がない症例に限定して施行してきた.一方1975年,飯田は実験的に金属メッシュ補強骨セメントの機械的強度の優秀性について報告した.しかしその後本法が臨床例で有効と評価しうる成績をおさめているか否か,また成績を左右する要因は何かなどについて報告をすることもなく現在にいたつている.そこで本稿では飯田の報告例を含むその後の自験症例のfollow updataを検討し再度,本法の臨床的価値および適応決定について述べる.

単殿位と先天性股関節脱臼

著者: 鈴木茂夫

ページ範囲:P.939 - P.946

はじめに
 単殿位分娩児に先天股脱発生率が高いことはしばしば報告されている.しかしながら,これまで分娩胎位によつてクリック発生率が異なる点は論じられても,クリックの程度や持続性が,分娩胎位によつてどのように変化するか,という点に注意が向けられることは少なかつた.
 新生児クリックが発見されれば,装具により直ちに治療が開始されるのが一般的であつたことや,特に日本においては,出生後の環境因子の脱臼発生に果たす役割が大きく,胎位の違いによる脱臼の性格の相異が明確になりにくかつたことも,その理由として考えられよう.

膝関節臨床評価基準のあり方について

著者: 姫野信吉 ,   光安知夫 ,   鳥巣岳彦

ページ範囲:P.947 - P.952

はじめに
 種々の治療法間の予後を比較するためには,症状の重さを測る共通の"ものさし"が必要である.歪みのない"ものさし",即ち臨床評価基準の重要性は,治療水準を向上させる上で強調しすぎる事はないと言えよう.
 従来,多くの評価基準が提案されてきたが,評価項目の選択,得点配分の根拠が不明確であり,評価得点の再現性に信頼のおけないものが少なくない.

手術手技

大殿筋皮弁による腰仙部潰瘍の修復

著者: 原科孝雄 ,   今井達郎 ,   柴崎啓一 ,   中井定明 ,   樋口正隆 ,   大谷清 ,   西村正樹 ,   末安誠 ,   小林慶二

ページ範囲:P.953 - P.958

はじめに
 腰仙部にみられる潰瘍はその大部分が脊損患者の褥創であり,ついで比較的まれであるが婦人科領域疾患の放射線治療後のレ線潰瘍がみられる.これらの手術的治療には皮弁の移植が必須である.近年整形,形成外科領域においては筋肉皮弁が通常の皮弁にとつてかわり,さかんに用いられるようになつた.われわれは大殿筋皮弁を用いてこの部の潰瘍の修復を6例行い,好結果を得たので報告する.

調査報告

足関節固定術の予後調査

著者: 武部恭一 ,   広畑和志

ページ範囲:P.959 - P.965

 高度の破壊があり,疼痛が強い足関節や麻痺足に対し,従来より足関節固定術が行われてきた.しかし足関節固定術の報告の多くは手術手技を中心に記載されており1,2,8,12〜14),関節固定が日常生活動作(以下ADLと略す)に及ぼす影響などについては十分に解明されていない.わが国においては欧米と異なる独自の生活様式をとるため,足関節固定は欧米に比べ,より多くの問題点を生じると思われるが,本邦における本手術の報告は少なく3,4,11),日本式生活におけるADL上の問題点も明らかにされていない.
 今回われわれは本院にて施行した足関節固定術患者の予後調査を行つたので,その成績を報告するとともにこれらの点についてものべる.

臨床経験

人工股関節置換術における膀胱内骨セメント流入の1例

著者: 木下勇 ,   森本博之 ,   田岡博明 ,   三好史郎 ,   滝川昊 ,   林一幸 ,   正木国弘

ページ範囲:P.966 - P.969

はじめに
 人工関節置換術が普及した昨今,種々の合併症の報告も少なくない.我々は外傷性股関節症に対して人工股関節置換術(以下THRと略す)を施行し,術中に寛骨臼底から骨セメントが膀胱内に流入するという非常にまれな1例を経験したので考察を加えて報告する.

Giliberty人工骨頭置換術施行後にカップと骨頭間の脱臼を生じた2例

著者: 原口和史 ,   鳥巣岳彦 ,   加茂洋志 ,   清田幸宏

ページ範囲:P.970 - P.972

 人工骨頭置換術後のlooseningやmigrationは術後成績不良の原因となるが1,3),これらは特に骨萎縮の強い症例に起こりやすいとされている.当科では骨萎縮の強い症例に対して昭和48年以来骨セメントを併用したAustin Moore型人工骨頭置換術(30例31関節)を行つてきた.また昭和52年よりは主としてGiliberty人工骨頭(20例22関節)を使用してきた.
 Giliberty人工骨頭では摩擦抵抗の差で関節の動きは主としてカップと骨頭間で行われるため臼蓋に対する侵蝕が少ない,関節の過度な動きに対しては臼蓋とカップ間の動きが加わるため脱臼が起こりにくい,弾性のあるポリエチレンが介在するため臼蓋と骨頭間に働く衝撃力が減じられる,臼蓋に変化が起こつた時には容易に人工股関節に移行できる等の利点があるとされている4,5,7).当科ではGiliberty人工骨頭置換術後にカップと骨頭間の脱臼を2症例に経験したので若干の考察を加え報告する.

壊死性筋膜炎"necrotizing fasciitis"の2例

著者: 川島重明 ,   米満弘之 ,   中根惟武 ,   平良誠 ,   中島英親 ,   林茂 ,   錦戸崇久 ,   高橋修一郎 ,   宮山東彦

ページ範囲:P.973 - P.977

はじめに
 当病院は救急病院であり,昭和50年に開院以来,約600例の四肢外傷例を経験している.最近,我々は,打撲程度の外傷でありながら,徐々に局所の発赤,腫脹,水泡形成が出現し,疼痛が強くなり,皮膚,皮下組織,筋膜が壊死となり,全身的にも,衰弱,貧血,それに敗血症様症状を呈し,放置すれば死を免れない,きわめて稀な,壊死性筋膜炎と思われる2症例を経験したので報告する.

