論述
胸腺細胞移植により発症するマウス実験的関節炎の発症機序について
著者:
越智隆弘1
田辺鎮雄2
所属機関:
1大阪大学医学部整形外科学教室
2大阪大学医学部細菌学教室
ページ範囲:P.1140 - P.1146
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慢性関節リウマチ(RA)その他の慢性関節炎の発症および慢性化のメカニズムについては長年の多くの研究にもかかわらず不明なことが多く残されている.その解明のための一つの手段として実験的関節炎の開発とその解析が行われてきている.一つの問題はいかにしてRAに類似した関節炎をつくるかであり,さらにはいかにすれば炎症を持続させえるかである.マイコプラズマなどの病原体を用いる実験的関節炎1)の他,アジュバント関節炎2),連鎖状球菌の細胞壁を用いる関節炎3),II型コラーゲンをアジュバントとともに注射することによる関節炎4),さらに予めアルブミンやフィブリンなどの抗原にアジュバントを加えたもので免疫した動物の関節内に抗原を注入することによるAntigen induced arthritis5,6)などが代表的なものであり,それぞれ,多くの研究成果をあげている,それらはいずれも,アジュバント,コラーゲン,細菌壁などの難溶で生体内から除去されにくい物質による遅延型アレルギー反応によるものと考えられている.
われわれは近交系のBALB/cマウスの活きた胸腺細胞をやはり近交系のC3H/Heマウスの腹腔内に注入することにより,RAに酷似した所見を示す慢性多発性関節炎を誘発させえることを見出しその詳細の解明とともに発症メカニズムについての研究を続けているので7)関節炎発症および慢性化の解明への一つのアプローチとして概略を述べる.