第5胸椎脱臼骨折の1症例

著者: 岡島行一 ,   岡田征彦 ,   山本穰 ,   古府照男 ,   藤田誠一

ページ範囲:P.978 - P.983

 最近われわれは比較的稀な重度の第5胸椎脱臼骨折を経験したので発生機転および治療法等について若干の考察を加えて報告する.

左母指に発生した悪性神経鞘腫の1例

著者: 岡田幸也 ,   前沢範明 ,   園田万史 ,   藤田久夫 ,   吉田憲一

ページ範囲:P.984 - P.987

はじめに
 手,特に手指に発生する悪性腫瘍の頻度は低く,その報告は極めて少ない.今回我々は,左母指に発生した悪性神経鞘腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

関節破壊の著しい膝関節に対する慶大式人工関節置換術の経験

著者: 斉藤聖二 ,   伊勢亀冨士朗 ,   冨士川恭輔 ,   戸松泰介 ,   竹田毅 ,   磯田功司

ページ範囲:P.988 - P.992

はじめに
 最近人工膝関節は工学的背景の進歩によつて,多種多様なデザインが開発されているが,それは,hinge typeとhingeless typeに大別される.Hingeless typeは,支持性の面で,hinge typeに劣ることは当然である.一般にhingeless typeのsurface replacement型は,その支持性を軟部組織に依存するために,大腿骨や脛骨関節面に著しい破壊のあるものや,高度の内外反変形または不安定性の著しい関節等に対しては,適応がないとされている.
 我々は,従来より進めてきた,biomechanicsの知見を基に,慶大式人工膝関節を開発し,1972年以来臨床に応用してきた.慶大式人工膝関節は,hingelessのsurface replacement型ではあるが,関節自身に,運動の誘導機構と,異常運動に対する制御機構を備えており,一般のsurface型人工膝関節に比べて,その適応範囲は広いものと考える.最近,我々は高度の関節破壊,外反変形および不安定性のために,歩行困難であつたR. A.症例の両膝関節に慶大式人工膝関節置換術を行い,現在までの所,満足すべき結果を得たので報告する.

D-ペニシラミン低投与量症例の副作用について

著者: 森重登志雄 ,   藤森十郎 ,   亀山三郎 ,   吉野槇一 ,   内田詔雨

ページ範囲:P.993 - P.996

はじめに
 D-ペニシラミンの副作用の種類,頻度,そして重篤度などが,1日投与量と比例するかどうかは大変興味あるところである.
 D-ペニシラミンの1日投与量が100〜200mg(平均126mg/日)の関節リウマチ60症例について,その副作用を調べてみたところ,大変興味ある結果を得た.特にその発症頻度は31.0%と以前本誌に発表した結果に比較して著しく減少した.今回これらD-ペニシラミンの低投与量症例の副作用について,文献的考察を加えて述べてみたい.

脛骨adamantinomaの1例

著者: 森浩志 ,   門田明彦 ,   志摩隆一 ,   山本進 ,   松石頼明 ,   三浦哲夫

ページ範囲:P.997 - P.1000

はじめに
 エナメル上皮腫(ameloblastoma)は上・下顎骨に生ずる歯原性腫瘍であるが,これと組織学的に類似の腫瘍が顎骨とは無関係に,主として長管骨に原発性に生ずることが知られている.Fischer1)によつてadamantinomaと呼ばれたその腫瘍は,文献上約160例の報告があるが,我国での報告はきわめて少ない.今回われわれは70歳男性の脛骨に発生したadamantinomaを経験したので,その症例を呈示し,文献学的に若干の考察を加えたい.

脛骨下端に発生した骨内ganglionの1例

著者: 須田曉 ,   黒田賢二

ページ範囲:P.1001 - P.1003

 Ganglionは一般に軟部腫瘍として腱鞘などより発生し,臨床上しばしば経験するものであるが,骨内に発生したganglionは比較的稀なものとされている.
 われわれは最近,脛骨下端に発生した骨内ganglionの1例を経験したので報告する.

インヴェーダーゲームによる長母指伸筋腱皮下断裂の1例

著者: 江川常一

ページ範囲:P.1004 - P.1006

 インヴェーダー・ゲームは近年盛んになつたテレビゲームのなかでもとくにブームをひきおこし,遊戯場や家庭でも全国的な流行となり,過熱のあまり種々の社会問題までひき起こしたのち近頃になつてようやく下火となつた.医学的にはそれによる障害に関する報告を見なかつたところ,腱皮下断裂の1症例を経験したので報告する.

カラーシリーズ 義肢・装具・9

上肢装具

著者: 山内裕雄 ,   田澤英二

ページ範囲:P.924 - P.927

 上肢装具,一般にスプリントと呼ばれているものは,その有用性は認識されてはいるものの,実際の臨床では,わが国では,未だ遅れている部門でもある.私(山内)は手の外科に興味を持っているため,治療の有効な1手段としてスプリントをかなり用いて来た.外国では,いろいろと新しい材質,アイデアによるものが,特にリハビリテーション部門で用いられているが,私の用いているものはこれらにくらべ,いささか旧式かも知れない.しかしその効果には,いささかの自信はあるので,ありのままの形で,代表的な適用症例についての実際を示し,かつ近年の進歩については田沢が受け持ち解説を加える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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